影木准子の海外ロボットニュースダイジェスト

Reported by 影木准子

 11月のダイジェストはまず海外で注目された日本のロボットの紹介から。

日本のロボットで注目されたもの

 このほど東京ビッグサイトで開かれた国際ロボット展。海外では「iREX(アイレックス)」と呼ばれている。日本のハイテク、カルチャーの情報発信で、海外における読者数の多いピンク・テンタクルAkihabara Newsが現地で取材をし、その記事が随所で取り上げられた。

 中でも川田工業の上半身型作業ロボット「NEXTAGE」に関する報道がブログ界で目立った。

 また、11月初旬に発表となった、アザラシ型ロボット「パロ」の米国仕様版の発売がBotJunkieGizmodoなど人気サイトで多数取り上げられ、パロの人気が海外でも高いことを裏付けた。

 YouTubeで注目を浴びたのが、JST ERATO 五十嵐デザインインタフェースプロジェクトの「Walky」。動画はここで見ることができる。

 そして海外のロボット情報。11月はサンクスギビング休暇のため、後半にかけてニュースが少なかったように感じるが、7点をピックアップする。

アイロボットがヘルスケア部門を新設

 10月末に発表されたものだが、アイロボットがヘルスケア事業部門を新設するというニュースは注目を浴びた。同社の発表資料はここ

 「ヘルスケア」というと幅広いが、リリースによると当面は高齢者支援ロボットに照準を定めているようだ。「新事業部門は、高齢者の健康とクオリティー・オブ・ライフを向上させるための支援技術として、ロボットの可能性を追求する」と書いてある。

 実際に同社のコリン・アングル最高経営責任者(CEO)と話したBoston Globeの記事によると、アイロボットは病院ではなく、もっぱら家庭で使われる高齢者支援ロボットを開発することに関心がある。最初は遠隔地から高齢者を見守り、コミュニケーションができるテレプレゼンスロボットを考えており、高齢者が必要とする薬の量をチェックしたり、運動コーチのような役目もアイデアとしてあがっている。最終的には食事を運び、ベッドからの起き上がり支援といった手伝いができるロボットも開発可能だろうと同CEOは語った。

中国で二足歩行ロボットのオリンピック開催へ

 中国のハルビンで来年、二足歩行型ロボットのオリンピックが開かれるというニュースが駆け巡った。残念ながら中国語が読めないので正式な発表資料を見つけることができなかったが、英BBCがハルビン工科大学の教授に話を聞いたうえで報道している。二足歩行型のロボットに限った競技会で車輪型は「ダメ」というニュースなのに、ムラタセイサク君の写真が使われているのがちょっとおかしい。まだスポンサーを募っている段階で時期は未定となっている。

 一方、PC Worldの記事によると、開催時期は来年の6月になっている。競技種目はコンバット、ダンス、陸上など。20カ国、100以上の大学からの参加を予定しているという。ここに中国語の記事が挙がっているようだ。

NASAの火星探査機、救出作業続く

SPIRIT「NASAの火星探査ロボット「スピリット」(NASA提供)

 今年4月に火星の土壌に車輪が埋まってから身動きが取れなくなった、米航空宇宙局(NASA)の火星探査ロボット「Spirit(スピリット)」の救出作業が正念場を迎えている。NASAは半年間をかけて、地上で火星表面を模擬し、ロボットを脱出させる方法を考えてきた。11月12日にその方法を明らかにし、地上からコマンドを送ったが、11月末現在、成功にいたっていない。救出作業についてはNASAのサイトで最新情報をチェックすることができる。

 ロサンゼルス・タイムズによると、救出作業は少なくとも来年2月までは続けられるが、それまでに成功しない場合には、救出を断念する可能性がある。打ち上げ当初は3カ月しか火星で活動できないと考えられていたスピリットだが、その予想を大いに裏切り、5年以上の探査活動を続けていた。

軍事用ロボットがどんどん自律化

 米国の軍事用ロボットの研究開発が、どんどん自律型の方向に向かっているようだ。従来、現場では爆発物検知ロボットを中心に兵士が遠隔操作するタイプが主流だった。しかし、この記事によると、米陸軍は1年半以内に、自律型ないしは半自律型の軍事用ロボットの導入を始める計画であるという。無人輸送トラックの導入計画もあるようだ。ここには、陸軍傘下のTARDEC(戦闘車両研究開発技術センター)が取り組んでいる自律型ロボットの開発の話が出ている。

宇宙エレベーター

 NASAが主催する宇宙(軌道)エレベーターの大会が11月6日に開かれた。宇宙エレベーターとは、地上と宇宙をエレベーターのような機構でつなぐ全く新しい輸送手段のこと。一般にはSFの世界の話と考えられがちだが、理論的には可能であることから、実現へ向けた研究開発が行なわれている。NASAの大会は、上空のヘリコプターが吊り下げた900メートルの長さのケーブルを、7分半以内に登ることのできるロボットを開発し、そのスピードを競うというもの。

 優勝はシアトルにあるLaserMotiveというベンチャー企業。ロボットのパワーは、地上からレーザー光を発信することで供給する。NASAのリリースはここ

 大会の公式サイトはここYouTubeで動画が見られる。AP通信の記事がここに。

車内のパーソナル・ロボット

 マサチューセッツ工科大学(MIT)と独フォルクスワーゲンの米国研究所が、共同開発したAIDA(Affective, Intelligent Driving Agent)を発表した。車のダッシュボードに設置する小さなロボットと、インテリジェント・ナビゲーション・システムを組み合わせた運転支援システム。運転手の日課や好み、くせ、運転している場所に関する知識を豊富に持ちあわせ、その時々の交通・安全情報と組み合わせることで、運転手に的確な情報を提供することを目指す。

 プロジェクトの公式サイトはここ。ロボットは運転手に対する情報の媒介役を果たす。表情がかわいい。記事はここここここなど多数。

マサチューセッツ工科大学(MIT)と独フォルクスワーゲンの米国研究所が、共同開発した「AIDA」(写真提供:MIT)
さまざまな表情

ちょっと早めのメリークリスマス

 韓国のロボット・メーカー、RoboBuilderクリスマス商戦向けビデオが話題に。



2009/12/3 20:26