産総研、上肢に障害のある人の生活を支援するロボットアーム「RAPUD」を開発
9月28日、独立行政法人 産業技術総合研究所知能システム研究部門サービスロボティクス研究グループが上肢に障害のある人の生活を支援するロボットアーム「RAPUD(Robotic Arm for Persons with Upper-limb Disabilities)」を発表した。
RAPUDは小型軽量と安全性、そして低コスト化を目指して開発されたロボットアーム。アーム部に5自由度、ハンド部に2自由度の全体で7自由度を有し、高さ75cmで全長は40~100cmまで伸縮する。ベース部分に制御用CPUボードやモータドライバ等の制御系を内蔵し、制御系も含めた全体重量は6kg。ハンド部は0.5kgの可搬重量を実現した。
RAPUDの一番の特徴となるのが、アーム部の3自由度目に配置された直動伸縮機構である。従来の生活支援型ロボットアームは回転関節のみで構成されていることが多かったが、RAPUDでは回転関節部による挟み込みの危険や、アームの肘部によるユーザーの視野妨害を低減させるため、複数のブロックを連結させてリンクを伸縮させる直動伸縮機構が開発され、採用されている。
また、外装の鋭角部の削除や安全認証取得済みの通信モジュールの採用、各種センサーの2重化および制御モジュールの分散化などによって高い安全性・信頼性を確保し、将来の安全認証の取得を視野に入れたものとなっている。さらに本体は着脱式の機構を備え、電動車いすやベッドサイドへとRAPUDを簡単に取り付け・取り外しが可能であり、上肢に障害のある人が必要とする、さまざまな場面での支援が行なえるという。
RAPUDは産総研が実施した産学官連携プロジェクトである産業変革イニシアティブ「ユーザー指向ロボットオープンアーキテクチャ(UCROA)」で開発された、物流支援ロボット、対人サービスロボット、サイバネティックヒューマン「HRP-4C」の3種類の実用化指向ロボットプロトタイプのうちの、対人サービスロボットに位置づけられる。
開発の経緯について知能システム研究部門副研究部門長の横井一仁氏は、UCROAを利用することによってアクチュエータやセンサーなどのRTモジュール群がRTミドルウェアによって結合され、ユーザーがそのシーズに合わせてロボットを構築することが可能になると述べ、実際にRAPUDや他のプロトタイプロボットで用いられているアクチュエータやセンサーなどのRTモジュール群とその規範・仕様、ロボットシステムのアーキテクチャはWebサイトにて公開されている。
(独)産総研、知能システム研究部門副研究部門長の横井一仁氏。 | ユーザー指向ロボットオープンアーキテクチャ(UCROA)の概要。 |
RAPUDは開発段階から筋ジストロフィーや頚椎損傷などによって上肢に障害を有するユーザーによる操作評価実験評価が行なわれており、その評価結果を随時開発にフィードバックすることによって実用化に向けた改良が続けられている。実際に開発に携わった尹祐根(ゆん・うぐん)研究員は今後の予定として、ユーザーの評価実験によって製品として広く普及させることを目指し、台車やマイク、カメラなどの他のロボット技術要素とRAPUDを組み合わせることでユーザーのさまざまな要求に容易に対応することが可能なシステムの構築を行なうという。また、作業療法士などの専門家との連携により、RAPUDそのものの開発だけでなく、販売に向けた運用面での開発も進めていくとの方針を示した。
RAPUDはすでに産総研技術移転認定ベンチャーであるライフロボティクス株式会社へ知財や技術移転が行なわれており、今後、ライフロボティクスから80万円ほどの価格での販売を目指しているという。また、9月29日(火)~10月1日(木)に東京ビッグサイトで開催される国際福祉機器展、および10月15日(木)、16日(金)に産総研つくばセンターで開催される産総研オープンラボにおいて展示される予定である。
2009/9/29 15:08