秋葉原にて開催された「第1回ルネサスマイコンカーラリー競技会」レポート

~全国から集まった2部門合計150名以上の選手が熱戦を展開


一般部門とオープン部門合わせて150名を超える選手が集まった第1回ルネサスマイコンカーラリー競技会

 8月23日(日)、秋葉原UDXビル2Fの「AKIBA_SQUARE」にて、マイコン搭載の自律走行型車両を利用したライントレース系競技「ルネサスマイコンカーラリー競技会」の第1回が開催された。社会人や大学生が参加できる一般と、高校生(もしくは今年4月1日時点で満18歳未満)が参加できるオープンの2部門を開催。エントリーは前者が113名、後者が49名のほぼ定員という大盛況で開催された。その模様をお届けする。

ルネサスマイコンカーラリー競技会とジャパンマイコンカーラリー大会

 ジャパンマイコンカーラリーは、1996年から毎年北海道札幌国際情報高等学校で全国大会が開催されている、国内では非常に歴史のある自律制御車両によるライントレース系の競技だ。現在こそ、自動車型ロボットという見方もできるが、まだそんな見方があまりされていなかった時代から続けられてきたエンジニア系の大会だったのである(今でも、あまりロボットという見方をしている選手は少ないのではないかと思う)。それが、Basic Class部門が新設されるなどして、高校生の参加がさらに増えることが予想されていることから、一般部門と高校生部門をそれぞれ独立させ、個別に大会を行なうこととなった。

 2010年大会から、ジャパンマイコンカーラリー大会に参加できるのは、高校生(および開催年4月1日時点で満18歳以下)のみ。そして一般部門は、昨年まで毎年8月に開催されてきた横須賀大会を発展させる形で全国大会に格上げし、名称も新たに「ルネサスマイコンカーラリー競技会」として、今回第1回(2009年大会)を開催したというわけだ。ただし、ルネサスマイコンカーラリー競技会にも、オープン部門として高校生部門が用意された。

全長80.4mのコースを2台で勝負して先にゴールした方が勝者に

 同競技会では、幅300mm、高さ150mm以内の完全自走式の車両を独自で製作して使用する。全長、重量、材質などの制限はない(そのほか吸引機能はなし、電気二重層コンデンサの使用は不可、などいくつか規定はある)。ただし、事務局で承認されたマイコンボードを必ず搭載する必要がある。また、電源やバッテリとしては単三アルカリ電池(LR6)または単三2次電池(1.2V)を8本まで使用できる。これらに違反すると、車検にパスできず、走行できないのだが、検査時間内に改善して再度の検査を受け、パスすれば走ることは可能だ。

マイコンカーは、一般的に先読みセンサーを先端につけた長いノーズを持つオープンホイールスタイルが基本マイコンカーの走行シーンマイコンカーを前から
後方も工夫がされており、フロント部が浮き上がらないよう、補助輪を備えているマシンも多い中には、このような変わったデザイン(コンセプト)のマシンも車検の様子。パスしないと走れないが、時間内なら改修して再度車検を受けられる

 コースは、カーブ、90度クランク、レーンチェンジ、アップダウンを含んだ複雑なレイアウトで、なんと全長80.39mもの長さがある。マイコンカーのコースレイアウトとしては、長めの部類に入るようだ。見た目的にはコースがインとアウトと2つ並んでいるのだが、進んでいくと途中でそのまま入れ替わるようにつながっている。アウト(イン)側からスタートしたら、イン(アウト)側のスタート/ゴールのアーチをくぐって1周、そして再びアウト側のアーチを通過してゴールという具合で、左回りで2周するようなイメージだ。

 コースは黒地の中央と左右の淵に太い白線が描かれており、いうまでもなくそれをトレースして走行していく。レーンチェンジでは中央の白線が一時的になくなったり、90度クランクでは直角にコースがまがったり、カーブも場所によっては複雑なS字が連続したりと、難易度は結構高めだ。そのため、始まって最初のコーナーで飛び出すようなマシンもあり、かなりの技術がいることがわかる。

予選のコースレイアウト(1コーナーの辺りから)。右側のアーチがゴール/スタート地点。予選は左回りスタート/ゴールのアーチ。スタートバーが開くと、マイコンカーはそれを感知して自動で発進アウトコースからまずは紹介。ブリッジを昇って右への1コーナーとなる。その後、すぐ降りだ
ブリッジを降った後は左クランク。降りで余計に速度が出るので、減速が重要となるクランクの先はいりくねったS字セクション。速度を出しにくい上に距離もあるので、ここで差が出やすいS字セクションの後は右クランクで、インコースの立体交差下をくぐると、右→左の2連続レーンチェンジ
ダブルレーンチェンジを別角度から。このあと右へのカーブを抜けると、イン側の赤のアーチが待つ続くインコースは、赤アーチからほどなくヘアピンがあり、それをクリアすると左クランククランクの後の左→右のコーナーを抜けると、ブリッジ。しかも、ブリッジ上には左レーンチェンジが待つ
ブリッジを降ると、ダブルヘアピンとトリプルクランク。クランクは、右→左→右と続くトリプルクランクを抜けると、アウト側の青アーチが待つ直線へゴールのアーチ。イン側スタートの場合は、インとアウトの順番がいう間でもなく逆になる
予選コースレイアウト。時計回り。公式サイト掲載のPDFより抜粋

 競技はまず予選が2回行なわれる。参加者数が非常に多いので、グループ分けが成されているのだが、一般の部はAからFまでの6グループ。1つのグループは、多くて20人、少なくて18人ほど。2人ずつ走って合計2回タイムを計測し(イン側とアウト側とスタート地点を変えて行なう)、いい方が記録となり、上位32名が決勝に進出できる。オープン(高校生)部門は、G~Iの3グループで、1グループ16~17人。同じように2人ずつで合計2回走り、いい方を記録とし、上位8名が決勝に進出できるというルールだ。エントリーをしていても、マシンの製作が間に合わず、棄権も多かったため、単独で走行している選手も多かった。また、一方の選手が速く、もう一方が遅い場合、コースは一筆書きができる構造なので追いついてしまう可能性があるのだが、その際は遅いマシンは取り上げる必要がある。取り上げた場合は、その後単独で改めて予選を行なう。なお、取り上げに失敗して速いマシンに追突されてしまった場合は、やむを得ない場合はおとがめなしだが、故意と見なされた場合は走行妨害として失格もある。

どの選手もコースへのセットは真剣そのもの。スタート時の姿勢で1/100秒のタイムが変わる可能性があるスタートバーが開き始めた瞬間。スタートバーに触れるとフライングで失格となる中には、スタートバーが開いた後も走り出さず、スイッチの入れ直しなど行なう選手も
S字区間を快走するマシン。コーナーのR(半径)が小さいので、非常にタイトなセクション残念ながらコースアウトを喫してしまうマシンも多数

 予選結果だが、一般部門のトップはゼッケン89番の「件」(クダン)で、20秒31。今年1月に開催されたジャパンマイコンカーラリー全国大会(2009年大会)の一般部門でも優勝している選手のマシンである。一般部門のエントリ台数113台の内、予選を完走した(2回の内1回でも完走してタイムを計測できた状態)のは40台で、完走率35.4%だった。オープン部門のトップはゼッケン201番の「テスター柳」(テスターヤギ)で、23秒31。オープン部門のエントリ台数は49台で、完走台数は19台、完走率は38.8%だった。

一般部門の予選トップは、20秒31を記録した「件」。もう少しで20秒を切りそうな勢いだったオープン部門の予選トップは、岐阜県からやって来たテスター柳。ちょうど「件」から3秒遅れの23秒31を記録

 各部門の決勝進出者の予選結果は以下の通りで、決勝トーナメントの組み合わせは画像をご覧いただきたい。なお、決勝トーナメントの組み合わせは、1回戦で予選1位が32位と、2位が31位と対戦という具合で、予選が上位であればあるほど有利になる仕組みだ。予選結果の内容は、タイム、ゼッケン、カーネームだ。なお、オープン部門のみ、高校対決的な雰囲気もお見せしたいので、校名を合わせて掲載させていただく。

【一般部門予選結果】   1位:20秒31 89 件(くだん)   2位:20秒64 54 テスタープロト   3位:21秒01 77 Infiny(インフィニー)   4位:21秒49 35 撞木鮫零弐(ハンマーヘッドシャークゼロツー)   5位:21秒59 82 オグラケ@(オグラケアットマーク)   6位:22秒04 72 STIKK(エスティアイケイケイ)   7位:22秒36 51 δS4(デルタエスフォー)   8位:22秒49 27 黒鷲(クロワシ)   9位:22秒74 57 H2-2009(エイチツーニーゼロゼロキュー)  10位:22秒83 84 GodArthur5(ゴッドアーサーファイブ)    11位:23秒16 48 船橋技専2009(フナバシギセンニーマルマルキュウ)  12位:23秒25 41 MMC10(エムエムシーイチゼロ)  13位:23秒28 75 Suzupy(スズピー)  14位:23秒42 98 ウォータースキッパー  15位:24秒12 17 スピードマスター  16位:24秒13 47 FRAGILE009(フラジールゼロゼロナイン)  17位:24秒29 107 刃走(ジンソウ)  18位:25秒16 104 NAME(ネイム)  19位:25秒48 103 BlackWing(ブラックウィング)  20位:25秒53 111 MM07改(エムエムゼロナナカイ)    21位:25秒80 64 ALLEXTypeX(アレックスタイプエックス)  22位:26秒69 36 ボイジャー2号  23位:27秒22 108 ヤヤブサ2  24位:27秒38 63 RedHood_F1(レッドフードエフワン)  25位:27秒76 42 ☆riv.改(リヴォルツィオーネカイ)  26位:28秒04 59 ボーダーレス  27位:28秒18 40 ×とんかち×(トンカチ)  28位:31秒14 58 さめず鮫吉B4(サメズサメキチビーフォー)  29位:31秒30 80 隼ODS09.ver(ハヤブサオーディーエスゼロキュウバージョン)  30位:32秒15 31 ヨルムンガンド  31位:32秒98 49 真風雲竜虎(シンフウウンリュウコ)  32位:33秒88 53 RB2009(アールビーニゼロゼロナイン)    【オープン部門予選結果】  1位:23秒31 201 テスター柳(テスターヤギ)/岐阜県立可児工業高等学校  2位:23秒63 209 最速/香川県立多度津高等学校  3位:24秒04 240 モスキート/香川県立多度津高等学校  4位:24秒46 235 Fahrenheit(ファーレンハイト)/東京都立小金井工業高等学校定時制  5位:25秒42 246 ガキ/香川県立多度津高等学校  6位:25秒72 230 白楊の綾鷹(ハクヨウノアヤタカ)/栃木県立宇都宮白楊高等学校  7位:25秒89 243 白楊の赤い彗星/栃木県立宇都宮白楊高等学校  8位:26秒12 244 鳥兜(トリカブト)/長野県駒ヶ根工業高等学校
一般部門決勝トーナメント組み合わせ。カーネームの脇の赤い数字は予選順位オープン部門決勝トーナメントの組み合わせ。赤い数字は、一般部門同様に予選順位

一般部門の決勝トーナメントレポート

 決勝トーナメントは、予選とコースはほぼ同じだが、逆送する形となり、難易度が上がっている。勝負は、ほぼ予選結果の速い選手が順調に勝ち進んでいく展開となった。準々決勝から動画を掲載する。準々決勝第1試合は、予選1位のゼッケン89「件」(アウト側スタート)対予選7位のゼッケン51「δS4」(イン側スタート)。1周してきてインとアウトが入れ替わり、折り返しとなるゲートを通過した時点でほぼ同時。ゴールもかなりの接戦が予想されたが、残りわずかというところで、まずδS4が電池切れか何かでスローダウンしてストップ。「件」の勝ちが決まったかと思われたが、このままちゃんと走り切らなければ、勝利とはならない。しかも、そのまさかが起きてしまい、最終コーナーでコースアウト。両車リタイヤとなった場合は、前回の出走時のタイムが速い方、この場合はベスト16(2回戦)のタイムが対象になるルールで、件の勝利となった。

 続く第2試合は、予選5位のゼッケン82「オグラケ@」(アウト)対予選13位のゼッケン75「Suzupy」(イン)。折り返し地点で早くもオグラケ@が大きくリードし、そのまま走り切って勝利となった。そして第3試合は、予選2位のゼッケン54「テスタープロト」(アウト)対予選8位のゼッケン27「黒鷲」(イン)。黒鷲が、インコースを半周しない内にコースアウトしてしまう。そのまま、テスタープロトが快走して、勝利を手にした。最後の第4試合は、予選6位のゼッケン72「STIKK」(イン)対予選3位のゼッケン77「Infiniy」(アウト)。折り返し地点は、アウト→インのInfiniyが一歩リードという具合で通過していく。最後は接戦となり、わずか1台分ぐらいの差でInfiniyが先にゲートをくぐった。

決勝トーナメントコースレイアウト。予選の逆走で、反時計回りとなる。公式サイト掲載のPDFより抜粋【動画】準々決勝第1試合の件(89)対δS4(51)。アウトスタートが件で、インがδS4【動画】準々決勝第2試合のオグラケ@(82)対Suzupy(75)。アウトがオグラケ@で、インがSuzupy
【動画】準々決勝第3試合のテスタープロト(54)対黒鷲(27)。アウトがテスタープロトで、インが黒鷲【動画】準々決勝第4試合のSTIKK(72)対Infiniy(77)。アウトがInfiniyで、インがSTIKK

 続いて準決勝は、第1試合がゼッケン89の件(イン)対ゼッケン82のオグラケ@(アウト)。序盤はいい勝負だったが、オグラケ@が1周しない内にまさかのコースアウト。それを横目で見つつ件はそのまま走り切り、20秒42を記録して決勝戦へとコマを進めた。第2試合は、ゼッケン54のテスタープロト(アウト)対ゼッケン77のInfiny(イン)。予選2位対3位の対決となった。勝負は、どちらかがコースアウトするといったアクシデントは起こらず、ともに走り切るが、テスタープロトの圧勝。20秒53を記録した。

【動画】準決勝第1試合の件(89)対オグラケ(82)。アウトがオグラケ@で、インが件【動画】準決勝第2試合のテスタープロト(54)対Infiny(77)。アウトがテスタープロトで、インがInfiny

 決勝戦の前に行なわれたのが、ゼッケン82のオグラケ@(イン)対ゼッケン77のInfiny(アウト)の3位決定戦。両車をタイムで比較すると、予選で見る限りではInfinyが0.6秒弱速く、Infinyの勝利の確立が高そう。スタートして、お互いにコースが入れ替わり、1周終了のゲートをくぐる時は、Infinyがリード。しかし、アウトコースの終盤にはS字とアップダウンがあるため、かなり時間がかかる。ここで、一気にオグラケ@が追いついてくると、鼻(先読みセンサー)差でInfinyの勝利。3位の座を獲得した。なかなかの好勝負であった。

 そして、決勝戦。予選1位と2位の対決となった。件(ゼッケン89)対テスタープロト(ゼッケン54)。テスタープロトがアウトスタートで、件がインスタートだ。準決勝のタイムでは、コンマ1秒の差で件が速く、6:4ぐらいで件の優勝というオッズか。しかし実際にスタートすると、折り返し地点のゲートを先に抜けたのは、テスタープロト。わずかに遅れて件が抜けていく。このリードをテスタープロトが活かしきれるのか、それとも件が逆転するのか? どうもアウトコース、特に終盤が時間を要するようなので、テスタープロトはここをどう攻略できるかがポイントとなりそう。

 逆に「件」は、そのままミスすることなくペースを保てれば、2周目は若干有利なインコースなので、逆転の可能性がある。終盤、ほぼ両車並んでいる状態。件は、あとはゴール直前の右クランク→タイトなヘアピンをクリアするのみ。一方のテスタープロトはS字を抜け、右クランクのあとの左カーブしながらのブリッジ越え。両車並ぶようにしてゴール直前のストレートに入ると、わずかに件が先行! そのままゴール、優勝となった。件は、ジャパンマイコンカーラリー全国大会の2009年大会一般の部も制しており、2連覇(2冠?)達成といっていいだろう。

【動画】3位決定戦。ゼッケン77のInfinyがアウトで、ゼッケン82のオグラケ@がイン【動画】決勝戦。ゼッケン54のテスタープロトがアウトで、ゼッケン89の件がイン

オープン部門決勝トーナメントレポート

 オープン部門の決勝トーナメントのコースも、一般部門と同様に予選とは逆走(コース自体は予選も決勝もどちらの部門も同じ)。オープン部門の決勝は、予選結果の通りに8選手による闘いで、関東、四国、中部などの高校生たちによって行なわれた。トーナメントの組み合わせは、一般と同じで予選で上位が有利になる組み合わせだ。1回戦は、第1試合が予選1位の「テスター柳」と8位の「鳥兜」、第2試合が4位の「Fahrenheit」と5位の「ガキ」、第3試合が2位の「最速」と7位の「白楊の赤い彗星」、第4試合が3位の「モスキート」と6位の「白楊の綾鷹」だ。勝者は、テスター柳、Fahrenheit、最速、モスキートとなっている。順調にベスト4が準決勝に進出したというわけだ。

 準決勝第1試合は、テスター柳(ゼッケン201)対Fahrenheit(235)。予選1位と4位の対決である。ちなみにテスター柳の予選タイム23秒31は、一般部門でも14位に相当する、決勝に進出できる立派なタイムである(オープン部門の決勝進出者8名は、一般部門でも全員決勝に進出できるタイム)。コースは、Fahrenheitがアウトで、テスター柳がインだ。しかし、スタートして早々にまさかのハプニング。テスター柳が、レーンチェンジの後の立体交差下をくぐろうとした時に早くもコースアウトしてしまったのだ。Fahrenheitはそのまま走り切り、24秒35で決勝に進出した。第2試合は、最速(209)対モスキート(240)。予選2位対3位の勝負である。コース取りは、モスキートがアウトで、最速がイン。しかし、両車ともに気合いを入れすぎたのか、開始早々にまさかの2台揃ってのコースアウト。結果、ルールで最速が決勝進出となった。

【動画】オープン部門準決勝第1試合のテスター柳(201)対Fahrenheit(235)【動画】準決勝第2試合の最速(209)対モスキート(240)。ちょっと気合いが入りすぎたか?

 決勝戦の前に行なわれたのが、3位決定戦。テスター柳(201)対モスキート(240)だ。テスター柳がアウトで、モスキートがインだ。勝負は、モスキートがここでもコースアウトしてしまい、テスター柳が完走できるか否かに勝負の焦点が移る。先ほどのテスター柳と同じような場所だったため、何かコースに問題があるのか、実は意外と難しい部分なのかも知れない。たまたま、何かの外乱光に影響を受けてしまったことや、速度重視で安定性を犠牲にしたプログラムを使ったために不安定になってしまったことも考えられる。一方のテスター柳は、その鬼門をさすがに今回はしっかりと走り抜け、ゴール。3位の座を手に入れた。この時は、23秒52というタイムを記録している。

 そして決勝戦。Fahrenheit(235)対最速(209)。最速がアウトで、ファーレンハイトがインだ。予選4位対2位の対決なので、通常なら最速が有利かと思われるが、先ほどはコースアウトしており、安定感ではFahrenheitの方が上のように感じる。そして実際に勝負がスタートすると、最速は不安定さを払拭できていなかったようで、スタートのゲートオープンで走り出さない。バッテリの問題だろうか? 結局、Fahrenheitがアウトに入ってきたため、衝突を避けるべく最速はコースから持ち上げられ、敗北が決定(もしFahrenheitがコースアウトして準決勝のタイムの比較になっても、コースアウトした最速に対し、Fahrenheitはきっちりタイムを出しているので、勝ちとなる)。Fahrenheitはそのままきっちりゴールし、24秒28を記録して優勝となった。

【動画】3位決定戦。テスター柳(201)対モスキート(240)【動画】決勝戦。Fahrenheit(235)対最速(209)

 この後、エキジビションマッチとして、一般部門優勝の件(89)対Fahrenheit(235)が行なわれた。が、優勝指摘が抜けたか、今度はFahrenheitが早々にコースアウト。対決らしい対決とはならなかったので、少々心残りである。

 また、今回、好評を博したのが、優勝者インタビュー時に披露された、両部門の優勝マシンのスーパースロー映像。先に一般部門の「件」の走りから紹介され、左へのレーンチェンジが映された。まるで、F1がモナコGPのヌーベルシケインを駆け抜けていくような、左→右の素早い切り返しは、技術的に素晴らしいのはもちろんだが、実に迫力がある。なお、ベストタイム賞も件が20秒31でゲット。ちなみに、どれだけの平均速度かというと、秒速約3.96m=時速約14.2km。

 スケール的には、マイコンカーは記者の目測で実車の7~8分の1ぐらい。クレイモデルで5分の1サイズのものを見たことがあるのだが、それほど大きくないし、同じくクレイモデルの10分の1ほど小さくはないので、その間ぐらいだろう。また、全長の制限がないため、クルマによって差があるので、少々幅があるというわけだが、それを実車に対するスケールスピードにすると約時速100kmぐらいになる。そしてオープン部門を制したFahrenheitは、右クランクをクリアするシーンが紹介された。左側のアウトいっぱい、後わずかで脱輪という路肩の白線を踏みながらのクリアで、こちらもまたなかなかの迫力。コーナーを早く抜けるためには、F1であろうとマイコンカーであろうと、コース幅をいっぱいに使うという鉄則は同じなので、見事といっていいだろう。

一般部門を制した件と製作者の徳永さん件のアップ。かなり細身で、フロント部やシャシーにカーボンを使用して剛性アップを図っているオープン部門を制したFahrenheitと製作者の榎本さん
Fahrenheitのアップ。こちらもシャシー剛性アップのためにカーボンを使用一般部門決勝トーナメントの結果オープン部門決勝トーナメントの結果
【動画】エキシビションマッチ【動画】件のスーパースロー映像【動画】Fahrenheitのスーパースロー映像
一般部門のベスト3。左から優勝の件、2位のテスタープロト、3位のInfiniyの製作者の3人一般部門の表彰台+ベスト8(ひとりはベスト4だが、4位以下はベスト8という表現をする)で記念撮影オープン部門のベスト3。左から準優勝の最速、優勝のFahrenheit、3位のテスター柳の製作者の3人

 この後のマイコンカーの競技会は、ジャパンマイコンカーラリー2010年大会の地区大会が、10月25日の北東北からスタートする。そして、2010年1月9日の北海道大会で全国の代表が決まり、翌10日に全国大会が行なわれる予定だ。前述したように2010年大会から高校生(および開催年4月1日時点で満18歳未満)だけの大会となる。経験を問わず参加できる「Advanced Class」と、初心者用の「Basic Class」の2部門があり、どちらも地区代表を決定し、全国大会が行なわれる形だ。スケジュールは以下の通り。各地区大会ともに参加者を受け付け中だ。カッコ内は開催場所。

【地区大会スケジュール】
・10月25日(日) 北東北(秋田県立大館工業高等学校)
・11月1日(日) 山形(山形県立長井工業高等学校)
・11月6日(金) 福島(福島県立清陵情報高等学校)
・11月8日(日) 九州(宮崎県立佐土原高等学校)※県大会代表者による大会
・11月8日(日) 東海(中部大学)
・11月21日(土)・22日(日) 北信越大会(富山県立大沢野工業高等学校)
・11月23日(月) 四国(香川県立志度高等学校)
・11月28日(土) 近畿(兵庫県立東播工業高等学校)
・11月29日(日) 中国(岡山県立岡山工業高等学校)
・12月6日(日) 北関東(栃木県立宇都宮工業高等学校)
・12月13日(日) 南関東(東京都立総合工科高等学校)
・2010年1月9日(土) 北海道(北海道札幌国際情報高等学校)

【全国大会】
・2010年1月10日(日) 開催場所:北海道札幌国際情報高等学校

 また、地区大会以外にも開催してほしいという要望が多いことから、2010年大会より「県大会」もスタートする。県大会は、参加者の多い沖縄を含めた九州地区のように、地区大会への予選として行なわれるところもあれば、試走会として行なわれるところもあるし、ほかのロボット競技と一緒に行なわれるようなケースもある。日程は以下の通り。カッコ内は開催場所だ。

・9月20日(日) 秋田(秋田県立大館工業高等学校)
・9月26日(土) 長崎(長崎県立長崎工業高等学校)
・9月26日(土) 宮崎(宮崎県立佐土原高等学校)
・9月27日(日) 栃木(栃木県立真岡工業高等学校)
・9月27日(日) 新潟(新潟県立柏崎工業高等学校)
・10月3日(土) 鹿児島(鹿児島県立鹿児島工業高等学校)
・10月9日(金) 沖縄(沖縄県立美里工業高等学校)
・10月10日(土) 長野(下諏訪体育館)
・10月18日(日) 福岡(福岡県立福岡工業高等学校)
・10月19日(木) 鹿児島(鹿児島県立鹿児島工業高等校)
・10月23日(金) 群馬(未定)
・10月24日(土) 佐賀(佐賀県立塩田工業高等学校)
・10月25日(日) 熊本(熊本県立八代工業高等学校)
・12月12日(土) 静岡(静岡科学館る・く・る)
・2010年1月24日(日) 東京(東京都立総合工科高等学校)
・2010年2月 岡山(岡山商科大学附属高等学校)
・2010年2月 長野(岡谷市内)
・2010年3月 宮崎(未定)

 以上、ルネサスマイコンカーラリー競技会の第1回大会、いかがだっただろうか。今回は、秋葉原での開催だったため、一般のギャラリーも多かったと思われるが、そうした人たちからも驚きの声が上がったり、接戦に興奮の声や、拍手などがわき上がっていた。マイコンカーは、作るためにはものづくりとプログラミングの両方の知識と技術がかなり必要だが、観戦する分には誰でも楽しめる。片手で持てるサイズの自律型車両が、人のコントロールを受けず、かなりの速度で走っていく姿は、技術の凄さを見て取れるので、誰でも初めて見たら驚いたり感心したりするはずだ。実車によるレースとはまた異なった感動を味わえるのは間違いない。この後のジャパンマイコンカーラリー2010年大会の県大会、地区大会、そして全国大会は、前述したように高校生の大会となる。エンジニア系高校生たちが競い合う、技術の甲子園のひとつとして、開催場所に足を運べる人は、ぜひ応援しに行ってあげてほしい。



(デイビー日高)

2009/9/4 21:34