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二足歩行ロボット開発の舞台裏と、QRIO誕生までの軌跡

~「進展するロボット化技術と農業機械の開発改良」セミナー(後編)

二足歩行ロボット「WABIAN」に見る、静歩行から動歩行への歩み

 3月7日、埼玉県の大宮ソニックシティーホールにおいて、「進展するロボット化技術と農業機械の開発改良」をテーマにしたセミナーが開催された。主催は、独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構、生物系特定産業技術研究支援センター、新農業機械実用化促進株式会社。

 前編では農業分野や被災地で活躍するロボットを中心に紹介した。後半は現在最も人気の高い二足歩行ロボットの歴史や総合討議の模様についてお伝えする。

 3番目に登場したのは、ヤマグチロボット研究所代表の山口仁一氏。同氏は、二足歩行エンタテインメントロボット「QRIO」誕生までの2足歩行技術40年の歩みと将来展望(副題:ソニー株式会社と山口仁一の運動制御特許技術を中心に)をテーマに講演を行なった。なお、ソニー株式会社においては既にQRIOの新規開発は中止している。

 山口氏は、早稲田大学で、有名なWABIAN(Waseda Bipedal Humanoid)の開発に携わり、その後ソニー株式会社の「Sony Dream Robot Project」においてヒューマノイドロボット研究/開発の教育や指導を行なった人物。QRIO開発の過程で運動安定化技術に係わる100件以上の重要な発明もした。これらの発明は、ソニー株式会社と山口氏の共有名義・共有権利持分で、世界主要国に共同特許出願・請求を行なっているところだ。まさに山口氏はQRIO開発のキーパーソンといえる人物なのだ。

 まず山口氏は、ヒューマノイドロボットの開発の歴史と変遷について言及した。世界で初めて二足歩行型ヒューマノイドロボットが登場したのは1973年のこと(視覚や聴覚情報を持って、それをベースに行動できるロボットをヒューマノイドロボットと定義)。ご存知の方も多いだろうが、早稲田大学の研究グループが開発した「WABOT-1」がそれである。そして次に登場したのは、その20年後のこと。東京大学が開発した「脳を持ち歩かない2脚2腕ロボット」である。いずれも歩行動作はゆっくりとした「静歩行」と呼ばれるものだった。

 人間のように動くことで発生する慣性力を利用したダイナミックな「動歩行」によるロボットが登場したのは1996年になってからだ。山口氏が開発に参加した早稲田大学の「WABIAN」と、本田技研工業が開発した「P2」がそれにあたる。翌年にはP2はさらに小型化され、「P3」となった。


 1998年に入ると、東京大学が「H5」というロボットを発表。同年には国家プロジェクトとしてヒューマノイドロボットの研究がスタートし、1999年にはP3を改良した「HRP-1」が登場した。21世紀を目前に控えた2000年には、大学などや企業でヒューマノイドロボットの発表が相次いだ。最近ではトヨタのパートナーロボットや日本ビクターの「J4」も登場している。

 早稲田大学における2足歩行ロボット研究には2つの目的があったという。1点は人間の歩行メカニズムを工学的な視点から解明すること。もう1点は、それをヒューマノイドロボットへ応用することだった。早稲田大学では1966年から30余年にわたり、15基以上の二足歩行ロボットが開発されてきた。山口氏は、同大学の故・加藤一郎研究室で開発された二足歩行ロボットの歩みを1966年から振り返って紹介した。

 まず1966年から1968年までは、歩行動作の基本的なメカニズムの確認を主な目的に研究が進められ、1969年から1971年になると、静的歩行が実現。また、床を傾けても倒れずに重心移動ができるようになった。そして、1973年には腕の研究や、画像・音声認識などの技術を含めて、他研究室も集結し、上半身を装備した二足歩行型ヒューマノイドロボット「WABOT-1」が完成したという。WABOT-1は単に歩くだけなく、命令に応答したり、ボディに内蔵されたTVカメラで距離と方向を測定し、対象に向かって歩きだせるようになっていた。

 そして、次のステップが静歩行から動歩行への挑戦だった。動歩行を実現するまでには、1973年から1984年までという10年以上の歳月が必要であった。Waseda Leg(WL)は10号機まで進化した。1985年に入ると、このロボットで階段斜面の動歩行を実現したものの、階段の段差は小さく、まだ緩い斜面のみの対応であった。


WABIANの開発から、継続的に安定した動歩行までを実現

 1986年に開発された12号機では、9号機以降設けられていなかったバランスウェイトを再び上半身に備え、下肢は股部、膝部、足首でピッチのみの6自由度とし、上体はピッチ、ロール、並進の3自由度とした。山口氏がヒューマノイドロボットについて初めて知ったのは、ちょうどこの頃のこと。当時、筑波万博で展示されていたWHL-11(Waseda Hitachi Leg)は、歩行速度がとても遅いように感じたという。「何か解決されていない大きな問題があるのではないか」(山口氏)と思い、早稲田大学の門をたたいた。当時の加藤一郎・高西淳夫研究室に入門し、学部生時代に「未知外力下での動歩行に関する研究」に参加した。これは、ロボットに紐をつけ引っ張ると、その情報を元にバランスをとろうとして上体が動く。そこで着地位置と時刻を変更して姿勢を保つという制御の研究である。現在でもとても高度な制御だという。

 次のステップとして、1990年から同研究室は二足歩行ロボットを人間のようなスピードで歩行させるために、速度向上に関する研究を行なった。ロボットの歩行速度を上げていくと、ヨー方向に動いて歩行の継続ができなくなる問題が起きていた。これは足を振り出すことによって、ヨー軸モーメントが発生することが原因だった。そこで、このヨー軸モーメントをキャンセルさせるために、上体にダンベルのようなものを置いて、それを動かしてヨー軸回りのモーメントを制御したという。これらの施策によって、歩行スピードをアクチュエータの性能限界まで上げられるようになった。しかし、従来からの問題であった歩行成功確率はまだ低かった。そこでこの研究と並行して、山口氏は「二足歩行ロボットはなぜ転倒してしまうのか?」という点について徹底的に調べていった。すると意外なことがわかったという。


 歩行が乱れる場所は、片足でバランスを取っている部分ではなかったのだ。山口氏は、ロボットが足を切り替えるときに、ボディ全体に振動がのって姿勢を検出できなくなり、制御が利かなくなるという原因を突き止めた。従来は着地足の位置決め誤差による影響を、理論上で無視していた。また、ボディにのった振動を吸収・緩衝させる機構もなかった。これらの問題を解決するために、足裏と足首の間にスポンジのような緩衝材を挿入して柔らかくすることで、安定した動歩行を実現。更に変形具合を測定する機構を搭載し、路面の情報やロボットの姿勢情報などを収集した。安定歩行できると同時に、路面情報をベースにロボットの運動パターンを変更することで、高さ方向にズレている路面などに対しても、継続的かつ安定した動歩行が可能となった。

 1995年になると、早稲田大学のヒューマノイドプロジェクトに大型予算がつき、いよいよ2足歩行型ヒューマノイドロボット「WABIAN」が開発された。WABIANはヒューマノイドロボットで初めてダンスを踊れたり、指揮棒の先についた加速度センサの情報を元にリズムを抽出し、同期して動かせることもできた。人間のジェスチャを認識して、ジェスチャ交換同様の動作をさせることも可能だった。ISDN回線経由での遠隔操作にも対応していた。さらに研究を進め、手に力センサを搭載し、人と手をつないだWABIANが人にあわせて後退したり、前進したりしながらダンスをする、といった人との物理的インタラクションを伴った協調的な動作もできるようになった。1996年はまさに二足歩行ロボットのターニングポイントの年であった。


QRIOにも継承された二足歩行技術のノウハウ

 1997年になって、これまでの歩行安定性の研究やWABIANの開発成果を目にしたソニー株式会社は、山口氏を同社のSDR Project(Sony Dream Robot Project)のアドバイザーとして招聘した。1999年に、山口氏は早稲田大学を退職し、多摩総合研究所を起業(2004年9月に同所はヤマグチロボット研究所へ屋号変更)。その後、ソニー株式会社と契約。知的財産権を共有し、SDR Projectの技術顧問としてプロジェクトの指導にあたることになったという(SDR Projectは2004年5月に終了)。

 山口氏は、ソニー株式会社は、新しい二足歩行型ヒューマノイドロボットを開発するにあたり、WABIANの問題点を整理し、課題を解決していった。まず問題点の1点目は、WABIANでは素早い腕の動きがともなうような歩行が難しかったことが挙げられた。ソニーでロボットを商用化するにあたり、エンタテインメント性が重視されており、腕の素早い動作は重要な要件のひとつであった。WABIANでは下肢軌道を決めて、上半身によって歩行を安定化する方法をとっていた。そこで、これを逆にして、上半身の運動パターンに基づいて安定歩行ができるようにした。下半身の歩容を決定する運動パターンを生成するものだ(特許第3443077号)。


【写真1】山口氏とソニー(株)の技術者が発明した特許の一例(特許第3435666号)。旋回性能の向上と質量分布の最適化。図は同特許の明細書より引用されたもの
 2番目の問題点は、旋回の角度が小さく、旋回に時間がかかることだった。WABIANでは人間のように素早く左右に向くことができなかった。従来の二足歩行ロボットでは体軸を一直線上に並べるほうが良いとされていたが、旋回時には股関節部がもう一方の足と干渉しやすく、旋回角を大きく取れなかった。そこでヨー・ピッチ・ロール軸にオフセットを設けて(ずらして)ハードウェア的な干渉を回避した。さらに上体機構にもオフセットを設け、全体の質量分布の最適化を行なった(特許第3435666号)【写真1】。

 3点目の問題点は、WABIANは二足歩行を中心に研究されてきたため、座位、床運動、転倒・起き上がりを想定していなかったこと。これらの解決法のひとつとして、たとえば起き上がりに関する技術では、体幹可動部を備え、ZMPを足底の着床領域に移動させながら起き上がらせることによって、課題をクリアしたという(特許第3555107号)。

 最後に紹介された問題点は、継続的な安定歩行を実現していたものの、WABIANでは0.9秒より短い歩行周期では歩けなかったこと。ハイテンポダンスなどに求められる高速な歩行動作は、かなり難しい課題だったという。これを解決するために、ZMP空間に機体が安定するような歪を与える技術を開発した(特許第3443116号)。少しわかりづらい技術だが、高速に歩行動作させると、機体に大きな衝撃力がかかる。通常の方法で機体をつくると、制御が不安定になりやすい方向で変形するが、これは機体の剛性分布を調整することによって安定化させる構成法だという。これらの問題をすべて解決し、2000年11月に発表されたのが「SDR-3X」であった。

 山口氏とソニー株式会社は、その後もSDRの運動性能を追求していった。たとえば、全身の軌道指定(バレエなど体操の振り付け)・跳躍・走行の実現、柔らかい路面への適応、転倒動作に関する各種の対応や、傾斜面での起き上がり動作なども可能にした。そして2002年には「SDR-4X」が発表された。従来のロボットの制御方法は、制御目標値に対して限りなく近づけるものであった。SDRは、次世代制御方式として目標値を厳密に計算せずに安定状態に落とし込む自律分散制御が適用され、安定した二足動歩行を実現するものであった。


 さらに、このロボットは量産化に向けたコストダウンと保守面での技術開発が進んだ。コストダウンのために、ガタがあるギアを利用しても、従来以上の歩行性能を達成できるようにした。また転倒動作に関しては、ロボットを毎日のように繰り返し転倒させ、問題が起こると対策を施して耐久性を高めていったそうだ。このSDR-4XIIが完成したのは2003年のこと。同年9月にSDR-4XIIは「好奇心の探究」を意味する「QRIO」(Quest for Curiosity)として世界デビューをついに果たした。

 山口氏は「SDR Projectは終了してしまったが、世界の主要都市でQRIOのデモンストレーションが行なわれてきたこともあって、多くの方からコンタクトをいただいている。近い将来、QRIOの問題点を解決した、より進化したヒューマノイドロボットをご覧いただけるものと考えている」と述べた。

 現在、山口氏はQRIOから生まれた基本技術を抽出し、さまざまな基本技術への分離を試みているという。たとえば、ガタがある関節による高精度力制御、非厳密モデルを用いても不確定な環境で適応するシステム、また低精度センサを用いて高精度な状態検出をする技術、変形する路面上での姿勢保持、動作保証温度範囲を拡大する技術などである。最後に山口氏は、「これらの技術を各種産業で適用し、生物を越えた機械の創造をコラボレーターとともに実現したい」と、将来的な展望を述べて講演を終えた。


コストダウン、安全性と信頼性が今後の課題

 3つの講演のあとに総合討議が行なわれた。コーディネーターは生研センターの行本 修氏(企画部長)が務めた【写真2】【写真3】。ロボットのコストや安全性などについて、聴衆の質問をベースに討議がなされた。


【写真2】生研センターの行本 修氏(企画部長)。総合討議のコーディネーターを務めた 【写真3】左から東京工業大学の広瀬氏、ヤマグチロボット研究所の山口仁一氏、生研センターの松尾氏

 農業生産の現場は、栽培作物の種類が極めて多様であり、水田、畑、果樹園など、ほ場の形態も異なる。また稼働時間が限られることから、導入コストも一定水準以下に抑える必要がある。では、コストダウンを実現するためにはどのようにすればよいのであろうか? 山口氏は、「大学では高価な部品を企業からのご協力によって利用することができたが、企業ではコストダウンを求められる。いろいろと悩んでいるうちにMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術が向上してきた。センサ精度は低かったが、これらの技術を応用し、計測方法を工夫することでコストを抑えた」と述べた。要素技術の進展によっては、コストダウンが図れる可能性もあることを示唆した。

 一方、広瀬氏は「ポイントは量産化できるかということ。それができない場合は、やはりいろいろな工夫が必要。駆動ドライバを研究室で自作したり、安いサーボモータを見つけてきたり、ワイヤを使った新しい伝達機構などを開発して、コストダウンを図った」とした。

 24時間稼動するようなロボットでは安全性や信頼性が求められる。安全性については、松尾氏が「ロボットの自己診断機能など、制御が利いているときの安全対策は十分にできている。ただし制御がまったく利かなくなった場合に、ストップさせる機能を何らかの方法で確保しておく必要がある」と述べた。

 農業用ロボットの信頼性では、「ギヤやレバーの入り切りをする部分ではフィードバック制御をしているが、長期間使っているとセンサの位置がズレてきたりする。そのため、レバーが入って動作したかどうか確認する機能をつけておかないと、動いたつもりでも動かないこともでてくる。バッテリの低下で、スイッチが動作しなくなったり、トルクが足りなくなるということもありうる」と語り、定期的なチッェクの必要性を説いた。


 地雷探査除去ロボットを開発している広瀬氏は「まず熱の問題がある。基板をできるだけユニット化してメンテナンス性を上げようとしたり、防塵・防水で完璧にカバーすると放熱しにくい。基本的にはフレームに接触させてヒートシンクをうまくつけるなどの工夫が必要。地雷探知除去ロボットに利用したバギー車でも、高温下で停止して稼動させるため、なかなか熱が逃げなくて、耐久性の悪いパーツに問題がでることもあった」とした。

 同様に山口氏も「信頼性面では、熱が変な場所にたまり、一部の回路の劣化を早めてしまうことがある。やはり放熱のさせ方が大事。またセンサ系の劣化もある。潤滑剤がどのように変化するかということにも注意したい」と語り、信頼性面では熱の対策が重要であると説いた。

 農業分野において、どんな作業からロボット化すべきかという話題も挙がった。聴衆の質問から、鳥獣害の対策や、農薬を使わない除草作業に関する要望が出た。松尾氏は「鳥獣害の対策については、いまは環境面から休耕田を作らないなど、鳥獣が棲みつかないようにするアプローチがほとんど。まだロボットでの対策はあまり実現されていないため、これから研究していきたい」と述べた。

 また、山口氏は「ロボットで鳥獣を追い払うことはできるかもしれないが、根本的な解決になるかどうかわからない」と語った。鳥獣については、ちょっと追い払うだけではすぐに慣れてしまい、また戻ってきてしまうことも多いという。棲家まで徹底的に追い払わないと、対策はなかなか難しいようだ。

 一方、水田の除草については九州農研のロボットのように、関係各所でいろいろな取り組みがなされている。広瀬研で開発されているヘビ型ロボットによって除草できないか? という質問では、「生物を使ったり、システムを変えたり、環境を変えたりと、別のコンセプトでアプローチしたほうが現実的かもしれない」(広瀬氏)と述べた。山口氏は「除草に関しては、太陽電池駆動の簡単なロボットをたくさん用意して、充電して夜間に土をひっくり返す作業をさせればよいのでは?」といったアイデアを開陳した。


 最後にコーディネータの行本氏が「農業分野でのロボット化は技術的にかなりの線まできている。今後のロボット化を考える際に、ロボットに何をさせるのか? という点を考える時期に来ている」とし、質問を投げかけた。

 広瀬氏は「地雷探査除去ロボットをつくってアフガニスタンに行ってみると、現地でディマイニングをする人の反応があまりよくなかった。彼らにしてみれば、自分たちの仕事がなくなってしまうからだ。とはいえ、危険な作業自体を安全にすることは、やはり重要なことだと考えている。人に役立つインテリジェントなツールをつくることが必要であり、道具こそロボット化すべきもの」とした。

 山口氏も「人が生きがいにしている仕事と競合してはいけないと思う。たとえば、農業ロボットでも収穫に生きがいを見出す人の場合には、まず何を自動化すればよいのか、他の苦しい作業などについてヒアリングするとよいかもしれない。ヒューマノイドロボットも人間と同じサイズにすると人と競合することがあるかもしれない。人間の動作を機械で実現することは重要だが、その背後にある原理まで抽出し、技術を磨くことで人に役立つようなロボットをつくっていくことが大切」と述べた。

 松尾氏は「ロボットはあくまで縁の下の力持ち。ロボットには長時間作業や繰り返し作業、飽きてしまうような作業をしてもらうほうがよい」と述べた。


URL
  生物系特定産業技術研究支援センター
  http://brain.naro.affrc.go.jp/
  東京工業大学 広瀬・福島研究室
  http://www-robot.mes.titech.ac.jp/home.html
  ヤマグチロボット研究所
  http://www.yrt.jp/
  農業・食品産業技術総合研究機構
  http://www.naro.affrc.go.jp/
  新農業機械実用化促進株式会社
  http://www.shinnouki.co.jp/

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「進展するロボット化技術と農業機械の開発改良」セミナーレポート(前編)(2007/03/15)


( 井上猛雄 )
2007/03/20 18:52

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