影木准子の海外ロボットニュース ダイジェスト

~新型掃除ロボット発表やASUSTekのロボット市場参入など

Reported by 影木准子

 あっという間に2009年も終わりに近付きました。12月に米国を中心に注目を浴びた海外のロボットニュースをお届けします。

新しい家庭用掃除ロボット

 ここ数年、水面下で開発を続けていたシリコンバレーのベンチャー企業、Neato Robotics(ニート・ロボティクス)が新しい家庭用掃除ロボットを2010年2月に発売すると発表し、その姿を初めて公にした。プレスリリースはここ

 新製品名は「Neato XV-11」で、価格は399ドル。掃除ロボットの先駆的商品であるアイロボット社の「ルンバ」が部屋の中をランダムにぐるぐる周りながら、最終的に部屋全体をきれいにする仕組みであるのに対し、新しいXV-11はレーザーを搭載し、SLAM (simultaneous localization and mapping)技術を使ってまず部屋のマップを作り、端から端まで掃除する。マップは随時更新されるので、例えば掃除の途中で家具を移動させても対応できるという。

Neato XV-11(写真提供:Neato Robotics)

 このニュースを最初に大きく報じたのがPC Magazineで、同誌の記者がニート社の最高経営責任者、Max Safai氏をインタビューしている。

 また、ブログのHizookは掃除ロボットそのものよりも、安価なレーザー式測域センサーの出現がホビー・ロボットの世界に大きなインパクトを与えると主張し、IEEEの技術情報サイトSpectrumも同意している。

ASUSTekがロボット市場に参入

 ネットブックの「Eee PC」を生産する台湾のパソコン・メーカー、ASUSTek Computerが家庭用ロボット市場に参入する。Robot Stock Newsによると、台湾と中国で掃除ロボット「ECleaner」を発売するという。ネタ元はTaiwan Economic News。ルンバとよく似ているが、機能についてはRobot Stock Newsの記事が詳しい。動画はここで見ることができる。

 ASUSTekはまた、Googleの携帯用基本ソフト「アンドロイド」を搭載した教育用ロボット「EeeBot」も開発するらしい。PC Worldが報じた。

 記事によると、アスーステックは台湾政府の資金的援助を受けたプロジェクトの一つとしてEeeBotを開発する。ゴールは「子供とやり取りできる、手ごろな価格のロボットを作ること」。ロボットにまつわるコンテンツとサービスを開発・販売することで、ロボットのハードの価格を抑えようという計画らしい。プロジェクトで取り上げる開発テーマは、HRI(Human Robot Interaction、人間とロボットのインタラクション)や音声・画像技術、ナビゲーションと位置決めなどだ。計画が実現すれば約2年間で試作品ができるとアスースは考えているようで、実物がお目見えするのはまだ先の話ではあるが、このニュースは随所でピックアップされ、話題になった。

アイロボット元社員がルンバ付属品の販売会社を設立

 アイロボット出身の技術者2人が新会社「Robot Add-Ons」を設立した。英語で「add-on」とは「追加物」ないしは「拡張機能」という意味で、新会社は掃除ロボット「ルンバ」の付属品を販売する。製品一覧はホームページにあるが、例えばルンバが狭いところに挟まって動けなくなることを防ぐUnicorn Bumper Extenderや、ロボットの移動区域を制限するバーチャルウォールを使わずにロボットを「立入禁止」にできるKeepOff Matなど。

 同社のYouTubeチャンネルでそれぞれの付属品の使い方を見ることができる。同社のサイトを見ると、ルンバに限らず、今後出てくるさまざまな家庭用ロボットの使い勝手を良くする付属品を開発・販売して行く方針のようだ。

アイロボット元会長の新会社

 一方、アイロボット出身の有名人といえば、元会長のヘレン・グレイナー氏。同氏はThe Droid Worksという新会社を設立したことが今年春に明らかになったが、Mass High Techによると、このほど社名変更した。新社名はCyPhy Works(サイファイ・ワークス)。Googleの携帯向け基本ソフト「アンドロイド」を搭載した米モトローラの新しいスマートフォンの名前が「Droid」になったのが、グレイナー氏が社名を変えることにした理由のようだ。

 またこの記事によると、サイファイ社は橋や高速道路、ダムなどの公共インフラを点検するUAV(無人航空機)を開発しており、このほど商務省の米国標準技術局(NIST)から240万ドルの研究開発助成を受けた。ジョージア工科大学関連の組織と共同で開発を進めるとある。

イラク反政府勢力が米軍のUAVビデオ画像を傍受

プレデター(写真提供:General Atomics社)

 イラクにおける過激派が、米軍の無人偵察機「Predator(プレデター)」の撮影画像を傍受し、広範囲に入手していたことが明らかになった。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の特ダネ。

 米軍が昨年12月に捕らえたシーア派過激派のパソコンから画像が見つかり、この問題が発覚したという。今年7月には過激派が所有する別のパソコンにも画像が保存されているのが分かり、傍受が定期的に行なわれていた模様。傍受には26ドルで市販されているソフトウエア「SkyGrabber」が使用された。この問題によって直接的な被害はないと軍幹部は主張しているが、過激派は画像情報を使って米軍の監視下にある道路や建物を知ることができるとWSJは指摘している。米軍は動画フィードを暗号化することで問題を解決する考えだが、これまで暗号化されていなかったのは驚きだ。

 WSJによると米空軍はUAVへの依存度を増しており、同軍の2010年の予算案では航空機全体の36%を占めている。プレデターはサンディエゴにあるGeneral Atomics Aeronautical Systemsの製品。

CMUの月面掘削ロボット

Astrobotic Technologyが開発中の月面探査ロボットのプロトタイプ図(写真提供:Astrobotic Technology社)

 完全自動制御の無人ロボット車レース「Urban Challenge」の優勝チームを率いたことで知られるカーネギー・メロン大学のレッド・ウィッテイカー教授の設立したロボットベンチャー、Astrobotic Technologyが、米航空宇宙局(NASA)から月面掘削ロボットの研究開発助成を受けることが決まった。プレスリリースはここ

 同社は民間資本での月面探査を目指す「Google Lunar X Prize」に参加予定で、独自の月面探査ロボットを開発中だ。

ゲームと融合、バーテンダー・ロボット

 オーストリアのウィーンで開かれる恒例のバーテンダー・ロボット・コンテスト、「Roboexotica」。今年は3位で入賞した「Bartris+Adult Mario」が人気を集めた。2台のロボットで、いずれもコンピューターゲームとロボットを「融合」したのがミソ。「Bartris」は、テトリスで遊ぶと、色の並び方によってコーラやお酒などが管を伝って出てきて、コップに注がれる仕組み。「Adult Mario」は同様に、スーパーマリオブラザーズの遊び方によって飲み物がミックスされる。マリオが死ぬと、お水がどっと出てくるのにご注意。

日本のロボットで注目されたもの

 今月、海外で最も話題になった日本のロボット関連ニュースはおそらく、そごう・西武が新春に売り出すと発表した「ロボット福袋」。2,010万円の福袋を購入すれば、ロボット開発会社のココロが、本人そっくりのロボットを作ってくれるというもの。記事はPink TentaclePlastic Palsを起点に、Daily Mailなど多数。

 ROBO-ONE Entertainmentによるロボットダンスコンテストに出場したロボット「ドカはるみ」のこの映像も大きな話題に。人気ブログのBoing BoingEngadgetに取り上げられ、広がった。

 このほか、英語圏のブログ、ニュースサイトではRobovie-IIの実証実験、日本工業大学の120cm大のヒューマノイドロボット、料理ロボットの「Cooky」の報道が目立った。

 Robot Watchでのコラム「海外ロボットニュースダイジェスト」は、今回が最終回となってしまいました。今後、海外のロボットに関する最新情報、日本のロボットの海外評判に関心のある読者は、記者のサイト「GetRobo」をご覧ください。



2009/12/25 18:37