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記者会見の様子
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2月6日、学校法人早稲田電子学園 東京テクノロジーコミュニケーション専門学校(TECH.C.)は、次世代ロボット開発を担う「ロボットクリエイター」を養成するコース「未来ロボットワールド」を2007年4月に開講すると発表し、記者会見を行なった。
特にホビーロボットに焦点をあて、「売れるロボット」に関する技術、デザイン、ビジネスプランニングを学び、ロボット商品開発の即戦力となる人材育成を目指す。
設置される「未来ロボットワールド」は同専門学校の高度情報工学科のコースの1つ。「未来ロボットセンサ」、「未来ロボットデザイン」、「未来ロボットコントロール」、「未来ロボットマネジメント」の4つに専攻に別れている。
研究者ではなく、ロボット商品開発が行なえる人材輩出を目指し、ロボットクリエイターでロボ・ガレージ代表の高橋智隆氏が教育顧問としてカリキュラム監修、特別ゼミ講義を行なう。生徒には1人1台ずつホビーロボットが配布される。
また、京商株式会社、ヴイストン株式会社、次世代ロボット開発ネットワークRooBOが協力。インターン制度やロボット教材導入など、人的・技術交流を行なう。最終学年では実際にロボット商品を企画・開発し、企業との連携による商品化も視野に入れた実践的な授業を行なうとしている。
初年次の学費は入学金10万円や諸費用込みで1,405,000円。2年次以降は1,305,000円。このほか教本費、海外実学研修積立金、教材費用などが必要となる。ロボットクリエイター養成コースの募集人数は50名程度。専門学校は退学者も少なくないが、同コースでは10%以下に抑えたいとしている。
なお東京テクノロジーコミュニケーション専門学校は、2007年4月に校名変更予定であり、現校名は早稲田電子専門学校である。早稲田電子専門学校を運営する学校法人早稲田電子学園は2005年に東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、経営基盤安定化のため各種専門学校を展開する滋慶学園グループに加入することにより、4月に校名変更することになった。
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東京テクノロジーコミュニケーション専門学校。高田馬場にある
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ロビーの様子
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ロボットトイが並べられている
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● 第一期生が卒業する「4年後」、ロボットは本格ホビーに?
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東京テクノロジーコミュニケーション専門学校校長 結城徹氏
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会見では東京テクノロジーコミュニケーション専門学校校長の結城 徹氏ほか、教育顧問に就任したロボ・ガレージ高橋智隆氏、ヴイストン株式会社代表取締役社長の大和信夫氏、京商株式会社ロボットグループマネージャーの岡本正行氏が出席。ロボットのデモンストレーションを交えながら、ロボットクリエイター養成コースへの協力趣旨や期待を述べた。
結城 徹校長は、ロボットのほか同校のITビジネス、放送・通信・ブロードバンド、クリエイティブコンテンツなどの各コースを紹介。「クリエイティブと未来志向の高度テクノロジーをさまざまな分野で融合させることができるクリエイターを養成したい。業界が必要とする人材を業界と共に育てる産学協同教育を行なうことで次世代ロボットのスペシャリスト養成を進めていく」と語った。
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ロボ・ガレージ高橋智隆氏
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教育顧問に就任した高橋智隆氏は、「ロボットを作るうえで『こんな人がいたらいいな、こんな人がいたらもっと優れたロボットができたのに』という歯がゆい思いがあった」と話を始めた。
これまでのロボットは研究者が生み出し研究室のなかで動いていた。しかし、これからは一家に一台、ロボットが家庭のなかで活躍する時代を迎えようとしている。そのためにはちょっと違った視点が必要だし、商品、製品として売れるロボットを生み出せる人材が必要だと常々感じていたという。
では、具体的にどういう特徴をもったカリキュラムを作っていくつもりなのか。高橋氏は「売れるロボットのためには技術はもちろん、デザイン、ビジネスセンスが必要。ロボットは幅広い分野の知識を要求されるが、横断的に技術、デザイン、ビジネスを理解している人があまりいない。そういう人材を生み出していこうと考えている」と述べた。
ただし、幅広い分野を押さえるいっぽう、逆に狭めなければならない部分もある。そこでホビーロボットに焦点を絞った、という。ホビーロボットの価格帯は数万円~数十万円程度。おもちゃよりは高度だが、実用ロボットへは成長途上にある。しかし既に市場が存在することは確かだ。
「まずはこういったロボットが趣味として生活に入ってきて、徐々にタスクがこなせるようになる。大型のロボットが、だんだん手ごろになるという道筋もあるだろうけど、安いものがだんだん成長していく道筋も考えられる」とロボット発展の展望を述べ、それに合わせて技術者を育成していきたいと語った。
ロボットを1人1台配布する理由については「この業界で求められているのは独創性、クリエイティビティ。各1台を配って、独創性を思う存分働かせてもらいたい。最初はキット、カスタマイズ、プログラムを自分で作り、最終学年では自分で企画してホビーロボットを自分で生み出せるような人材になってもらいたい。優秀なロボットに対してはそのままビジネスの道が拓けるようなモデルを考えている」と述べた。
高橋氏は「私はロボットクリエイターと勝手に名乗り始めたのだが、このような教育システムができあがっていくことを非常にうれしく思う。優秀な人が出てきてさまざまなところで活躍してもらいたい。今すぐにでも能力がある人材には協力してもらいたいと思っている。優秀な生徒とは2年次、3年次からタイアップしていきたい。これまで得た経験、スキル、人脈を全て生徒にぶつけて消化していただき、一緒にロボット業界を盛り上げていただければいいなと思っている」とまとめた。
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【動画】女性型ロボットFTのデモ
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【動画】女性型ロボットFTのデモ。歩行の様子
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【動画】女性型ロボットFTのデモ。歩行の後ろ姿
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ヴイストン 大和信夫氏
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教材ロボットやインターンで協力するヴイストンの大和信夫氏は、2003年から始まった同社のロボット開発の歴史について触れ、研究用プラットフォームとしてのロボット開発を行なっていた時代から、ロボットが持つ教材としての可能性には注目していたと述べた。
大和氏は三軸の安価な二足歩行ロボット教材「Robovie-i」や、同社が協力し日本遠隔制御株式会社から発売されている13軸の二足歩行ロボット「RB2000」のデモを交えながら、それぞれの教材の趣旨を解説した。
「Robovie-i」は二足歩行ロボットに必要な基本動作を最低限学べると同時に低価格化を目指して作ったもので、1つ1つの成果を早い段階で見えるようにしていこうというのが趣旨。学校で教材として用いられるためには、学生のモチベーションを維持するために、あまり時間がかかりすぎないことも重要だという。その一方、ロボットをコントロールするプロセッサは拡張に対応できるものとなっている。
「RB2000」は13軸ながら大車輪やサッカーなど、運動性能を追求した二足歩行ロボットで、かなり本格的に遊べるキットだ。最大30軸までの自由度の追加やセンサー類の取り付けもできるので自律化への拡張も可能で、「ロボットの無限の可能性を体感できるつくりになっている」という。
大和氏は「生きた教材としてロボットは意義があるものだ」と語り、授業の中で1人1台、こういうもので学んだ学生が世に出てくることは楽しみだと述べた。
また、ヴイストンの社員は十数名だが、現在でも5名のインターンがいるという。企業のなかでの仕事と学業を両立させる、企業が入って一緒になって育てていくという試みにも期待していると述べ、「できることは最大限させていただきたい。学生の今後についても見守っていただきたい」と語った。
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【動画】「Robovie-i」のデモ
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【動画】「RB2000」によるエアドラムのデモ
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【動画】「RB2000」による大車輪のデモ
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【動画】「RB2000」によるサッカーのデモ。効果音が面白い
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【動画】「RB2000」によるサッカーのデモ。特徴的な横移動
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京商株式会社ロボットグループマネージャー 岡本正行氏
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京商開発部ロボットマネージャーの岡本正行氏は、「京商はホビーに特化したものづくりを45年進めてきた」とラジコンとダイキャスト、OEMに加え、昨年からはホビーロボットジャンルにも進出し、4本目のビジネスの柱にしようとしているところだとホビーロボット業界への同社の取り組みを紹介。
ホビーロボットには大きく分けて2つあると考えているという。1つはRB2000のような運動性能に特化したロボット。京商の商品だと、マノイAT01がそれにあたる。もうひとつはインテリジェントやデザインにウエイトをおいたもので、京商ではマノイPF01がそれにあたるとし、昨日、金型のテストモデルが出てきたばかりだというマノイPF01をデモした。
マノイPF01は高橋智隆氏がデザインしたロボットで、フルカウルのボディにリチウムポリマーを採用したことが特徴のロボット。今週金曜日には正式に価格、販売台数などが発表される予定だ。今後、オプションパーツなどの発表も予定されているという。
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金型のテストモデルが出来たばかりというマノイPF01。まだ塗装などは施されていない
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【動画】マノイPF01のデモ。正式発表は2月9日の予定
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ホビーロボット市場については、ここ数年で数十パーセント単位で増加していると述べた。5年前は全体でせいぜい数百台だったが、いまは数千台単位で売れている。AT01だけでも昨年の発売から既に500台販売しており、京商だけでも間違いなく千台以上売れる計算になるとし、「ロボットは漫画やアニメの世界だけではなく、趣味として確実なステップを歩み始めているジャンルとして見て間違いない」と述べた。
いっぽう、これまでのロボットは研究者が作っているケースが多かったため、一点特化になりやすく、商品としては問題があった。販促も必要だ。そのためには全体を眺められるトータルプランナーが必要になってくる。企業内の人材となればロボットのことだけ知っていればいいというわけではなく、通常の会社員が知っている必要のあることも一通り知っておかなければならない。そういう面の教育でも専門学校には注目しているという。
最後に岡本氏は「ホビーロボットの世界的中心は間違いなく日本にある。ロボカップでも大和社長らは3連覇している。それ以外のロボコンでも日本は好成績をおさめている。個人的意見だが、数年後にはロボットは、ホビーとして、ラジコン、鉄道模型、フィギュアなどと並ぶ1ジャンルになるだろう。日本が世界一となると、日本製品がどんんどん海外に輸出されていく時代が来る。個人が参加する環境としてROBO-ONEそのほかの大会も整ってくる」と業界展望を述べた。
その上で「第一期卒業生は4年後ということになる。いま述べたことは、そのときには現実になっているだろう。4年後にはそういう時代になっているはずだ。そういうことを踏まえて京商は喜んで協力していこうと考えている」と語った。
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関係者4人
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テキストとして用いられる予定の『はじめてのロボット工学』(オーム社)
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デモされたロボットたち
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■URL
東京テクノロジーコミュニケーション専門学校
http://www.tech.ac.jp/
ロボ・ガレージ(高橋智隆氏)
http://www.robo-garage.com/
ヴイストン株式会社
http://www.vstone.co.jp/
京商株式会社
http://www.kyosho.com/
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( 森山和道 )
2007/02/06 16:32
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