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「次世代ロボット・インターフェースフォーラム」レポート


自由にカスタマイズできるコミュニケーションロボット「EZ Order Robot」とは?

 1月19日、秋葉原UDXビルのアキバ3Dシアターにおいて「次世代ロボット・インターフェースフォーラム」が開催された。本イベントは、中小企業基盤整備機構「川上川下ネットワーク構築」受託事業の一環として、新産業文化創出研究所が主催したもの。このフォーラムは東京会場のほか、大阪会場のロボットラボラトリーをテレビ会議システムによって2元中継で結んで実施された【写真1】。

 まず本講演に先立ち、大阪サテライト会場から、東洋理機工業の細見成人氏(代表取締役)が、ネットワークコンテンツロボットの開発現場から見えてきた課題について説明した。同社は、大阪を中心に254社(2007年1月現在)で構成される次世代ロボット開発ネットワーク「RooBO」の会員で、菱田伸鉄工業、パーソナル・テクノロジーなどと共同でCustomize Teamを組み、ネットワーク型ロボット「EZ Order Robot」の開発に取り組んでいる【写真2】。


【写真1】秋葉原UDXビルと大阪のロボットラボラトリーを結んだ2元中継によって、「次世代ロボット・インターフェースフォーラム」が催された。写真は東京会場で司会進行を務める大津良司氏(新産業文化創出研究所) 【写真2】次世代ロボット開発ネットワーク「RooBO」のCustomize Teamによって開発されたネットワーク型ロボット「EZ Order Robot」。主要機能がモジュール化され、各種周辺部や、外装を要望に合せてカスタマイズできる

 EZ Order Robotは、主要機能がモジュール化されており、周辺部の各種センサ、カメラ、リモコン、IDカードリーダなどや、外装部をユーザーの要望に合せて自由にカスタマイズして提供することが可能だ。細見氏は、「人との共生を目指したコミュニケーションロボットの実証実験を行なってきた。しかし市販ロボットだけでは外観イメージが固定され、内部システムの変更にも限界がある。そのため、自由にカスタマイズできるコミュニケーションロボットのプラットフォームが欲しかった」と、開発の経緯について説明する。

 このロボットは、OSにLinuxを採用したCPUボードを搭載している。頭部は3軸、両腕は最大2軸×2の合計7軸構成で、軸数の増減にも対応。駆動モータにはラジコン用サーボではなく、信頼性の高い産業用ギアドDCモータを利用し、PWMによってコントロールしている点も大きな特徴だ【写真3】。

 基本機能としては、不特定話者に対応する音声認識、漢字かな混じりのテキストスピーチ、録音した定型文書の再生などのほか、外部PCとの連携によるネットワークサービスもサポートする。すでに医療機関での夜間出入り口の見守りや、企業展示施設への設置などにおいて実績があるという。

 今回のフォーラムでは東京会場から、EZ Order Robotのシステム開発に携わったメンバーの坂本俊雄氏(パーソナル・テクノロジー)がデモンストレーションを行なった【写真4】。簡単な対話から、インターネットのニュースや天気予報の読み上げ、東京・大阪間でのメール交換までが実施された【動画1】【動画2】。

 一般的にコミュニケーションロボットは家事サービス用途としてニーズが高いが、現実にはまだ超えなければならない技術的な課題も多い。したがって、当面はB2Cではなく、B2Bに軸足を置いたスタンスをとり、ロボットを提供していく方針だ。「今後は、企業と一緒にコラボレーションをして、ロボットに何ができるかということを具体的に検討していくことがビジネス上の1番のポイントになる」(細見氏)という。


【写真3】EZ Order Robotの頭部は3軸構成。スケルトンで内部が見える。駆動モータには信頼性のある産業用のギアドDCモータを利用し、PWM制御によってコントロール 【写真4】EZ Order Robotのデモンストレーション。音声の認識・合成技術による簡単な対話から、テキストスピーチ(インターネットのニュースや天気予報の情報取得と読み上げ)、東京・大阪間でのメール交換までを実施

【動画1】EZ Order Robotのデモンストレーションその1。インターネットから情報を取得し、ニュースや天気予報を読み上げる模様 【動画2】EZ Order Robotのデモンストレーションその2。大阪会場から送られてきたメールを読み上げ、さらにあらかじめ用意された定型文書を返信

労働力人口減少の問題をロボットがサポートできるか?

【写真5】独立行政法人産業技術総合研究所の比留川博久氏(知能システム研究部門副研究部門長)
 コミュニケーションロボットのデモに続いて、独立行政法人 産業技術総合研究所(産総研)の比留川博久氏(知能システム研究部門 副研究部門長)が東京会場のステージに登壇し【写真5】、「ロボット産業の現状と次世代ロボット産業化への展望」をテーマに基調講演を行なった。

 比留川氏は、まずロボット産業の現状について解説した。国内のロボット産業は'78年から'91年までは産業ロボットをベースに右肩上がりで拡大していた。'92年以降は景気によって設備投資が左右され、乱高下を繰り返して一定に留まっている状況だ。2004年のマーケット規模は約6,000億円といわれている。

 ロボット産業の構造的な変化に注目すると、円高基調によって工場が海外へ進出したこともあり、現在では輸出の割合が50%を超え、ロボットの単価もここ15年間で40%ほど下がっている。その間にロボットの精度・パフォーマンスも向上した。このような観点から考えると、マーケット規模が一定に保たれているので、出荷台数自体は伸びていると考えられる。

 一方、国内で稼働する産業用ロボットに目を転じてみると、'90年では世界の約6割のロボットが日本で占められていた。ところが現在(2004年)は4割程度になっており、今年にはEU圏での稼働数に抜かれるという予測もあるそうだ【写真6】。

 わが国の社会状況を考えると、2025年には65歳未満の労働力人口は470万人ほど減少する。さらに65歳以上の高齢者の増加を考慮すると4分の1ほど労働力が減少することになる。もしロボットによって労働力人口の減少分を補うとすれば、500万円(一人当たりの年収)×470万人×0.25=5.8兆円分となる。経済産業省などでは、ロボット産業が2025年には約6兆円規模に達するという将来像を描いているが、逆にこの予測どおりにならなければ、現在の社会構造を維持するのは困難になってしまう【写真7】。このようにロボットの普及は、日本の将来に大きな影響を与えるポイントと言えそうだ。


【写真6】この15年間で日本の産業用ロボットが占める割合は6割から4割に低下。EU圏での増加、特にドイツでの導入率が高まり、今年には稼働数がEU圏に抜かれるという予測もある 【写真7】将来的なロボット産業の市場規模の予想推移。グラフでは2025年には約8兆円と予測されているが、下方修正され、約6兆円となっている

ロボットの応用と形態における分類と、現状把握、実用化へ向けたキーポイント

 さて、ひとことでロボットと言っても応用される産業分野は形態によってさまざまである。そこで比留川氏は、ロボットの応用と形態の関係をマトリクスで整理した【写真8】。応用できる分野としては、第2次・3次産業、福祉・家庭、万能に分けられ、形態もマニュピレータ、車輪型移動、車輪+マニュピレータ、人間型にカテゴライズできる。

 まず現状で最もロボットが多く導入されている第2次産業への適用から見ていくと、これらはマニュピレータ、車輪型移動ロボットが中心になっている。溶接・塗装・電子部品の実装などの少品種大量生産に用いられるほか、画像技術を利用した検査、無人搬送にも応用されている。

 前述のようにマーケットの伸びは停留している状態だが、その大きな要因は3次元視覚や高度なマニュピレーションなどの技術が未成熟なことが原因に挙げられるという。今後の展望としては、国内生産の競争力を向上させることが重要であり、人間よりも正確に作業できることがキーポイントになる。この分野では、将来的に多品種変量生産や人間共存セル生産、ガイドラインがない工場内自律搬送などの展開に期待がかかる。【写真9】【写真10】。


【写真8】ロボットの応用と形態の関係。応用分野としては、第2次・3次産業、福祉・家庭、万能に分けられ、形態もマニュピレータ、車輪型移動、車輪+マニュピレータ、人間型にカテゴライズできる 【写真9】第2次産業へ応用されるロボットの例。ファナックの全方位認識ビジョンを用いたピッキングシステムと安川電機の双腕協調ロボット。後者はすでに実用化されラインに入っているという 【写真10】第2次産業分野への実用化のキーポイントは人よりも正確に作業できること。産総研では、産業用ロボットで遅れている3次元視覚技術について研究が進められている

 今後最も高い期待がかかっているのが第3次産業用ロボット分野である。前述のように労働人口の低下や高齢化などから、社会的なニーズも高い。ロボットの形態としては車輪型移動や、それにマニュピレータなどのハンド部を搭載したタイプが中心となるが、特に清掃・搬送・警備などの仕事をするロボットに萌芽が見られるという。

 キーとなる自律移動ナビゲーション技術も実用段階に入っている。移動ロボットの主な開発例としては、富士重工の掃除システムのほか【写真11】、松下電工の検体搬送ロボット、ALSOKの警備ロボットなどがある。比留川氏は実用化のポイントについて、「サービスの内容を徹底的に分析し、根気強く開発していくことが重要。富士重工では開発に十数年を費やしている」と述べ、開発への経営者側の理解を求めた。また、「最終的に人間よりもコストが安く上がることが必要条件である」とも指摘。

 一方、第一次産業や公共分野での応用例もいくつか見られる。たとえば今年のロボット大賞で優秀賞を授賞した東和電機製作所の「自動イカ釣りシステム」やフジタの「ロボQ」などがそれである【写真12】【写真13】。前者についてはロボットかどうかという議論もあったが、加速度センサによって船の揺れを検出しながら釣り糸の巻上げ速度を微調整したり、イカの習性を利用した「しゃくり動作」など高度な制御が行なわれている。現在、産業用以外のロボットとして1番売れているらしく、十数億の売り上げがあるそうだ。フジタような災害復興支援を目的とする分野も期待できる。ただし、レスキューロボットは高価であるため、市町村が購入に踏み切るためには、コスト面での課題が残るという。

 このような産業用のロボットに加え、最近では福祉や家庭用のロボットにも注目が集まっている。前者の福祉分野での活用では、マニュピレータ、車輪型移動、車輪+マニュピレータ型が中心となる。具体的には、体の不自由な人たちを支援する補助ツール、自律車椅子、コミュニケーション支援ロボットなどが挙げられる【写真14】【写真15】【写真16】。

 特にセコムの「マイスプーン」は、安全に厳しいヨーロッパでの販売実績がある。比留川氏はマイスプーンについて、「介護保険の補助金対象になり、この分野でロボットが突破口を開けた事例として大変意味があるもの」と評価した。今後の高齢化社会に向けて、福祉分野も社会的な要請が高くなると予想されるが、「さらなる実用化へ向け、安全性、コスト、補助認定などを進めていくことが重要だ」と述べた。


【写真11】第3次産業用ロボットの例。今年のロボット大賞2006に選ばれた富士重工・住友商事の掃除システム。掃除という応用ではなく、広いフィールドに対しての応用だという。またビル管理会社とコラボレーションをして、絨毯の上についた靴のゴミを清掃する「ダストコントロール」に適用 【写真12】第1次産業、公共応用の事例。東和電機製作所の「自動イカ釣りシステム」やフジタの「ろぼQ」。後者のろぼQは、運転席に乗せて遠隔操作で災害復興作業を行なうもの 【写真13】愛・地球博で出展された早稲田大学の木林作業支援ロボット「WOODY-1」。樹木の幹を抱えてつかみ、尺取虫のように移動しながら枝打ちや幹の切断などが行なえる

【写真14】福祉ロボットの事例。インテリジェント車椅子「TAO Aicle」。PDA(パネル)で目的地を指定すると、自動的に走行する。自分がどこを走っているかを認識する絶対位置認識システムを採用。GPS、方位センサ、エンコーダや、ICタグを利用している 【写真15】筑波大学の「HAL」。二足歩行や立ち座り動作など、下肢の動作をパワーアシストする。筋肉の生体電位を利用した制御方法などが用いられている。開発者の山海教授の研究成果を活用し、大学発ベンチャーのCYBERDYNE社が設立されている 【写真16】セコムの「マイスプーン」。手の不自由な方が体の一部を動かすだけで、自分で食事ができる。身体の状態に合わせて、ジョイスティック、設定ボタンとの併用、自動モードなどを選択できる。スプーンは、利用開始時に設定した口元位置で停止するので安全だ

 また後者の家庭用ロボット分野では、エンターテインメント、掃除、セラピーなど、その応用範囲も広い。産業用ロボットと比べてどちらかというと技術的にシビアでなくてもよいが、マーケットにおいて100億円の売り上げを超えた例は、ソニーの「AIBO」とiRobotの「Roomba」ぐらいしかないのが実状だ。マーケットで大きく当てるのは難しい分野でもある【写真17】。とはいえ、この分野はエンターテインメント・セラピーという新しい領域や、留守番・見守り・セキュリティなどの分野も切り開いている【写真18】【写真19】。価格によっては、広がりを見せる可能性も十分にある。

 万能型のヒューマノイドロボット分野は、2足歩行のホビー用途などを中心に2003年から2年間で累計30億円の市場を形成している【写真20】。しかし実用化という観点からすると、ヒューマノイドロボットは究極のロボットであるため、まだまだ技術的に収斂されるまでに時間がかかりそうだ。


【写真17】家庭用ロボットで100億円規模で売れた事例は、ソニーの「AIBO」とiRobotの「Roomba」だけ。とはいえ、この分野は応用範囲も広く、価格によっては、広がりを見せる可能性もある 【写真18】エンターテインメント・セラピーロボット。ホビーでは2足歩行ロボットの人気が高い。また知能システムの「PARO」は、ロボットがセラピーとして利用できることを実証し、海外でも高い評価を受けている

【写真19】見守り・セキュリティロボット。監視ではなく、「見守る」という点がポイント。写真右の象印マホービン「i-pot」では、安否確認システムが搭載されている 【写真20】ヒューマノイドロボットは究極のロボットであり、まだまだ実現には時間がかかりそうだが、ホビー分野では人気が高い。2003年から2年間で累計30億円の市場を形成している

投資額と市場規模のミスマッチ、新製品開発者の不足を解決する方法を探る

 最後に比留川氏は、このような次世代ロボット市場のまとめとして、【写真21】のようなマップを利用して市場規模を予測した。現状のアンケート調査によれば、第2次・3次産業用ロボットは単価が500万円以下、福祉ロボットなどは50万円以下(ただし補助認定があればコストは1割程度に下がる)、家庭用ロボットは5万円以下が購入の目安になるという。

 次に、現時点においてロボット市場があまり拡大していない原因について言及し、投資額と市場規模のミスマッチ、新製品開発の担い手が不足している点を挙げた。これらを解決するために、まさに本フォーラムのような、ロボット事業における川上と川下のネットワークを構築する動きや、ロボット・関連産業のマッチングフェアなどが行なわれている。

 投資額と市場規模のミスマッチについては、短期的には技術を大きく向上させることは困難だ。したがって、開発投資額を抑えるか、製品単価自体を下げていくしかない。次世代のロボット市場を立ち上げるためには、ベンチャーによる起業だけでなく、大企業も関連メーカーをつくり、小規模事業を許認することが大切だという。これにってコンポーネントとなる部品コストが安くなり、関連産業の育成にもつながるからだ。

 比留川氏の所属する産総研では、産学官連携プロジェクトとして「ユーザー指向ロボットオープンアーキテクチャ」(UCROA:User Centered Robot Open Architecture)を推進している。これは、ロボット技術を標準化し、再利用可能な要素機能のモジュール化やコモディティ化を実現するもの。オープンアーキテクチャのフレームワークを確立することにより、多様なユーザーニーズに対して要素機能を組み合わせ、ローコストでロボットを開発できるようになる【写真22】。産総研は、複数の産総研技術移転ベンチャーの立ち上げや、他社の参入をバックアップして、次世代ロボットの産業化を進めていきたい意向だ。


【写真21】2015年までのロボットのマーケット規模の近未来予想マップ。家庭向けのロボット家電の伸びが期待されるが、産業用ロボットはほぼ横ばい状態。これをどう打開していくか 【写真22】産総研が提唱する「ユーザー指向ロボットオープンアーキテクチャ」(UCROA:User Centered Robot Open Architecture)。多様なユーザーニーズに対して要素機能を組み合わせ、ローコストでロボットを開発できる

情報環境4階層モデルによって、環境情報を利用したロボットサービスを推進

【写真23】国際電気通信基礎技術研究所(ATR)の荻田紀博氏。大阪サテライト会場からの中継
 後半の講演では、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)の萩田紀博氏が登場した【写真23】。大阪サテライト会場からアキバ3Dシアターのスクリーンを通じて、「ロボットサービスを拡げる環境情報構造化技術とは?」をテーマに、人の位置計測をベースにした環境情報技術や、ロボット間協調・連携技術、実証実験について解説した。

 まず萩田氏は、「コンピュータがスタンドアローンの時代は、CPUの高速化やメモリの大容量化を進めていたが、その後コンピュータがネットワークで結ばれるようになってインターネットが発展した。コンピュータ単体では思いもよらない新しいサービスが生まれるのもネットワーキングのメリットだ。それをどのようにロボットのテクノロジーとしてに取り入れていくのか、つまりロボット同士をプラグ&プレイできるかということがポイントになる」とし、ネットワークによる新しいロボットサービスの出現に期待を寄せた。

 ATRでは、NICT(情報通信研究機構)と共同で、施設内での人の位置計測に基づく環境情報構造化法を研究している。複数のセンサを利用して、室内外の人の位置を計測する。そして、部屋の温度などのさまざなま環境情報と、人の動きの統計を継続的に収集して、いつ人が集合・離散するかなどの情報を解析している。この際に、決められたプロトコルであれば、解析結果をどのようなロボットでも取得できるような仕組みを提供していく方針だ。

 また現在、各省庁において、ネットワークロボットやユビキタスネットワーク、自律移動支援PJなどのロボットプロジェクトが動いているが、これらを相互に乗り入れできるような異種ネットワーク環境との結合も推進している。早ければ今年後半ぐらいから、このようなクロス環境で利用できる共通プラットフォームをNICT内において構築するという。具体的には、サービス定義をXMLで行なうことで、位置、プリミティブ、サービスの記述が、異種ネットワークの連携を通して可能になる【写真24】。

 さて、それでは実際に環境情報を取得して、それらの情報をロボットサービスに生かすためにはどのようにすればよいのだろうか? 人の位置をセンサで計測し、各ロボットがXYZ座標データを取得するだけでは、なかなかサービスのイメージがつかめないだろう。萩田氏は「座標データだけではなく、人の位置から、空間、行動までの意味づけを行なうことが重要になる」と説く。たとえば、繁華街などで人の動きを調べて、得られたデータから「人の往来する場所」、「立ち止まる場所」というような意味情報に置き換えれば、サービスとしての展開が可能になるからだ。

 萩田氏は、この仕組みをネットワークのOSI参照モデルと同じように、「情報環境4階層モデル」という考え方によって実現させていくという【写真25】。この4階層モデルは、センサデータ層、セグメント層、プリミティブ層、サービスアプリケーション層というレイヤに分けられている。


【写真24】異種ネットワーク環境との結合を可能にする共通プラットフォームの構築によって、さまざまなロボットプロジェクトの相互乗り入れが可能になる 【写真25】情報環境4階層モデル。センサデータ層、セグメント層、プリミティブ層、サービスアプリケーション層というレイヤに分けられる。ポイントは環境情報の構造化するプリミティブ層だ

 まず、センサデータ層として、RFID(無線タグ)、カメラ、GPS、レンジファインダなどを使って人やロボットの位置、その前にある干渉物などを計測する。それらのデータをセグメント層において統合し、標準形式(センサによる誤差も吸収)のデータに変換する。そして、プリミティブ層で環境情報の構造化を行なう。

 ここで前述の「空間」や「行動」に対して、「立ち止まる領域」、「うろつく」などの意味づけを行なうわけだ。センサデータに対して、どのように解釈するかというアルゴリズムを作らなくても済むように、プリミティブなテキストコードとして提供できるようにする。

 このような情報が得られれば、上位のサービス・アプリケーション層において、誘導に関する新しいサービスなど、さまざまなアプリケーションを容易に展開できるようになる。

 現在、これらの実証実験として、けいはんな(NICT)や大阪市立科学館など、関西6地域においてトライアルが行なわれている。たとえば、大阪市立科学館では、人の位置をRFIDタグで計測し、館内の施設を訪問した人々(のべ5,102人分)のデータを収集。滞在時間による空間の意味づけを調査している。


ロボット間協調・連携に関する実証実験も

【写真26】ネットワークロボットの形態は、ビジブル型のほか、バーチャル型、アンコンシャス型に大別できる
 次に萩田氏は、ロボット間協調・連携に関する技術について説明した。

 ネットワークロボットは、通常のロボットとして実態のあるビジブル型のほか、PCや携帯電話のキャラクタエージェントなどのバーチャル型、据え置きカメラやウェアラブルなどのアンコンシャス型に大別できる【写真26】。これらが相互に連携し、多地点・エリア間の情報共有や、それに基づいた遠隔サービスなどを実現できるようになる。

 実はこの1月18日から19日にかけて、秋葉原ダイビルのユビキタス実証実験スペースにおいて、ネットワークロボット技術の実験が公開されている。詳細については、該当記事が詳しいので、ここでは割愛するが、高度対話技術を用いた案内ロボットサービスや、履歴情報を利用したレコメンデーションシステム「Synapse」とビジブル型ロボットとの連携による家庭内生活支援ロボットサービス、写真撮影という行為をイベントとする「u-Photo」とネットワークロボットのサービス連携が実験として行なわれている。

 この実験では、ネットワークロボットの「プラグ&プレイ技術」と「高度対話」といった2つのコア技術を用いたロボットサービスの在り方が示されている【写真27】。前者のプラグ&プレイ技術は、前述のような3つのタイプのネットワークロボットを、接続ユニットとなるソフトウェアで連携できるようにする仕組み。一方、後者の高度対話では、監視カメラや無線タグの情報を取得し、その情報をベースに人に応じたサービスを提供するというものだ。

 最後に萩田氏は、「高齢化を迎えるなかで、自分たちの内脳だけでは生きられない環境になってくる。Googleなどの検索情報を利用するように、サイバー空間の情報をどのように扱っていくか、これら外脳をサポートしてくれるロボットたちが重要な位置を占めるようになるだろう。外脳と内脳をうまく組み合わせるロボットサービスの可能性があるはず。そのときに、我々が研究している実環境情報を取得できるようになれば、初めて行くような場所でもさまざまな情報を活用できる時代が到来する」とし【写真28】、ロボットサービスの近未来像の実現に向けた意気込みを示した。


【写真27】秋葉原ダイビルで実施されたネットワークロボット技術実験。ネットワークロボットの「プラグ&プレイ技術」と「高度対話」といった2つのコア技術を用いたロボットサービスの在り方が示されている 【写真28】今後は、外脳をサポートしてくれるロボットたちが重要な位置を占めるようになるという。実環境情報の取得が、さまざまな意味づけをもたらし、暮らしを発展させる

URL
  新産業文化創出研究所 川上川下ネットワーク構築 ロボットナレッジ
  http://www.icic.jp/
  大阪産業創造館
  http://www.sansokan.jp/
  産業技術総合研究所
  http://www.aist.go.jp/
  RooBO
  http://www.roobo.com/


( 井上猛雄 )
2007/01/25 00:04

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