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米国のロボット玩具メーカー「WowWee」CTOインタビュー
~玩具以外への商品展開も視野に

Reported by 影木准子

WowWeeのダビン・スーファー最高技術責任者
 二足歩行型ロボットの「Robosapien(ロボサピエン)」や恐竜型の「Roboraptor(ロボラプター)」など米国で人気の高いロボット玩具を販売するWowWee(ワウウィー)がロボット製品の拡充を進めている。新製品のおもちゃを次々にリリースする予定であるほか、昨年10月に発売した遠隔制御ロボット「ROVIO」を皮切りに玩具以外の市場でも足場を固めようという戦略だ。

 同社は家庭用ロボット市場の動向をどうとらえ、それに合わせてどのような新製品の開発に取り組んでいるのか。同社の最高技術責任者(CTO)であるダビン・スーファー(Davin Sufer)氏に電話インタビューした。


WowWeeのロゴ 二足歩行型ロボットのRobosapien 恐竜型ロボットのRoboraptor

――今日はカナダのモントリオールにいると聞いたが。

【スーファー氏】そうだ。普段、私は香港に住んでいるのだが、今週は会議のためモントリオールに来ている。モントリオールには(WowWeeの親会社であるOptimal Groupがあり)、WowWeeのマーケティング部門がある。私のいる香港には研究開発と工場との業務関係担当の社員たちがいる。このほか、米カリフォルニア州にデザインやパッケージングなどを決めるクリエイティブ部門がある。

――CTOとしてあなたの役割は何か。

【スーファー氏】2つある。1つは我々の製品に使用する新しい技術を見つけ出すこと。2つ目は研究開発部門を率いること。ロボット製品の研究開発に携わっているのは約30人だ。私はプロジェクト・マネジャーと工場、マーケティングのそれぞれの部門と常に接触し、それぞれの要求に答えられるようにしなければならない。CTOに就任したのは2年半前だ。

――1月に開かれたコンシューマエレクトロニクス展示会「2009 International CES」で発表した新製品は?

【スーファー氏】まずは「WowWee Robotics」のラインで発売予定の「Joebot」(ジョーボット)と「Roborover」(ロボローバー)。ジョーボットは二足歩行型のヒューマノイドで、Robosapienの次のバージョンだ。

 Robosapienは当社の人気商品で、2004年の発売以来、世界で500万台以上を出荷した。Joebotは従来のRobosapienと比べて、歩くスピードが速くなったことと音声認識システムを搭載したこと、手にある赤外線センサーをより高性能化した点が新しい。

 Roboroverは2008年に発売した「Tribot」(トライボット)に似ているが、より定価格にすることを狙った。物を乗り越えられる移動システムがかっこいい。いろいろなゲームもできる。

 どちらも今秋までに発売予定で、予定価格はJoebotが99ドル、Roboroverが69ドルだ。


二足歩行型の新ロボットJoebot 車輪型のRoborover

将来はプロジェクターをロボットに搭載

【スーファー氏】次に「WowWee Technologies」のラインで発売するものを紹介したい。1つは「Spyball(スパイボール)」。無線LANで遠隔操作できるロボットで、当社のテレプレゼンス・ロボット「ROVIO(ロビオ)」の廉価版だ。

 ROVIOはパソコンとインターネットを使って世界のどこからでも遠隔操作でき、ロボットのカメラとマイクを通じて離れた場所にいる人とコミュニケーションができる。家の中で自分の位置を認識でき、充電器まで自分で戻ることも可能だ。しかし(約300ドルと)ややハイエンドの商品であり、同様の機能を持ったもっと低価格の商品の需要があると考えた。

 Spyballには、ROVIOのようなナビゲーションやドッキングのシステムはなく、ビデオの解像度も落ちる。しかし、PSPやニンテンドーDS、iPodなど、ブラウザーと無線LAN機能さえあれば何にでも直接つなげることができる。Spyballはこの秋、149ドルで発売する予定だ。


ROVIOの廉価版と位置付けられるボール型のSpyball 昨年10月に発売したテレプレゼンス・ロボットのROVIO 【動画】ROVIOの使い方を見せたWowWee制作のビデオ

ピコ・プロジェクターのCinemin Stick
 もう1点、期待しているのがTexas InstrumentsのDLPチップを使ったピコ・プロジェクターの「Cinemin」(シネミン)だ。持ち歩いてiPodやiPhoneにつなげられる小型のプロジェクターで、携帯端末に保存してある写真や映画を外出先で壁や天井に映し出せる。今はiPodでビデオを見るのは1人でしかできないが、Cineminを使えばみんなで楽しめる。

――しかし、プロジェクターはロボットとは関係ありませんね。

【スーファー氏】いや、それが大いに関係ある。というのは、そもそもDLPにたどり着いたのは、ロボットに搭載できるさまざまな技術を調べていたからだ。今はまだチップが高価でロボットに搭載するのはコスト的に見合わない。しかし2年くらいたてば価格が下がるはずで、そうしたら必ずロボットに搭載したい。初期のSF映画を思い出してほしい。(スターウォーズの)R2D2は映像を映し出すことができた。実現できればすばらしい。ロボットが人間とコミュニケーションをはかる優れた方法だ。

 そして当面は派生製品であるCineminを売る。


玩具以外の市場に進出

――「WowWee Technologies」のブランドは玩具以外の市場に進出するために構築したのか。

【スーファー氏】そのとおりだ。ROVIOの箱にはっきりと書いてある。「ROVIOはおもちゃではありません」と。これは非常に重要な点だ。箱から取り出してすぐに笑わせてくれるような商品ではない。コンピューターとホーム・ネットワークを準備してからでないと、役立たないものだ。だからROVIOは(ロボット玩具を開発してきたのと)同じ研究開発チームが手掛けたものではあるが、生活の中で役立ててもらう製品としての位置付けで、異なった市場を狙っている。

――すると、ROVIOはWowWeeにとって新しい客層をもたらしたか。

【スーファー氏】いくらかロボット玩具の顧客と重なっている部分もあるが、全体的にROVIOのユーザーは当社にとっては新しい顧客だ。ROVIOを何かの役に立てたいと考えるユーザーだ。一般的に人はおもちゃにこのような金額(300ドル)をかけない。

――同時期にテレプレゼンス・ロボットを発表したiRobot社は、大規模な市場導入前調査を実施しながら結局発売しなかった。この点をどう見るか。

【スーファー氏】新しい分野の場合、いくら事前調査をしても消費者はその製品を使ったことがなければ、本当に自分たちに役立つものなのかどうか分からない。だから発売してみるしかない。歴史的に見れば、過去に成功した発明もみんなそうだった。我々は(テレプレゼンスという)商品コンセプトは優れたもので、役立つと考えている。


家の中で物を動かせるロボットの開発

 ――過去5年間、ロボット玩具市場はどのように変遷してきたか。また、今後3~5年でどのように変化すると予測するか。

【スーファー氏】2004年にRobosapienが発売になったときは、100ドルで二足歩行のロボットが買えるということで新規性があり、一大事だった。その後、さまざまな歩くロボットを発売してきたわけだが、歩くだけでは消費者はもうびっくりしないので、何か違ったことをしなければならなくなった。新しい外見、新しい感情、新しい移動システム。特に移動システムはロボットにとって極めて重要な要素なので、我々は常に新しくておもしろいロコモーション技術に目を光らせている。

 将来についてだが、1つはっきりしているのは、消費者はさらに多くの機能を求めるようになるということだ。エンターテインメント性だけでなく、役立つ機能がなければならない。

 だから今我々が取り組んでいるのは、その役立つ機能を見つけ出すことだ。テレプレゼンスはその1つ。ロボットから情報を引き出すのも有用な機能で、ニュースや電子メールを読み上げたり、ビデオ・チャットができる技術などを見てきた。それらの技術を組み合わせて、役立つ製品を消費者が買える価格で実現しなければならない。

――いずれはルンバ(iRobot社製の自走式掃除ロボット)のような製品をWowWeeも発売するということか。

【スーファー氏】我々の製品が将来、床掃除をするかどうかは分からないが、家の中で物を動かせるような機能を持つようになるだろう。もしかするとアームを持つようになるかもしれない。留守中に物を動かしたり明かりのスイッチをオンにしたりできるロボットがあれば便利だ。アームがなくても赤外線送信機でホーム・オートメーション・システムと連動させることも考えられる。

 ROVIOは当社にとって、役立つロボット路線に向かった大きな一歩だ。ROVIOの次世代機はさらに実用性と機能を高めて行く。

――あなたの関心を引いた最近の新技術で、将来製品に組み込む考えのあるものは何か。

【スーファー氏】いくつかあるが、今はまだ語れない。

――世の中に出ているアームはもう調べてみたか。

【スーファー氏】複数の種類のアームを見てみたし、社内でもアームやグリッパーといった機能を持つものを開発してきた。商品化するための最適の組み合わせがまだ見つからない。家の中で役立つロボットを開発するには落とし穴がたくさんある。人間の生活は構造化されていない。人はロボットに対する期待度が高いが、多機能になるほどコストが高まる。だから我々は、ロボットを複雑、高価にしないでも実現できる家の中の作業を探しているのだ。


テレプレゼンスは重要なアプリケーション

――床に近い高さのロボットとコミュニケーションをとるのは難しい。Anybots(エニーボッツ)社のような人間と目の高さが近いテレプレゼンス・ロボットを作る気はないのか。

【スーファー氏】Anybotsのロボットは私も見た。非常に興味深いと思うし、テレプレゼンスというアプリケーションを狙う方向性は正しいと思う。そして我々も床の上にあるものと会話をしにくいことは十分に認識しており、この問題を解決する手法の開発に現在取り組んでいる。しかし人間と目の高さをいっしょにするということは大型のロボットを作らなければならず、電力を食うし、家の中で物を倒したり壊す恐れが出てくる。

 画像認識やAI(人工知能)といった基本的な技術がまだ開発途上である中、どうやって消費者の期待に答えられるような、しかし家の中など人間環境で問題を起こさないようなロボットを開発するか。この点についてはAnybotsも当社も、テレプレゼンス・ロボットという1つの解で、インテリジェンスの問題はとりあえず回避しようということで考え方が一致している。完全自律制御のロボットを開発できる段階ではないので、人間がロボットにインテリジェンスを提供できるような製品を作ろうと。よって、何かが起きた場合の責任もロボットではなく、それを運転する人間が負う。だからこそ、テレプレゼンス・ロボットというアプリケーションは重要な意味を帯びているのだ。

――日本市場をどう見るか。

【スーファー氏】女性ヒューマノイドロボットの「Femisapien(フェミサピエン)」(日本ではセガトイズが「E.M.A.」の商品名で販売)は日本で注目を浴びたようだし、当社の飛ぶタイプのおもちゃも日本でよく売れている。日本市場は我々にとってたいへん重要だ。日本の代理店を通じて、今後も日本で売れそうな製品をマーケティングして行く。


女性型ヒューマノイドのFemisapien 今年のバレンタインに向けてWowWeeが作った、Femisapienと車輪型のTribotのマーケティング用写真

(写真提供:WowWee)


URL
  WowWee
  http://www.wowwee.com/

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2009/02/04 15:52

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