海外ロボットニュースダイジェスト
2009年10月に米国を中心とした海外で話題になったロボットを紹介する。
●人間に近い軍事用ロボット
今月、最も衝撃的だったのは、米国のロボット開発会社、Boston Dynamicsが発表したこのビデオ。「PETMAN」という名の二足歩行型ロボットのプロトタイプが歩いている映像だ。押しても倒れないのは、同社が四足型ロボット「BigDog」で培ったバランス技術を応用しているためだ。
PETMANは、米軍が化学兵器に耐えうる専用スーツの開発で、耐性試験に利用するのが目的という。PETMANが実際に化学物質にさらされながらこの服を着て、歩いたり這い周る。ロボットは人間のように体温が変化し、汗をかいたりもするという。2011年に実用化の見通しだ。
●独フォルクスワーゲンと米スタンフォード大学が無人ロボット車の開発で関係強化
ドイツ自動車大手、フォルクスワーゲン・グループが米スタンフォード大学との共同研究を強化するため、同大のキャンパス内に新しい研究所「Volkswagen Automotive Innovation Laboratory(VAIL)」を設立した。発表リリースはここ。
フォルクスワーゲンは来年初めにオープンする新しい研究所の建設のために200万ドルを投じるほか、今後5年間に渡り、毎年75万ドルの研究・教育費を提供する。スタンフォード大学と同社は、2005年に米国防総省高等研究計画局(DARPA)が開催した無人ロボット車レースの「Grand Challenge」以来、完全自動制御車の開発で協力関係にある。新しい研究所の設立でこの関係をますます深め、広範囲に未来の自動車開発に取り組むという。
当面の研究テーマがいくつか明らかになっているが、この記事によると、一つは自律移動車の限界を見極めようという研究。Audi TTSの無人制御を可能にしたところ、すでに時速200km以上で走れることは分かった。来年はこの車でパイクスピークにチャレンジする計画だ。
VAILが自律的に駐車できる車のデモをした映像はここで見られる。
●ハチ型ロボット
米ハーバード大学のRobert Wood助教授の率いる「RoboBees」プロジェクトが各所で取り上げられた。生物のハチを模倣し、自律のハチ型ロボットのコロニーを作る計画だ。ハチの目と触覚に匹敵するようセンサーのほか、ロボット同士が本当のハチのようにコミュニケーションを取り合う技術、個別に動き回りながらコロニー全体としてある目的を達成するために行動を調整するアルゴリズムなどを開発する。最終的には食物栽培や環境モニタリング、探索・救助活動に応用するのがゴールという。
この研究は米国科学財団(NSF)の大型助成制度である「Expeditions in Computing」の一つに今年選ばれており、合計1,000万ドルの研究費の提供を受ける。
●アイロボットの柔らかいロボット「ChemBot」
今月はセントルイスでロボット分野の国際会議「IROS」が開かれたが、そこでアイロボットが「ChemBot」という柔軟で形の変わるロボットについて発表した。映像はここで見られる。映像の中で機構の説明があるが、ある種の素材の粒子と空気を超弾性の外皮で包み、空気を部分的に抜いたり入れたりすることで全体の形を変形させ、ロボットを制御しながら移動させることが可能になる。
DARPAが研究費を出しており、穴の中など通り抜けられる軍事用ロボットの開発が目的だ。記事はここやここ、ここなどに上がっている。
●ゴキブリを模倣したロボット
同じくIROSでの発表。カリフォルニア大学バークレー校のRonald Fearing教授らが開発したロボット「DASH」。
ゴキブリを模倣した長さ10cmの小さなロボットだが、毎秒1.5メートルの高速走行が可能だ。自分の背の高さよりも高いものに上れ、28メートルの高さから落としても壊れないという丈夫さ。ロボットの映像はここで見ることが可能だ。
ほかに、チーターやヤモリといった生物を模倣したロボットの話がWIREDにまとまっている。
●月面掘削ロボットのコンテスト
米航空宇宙局(NASA)が月面掘削ロボットのコンテスト「Regolith Excavation Challenge」をカリフォルニア州で開催した。月面を模した地表で、30分間に最低150kgの砂を掘り出し、運搬する競技で、優勝したWorcester Polytechnic Instituteのチームは制限時間内に400kg近くを掘削した。優勝賞金は50万ドル。記事はここやここに。日本語でも少し紹介されている。
●触覚のある義手
イタリアとスウェーデンの研究者たちが、物に触れた時に感じることのできる義手を開発した。英国放送協会(BBC)の報じたニュースが随所で取り上げられた。
●球状ロボット
日曜大工やメカ製作愛好家などの愛読誌「Popular Mechanics」が2009年の卓越した発明家トップテンを発表し、その中の一人、Greg Schroll氏が開発した球状ロボットも注目を浴びた。
●日本のロボットで注目されたもの
なんといっても今月最も注目を浴びた日本のロボットは、ロボットビルダーの前田武志さんが開発した二足歩行ロボット「OmniZero.9(オムニゼロ・テン・キュー)」。変形して前田氏自身を持ち上げるロボットの姿はRobot WatchやYouTubeなどを通じて全世界に広まった。記事はここやここ、ここなど多数。シリコンバレーで取材に行くと、「あのロボットは見たか」と聞かれることが2度あった。
日本のCEATEC関連では魚の群れのように走る日産自動車の「EPORO」がここやここをはじめ、各所で取り上げられたほか、ヤマハの歌声合成エンジン「VOCALOID」を使って歌う「HRP-4C」に関する報道も目立った。記事はここやここなど。
パナソニックが10月15日に明らかにしたロボット事業概要はロボット関連の媒体に限らず、さまざまなメディアで報じられた。例えば、ここやここなど。
2009/10/30 19:17