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石井英男のロボットキットレビュー
Hotproceedのコントローラーアダプター「TEC-1/3」

~PS2用無線コントローラーでKHRシリーズなどの操縦が可能
Reported by 石井英男

 KHRシリーズやマノイシリーズ、RB2000などの二足歩行ロボットキットは、無線で操縦するには、オプションの無線コントロールユニットなどを用意する必要がある(G-ROBOTS GR-001のように無線コントローラー付きの製品もあるが)。また、市販のコントロールボードを利用してロボットを自作する場合でも、無線での操縦をどうやって実現するかは重要なポイントだ。

 ここで紹介する、Hotproceedの「TEC-1」と「TEC-3」は、KHRシリーズやマノイシリーズに搭載されている近藤科学のコントロールボード「RCBシリーズ」に対応したコントローラーアダプターである。

 TEC-1やTEC-3は、ロジクール製PS2用無線コントローラーと組み合わせて使うように設計された製品で(他のメーカーの無線コントローラーでの利用は保証されておらず、相性問題で動作しないこともあるので、ロジクール製を選ぶこと)、拡張低速シリアルのアナログ入力(TEC-3のみ)をサポートしたり、追加入出力端子を装備するなど、近藤科学純正の無線コントローラー「KRC-1」よりも高機能である。また、コントローラーがコンパクトで携帯性も優れており、受信機、送信機ともにアンテナが不要なので、アンテナによるトラブル(転倒時に折れてしまうなど)を防げることも魅力だ。


Hotproceedのコントローラーアダプター「TEC-1」。ロジクール製PS2用無線コントローラーを利用して、近藤科学の「RCBシリーズ」の操作が可能になる こちらは上位製品の「TEC-3」。拡張低速シリアルモード対応で、アナログ入力が行なえることが特徴

KRC-1完全互換を実現した「TEC-1」

 Hotproceedのコントローラーアダプター「TECシリーズ」には、TEC-1/TEC-2/TEC-3という3つの製品がある。このうちTEC-1とTEC-3は、近藤科学のRCBシリーズに接続して、二足歩行ロボットを無線で操縦するために開発された製品だ(TEC-2は、ロボコン向けの製品で、他の2製品とは目的が異なり、PS2用コントローラーのボタンを直接24出力に変換する)。

 TEC-1とTEC-3の外見は非常によく似ているが(おそらくマイコンのファームウェアが違うのだと思われる)、TEC-1(定価8,400円)がベーシックモデルで、TEC-3(定価10,500円)が上位モデルとして位置づけられる。

 TEC-1は、近藤科学純正の無線コントローラー「KRC-1」完全互換を実現しており、RCBシリーズ全製品(RCB-1/1HV/3J/3HV)で利用できる。ロボットへの搭載も簡単で、TEC-1とロジクール製PS2用無線コントローラー「ロジクール コードレスコンパクトコントローラ」の受信機を接続し、TEC-1のシリアル出力とRCBシリーズの低速シリアルポートを3ピンケーブル(TEC-1には付属しないので別途用意すること)で接続するだけで、配線は完了だ。

 KHR-2HVに搭載するのなら、コントロールボード「RCB-3J」をボードベースの左側に装着すれば、空いたスペースにちょうどTEC-1+受信機が収まる。ただし、標準の背面カバーではかなり窮屈なので、オプションのラージカバーを利用するほうが取り付けが楽になる。

 受信機の電源は、コントロールボードから供給されるので不要だ。最初に利用するときのみ、KHRシリーズの電源投入後、コードレスコンパクトコントローラの受信機のコネクトボタンを押し、次いでコントローラ側のボタンを押すことで、通信が確立される(2回目以降はこの作業は不要)。

 KHR-2HV側での設定は、KRC-1を使う場合と全く同じで、HeartToHeart 3Jのオプションボタンを押して、オプションウィンドウを開き、「送信機でのモーション・シナリオ再生を有効にする」と「KRC1から制御する」のチェックボックスにチェックをつければよい。

 なお、KRC-1では、上下左右に加えて、斜め方向にもボタンが配置されており、上面の4つのシフトキーとあわせて合計20個のボタンが用意されているが、PS2用無線コントローラーの場合、斜め方向のボタンは用意されていない。ただし、ボタン同時押しが可能なので、斜め方向のボタン相当の入力をしたければ、ボタンを2つ同時に押せばよい(例えば、左上なら、上と左のボタンを同時に押す)。

 シフトに関しては、KRC-1と同じように、L1、L2、R1、R2の4つのボタンが用意されているので問題はない。また、左右のアナログスティックやアナログスティックを押し込む操作(L3とR3)にも数値が割り当てられており、モーション発動用に利用することが可能だ(L3やR3は他のボタンとの同時押しには非対応)。


左が「TEC-1」で、右が「TEC-3」。外観はほとんど同じだ。全部で8本のピンが用意されているが、左側の3本がシリアル出力で、右側の5本が入力×2と出力×2、グラウンド端子である ロジクール製PS2用無線コントローラー「ロジクール コードレスコンパクトコントローラ」(LPGC-60000)と組み合わせて利用する。上がコントローラー兼送信機で、下が受信機

ロジクール コードレスコンパクトコントローラの受信機。コンパクトにまとまっており、アンテナも出っ張っていない コントローラーは、単3電池2本で動作する。アルカリ電池なら約50時間の動作が可能だ

左が近藤科学純正のコントローラー「KRC-1」(アンテナをロッドアンテナに改造済み)。右がロジクールのコードレスコンパクトコントローラ。ボタンの数はKRC-1のほうが多いが、コードレスコンパクトコントローラには、アナログスティックが2本用意されており、サイズもコンパクトだ TEC-1をコードレスコンパクトコントローラの受信機に接続したところ

近藤科学のKHR-2HV。操縦には、近藤科学純正の無線コントロールセットを利用している KRR-1利用時のKHR-2HVを正面から見たところ。アンテナをこのように外側に出す必要がある

KHR-2HVの背中のカバーを外したところ。中央にコントロールボード「RCB-3J」が、右側に受信機KRR-1が装着されている KHR-2HVでTEC-1を利用する場合は、RCB-3Jを左側にずらして装着し(ネジ穴は用意されている)、空いたスペースにTEC-1+受信機を両面テープで固定するとよい。RCB-3Jの低速シリアルポートと、TEC-1のシリアル出力をケーブルで接続する

TEC-1を取り付けた状態で、背面カバーを装着したところ。背面カバーは、ノーマルよりもサイズの大きいラージカバーを利用している(標準のカバーでもサーボモーターの配線を切り詰めるなどすれば、取り付け可能) ラージカバーなら、TEC-1+受信機もこのように楽に収まる

TEC-1利用時のKHR-2HVを正面から見たところ。アンテナが出っ張らないので、外観もすっきりするし、転倒時などにアンテナが折れる心配もない オプションウィンドウを開いて「送信機でのモーション・シナリオ再生を有効にする」と「KRC1から制御する」のチェックボックスにチェックをつける

【動画】上下左右ボタンに移動を割り当てることで、手の小さな子供でも簡単にロボットの操縦が可能になる(操作しているのは3歳の娘) 【動画】R1ボタンやL1ボタンも、純正のKRC-1と同じように利用できる。この例では、起き上がりモーションをR1に割り当てている

アナログ入力に対応した「TEC-3」

 TEC-3は、KRC-1完全互換のTEC-1とは違い、アナログ入力に対応していることが特徴だ。最近、近藤科学からもアナログ対応無線コントローラー「KRC-3AD」が登場したが、KHR-1HVやマノイAT01/PF01で使われているRCB-3HVでは、拡張低速シリアルと呼ばれる機能がサポートされており、4軸のアナログ入力に対応している(KRC-3ADでは、2軸のアナログ入力しか対応していない)。この機能を利用すれば、アナログスティックの傾きにあわせて、リアルタイムでサーボモーターを動かすことが可能になる(本来の意味からするとあまり正確な表現ではないが、疑似マスタースレーブなどと呼ばれることもある)。

 ただし、アナログ入力のミキシング機能は、KHR-2HVに搭載されているRCB-3Jでは残念ながら利用できない。そのため、TEC-3は基本的にRCB-3HVと組み合わせて使うための製品だといえる(RCB-1/1HVではTEC-3を利用できない)。

 TEC-3のアナログ入力機能を利用すれば、歩行中にアナログスティックの傾きに応じて、進行方向を調整するスラローム走行なども可能になる。ここでは、マノイPF01にTEC-3を搭載し、左右のアナログスティックの動きを、両腕のサーボモーターの動作にリアルタイムに反映させてみることにした。

 TEC-3を利用する場合は、オプションウィンドウの「送信機でのモーション・シナリオ再生を有効にする」のみにチェックを付け、「KRC1から制御する」のチェックは外すこと。

 拡張低速シリアルのアナログ入力の値は、HeartToHeart 3では、PA1~PA4という変数に格納される。数値は0~127で、分解能は7ビットとなる。HeartToHeart 3の受信機ボタンを押して受信機ウィンドウを開けば、PA1~PA4の値が表示されるので、コードレスコンパクトコントローラのアナログスティックを指で傾けて、PA1~PA4の数値がリアルタイムに変化することを確認しよう。

 PA1~PA4とアナログスティックの対応だが、PA1が左アナログスティックの左右に対応(左端で0、右端で127)、PA2が左アナログスティックの上下に対応(上端で0、下端で127)、PA3が右アナログスティックの左右に対応(左端で0、右端で127)、PA4が右アナログスティックの上下に対応(上端で0、下端で127)となる。

 PA1~PA4の値を、リアルタイムにサーボモーターの動きに反映させるには、MIXオブジェクトを利用する。MIXオブジェクトでは、サーボモーターの各チャンネルごとに、A/D入力端子に接続したセンサーの値やPA1~PA4の値をミキシングすることができる。例えば、両腕のサーボモーターに反映させるのなら、CH2にPA2を、CH3にPA1を、CH6にPA4を、CH7にPA3の値をミキシングさせればよい。

 参考までに筆者が作成したモーションを挙げておく。この例では、STARTボタンを1回押すことで、アナログ入力のミキシングを行なう疑似マスタースレーブモードに入り、再びSTARTボタンを押すことで、疑似マスタースレーブモードから抜けるようになっている。


TEC-3をコードレスコンパクトコントローラの受信機に接続したところ マノイPF01でTEC-3を利用する場合は、頭の内部にTEC-3+受信機を取り付ければよい。頭が大きいので、スペースには余裕がある

TEC-3利用時のマノイPF01を正面から見たところ。アンテナが不要なので、デザインの妨げにならないことが嬉しい オプションウィンドウを開いて「送信機でのモーション・シナリオ再生を有効にする」のチェックボックスにチェックを付ける。「KRC1から制御する」のチェックは外すこと

【動画】受信機ウィンドウを開いて、アナログ入力の様子をチェックしているところ。左アナログスティックを傾けることで、PA1とPA2の値が変化している 両腕の疑似マスタースレーブを実現するモーション例。まず、比較レジスタに3(STARTボタンの数値)をセットする

POS1は、ホームポジションとする(全てのチャンネルの数値が0) このMIXオブジェクトがポイントだ。CH2、CH3、CH6、CH7の4つのサーボモーターに、アナログ入力の値をミキシングさせている

ボタン入力が比較レジスタ(3)と一致した場合は点線矢印の方向に進み、一致しない場合は実線矢印の方向に進む(POS1へのループ) MIXオブジェクトで、ミキシングを全てオフにする

POS2で、ホームポジションに戻す 【動画】TEC-3+コードレスコンパクトコントローラを利用して、マノイPF01を操縦している様子

【動画】マノイPF01などのRCB-3HV採用ロボットなら、アナログスティックの傾きをリアルタイムにサーボモーターの動きに反映させることができる

コンパクトで電波到達距離が長いことも魅力、Blaserにも期待したい

 TEC-1/3は、コンパクトで使い勝手がよいだけでなく、電波到達距離が長いこともメリットだ。コードレスコンパクトコントローラでは、2.4GHz帯を利用しており、公称到達距離は9mとされている。純正の無線コントローラーは、25MHz帯を利用しているのだが、出力が弱く、アンテナをしっかりのばしていないと、数m程度で操作が効かなくなることもある。

 バトル競技ではそれほど問題にはならないが、コートの広いサッカー競技ではロボットとの距離が離れると、ノーコンになってしまうこともときどきある。しかし、コードレスコンパクトコントローラなら、そうした心配はない。

 また、純正無線コントローラーでは、クリスタルを交換することで、バンドを変える仕組みになっており、大会などでは、他の人とバンドがかぶらないように、クリスタルを複数用意しておく必要があるのに対し、コードレスコンパクトコントローラでは、クリスタルは不要で、最大8台まで同時利用が行なえる(保証外だが最大16台まで同時利用可能)。

 参加台数がこの上限を超えない範囲なら、混信などの心配はない。ただし、クリスタル交換方式と違って、今使っているバンドが明示的に分かるわけではないので、台数が上限を超えてしまうと、かえって無線管理が難しくなることがある。

 TEC-1+コードレスコンパクトコントローラの価格は12,500円前後であり、近藤科学の「KRC-1無線コントロールユニットセット」の価格が20,790円であることを考えれば、コストパフォーマンス的にも魅力がある。また、KRC-1では、単4電池が8本必要なのだが、コードレスコンパクトコントローラなら単3電池2本で済むことも嬉しい。

 斜めボタンは用意されていないが、シフトボタンが4つあり、同時押しにも対応しているので、バトルで使うのならボタンの数も十分だと感じた(サッカーだともう少しボタンがあったほうが直感的に操作できて楽だろう)。

 なお、ここでは触れなかったが、TEC-1/3ともに、シリアル出力以外に5つのピン(拡張用I/Oポート)が用意されている。これらは、2つの入力と2つの出力をサポートしており、LEDやスイッチなどを接続することが可能だ。

 また、Hotproceedでは、現在、Blaserと呼ばれる新しい遊びを開発中だ。Blaserは、二足歩行ロボットに光線銃(レーザー銃)と光センサーを搭載し、撃ち合うという競技であり、従来のバトルやサッカーとは違った、全く新しい遊びの世界を実現する。

 筆者の世代だと、ジリオンなどの光線銃で遊んだ経験のある人も多いだろうが、レーザーバトルを二足歩行ロボットで行なうというのは、なかなか面白そうだ。Blaserシステムは、TEC-1/3の拡張用I/Oポートを利用して動作するため(特にTEC-3なら、アナログ入力機能を利用して、腕を動かして照準を合わせることができる)、Blaserで遊びたいのなら、TEC-1/3が必須となる。Blaserシステムは、近日中に発売開始予定とのことであり、こちらも楽しみだ。


URL
  Hotproceed
  http://members2.jcom.home.ne.jp/hotproceed/mainA.htm

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エスケイパン「Gogic Five」(第1回)(2007/08/10)



2007/11/09 00:20

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