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【 2009/04/17 】
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「このへんファジィ」と「マルチロボットフレームワーク」
~「IPAX2007」でのロボット関連研究


 6月28日~29日の日程で、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が主催する情報処理技術関連の研究発表イベント「IPAX2007」が開催された。会場は東京ドームシティ・プリズムホール。

 IPAXは、IPAの「未踏プロジェクト」の成果そのほかを発表する場所だが、「ロボット」と名前のついた発表も2点あったので紹介する。


「Myロボット このへんファジィ」

電気通信大学 システム工学科 助教 西野順二氏
 一つ目は電気通信大学 システム工学科 助教の西野順二氏による「Myロボット このへんファジィ」だ。一度、本誌でもご紹介したことがある。なお「このへんファジィ」は西野氏の登録商標だ。

 理屈の前にまずできることについて紹介する。西野氏開発の「このへんファジィ」エンジンを使えば、中高生でも簡単にロボットサッカー・シミュレーションを行なうことができる。操作は非常に簡単かつ直感的で、まずコートの一部を適当に多角形で指示する。まさに「このへん」という感じで、ある区画を囲むのである。

 そして、そこの領域でのボールに対するプレイヤーのアクションを決める。「このへんでは○○せよ」という形で命令を与えると思えばいい。たとえばボールに寄っていく、とか、パスをする、とか、シュートをする、といった具合だ。指定したあと、ルールとしてプレイヤーに登録する。するとたとえば、ゴール前に行くとボールをシュートする、といった行動を行なうプレイヤーロボットができるのだ。

 ルールは複数登録できる。囲んだ区画の真ん中がもっとも高い確率でルール化された行動を行なう場所となっており、重なった場合はそれぞれの領域同士での競合となる。

 また、「このへんファジィ」は、ヒト型ロボットのような多自由度の複雑なロボットの運動生成にも応用可能だという。たとえば、動いているうちにバランスを崩して倒れたり、腕などが身体に干渉したりすることないような状態を「このへんファジィ」で見出し、自動的に適切な運動パターンを生成することもできるようになるという。姿勢をだいたい「このへん」と指定することだけで、モーションを組めるようになるはずだそうだ。


 今回は、こちらの話がメインになっている。西野氏は現在、近藤科学のロボットキット「KHR-2」を使って、運動生成にチャレンジしている段階だそうだ。残念ながら、実機でのデモンストレーションはまだ見られなかった。

 「このへんファジィ」とは「多次元ファジィ集合をもちいた知識による判断や制御のシステム原理」だという。これまでのファジィ理論では多次元をそのまま表現することはできなかった。だが「このへんファジィ」は多次元に拡張することで、より柔軟な情報構造を表現可能になり、同時に、対象をより直感的に扱うことができるようになったという。ヒト型ロボットに限らず、多次元にわたる複雑な問題を扱うことができるので、応用範囲は情報検索や品質分類などにも広がるという。

 またロボット制御においても、たとえば電圧を一つの変数として見なせば、電圧が下がった場合に取るべきアクションや関節の動かし方を見出すことができるかもしれない。

 なおバーチャル・サッカー・シミュレーションについては「OZED」としてキット化され、現在、配布準備中である。対応OSはMacOS X、Linux、KNOPPIX、Windows。RoboCupサッカーで標準として使われている公式のサッカーシミュレーションサーバをそのままコンパイルや調整をせずに使える点も特徴だ。それと、「このへんファジィ」で作ったプレイヤーロボットを混在した形で試合を行なわせることもできる。


【動画】「このへんにボールがあったらシュートしろ」といった直感的な操作が可能なOZED。このキー技術が「このへんファジィ」 【動画】「このへんファジィ」を使ったヒューマノイドのシミュレーション 実機でもKHRを使って開発中。アールティが協力している

SYMROP:マルチロボットフレームワークの開発

東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻 本位田研究室修士課程/国立情報学研究所 アーキテクチャ科学研究系技術補佐員 片岡慧氏
 もうひとつは、東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻 本位田研究室修士課程/国立情報学研究所 アーキテクチャ科学研究系技術補佐員の片岡慧氏らの「複数のワイヤレスロボットを協調動作させることを目的とするマルチロボットフレームワークの開発」だ。「SYMROP」と呼ばれるこちらは、複数の独立動作しているロボットをアドホック・ネットワークで繋ぎ、協調動作させるための基盤技術の開発だ。

 マルチロボットフレームワークと、そのための低コスト、高速、そしてロバスト性が高い無線通信技術の開発がキーポイントだ。このフレームワークの「マルチロボットコマンドインターフェイス」を使うと、複数台ロボットを協調させて動かすことが容易に行なえるという。抽象度の高い命令を使うことで、個別のロボットや場合による細かなルールをいちいち記述することなく、単体のロボットをプログラムするのと同様の作業を行なうだけですむというものだ。無線技術はZigbeeを使ったもので、オーバーヘッドを抑えることで高速化させている。

 発表では、SYMROPを搭載した組み込み機器と、それを用いた「建物修復シミュレーション」がデモされていた。画面上には建物が複数建っている。またエージェントロボットも複数散らばっている。マップ上の建物が壊れると赤に表示が変わる。それをエージェントが修復するというものだ。エージェントはお互いに通信を行ない、無線の状況に応じて必要であれば、お互いに繋がる相手を見つけて情報をやりとりし、バケツリレー式に情報を運ぶことで協調動作を行なう。

 なお片岡慧氏はNHKの大学ロボコン、ABU国際ロボコンなどで活躍した東大チームのメンバーでもある。


SYMROPを搭載した組込みデバイス。マルチロボットコマンドを実装 マルチロボットコマンドインターフェイス

デモの様子。破壊されたビルを散開したエージェントが修理する 会場には情報セキュリティ標語やポスターの優秀作も展示されている。標語大賞は「忘れずに、ネットと心のファイアーウォール」

 このほか会場では、裸眼立体ディスプレイや「紙のキーボード」、ライフログ、多くのウェブ関連技術など、さまざまな情報技術研究の成果が披露されている。経済産業省/IPAが「天才プログラマー」「スーパークリエイター」と認定した研究者たちが直接説明をしていた。


URL
  IPAX2007
  http://www.ipa.go.jp/event/ipax2007/index.html
  【2007年5月15日】IPA、未踏ソフト事業で「スーパークリエータ」15名認定(INTERNET)
  http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/05/15/15705.html


( 森山和道 )
2007/06/29 14:51

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