「マイコンカーラリー穴吹オープン2009」が高松で開催

~中国・四国地区唯一のオープン競技会 発足


マイコンカーラリー穴吹オープン2009

 12月13日、学校法人穴吹学園 専門学校穴吹工科カレッジが、自律走行ロボットカーによる競技会「マイコンカーラリー穴吹オープン2009」を開催した。四国3県から、高校生の部に8校29台、一般の部に9台のマイコンカーが出場。自作マシンのタイムを競った。

 マイコンカーとは、マイクロコンピュータ、走行用モータと操舵用のサーボモータ、およびセンサーを装備した自律型車輪走行ロボットだ。このマイコンカーが、規定コースの白線をセンサーで感知し、プログラムで自律的に車体をコントロールしながら高速走行する競技をマイコンカーラリーと呼ぶ。

 マイコンカーラリー競技は株式会社ルネサステクノロジーが提唱し、1996年に第1回全国大会を開催。マイクロコンピュータ技術の啓蒙とプログラミング技術の普及を目的に、今年で開催15年目を迎えた。参加者区分には、「高校生の部」「一般の部」がある。

 昨年度までは、全国各地で秋に開催される地区大会、1月に札幌で開催される全国大会で、「高校生の部」と「一般の部」が同時開催されていた。しかし本年度から、一般の部は地区予選を廃止し、東京秋葉原の全国大会に一本化された。

 穴吹学園は、マイコンカーラリーに2006年から出場している。一般の部の地区予選廃止により、本年度以降の出場を見合わそうとしたそうだ。ところが、地元の高校でマイコンカーラリーの指導にあたっている先生方から、「地方大会での一般の部の開催」を強く望む声を受け、「一般の部」と「高校生の部」を統合したオープン形式の競技会として開催する運びとなった。

参加者記念写真市原唯夫校長(学校法人穴吹学園 専門学校穴吹工科カレッジ)会場となった学校法人穴吹学園 専門学校穴吹工科カレッジ

全長51.06mのコースで、自作マイコンカーが0.01秒を競う

 既述のようにマイコンカーラリーは、黒地に白のラインが描かれたコースを周回しタイムを競う競技だ。コースは、直線、カーブ、90度クランク、傾斜、レーンチェンジなどの課題で構成された複雑なレイアウトだ。今回は、全長51.06mのコースが用意された。

 ゲートをスタートしたマシンは、直線からクランク・カーブを抜けて、傾斜10度の坂を上り、坂の上でカーブした後、速度を制御しながら傾斜を下る。下り坂の直後のカーブを抜けると、長い直線からS字カーブが待っている。最後のクランクを通過し、蛸壺のようなカーブをクリアすると、難関のレーンチェンジが待っている。最後のカーブを通過したら、後は、ゴールまで一直線だ。

 通常のマイコンカーラリーでは、2台のロボットが同じコース上を半周遅れの形で、同時にスタートする。今回は1台ずつ、午前と午後に2回走り、タイムが短いものを記録とした。

地区大会と同レベルの複雑なコース。全長51.06mゲートが開いたことをセンサで検知して、マイコンカーが飛び出すスタートから直線を走って、クランク
クランクを曲がりきれずコースアウトするマイコンカーが多かったカーブ・クランク・カーブが続く難所立体交差。坂の上でコースがカーブしている
直線からRのキツイS字カーブ蛸壺のような角度のカーブ2007年から新たに追加された難易度の高いレーンチェンジ
マーカーをセンサで読み、レーンチェンジプログラムに遷移車体を振ってラインが途切れた狭いエリア内でレーンをチェンジする
車検では、傾斜を登坂できるか、立体交差をくぐれるかチェックを受ける参加者は、昼休み中にも試走を繰りかえし熱心に調整をしていたピットで最終調整をする参加者達

 高校生部門で優勝したのは、香川県立高松工芸高校3年の石田倖輔君が製作したブラックアローだった。ブラックアローは、1回目に14秒17、2回目に13秒71と記録を縮めて優勝した。

 石田君のマシンは、車体フレームにカーボンを使い軽量化、重心を低く抑えて設計したのが特徴だという。アームの先端に並んだアナログセンサで白線を読み、ストレートは全速力でカーブはスピードを落として確実に走行する。

 石田君は高校生最後の四国地区大会をインフルエンザのため、欠場したそうだ。「全国大会に行けないのは悔しいけれど、ここで優勝できて嬉しい。高校を卒業してもマイコンカーラリーを続けたい」と語った。

 13秒80のタイムで2位となった林 大崇君(香川県立高松工芸高校3年)の「白銀」は、四国地区大会2位の成績で全国大会へ出場する。「全国大会に向けて、いい調整の場になった。全国大会では入賞を目指したい」と抱負を語った。

優勝したブラックアロー(石田 倖輔君/香川県立高松工芸高校3年)【動画】優勝したブラックアロー(石田 倖輔君/香川県立高松工芸高校3年)の走行。記録は13秒71【動画】2位の白銀(林 大崇君/香川県立高松工芸高校3年)の走行。記録は、13秒80
【動画】3位の唯走(池田 紘章君/香川県立三豊工業高校2年)の走行。記録は、13秒92【動画】Wリンク(合田 直樹君/香川県立三豊工業高校3年)は、MCR四国地区大会で優勝した。全国大会での活躍も期待したい【動画】モーターやセンサに制限があるBasicマシンで出走したU.S.A(和田 一輝君/香川県立高松工芸高校2年)。記録は26秒99だった

 一般の部は、高校生の部で1,2位となった両名を指導する堤谷孝章教諭の「δS4」が優勝した。堤谷氏は、今夏に秋葉原で開催された「第1回ルネサスマイコンカーラリー競技会」でも7位入賞と活躍している。自分自身が、競技に参加し技術を向上させ、それを生徒達へフィードバックしているという。堤谷氏は、「全国大会の1ヶ月前に本大会のような場があると、地区大会後に搭載した新しい機構やプログラムを試す機会となる。全国大会への最終調整の場としても、多いに活用できる。また、地区大会で実力を発揮できずにいた生徒にとっても、リベンジする機会になって非常にありがたい」と大会の開催を喜んだ。

 大会を企画実行した松田圭司氏(専門学校穴吹工科カレッジ 教務部)は、来年以降も本大会を継続し、高校生だけでなく一般の部の参加者も多く参加してもらい、四国地方でのマイコンカー愛好者の裾野を広げていきたいと語った。

 四国ではマイコンカーラリーが盛んで、特に香川県は過去の全国大会おいて優勝を含め、優秀な成績を納めてきた。本大会で各校の交流が盛んになれば、互いに切磋琢磨し一層の技術向上が進むだろう。

【動画】δS4(堤谷 孝章氏/香川県立高松工芸高校教諭)の走行。記録は13秒87松田 圭司氏(専門学校穴吹工科カレッジ教務部)
【高校生の部】
順位カーネーム製作者記録
優勝ブラックアロー(石田倖輔君/香川県立高松工芸高校3年)13.71
2位白銀(林 大崇君/香川県立高松工芸高校3年)13.80
3位唯走(池田紘章君/香川県立三豊工業高校2年)13.92
4位Wリンク(合田直樹君/香川県立三豊工業高校3年)14.00
5位MTY++(岸上尚哉君/香川県立三豊工業高校2年)14.02
6位天破流(下津和也君/香川県立高松工芸高校3年)14.37
7位RAIZING(黒岩裕之君/香川県立多度津工業高校3年)14.59
8位一夜漬け(長谷川 優君/香川県立三豊工業高校3年)14.63
9位GEORGIA(小林 優君/徳島県立貞光工業高校3年)15.37
10位SONIC(白川貴也君/香川県立三豊工業高校1年)15.47
11位マブチマスター(富田将吾君/香川県立三豊工業高校3年)15.84
12位ジェネクスエンペラー(川畑省太君/香川県立志度高校3年)16.39
13位ジャンクスピリット(網野尚喜君/香川県立志度高校3年)17.78
14位BMW(八木貴之君/香川県立高松工芸高校3年)24.27
15位クロガネ(小谷広夫君/香川県立高松工芸高校3年)24.59
16位BOSS(市川聖君/徳島県立貞光工業高校3年)25.17
17位SW(柳生健吾君/香川県立三豊工業高校1年)26.40
18位U.S.A(和田一輝君/香川県立高松工芸高校2年)26.99
19位ロイヤル・ハット(長井亮君/愛媛県立今治工業高校3年)42.56
優勝したブラックアロー(石田 倖輔君/香川県立高松工芸高校3年)13.71白銀(林 大崇君/香川県立高松工芸高校3年)
【一般の部】
順位カーネーム製作者記録
優勝δS4(堤谷孝章氏/香川県立高松工芸高校教諭)13.87
2位拳禅一如(勘原利幸氏/香川県立三豊工業高校教諭)14.29
3位熊九郎(猪熊伸彦氏/香川県立高松工芸高校教諭)14.33
4位RUNNER(福永信雄氏/香川県立多度津工業高校教諭)14.42
5位suzupy!(本行圭介氏/香川県立三豊工業高校教諭)14.72
6位白虎王(藤本憲治君/専門学校穴吹工科カレッジ電気通信学科2年)28.76
優勝の堤谷 孝章氏(香川県立高松工芸高校教諭)2位の勘原 利幸氏(香川県立三豊工業高校教諭)


(三月兎)

2009/12/24 21:16