仕事で使っている自作PCの具合がおかしくなった。どうやら熱暴走のようだ。調べると電源のファンがまわらなくなり、ものすごーく熱くなっていた。それでシャットダウンしてしまうのだ。
同様の症状で昨年電源を換えたばかりだというのに、また同じ故障だ。冷却ファンの寿命が短すぎないか? 電源は結構高いので、ファンだけ買ってきて取り換えることにした。
● アキバロボット運動会2006は素通りできんでしょ
PCパーツを買いに秋葉原へと出ると、なにやら『アキバロボット運動会2006』なるイベントをやっていた。これは素通りできない。「通りすがりのロボットウォッチャー」としては、見なけりゃなんの存在といえよう(そんなに大袈裟なものでもないけど)。
入場券を買って中へ入ると、ものすごい人、人、人の波だ。子供づれの親と老人が多い。就学前の児童と65歳以上が入場無料と関係があるのかはわからないが。
順路のいちばん最初には株式会社ココロの「アクトロイドDER-2」が置いてあって、自己紹介なんかをしゃべっていた。アニメの声優(?)のアテレコが、ちょっと不自然に思える。現在は骨格や顔の形状から声を合成する技術もあるので、そうした技術で声を作り、よく似た声の声優さんを使うともっとリアルになったと思う。
さすがに人だかりも多く、写真を撮ったり、ビデオで撮影したりしていた。最近は写真ていうと携帯電話をかざすのね。
ステージ上の台の上に生足(?)に靴で立っているが、内部にはエアチューブが通り、すぐ脇には1人暮らし向け小型冷蔵庫ほどの大きさの動力部があった。会場がうるさいために作動音は聞こえなかった。
見ていると、同じプログラムがループで再生されている。しばらく休み、同じ動作と話を繰り返す。5~6回見ていると、だんだん不気味に思えてきた。その目の奥に魂は宿ってない。
「なるほど」とつぶやき、その場を離れた。なにが「なるほど」だ、オレ。
人間は同じことを繰り返せないし、相手がいれば動きも変わる。さらには「その場の空気」を読むことができる。「空気読めよ!」とお笑い芸人たちも言う。
やはり反応系の組み込みが問題となってくるのだろうね。
アクトロイドのような圧縮空気で動作するロボットは、1980年ごろには「サイボット」という名前のものがすでにあった。それから26年経ったが、まだ知能や自意識はない。
この四半世紀の時間がすぎても、人間の知能や意識の研究からのフィードバックで、ロボットに意識を実装するとこまでにはいたってないわけだ。
ただ彼女を救う方法はある。それは人間側の感情移入だ。人形にだって感情移入のできる人間の能力があれば、思い込むことで彼女のことを不気味だとは思わなくなるだろう。
そのためには何かのきっかけが必要だが、彼女にもオレにもきっかけを作る力はない。永遠に続くボーイ・ミーツ・ガールの物語は全く始まらないのだ。
● あちこちで人間にフォローされるロボットたち
さて会場にはたくさんのホビーロボットが展示されていた。近藤科学株式会社の「KHR-2HV」の動きを初めて生で見たが、けっこう素早いのね。ちょっと欲しいと思わせるものがあった。
外装のついているのは、かなり欲しいという気になった。ロボットもやっぱり見た目が命だ。「人形は顔が命」とコマーシャルでも言っていたが、ロボットも見た目のカッコよさかかわいさが命だろうか。
KHR-2HVはラジコンでの歩行、側転、倒立、前転など、めまぐるしく動いていた。歩いていて転ぶと自分で起き上がりもするが、しまいにはブースのスタッフがホイっと立たせるようになった。限られた時間内でいろいろと見せたいためだろう。
はたから見ていると、ちょこまかと動く人型のものが失敗をすると、巨人がやってきて助けてくれるように見えた。
人間にとっての神の存在が、小型ロボットにとっての人間といったところか。トラブルがあれば、横から手を差し伸べてホイっと助けてくれるのだ。人間もなにか巨大なものが助けてくれないかね(笑)。
ロボットを助けるといえば、株式会社バンダイのネットワークカメラ搭載ロボット「ネットタンサー」は、移動中に転倒してしまうと「倒れちゃったので助けて~!」というようなことを音声で叫ぶという。これはまぁ、面倒見られ型のロボットで、かわいいといえばかわいい。
でも、自力で起き上がるようにはできなかったのだろうか。用途が留守中のペットの様子を見たり、家の中の様子を見たりするというのだから、無人環境での活動が考えられる。そこで倒れても、起こしてくれる人がいなければ、ずっと床の映像を見ることになってしまう。それを外出先から見るとなると、よけいに不安になるのではないだろうか。
せめて倒れないような形状の工夫が必要だと思ったね。
● ASIMOはやっぱり大人気だ
そうこうしているうちに、「ASIMOのデモが始まりますのでブースへお集まりください」と場内にアナウンスが響き渡る。オレが行った11月4日にだけホンダのASIMOがいたのだ。
ブースへ行くと、すでにすごい人だかり、どうやっても人の頭ごしにしか見えない。
オレは身長が190cm近くあるので、後ろからでもなんとか見えたが、かわいそうなのは会場へ来ていた小さな子供たちだ。
ブースの前にはお年寄りががんばって陣取っている。ビデオやらカメラをかまえている状態だ。それにしても、ロボットは老人に人気があるというのは本当だったのだな。
しかし、ご老人たちよ。明日を担う子供たちに場所を譲ることは考えないのかね。子供が後ろで見えないと泣きそうになっていても、老人は三脚を立てて前から離れない。
それでも、お父さんと来ている子供は肩車をしてもらって、なんとか見ていた。オレはなるべく後ろへ下がることにした。しかし、子供たちのために下がって前へ隙間を空けるとお年寄りが入ってきちゃうのだが「じいさんどいてあげなよ」とも言えないのであった(笑)。
やがてASIMOのデモが始まった。見ていると、あるパターンの動作を繰り返しているが、それが異なる会話につけられていくので、同じようには見えない。演出が練られているのだろう。
15分ほどでデモは終わったが、人間が補助する部分もうまく構成に取り入れられている。さすがに長年ロボットを見せているねと思った。
デモの中でASIMOが「今年で6歳になります」と言っていたが、人間と違い、年をとっても自分では成長しない。つい見ていて『鉄腕アトム』の天馬博士の気分になった。
わかるぞ天馬博士、あなたの寂しさが。なんちゃってね。
そして、会場の6歳未満の子供たちよ、君たちがあと6年たてば小学校の高学年だ。そのときにASIMOは君たちほどの成長はしてないのだ。次は君たちの手で成長させてほしい。
● 自立ロボットはまだまだ遠い道のりか?
その後、各ブースを見たが、いたるところでロボットは人に助けられていた。
大音量の音が鳴ったり、人の声もさまざまに聞こえ、会場は騒音のるつぼと化していた。おまけに人が多いので熱気もすごい。音声認識やセンサーで人間を認識するのはきびしかったかもしれない。
期待した動きをしないときに、「今日は調子が悪い」とか「ご機嫌ななめかな」などと、スタッフは言い繕う。
「さぁ、やってごらん」と言われて指示をした子供たちは、納得のいかないような顔になる。親たちはそうした子供の手をひいてブースから離れていく。
とにかく、各ブースでは人間がロボットを一生懸命に助けていた。
まだまだ、ロボットが人を助けるのではなく、人がロボットを助ける時代なのだろう。早く、ロボットに助けてもらいたいものだが、そうした時代はいつやってくるのか。
いや、ロボットは人を助けるものだというのが、人間側の勝手な思い込みなのかもしれない。人間を助けることを本能のように組み込むことはできるのだろうか。
いつかロボットが知性を持っても、それは人間とは異質のものとなるという話もある。異星人とも人間はコンタクトをしたことがない。異質な知性と人間はうまくやっていけるのだろうか? 人間同士は共同幻想の上にあるので社会は成り立っているという心理学者もいるぐらいだ。
そうした考えで頭の中はいっぱいになった。
日暮れていく秋葉原を後にして外へ出ると、メイド服姿のおねーちゃんたちがティッシュを配っていた。君たちの代わりをロボットができるようになる日は、まだまだ遠いのかねぇと考えつつ電車に乗った。
地元駅について思い出した。ファンを買ってくるのを忘れたことを。ぎゃふん(T_T)。
2006/11/10 00:03
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