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ロボット・アナリストの視点
ロボットの技術革新スピードを推し量る(上)

Reported by 五内川拡史

 安部内閣が、経済政策の目玉として「イノベーション25」を打ち出している。2025年までの経済成長を見据えて、技術革新の指針を作ろうというものだ。

・イノベーション25
http://www.cao.go.jp/innovation/
http://www.kantei.go.jp/jp/innovation/dai2/index.html

 そのイメージ図を見ると、「技術の萌芽」という項目に、生活支援ロボットが取り上げられたりしている。具体的な施策検討はこれからだが、ロボット技術がこのイノベーションに含まれることは疑いないだろう。



 そこで、今回は、民生用ロボット産業が、他の有力成長産業に比して、どれくらいのポテンシャルを持っているのか――ということを、考えてみたい。

 当然、最も期待の高い分野から、政策および市場メカニズムを通じて、経営資源が配分されていく。そのため、ロボット産業の潜在力を探ることは、どの程度自由に経営資源を使えるか、という現実的な問いに直結していく。技術開発の点からも経営の点からも、重要な論点だ。

 その際、一般に、新産業の可能性を知る手だてとしては、市場規模を予測する手法がある。が、こうした予測は、需要側に大きな不確定要因が入ってくるため、なかなか難しい。

 そこで、本稿では、市場規模よりも、要素技術の革新スピードに注目して、議論の足がかりとしたい。そのための先行事例も、他の産業にある。

 さて、中期的に期待される新産業としては、いわゆるIT(情報通信)産業が本命だろう。子細に見ても、エレクトロニクス、インターネット、通信や放送など、裾野も広い。実績も革命という言葉に十分価するものだ。

 IT以外では、生命科学(バイオテクノロジー)が、対抗馬となる。もちろん技術的な難易度は相変わらずだが、治療や予防といったニーズが明確で、デマンド・プル型の市場創造ができる点は強みとなっている。

 分野としては新しいが、ナノテクノロジーも無視できない。現状は当初の陶酔状態(ユーフォリア)がいったん沈静化して、現場レベルでの地道な努力に回帰している。しかし、その射程は、素材から部品、IT、エレクトロニクス、医薬から娯楽製品まで、あらゆる産業の基盤に及ぶ可能性がある。あるスレッドを超えたときのインパクトは期待大だ。

 こうして新成長産業を並べてみると、現状、最も技術革新スピードの予想の確度が高いのは、エレクトロニクス産業と言える。

 もっとも著名なものは、言わずもがな、半導体におけるムーアの法則だろう。回路の集積度が18カ月で2倍(2年で2倍など諸説もあるようだが)になるというもので、過去30~40年の半導体史は、この法則を地で行く展開を見せた。

 この法則の影響力は広範だ。実際、筆者は、半導体装置メーカーの人から、「もし半導体の集積度が止まるようなことがあれば、世界経済の成長そのものがストップしますよ」とまで言われたことがある。


 次に、通信分野の法則に目を転じてみる。ビル・ジョイの法則は「通信の価格性能比は1年で2倍になる」というもの。ギルダーの法則は「通信帯域が6カ月で2倍になる」。多少幅はあるが、どちらもムーアの法則を遙かに上回る成長速度だ。

 こうした法則は、いずれも経験則なのだが、これまでのところ現実をよく表している。というか、法則自体がメーカーの技術ロードマップ目標となっており、自己実現がなされてきたという方が正しいのだろう。

 これら計算処理能力と通信能力の向上こそは、技術による経済成長の根幹をなしており、過去何度も限界説が囁かれながら、開発者たちは常にそれを突破してきた。

 2025年という時点は、現行技術での1つの臨界点とも言われるが、それを超えるための新しい半導体とコンピューティングの代替アイデアも、既にいくつか出されてきている。向こう5~10年に関して言えば、なお法則が継続すると信じることには合理性があるだろう。

 では、バイオテクノロジー、ナノテクノロジーは? 少なくとも半導体や通信ほど明確ではない。

 とはいえ、バイオ産業においては、計算処理能力の向上が、遺伝子レベルでのさまざまな解析に直接貢献しうる、ということは想像できる。シミュレーション能力だけなら、ムーアの法則が効いてくるだろう。

 あとは現実の身体を探るセンシング能力が、どの程度ボトルネックになるか、だ。センサーも半導体の一種だが、医療現場ではMEMS的な機構を加えることも必要になるかもしれない。ある意味、ロボットに近いものが要求されるということだ。この点は、ロボットを考えた後に再度立ち戻ってみたい。

 ナノテクノロジーは、現時点で、筆者の把握力を超えている。カーボンナノチューブやフラーレンのような新素材の性能向上、コスト低減速度はどれくらいか? あるいは、そもそもこれらの素材に注目するだけでいいのか? もっと別な要素技術の対象、数値指標があるのではないか。個人的には、ナノ・ワールドの経済学こそ、今後取り組むべき最も面白いテーマの1つだと思っている。

 それでは、残る民生用ロボットはどうだろうか? 次回に詳説していきたい。


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五内川拡史
(株)ユニファイ・リサーチ代表取締役社長。野村総合研究所、野村證券を経て現職。製造業、IT産業におけるリサーチ、戦略立案、新事業立上げ支援など経営コンサルティング業務を行なう。経済産業省ロボット政策研究会委員(05)、東京大学産学連携本部共同研究員(03~現)、同先端科学技術研究センター産学官連携研究員(05)。



2006/12/01 00:42

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