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ロボット・アナリストの視点
「東京大学IRT国際シンポジウム」聴講記

Reported by 五内川拡史

 3月12日(月)、東京大学弥生講堂にて、第一回IRT(Information and Robot Technologies)国際シンポジウムが開催された。海外からも著名な研究者を招き、全体を通して英語のみ(通訳無し)という講演会である。

 筆者も、同大学の産学連携本部で共同研究員を務めているので(研究テーマはロボットとは関係ないが)、聴講に行ってきた。以下、簡単に報告する。

 まず由来となったIRTは、東京大学のロボットに関する共同研究プロジェクトを指している。大学内の研究シーズと民間の物作りの経験を結集して、小型の生活支援ロボットを開発しようという試みだ。

 現状は、東京大学から、デバイス、制御システム、IRT環境、サイバー・インターフェイス、ロボティック・システムの5つのチームが、また民間からは、トヨタ自動車、オリンパス、セガ、凸版印刷、富士通、松下電器産業、三菱重工業の7社が、共同参画している。

 長期的には、人間の日々の生活支援に役立つロボットの開発と、それ取り巻くIRTの環境・情報支援を行なうとしている。そのため、3つのロボット・プラットフォームを開発する予定だ。具体的には、(1)ヒューマノイド、(2)ソーシャル&デイリー・サポート、(3)パーソナル・モビリティ、である。

 現状はプロジェクトの概要を固めているところだが、新年度早々にもスタートして、2009年初頭には成果のデモンストレーションを行ないたいとしている。

 さて、今回のシンポジウムは、このIRTプロジェクトのキックオフ記念、及び、海外から識者を招いての情報創発をねらいとして開催されたようである。

 海外からの講演者は、フランスLAASのRaja Chatila教授、米国MITからSteven Dubowsky教授、同じくRodney Brooks教授である。


Raja Chatila教授
 まず、Chatila教授からは、ロボットの認知に関わるプレゼンテーションがあった。ビジョンを活用した環境地図の自動生成、マルチレイヤー・ニューラル・ネットワーク、シーン認識、追跡、人間とロボットのインターラクション等に関する研究成果が報告された。

 質疑応答では、ロボットの有望な家事ニーズは何かという質問に対して、アイロン掛けかな、と冗談めかして答えていたのが印象的だった。とりあえずは簡単なミッションから初めて、徐々に機能を拡張していくことが重要との見解であった。

 Dubowsky教授は、PAMMと呼ばれる、手押し車タイプの老人補助用モビリティ・システムを紹介した。

 PAAMは、Personal and Mobility Monitoring for the Elderlyの略語である。車輪にパワーアシスト機能が付いており、老人の歩行アシストや荷物運びに使われる。また、コンピューターや通信機能、ケア・システムのセンサーも搭載され、進路誘導や健康状態のモニタリングにも使う予定だ。

 システムの価格は5,000ドルだが、介護に人間を付けると10~15倍はかかるから、コスト・パフォーマンスで勝っている。一方、普及の問題点としては、製品が簡単には保険の対象とならない、ということをあげていた。これは政治的な話なので、なかなか大変なようだ。


Dubowsky教授 PAAM

Brooks教授
 真打ちはBrooks教授だが、発表はこれまでの研究成果のおさらいである。1993年の障害物回避ロボットの実験から、動く対象物にロボットの顔を向けるアテンションの実験、外界認識から、最近の柔らかい皮膚センサーまでをビデオ紹介した。

 また教授は、iRobot社の創業者兼CTOとして、清掃ロボットのルンバを全世界に250万台も販売してきた。今後のルンバの課題は、物体認識、障害物認識だけにとどまっていた機能を、人間の認知(老若、住人と来客の区別、人間関係など)まで高めることだという。

 今後のチャレンジとしては、認識能力を2歳児の視覚認識、4歳児の言葉認識、と同じレベルまで技術をあげていきたいとしている。

 もう1つ、意外な発言もあった。最近、欧米でもロボットへの抵抗感がやや薄れてきたとのことである。ロボットは仕事を奪うものという考え方から、むしろ仕事の質を高めるためにロボットをうまく使いたい、という様に変化が起きているとのことである。

 さて、海外の招待者以外では、国内の各研究グループを代表して、東京大学の先生方からの発表があった。下山 勲先生からMEMSデバイス、中村仁彦先生からは制御、佐藤知正先生からIRT環境、廣瀬通孝先生からはサイバー・インターフェイス、稲葉雅幸先生からロボットシステム・プラットフォームについて、という具合である。

 また、参加七企業からも、ショート・プレゼンがあった。各社とも簡易ながらロードマップを掲げていた点が注目される。例えば、トヨタからは、ヒューマノイドのロードマップとして、テーブル片付け → ベッドメイキング → 人を運ぶ、といった作業を5年おきに目指していく、というような図表が示されていた。

 さて、このシンポジウムを全体的に振り返ってみよう。

 東京大学は、2004年の国立大学法人化以降、国と企業を巻き込んだ大型の共同研究に積極的に取り組んでいる。今回のプロジェクトもその一環であり、ロボット分野でのブレイクスルー形イノベーションを目指したものと考えられる。

 面白いのは、家事やモビリティなど具体的なミッションを遂行するために、適合したプラットフォームを開発する、という目的指向性を強く持っているところだ。研究のための研究には終わらないという決意表明だろう。そのために必要となる要素技術は東京大学が担当するのだろうが、参加企業も、自動車、電気、重機、印刷、精密、ゲームまでと幅広く、さまざまな経験、蓄積と照らしあわせることができそうだ。

 また、今回のシンポジウムの海外講師陣は、認識システムのChatila教授、プロトタイプ機開発から実用化に期待がかかるDubowsky教授、商業的に成功したBrooks教授、という具合に、理論からビジネスまでバランスを配慮した構成となっている。結果としてプロジェクトの実用化・商用化への刺激が与えられたのではないか。

 本プロジェクトの今後の遂行が、ロボット業界に大きなインパクトを与えうるかどうか、注目していきたい。


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五内川拡史
(株)ユニファイ・リサーチ代表取締役社長。野村総合研究所、野村證券を経て現職。製造業、IT産業におけるリサーチ、戦略立案、新事業立上げ支援など経営コンサルティング業務を行なう。経済産業省ロボット政策研究会委員(05)、東京大学産学連携本部共同研究員(03~現)、同先端科学技術研究センター産学官連携研究員(05)。



2007/03/13 16:44

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