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石井英男のロボットキットレビュー
~エイチ・ピー・アイ・ジャパン「G-ROBOTS GR-001」(第3回)

モーション作成ソフトを使って、モーションを作成する

 「G-ROBOTS GR-001」(以下GR-001)のレビューも、今回が3回目となる。前回で、ハードウェアの組み立ては完了し、プロセッシングユニットに登録されているサンプルモーションも正常に実行できることを確認した。二足歩行ロボットの面白さは、自分でオリジナルのモーションを作れることにある。そこで今回は、付属のモーション作成ソフトを利用して、オリジナルモーションを作る手順を紹介しよう。


使いやすく高機能なモーション作成ソフト

 二足歩行ロボットキットは、組み立てて、サンプルモーションを動かしたら終わりというものではない。ユーザーが、オリジナルのモーションを作成することで、二足歩行ロボットに個性が生まれ、愛着もわいてくる。モーションを作成するために使われるのが、モーション作成ソフトだ。GR-001では、モーション作成ソフトとして、「モーションエディタRPU11 (GR-001用)」(以下モーションエディタRPU11)が付属する。その名称からもわかるように、GR-001専用にカスタマイズされているため、非常に使いやすく、高機能である。

 そこで、モーションエディタRPU11を利用して、GR-001のモーションを作成する手順を紹介しよう。


3Dポリゴンモデルで直感的にポーズを作れる

 まず、GR-001とPCを付属のケーブルで接続し、モーションエディタRPU11を起動する。付属のケーブルはシリアル(RSC-232C)対応なので、PCにシリアルポートが用意されていない場合は、USB-シリアル変換アダプタ経由で接続すればよい。

 モーションエディタRPU11では、モーションやシナリオ、コントローラの設定などをまとめてプロジェクトとして管理するようになっている。プロジェクトごとにフォルダが作られ、さらにその中のサブフォルダにポーズやモーション、シナリオが保存されるので、見通しがよい。

 モーションエディタRPU11をインストールすると、「標準動作」と「サンプル01」という2つのプロジェクトデータも一緒にコピーされる。標準動作には、出荷時にプロセッシングユニットのRPU-11に内蔵されているものと同じデータが保存されているので、まずは、このプロジェクトデータを読み込んで、モーション作成を行なうとよい。

 最初にプロジェクトデータを読み込んだときは、使用する通信ポートを指定する。通信ポートを指定したら、「接続」ボタンをクリックすることで、PCとGR-001の通信が開始される。接続後、「同期開始」ボタンをクリックすることで、同期モードになり、モーションエディタRPU11でサーボモーターの角度を指定すると、実機のGR-001も同期して動くようになる。

 モーションエディタRPU11では、一般的なモーション作成ソフトと同様に、まずいくつかのポーズを作成し、次にそのポーズを並べていくことで、モーションを作成する。さらに、複数のモーションを順番に実行させるシナリオを作成することも可能だ。

 モーションエディタRPU11の画面は、いくつかのエリアから構成されている。左上には、通信エリアとトリミングエリアがあり、その右側に3D表示エリア、さらにその右にポーズ編集エリア、3D表示エリアの下に操作エリアとモーション編集エリア、シナリオ編集エリアが設けられている。中でも、特徴的なのが3D表示エリアである。このエリアには、GR-001の3Dポリゴンモデルが表示されており、3Dポリゴンモデルの関節をマウスでクリックし、ドラッグして動かすことで、ポーズを作成できる。

 一般的なモーション作成ソフトでは、サーボモーターの角度を直接数字で入力したり、スライダーを動かすことで、ポーズを作成していくため、初心者にはややハードルが高い。しかし、モーションエディタRPU11なら、3Dポリゴンモデルを動かすことで、直感的にポーズを作成できる。もちろん、ポーズ編集エリアで、サーボモーターの角度を数字で入力することも可能だ。


PCとGR-001を付属のケーブルで接続する。なお、ケーブルはシリアル(RS-232C)対応なので、シリアルポートがない場合は、USB-シリアル変換アダプタ経由で接続する モーションエディタRPU11の初回起動直後の画面。まず、最初に利用するプロジェクトデータを読み込む

サンプルとして付属する「標準動作」プロジェクトを読み込ませたところ。3D表示エリア内に、GR-001の3Dポリゴンモデルが表示される メニューバーの「ウィンドウ(W)」→「初期設定(I)」で、通信ポートを指定する

通信エリアの「接続」ボタンをクリックすることで、PCとGR-001との通信が開始される(接続中は、「接続」ボタンの表示が「切断」になる) 接続後、通信エリアの「同期開始」ボタンをクリックすることで、同期モードになり(ボタンの表示が「同期解除」になる)、モーションエディタ上でサーボモーターの角度を指定したり、3D表示エリアの3Dポリゴンモデルを動かすと、同期してGR-001も動くようになる

3D表示エリアの3Dポリゴンモデルの関節をマウスでクリックし、ドラッグすることで、サーボモーターを動かすことができる 【動画】3Dポリゴンモデルをマウスで動かすことで、GR-001もそれに同期して動く

ポーズキャプチャ機能も利用できる

 さらに、サーボモーターを脱力させ、手でロボット(GR-001)を動かして目的のポーズにしてから、各サーボモーターの角度情報を読み込む、ポーズキャプチャ機能も用意されている。ポーズキャプチャ機能も、ポーズ作成効率を高めてくれる非常に便利な機能だ。

 ポーズキャプチャ機能を利用するには、まず、その対象サーボモーターのトルクON/OFFチェックボックスのチェックを外し、トルクをオフにする。手でサーボモーターを動かし、所定のポーズにした後、「キャプチャ」ボタンをクリックすることで、トルクをオフにしたサーボモーターの角度情報が読み込まれる。


ポーズキャプチャ機能を利用する場合は、その対象サーボモーターのトルクON/OFFチェックボックスのチェックを外して、トルクをオフにする(この例では右腕のトルクをオフにしている) トルクをオフにしたサーボモーターは、手で自由に動かすことができる

「キャプチャ」ボタンをクリックすることで、トルクをオフにしたサーボモーターの角度情報が読み込まれる

ポーズを並べてモーションを作成する

 モーションに必要なポーズがすべてできたら、そのポーズをモーション編集エリアで並べて、モーションを作成する。モーション編集エリアでは、ポーズから次のポーズへの遷移の様子がグラフ形式で表示されるので、モーションの流れがわかりやすい。ポーズから次のポーズへの遷移にかかる時間は、ドラッグ&ドロップで変更できる。また、オプション追加」ボタンによって、モーション中に両目のLEDと内蔵ブザーを制御することが可能だ。

 作成したモーションは、「モーション実行」ボタンをクリックすることで、実行される。実機が動くのにあわせて、3D表示エリア内の3Dポリゴンモデルも同じように動く。


必要なポーズを作成したら、ポーズを並べてモーションを作成する。モーション編集エリアの時刻表示カーソルを移動し、「ポーズ追加」ボタンをクリックして、ポーズを選ぶことで、そのポーズがモーション編集エリアに配置される 「オプション追加」ボタンをクリックすることで、両目のLEDや内蔵ブザーのコントロールが可能

5つのポーズ(一番最初のポーズは実行されない)で構成される腕振りモーションが完成 コントローラ設定で、モーションを各ボタンに割り当てることが可能

【動画】作成したモーションを実行すると、3D表示エリア内の3Dポリゴンモデルも実機と同じように動く 【動画】作成した腕振りモーションを実行した様子。目のLEDが点灯したり、内蔵ブザーが鳴ったりしていることにも注目

モーションを並べてシナリオを作成する

 GR-001では、複数のモーションを順番に実行させるシナリオを作成できる。例えば、ROBO-ONEの予選では2分間の自律デモを行なうが、こうした場合に便利なのがシナリオの実行だ。シナリオの作成は、基本的にモーション作成手順と同様であり、シナリオ編集エリアにモーションを並べて配置していくだけでよい。


シナリオを作成するには、「モーション追加」ボタンをクリックして、モーションを呼び出し、シナリオ作成エリアに並べていく 3つのモーションを並べて、シナリオを作成した

【動画】作成したシナリオを実行した様子。「前進歩行」→「腕振り」→「後進歩行」の順にモーションが実行される

VBAを利用して、GR-001をコントロールすることも可能

 GR-001のプロセッシングユニットRPU11は、通信ポートをコントロールするプログラムを作成することで、他のソフトからコントロールすることも可能だ。ここでは、一例として、VBAを利用したGR-001サンプルプログラムを紹介する。VBAによる制御プログラムを、Excelのマクロとして利用することで、Excelのセルに入力した値を読み取って、GR-001を動かすというデモである(このサンプルプログラムは、Webサイトで今後公開される予定があるとのこと)。

 GR-001は、機体の組み立てが簡単で、動きも機敏なだけでなく、モーション作成ソフトも先進的で使いやすい。初めて二足歩行ロボットキットを購入したという人でも、3Dポリゴンモデルやポーズキャプチャ機能を利用することで、気軽にオリジナルモーションを作ることができるだろう。GR-001は、ハードウェア、ソフトウェアともに、一歩進んだ二足歩行ロボットという印象を受けた。


VBAを利用して、GR-001を制御するためのサンプルプログラム VBAを利用することで、Excelのセルに入れた値を読み取ってGR-001を操ることが可能だ

【動画】Excelのマクロ(VBA)を利用して、GR-001を制御している様子

URL
  エイチ.ピー.アイ.ジャパン
  http://www.hpiracing.co.jp/
  製品情報
  http://www.hpirobot.jp/

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石井英男のロボットキットレビュー
~エイチ・ピー・アイ・ジャパン「G-ROBOTS GR-001」(第2回)(2007/04/20)



( 石井英男 )
2007/05/10 20:25

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