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「青少年のためのロボフェスタ2006」レポート

~パワーアシストスーツ、6脚歩行ロボットなど多数が展示

 12月16日、神奈川県立青少年センターにおいて、「青少年のためのロボフェスタ2006」が開催された。最近、子供たちの理科離れが叫ばれる中で、青少年センターでは科学技術を支える人材を育成すべく、さまざまな科学イベントを企画してきた。このロボフェスタも同様の主旨のもと、神奈川県の科学アカデミーや大学・高専、企業・団体の協力によって催されたもの【写真1】【写真2】。


【写真1】神奈川県立青少年センターで開催された「青少年のためのロボフェスタ2006」。今年で2回目を迎える、新しいロボットのイベントだ 【写真2】受付入り口には、横須賀工業高校の本格的なソーラーカーが展示されていた

 今年で第2回目を迎える本イベントは、プチロボ工作競技会から、レゴ教育用キット教室、ロボカップジュニア競技のデモンストレーション、高専・大学による各種ロボットの実演・展示まで、盛り沢山の内容が用意され、多数の見学者が訪れた。

 ロボットの実演・展示・体験コーナーは、同センター内の2階と3階のエリアに設置されていた。展示室を大学と高専に分け、さまざまな実演・展示が行なわれた。

 大学の展示で、まず目を引いたものは、神奈川工科大学の介護用パワーアシストスーツだ【写真3】。これは、腕・背骨・腰・脚の各ユニットで構成される外骨格型のスーツ。関節部に装備されたエアアクチュエータによってアシスト力が働き、重量部材や人を簡単に持ち上げて移動させることができる。必要なアシスト力は、組込みマイコンで計算され、エアアクチュエータから空気をエアバッグに送り込むことで、出力として変換させるしくみだ。

 駆動機構は、アルミ板を蝶番でつないで折りたたみ、アルミ板の間にゴム製のエアバックをはさみ込んでいるため、人体の動きを損なわない微妙な動作が可能だ。マイコン回路、エアアクチュエータなどの回路類は背中のボックスに収納されており、駆動電源(ニッケル水素電池)は両足ユニットに取り付けられている。このスーツを体に装着すると、自分自身のパワーがアップし、あたかもサイボーグにでもなったような気分に浸れるのではないだろうか【写真4】【写真5】【動画1】。

 このほか、力をほとんど加えずにウエイトを持ち上げられる実験も行なわれていた。これは、腕に巻きつけた筋肉の硬さセンサが反応するとエアポンプが稼働し、アシスト力を発生させるというもの。実際に試してみると、10kgの重りを楽々と持ち上げることができた【写真6】。


【写真3】神奈川工科大学の介護用パワーアシストスーツ。腕・背骨・腰・脚の各ユニットで構成される外骨格型。超かっこいい 【写真4】空気圧で動作する。空気を圧縮させるためのエアアクチュエータは脚部に取り付けられたバッテリ(ニッケル水素電池)で動作する 【写真5】肘部の駆動機構。アルミ板を蝶番でつないで折りたたみ、アルミ板の間にゴム製エアバックをはさみ込んでいる。ここにエアが送られ、エアによる膨張を出力として変換させるしくみ

【動画1】スーツを体に装着すると、あたかもサイボーグにでもなったような気分になれる!? 【写真6】ウエイトのアシスト装置。筋肉の硬さセンサが反応するとエアポンプが稼働し、アシスト力を発生させる。10kgの重りを楽々と持ち上げることができた

 神奈川県立産業技術短期大学校が展示していた6脚歩行ロボットもユニークだった【写真7】。このロボットはシンメトリックな構造になっており、6足のうち必ず3足が地面に着いた状態で歩行できるため、安定性に優れている。歩行動作のバリエーションも多く、もし転んで上下が逆転しても、足を反対側に翻して歩行を続けることが可能だ。センサには障害物を検知する光センサのほか、本体の姿勢を制御する加速度センサなどを搭載しているという【写真8】【動画2】。

 同校では、このほかにも日常活動型ロボットとして、ATRが開発した「Robovie」や、市販の2足歩行ロボットなどの展示・実演も行なっていた。特にRobovieは、相手と会話をしたり、腕で子供たちを抱いたりと、コミュニケーションを重視したデモが行なわれ、人気を博していた【写真9】【動画3】。


【写真7】神奈川県立産業技術短期大学校のブース。日常活動型ロボット「Robovie」や、市販の2足歩行ロボット、研究開発した6足歩行ロボットなどを展示 【写真8】6足歩行ロボット。くものような動きをする。1本の足には3つのサーボモータが装備されており、合計で18個のモータで制御される 【動画2】6足歩行ロボットのユニークな動作。シンメトリックな構造で、歩行のバリエーションも多い。本体が転んでも、脚を反対側に翻して歩行を続けられる

【写真9】日常活動型ロボット「Robovie」。ATRが開発したもの。高さ114cm、重量39kg。皮膚センサがあり、体に触ると腕や頭を動かしたり反応する 【動画3】コミュニケーションを重視したデモが行われ、たRobovie。会話をしたり、挨拶をしてくれるので、特に子供たちに人気があったようだ

 また、芝浦工業大学では、迷路を最短経路で探索するマイクロマウスや、ライントレースロボットの実演をしていた【写真10】【写真11】【動画4】。さらに、同校の事業法人であるエスアイテックのミニロボット教材シリーズ「BOXER」や「SPIDER」などを例に、ロボット工学の入門から応用までを学べるキットも紹介【写真12】【写真13】。


【写真10】芝浦工業大学の展示・実演。迷路を最短経路で探索するマイクロマウス。右側の壁を検知し、迷路全体をスキャンしながら最短経路を求める「右手法」のアルゴリズムを採用 【写真11】ライントレーサー。フロント部には合計8個の赤外線センサを装備し、ラインに対するロボットの姿勢制御を高精度で実現している 【動画4】直線部分とカーブの部分でロボットの速度を微妙に変化させていることがわかる。マイコンにはH8を採用

【写真12】芝浦工業大学のミニロボット教材シリーズ「BOXER」や「SPIDER」などを展示。実際に大学の教育でも利用されているという 【写真13】「BOXER」や「SPIDER」などを有線でコントロールして遊べるようにしていた

 別の教室では、神奈川県内の工業高専3校がそれぞれの得意分野となる研究を発表していた。県立磯子工業高校は、レゴで組み立てたライントレースロボットを展示・実演。同校は今年10月に行なわれたWRO Japan(World Robot Olympiad)の高校生部門において優勝を果たし、国際大会まで進出したWROロボットのデモを実施していた。これは格子状のラインに沿って進み、ブレークゾーンにある空き缶をつかんで、スタート地点まで戻ってくるというもの【写真14】。

 藤沢工科高校は、ジャパンマイコンラリーで優秀な成績をおさめた完全自走型のマイコンカーを出展【写真15】【動画5】。最高速度4m/secでコースを爆走するマイコンカーはとても迫力があった。速度を出しすぎるとカーブでコーナーを外れてしまう恐れがあるため、カーブの手前で微妙に速度を落とすなど、うまく速度を制御していた。

 平塚工科高校では、電子工作教室を開き、LEDキットの簡易工作を来場者に指南していた【写真16】。工作の内容は、さまざまな色彩に変化する3色発光LEDの電子回路をつくるというもの。3色のうちのいずれかのLEDを同時に発光させることによって、光の色をつくりだすという原理だ。


【写真14】WROで優秀な成績をおさめた県立磯子工業高校のライントレースロボット。格子状のラインに沿って進み、空き缶をつかんで、スタート地点まで戻ってくる 【写真15】藤沢工科高校の完全自走型のマイコンカー。4m/secまでの速度で爆走するという。ジャパンマイコンラリーでも優秀な成績をおさめた

【動画5】センサでカーブを検知して、コースから外れないように、速度を微妙に調整する 【写真16】平塚工科高校の電子工作教室。さまざまな色彩に変化する3色発光LEDの電子回路をつくるというもの

多目的プラザでは体験型のロボット教室が大盛況!

 多目的プラザでは、ロボット教室やロボカップジュニアのデモと練習試合が開かれた。レゴやロボットの科学教室を運営するトゥルース・アカデミーは、マインドストームズROBOLABによるロボット教室を実施。ひとりに1台ずつパソコンを用意し、レゴの基本的なプログラミングをいちから学べるように工夫していた【写真17】【写真18】。

 一方、中村理科工業も同様にレゴのプログラミング教室を開いていた【写真19】【写真20】。こちらの教室では、先ごろ発売されたばかりの最新版のマインドストームNXTを利用して、簡単な迷路抜けのプログラムをつくる教室を開催していた。またNXTでつくった2足歩行ロボットの展示や、超音波センサ、サウンドセンサ、光センサ、タッチサンサといったモジュールを利用したロボットを用意し、気軽に体験ができるように動態展示していた【写真22】【動画6】。

 ロボカップジュニア競技のコーナーでは、サッカーチャレンジの練習競技を中心に、レスキュー部門とダンスチャレンジ部門のデモも交互に繰り広げられた。サッカーチャレンジでは、都立産業技術高専やトゥルース・アカデミーの生徒4チームが参加し、リーグ戦で得点を競い合っていた【写真23】【動画7】。


【写真17】トゥルース・アカデミーによる、レゴマインドストームズROBOLAB教室の模様。午前と午後に各2回、10数名ずつ子供たちが参加した 【写真18】ノートPCにRCXのコントロールブロックを接続して、作成しhたプログラムを転送しているところ 【写真19】中村理科工業のプログラミング教室。こちらは最新版のマインドストームNXTを利用

【写真20】子供たちは何回もプログラムを修正しながら、迷路を切り抜ける工夫を凝らしていた 【写真21】プログラムが完成したら、写真のような簡単な迷路で、うまく動作できるかチャレンジ 【写真22】NXTで製作した2足歩行ロボット「アルファレックス」や、各種センサモジュールを利用したアクションロボットの展示

【動画6】レゴマインドストームNXTで製作したロボット 【写真23】サッカーチャレンジの競技デモ。都立産業技術高専チームはロボカップ2004世界大会で決勝まで進出した強豪。トゥルース・アカデミーチームも今年のジャパンオープンで決勝まで進出。どちらもハイレベルの競技を展開 【動画7】1チーム2台の自律型ロボットで、赤外線発光のボールをゴールに運ぶサッカー競技。フィールドには黒いグラデーションが印刷されており、ロボットが自己位置や向きを識別できる。競技時間は前後半10分、ハーフタイム5分

 一方、レスキューチャレンジのデモでは、都立産業技術高専の「LINK」が登場。これは2006ブレーメン世界大会において、マルチチーム優勝・個別チーム2位に輝いたロボットだ。実演では、このロボットをベースにしたものが利用されていた【写真24】【動画8】。

 ダンスチャレンジのデモは、同じく2006年の世界大会で賞を獲得したトゥルース・アカデミーのロボットなどが登場。獅子舞をモチーフにした和のテイストとユニークな演技が来場者の目をひいていた【写真25】【写真26】【動画9】。このほか、イーケイジャパンのロボットキット「スピンシューター」や「エアシューター」などを利用したサッカー競技体験コーナーも人気があった【写真27】【写真28】。


【写真24】ロボカップ2006世界大会でマルチチーム優勝と個別チーム2位に輝いた、都立産業技術高専の中川雅貴さん。フィールドが傾斜していても、センサ感度を一定に保てるように工夫を凝らしたという 【動画8】レスキューチャレンジのデモ。自律型ロボットが黒線をたどりながら進み、途中で倒れている被災者(銀と緑のマーク)を発見、ライトを点滅して知らせるという競技。正式大会では2台のロボットで競技を行なう 【写真25】ダンスチャレンジのデモ。ロボカップ2006世界大会で賞を獲得したトゥルース・アカデミーのロボットなどが登場

【写真26】ロボットのデザインは獅子舞をモチーフにした和のテイスト。音楽も同様に日本調にした。タイのプーケットで開かれた「国際園芸展」でも披露されたという 【動画9】ダンスチャレンジのデモの様子。5分の持ち時間で、ロボットが音楽に合わせて演技をする。ロボットのプログラミング、構造、センサの活用、振り付け、衣装、エンターテインメント性などが評価の基準となる

【写真27】イーケイジャパンのロボットキット。中央の部分からボールをシュートするしくみ。左から「エアシューター」「ハングリーシューター」「スピンシューター」 【写真28】多目的プラザの一角に設けられたサッカー競技体験のコーナー。「スピンシューター」などをコントローラで操作してシュートを決める

 本イベントのもうひとつの目玉は、プチロボ工作・競技会である。これは、神奈川県の地区大会で上位に入賞した子供たちが、いちから山崎教育システムの「プチロボ」を組み立てて、競技するという企画だ。

 ロボットの製作は午前中に行なわれ、20数名が参加した【写真29】。プチロボは、4個のモータだけで動く簡易ロボット教材で、8極(6極)のスイッチを切り替えて、前後左右にロボットを自由に動かせる【写真30】。

 製作したキットを用いて、午後からタイムトライアルの競技会が開かれた【写真31】【動画10】。併せて、プチロボのデザインを競い合う投票も行なわれた【写真32】。昆虫や人の形を模したり、ペットボトルを利用したりと、子供ならでは楽しい発想のロボットが多数展示されていた。

 また、午後にはロボットカー製作教室も別室にて開催された。この教室では、箱で車を作るイーケイジャパンの箱工作キット「ぱこかー」を参加者が作り上げていた【写真33】。今回は時間の関係で外装まではつくらなかったが、音センサで動作する車体が組み立てられた。キットは電子部品のはんだ付けが不要で、パーツを基板に差し込むだけで簡単に組み立てられる点が大きな特徴だ。2時間ぐらいあれば、誰でも完成できるようになっている【写真34】。

 本イベントは「FESTA」と銘打たれているように、盛りだくさんの出展があり、たいへん見ごたえのあるものであった。実際にロボットを製作したり、操作できるような体験教室も多かったため、子供たちの知的好奇心をくすぐり、「ものづくり」に対して大いに興味を抱いてくれたようだ。関係者によれば、来年はさらに多くの参加を呼びかけて、大きなイベントにしていく方針だという。


【写真29】山崎教育システムの「プチロボ」を製作。神奈川県の地区大会で上位に入賞した子供たちが組み立てていた 【写真30】「プチロボ」完成! 8極スイッチを切り替えて4つのモータを動すことで、前後左右に移動できる。正面でボールをホールドする 【写真31】プチロボの神奈川大会の模様。写真のようなコースを移動しながら、途中に置いてあるボールをゴールまで運ぶ時間を競いあう

【動画10】プチロボでボールをゴールまで運ぶ様子。コントローラの操作がポイントとなる。操作に慣れていないとうまく運べない 【写真32】プチロボのデザインコンテスト。外装のアイデアを競うもの。昆虫や人の形を模したり、子供ならでは楽しい発想のロボットが展示されていた

【写真33】ぱこかーのリア部には、ブレーキランプと音センサ感度調整、走行時間調整用のボリュームが付いている。ゴムのかけ方で低速・高速、4WDも選べる 【写真34】「ぱこかー」のパーツ一式。電子部品のはんだ付けが不要で、パーツを基板に差し込むだけで誰でも簡単に組み立てられる

URL
  青少年のためのロボフェスタ2006
  http://kanagawa-yc.jp/robofesta/robofesta.html


( 井上猛雄 )
2006/12/20 00:08

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