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第19回ヒューマノイドカップ・スプリント&バトル大会

~どんたくの博多でロボットバトル大会

開会式の様子
 福岡市で最も人を集めるイベント・博多どんたく最終日の5月4日、博多リバレイン5Fのアトリウムガーデンにおいて、第19回ヒューマノイドカップ・スプリント&バトル大会が開催された。ヒューマノイドカップはロボスクエアが開催しているイベントで、ここ三年ほどは博多どんたくに合わせて5月の連休中にロボットバトル大会を開催している。

 今回のヒューマノイドカップには九州を中心に27台が参加。3mのパンチカーペットの上を走る予選のスプリント上位16台が、決勝のバトルトーナメントに進出し、優勝を目指して戦いを繰り広げた。


波乱のスプリント予選

 予選のスプリント競技は、3mのパンチカーペットのコースを2回走り、いい方の記録で順位を競うものだ。

 今回のスプリント予選は、全体的な高速化により、熾烈な争いとなった。特に新しい勢力の活躍が目覚しい。「イーグル1」はノーマルのKHR-2HVでありながら、10秒を切る好タイムで11位に入り、13位の「KHR01」、16位の「Q」もノーマルのKHR-2HVだった(この3台はいずれも4月17日に開催されたWAKUWAKU enjoyロボットイベントに参加している)。

 なかなか予選を突破できなかった九州産業大学の学生チームも、今回は「ブラックムーミン弐式」と「しろがねKSR」の2台が決勝トーナメントに進出。九州練習会に参加して、調整を続けてきた努力が報われた。

 ただ、そのあおりを受ける形で、バトルで実績のあるロボットが予選落ちとなってしまった。3月4日に行なわれた第19回のヒューマノイドカップバトル大会のベスト4のうち、なんと優勝した「成龍」、準優勝の「疾風」、それに4位の「TYRANT」までもが予選落ちするという、波乱の展開となった。

 また会場入りしていた「トコトコ丸」が通信機のトラブルにより、競技に参加できなかったこともあった。

 その状況の中で、関東からの遠征組が実力を発揮。「ARIUS」が前回のヒューマノイドカップに続いて連続で予選1位、前回は予選本戦ともに3位だった「アリキオン」が予選2位、初参戦の「ivre-VIN」が予選3位、しかも3台とも5秒台という驚異の記録で強さを見せ付けた。

 決勝のバトルトーナメントに進出した16台は次の通り。

ARIUS(住井杏里奈) 5秒13
アリキオン(住井奈々子) 5秒28
ivre-VIN(遊) 5秒57
AutomoNico(holypong) 6秒39
Gパワーローダーネクスト(角さん) 6秒64
White knight(みやみや) 7秒68
エムクリ弐式(大分大学M-creator) 7秒92
スーパーディガー(ひろのっち) 8秒28
ブラックムーミン弐式(コオリ) 8秒89
九共大ーZERO(九州共立大学メカエレ工房) 9秒19
イーグル1(イーグル) 9秒54
Automo01(hoypong) 9秒82
しろがねKSR(Hiko) 10秒51
ワイルダー01(勝野宏史) 11秒02
KHR01(九州共立大学メカエレ工房) 11秒88
Q(林慎一) 12秒02


予選スプリント3000のコース。床面はパンチカーペットで、赤いクッションが置かれている方がゴール スプリント3000は3台ずつ走る。(写真のロボットは左からカッチーデヤンス、予選を13位で突破したしろがねKSR、予選7位のエムクリ弐式) 大分大学M-creatorのエムクリ弐式。第11回ROBO-ONEの予選デモで煙を吹いた苦い過去があるが、今回は8秒を切る好タイムで7位に入った

安定した走りを見せる、MANOIベースのWhite knight 横歩きで予選を9位突破のブラックムーミン弐式 ノーマルのKHR-2HVながら、10秒を切るタイムを出して周囲を驚かせたイーグル1(左のオレンジ色のロボット)。第一回目の走りでは左のスーパーディガーにも勝っている

安定した歩行で九州勢トップのタイムを出したAutomoNico。右の疾風は調整不足でスピードが乗らず、予選敗退 のけぞった状態で走るivre-VIN。向こうにちょこっと写っているロボットは、予選16位で決勝トーナメントに進出したQ 5秒28でゴールインし喜ぶアリキオン。左のワイルダーも14位で予選を突破したが、やはりアリキオンのスピードの前には差をつけられた

5秒13の猛スピードで駆け抜けた青いARIUS。九州で唯一5秒台の記録を持つオレンジ色のGパワーローダーネクストも意地を見せ、6秒64で5位に入った ノーマルRB2000ながら15秒の記録を出し17位となったTEAM福工2号(コジチャン)。高校生チームでこの記録は立派

前回のヒューマノイドカップ・バトル大会で優勝した成龍。走りは安定していたが、コントローラーの不調でスタートが遅れ、予選落ちとなってしまった コースアウトした上に、禁止されている前転モーションの連続でゴールするという暴れっぷりで観客を沸かせたか~る(道楽、)。当然ながら記録なし

1回戦始まる

 バトルトーナメントは、予選1位と予選16位、予選2位と予選15位というように、予選で上位の機体ほど有利になる組み合わせとなっている(前回も同じ)。ルールは3回ダウンを取られるか10カウント以内に起き上がってこられないと負けになるのは他のバトル大会と変わりがないが、ルールはかなりゆるやかなものとなっている。


トーナメント表 決勝トーナメントに進出した参加者

 1回戦前にはロボットのパフォーマンスが行なわれ、集まった観客を感心させていた。

 1回戦で一番の注目試合は、ivre-VIN VS ワイルダー01だ。第11回ROBO-ONEで重量級2位となったivreの兄弟機と、KONDO-CUPでも活躍した「ワイルダー01」との対決だが、試合はivre-VINが圧倒。ivre-VINは左右の強力な連打を放ってワイルダーを攻撃。反撃を受ければ姿勢を低くして攻撃をしのぐ。これに対してワイルダー01は、どう攻めていいのかわからなくなっていたようで、3-0でivre-VINが勝利した。

 1回戦で一番の番狂わせは、しろがねKSR VS AutomoNicoだろう。「AutomoNico」はKYOSHO アスレチクス ヒューマノイドCUPで優勝し、KONDO-CUPでも活躍している機体だ。予選のスプリントでも九州勢でトップの4位となっている。しかし、試合が始まると、しろがねKSRはリングアウトも含めて有利に試合を進めていき、最後は飛び込み技で決めて、3-1でAutomoNicoに勝利した。

 その他の試合結果は以下の通り。

○スーパーディガー 3-0 ブラックムーミン弐式×
○White knight 3-0 イーグル1×
○アリキオン 3-0 KHR01×
○九共大ーZERO 3-0 エムクリ弐式×
○Automo01 リタイヤ Gパワーローダーネクスト×
○ARIUS 3-0 Q×


試合前、しゃべりながら踊るパフォーマンスを見せたivre-VIN 姿勢を低くしてワイルダーに襲い掛かるivre-VIN ivre-VINはワイルダーより小さく見えるが、実はivre-VINの方が相当重く、攻撃が当たってもなかなかダウンしない

AutomoNico(左)VS しろがねKSR(右) 最後は腕を突き出しての飛び込みで、しろがねKSRが金星を上げた

スーパーディガーの自律ならぬ操縦スイカ割り。中には鯉のぼりが入っていた 試合ではブラックムーミンに完勝 決勝トーナメントに進出して周囲を驚かせたイーグル1だが、さすがにバトルでは勝てなかった

踊る! 踊る! アリキオン バックアタックで、九共大学のKHR01からダウンを奪う 一回戦で一番観客を沸かせたエムクリ弐式 VS 九共大ーZEROの試合。エムクリ弐式は九共大ーZEROの回りをちょこちょこと走り回ったが、体重の差はどうしようもなく、3-0で敗北

Gパワーローダーネクストの回転浴びせ蹴りを受け止めたAutomo01 前回のヒューマノイドカップでも実現したARIUS VS Q。今回のQは製作者本人が操縦して試合に臨んだが、ARIUSの返り討ちにあってしまった

順当の2回戦

 2回戦の4試合は「戦い慣れている機体」の方が危なげなく勝利し、ベスト4へと進んだ。

○スーパーディガー 3-0 しろがねKSR×
○アリキオン 3-0 White knight×
○ivre-VIN 3-0 九共大ーZERO×
○ARIUS 3-0 Automo01×


ディガーアタックを受けて、しろがねKSRの健闘もここまでで終わった White knight VS アリキオンの「白と赤の対決」は、アリキオンの勝利 ivre-VINと九共大ーZEROの試合で起こった珍事。派手に転倒した九共大ーZEROが逆立ちしたまま動けなくなってしまった(結局はリングアウトした)

唯一の延長戦突入

 準決勝の第一試合は、九州勢で唯一残った「スーパーディガー」と、ヒューマノイドカップの常連アリキオンとの対決。どちらも高速で移動しながら、大技を仕掛けていく試合展開となった(ヒューマノイドカップ・バトルは、足裏以外が接地する捨て身技の回数の制限がない)。

 スーパーディガーは回転浴びせ蹴りを連発し、これに対してアリキオンは突きやバックアタックを仕掛けていく。お互い3分間激しく動き続け、全くダウンを奪われることなく、今大会唯一の延長戦(先にダウンを奪った方が勝ち)に突入した。

 延長戦では、アリキオンの背後を取ったスーパーディガーが、絶妙のタイミングで腕をついてのヘッドバッド(九州ではディガーアタックと呼ばれている)を放ってアリキオンからダウンを奪い、決勝にコマを進めた。


準決勝第一試合スーパーディガー VS アリキオン。この日は地元のテレビ局も取材に来ていた スーパーディガーは何度も回転浴びせ蹴りを放つが、アリキオンからダウンは奪えない ぶれているが、スーパーディガーがディガーアタックでアリキオンからダウンを奪った瞬間

黄金の蛇 VS 青い鷲

 準決勝の最後の試合は、低い位置から強力な左右の連打を繰り出してくるivre-VINと、最大の武器であるダイビングヘッドバッドを連発するARIUSとの対決となった。

 ivre-VINは攻撃を受けるとすぐに姿勢を低くし、相手が射程距離に入ると左右の連打で相手を仕留めにかかる。しなるような長い腕の動きもあって、それはどこか金色の蛇を思わせる。ただし、蛇と違うのは、高速移動で相手を追い詰めていくところだ。

 ivre-VINにへたに近づくと左右連打の餌食となるため、ARIUSは射程の長いダイビングヘッドバッドの攻撃を多用。ivre-VINはARIUSのヘッドバッドに対して、姿勢を低くして耐える。結果としてARIUSがivre-VINに上からのしかかる形の攻撃となった。それは「地に伏して攻撃をうかがう黄金の蛇」と「上空から襲いかかる青い鷲」の戦いに見えなくもない。

 姿勢を低くしたivre-VINは、ダイビングヘッドバッドの攻撃を受けても倒れない。さらにARIUSはダイビングヘッドバッドを連発し、ivre-VINのリングアウトを狙うが、ivre-VINの足裏はグリップを利かせていろため、そう簡単に押されてはいかない。

 その攻防の中で、ARIUSのダイビングヘッドバッドを横に叩き落とすような攻撃でivre-VINがダウンを奪った。そのワンダウンを守り、ivre-VINがARIUSに勝利した。


準決勝第二試合ivre-VIN VS ARIUS。ivre-VINは足の浮く独特の立ち方をする(内と外で材質の異なる足裏面をうまく使うためらしい) 低く構えたivre-VINにダイビングヘッドバッドを仕掛けるARIUS ivre-VINのくねる腕はまさしく黄金の蛇

3位決定戦は親子対決

 3位決定戦はARIUS VS アリキオンのスミイファミリー対決となった。お互いにダウンを取り合い、2-2から最後はARIUSがダイビングヘッドバッドを決め、親子対決はお嬢さんが制した。


スミイファミリーの親子対決。お母さん、さっそくARIUSどついてます(笑) 最後はARIUSのダイビングヘッドで決着

因縁の決勝戦

決勝戦直前
 決勝戦は、初参加のivre-VINと、初のヒューマノイドカップ・バトル大会決勝戦進出のスーパーディガーとの対決となった(ヒューマノイドカップ・サッカー大会での優勝経験はある)。実はそれぞれのオーナーである遊氏とひろのっち氏には因縁がある。2006年11月に開催されたアキバ・ロボット運動会アスリートカップで2人は同率1位となり、急遽実施されたバトルで対戦して、遊氏のivreが勝利して優勝した。スーパーディガーのひろのっち氏としては地元でリベンジを果たしたいところだ。

 試合が始まると、スーパーディガーは素早い歩行からivre-VINの背後を取った。スーパーディガーは、これまでトコトコ丸やマジンガアの背後を取ってのヘッドバッド(ディガーアタック)でダウンを奪ったことがあり(今回はアリキオンも倒している)、ivre-VINにも同じ攻撃をしかけた。しかし、ivre-VINは倒れず、逆に背後への左右連打で抵抗。それならとスーパーディガーは回転浴びせ蹴りで勝負に出るが、ivre-VINは突きを繰り出して、浴びせ蹴りを不発に終わらせる。

 お互いに素早く動きながらの攻撃を繰り出す緊迫した戦いとなったが、何かを仕掛けようとしてスーパーディガーの動きが一瞬止まった隙を見逃さず、ivre-VINが横からの強烈な一撃を加えてダウンを奪った。これが決め手となり、1-0でivre-VINがヒューマノイドカップ初出場にして初優勝を決めた。


ivre-VINの背後を取り、ディガーアタックを仕掛けるスーパーディガー。スーパーディガーにとっては、ここが一つの勝機だった 低く構えられると、すくいあげるような攻撃をもたないスーパーディガーは苦しい ivre-VINがスーパーディガーからダウンを奪った直後

ivre-VINはダウンを許さず、ついにタイムアップで優勝を決めた 閉会式での記念撮影 優勝者の遊氏。この大会で一番の難敵はARIUSだったそうだ

優勝者の遊氏と準優勝者のひろのっち氏。秋葉原・博多と来て、次の再戦はどこになるのだろうか 表彰式の後でのスミイファミリー。予選1位2位と本戦3位4位のペアで、今回はいずれもお嬢さんの勝ち

 今回のヒューマノイドカップは、バトルで実績を残したロボットが予選で落ちるという波乱の大会となった。バトルの試合では、機体によって攻撃力の差が大きく一方的になってしまった戦いもあったが、ベスト4に関して言えば「結果として一度でもダウンを奪われたら負け(優勝したivre-VINは一度もダウンを奪われていない)」という、シビアで緊張感のある戦いが繰り広げられた。

 ROBO-ONEのルール改正により、大技連発の試合は他では見られなくなってきており、その意味でも興味深いロボットバトル大会となった(ただし、次回のバトル大会がどうなるか未定)。

 なお、ロボスクエアは5月末でいったん閉館し、7月20日に福岡市百道にあるTNC放送会館でリニューアルオープンすることが決定している。したがって今回が博多リバレインで開催される最後のヒューマノイドカップになる可能性が高い。福岡でのロボット人気を高めてきたヒューマノイドカップだけに、TNC会館にロボスクエアが移転してからも熱い戦いを繰り広げてほしい。

 次回の第20回ヒューマノイドカップは、ロボスクエアのリニューアルオープン記念として、7月21日、22日にサッカー大会としてTNC会館で開催される予定。


URL
  ロボスクエア
  http://www.robosquare.org/

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( 大林憲司 )
2007/05/09 00:33

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