「SIGGRAPH Asia 2009」開幕、ロボット関連展示レポート
12月16日~19日の日程で、コンピュータグラフィックスとインタラクティブ技術を中心としたデジタルメディア、デジタルコンテンツ分野を代表する国際カンファレンス&展示会イベント「SIGGRAPH Asia 2009」が、パシフィコ横浜で開催中だ。17日からは展示も始まり、会場内ではCGやVR、ARなどの展示に混じって、ロボットも一部出展されていた。18日、19日にはロボット関連の講演も行なわれるが、本稿ではロボット関連の展示に絞ってレポートする。
ロボット関連の展示は大きく分けると「Emerging Technologies」というインタラクション作品が集められたゾーンの一部と、経済産業省によるロボットゾーンにまとめられている。
●Emerging Technologies
JST ERATO 五十嵐デザインインタフェースプロジェクトからは、慶応義塾大学大学院修士の杉浦裕太氏らが中心となって開発した「Walky」が出展されていた。二足歩行ロボットを簡単に操作するためのインターフェースの提案で、iPhoneのマルチタッチ機能を利用している。指を使って歩く動作をマルチタッチで行なうと、ロボットがそのまま歩く。マルチタッチを利用してサイドステップさせたり、ジャンプさせたりすることもできる。ロボットをうまく操作するためには最初は馴れが必要だが、一度、順応し始めると面白い。デモ全体を解説した動画はYouTubeでも見られる。
なお杉浦裕太氏は「スギウラブラザーズ」として二足歩行ロボット格闘大会「ROBO-ONE」にもしばしば出場していた一人である。本誌でも2006年に、杉浦氏が電気通信大学に在学していたころに単独のインタビューを行なっている。
【動画】Walkyのデモ | 【動画】指先で操作する | 【動画】キック動作やサイドステップも |
早稲田大学小林哲則研究室(知覚情報システム研究室)は、複数の人とやりとりができるコミュニケーションロボット「SCHEMA」をクイズでデモしていた。普段は日本語でのやりとりの研究をしているそうだが、今回は英語のみ。日本語・英語が混在する環境でやりとりでき、なおかつコミュニケーション活性化がロボットでサポートできれば面白かったかもしれない。
早稲田大学小林研究室の「SCHEMA」 | 背面。ハードウェアは台車以外はオリジナル | 【動画】ロボットのデモの様子 |
九州大学大学院芸術工学府デザインストラテジー専攻 富松研究室の中安翌氏は、形状記憶合金を使ったひまわり型のロボット「Himawari」を出展していた。花の部分は形状記憶合金で作られており温度を制御することで、ゆっくりと植物のように動く。「アジアデジタルアート大賞展2008」のインタラクティブアート部門で入賞している作品で、本誌では7月に福岡「ロボスクエア」で公開されたときに講演含めてレポートしている。詳細はそちらをご覧頂きたい。じわじわと動く様子が面白い。
「Himawari」 | 「Himawari」の解説をする制作者の中安翌氏 | 【動画】植物ロボットなのでゆっくり、じわじわと動く。動くアート作品 |
●ロボットゾーン「Advanced Robotics Lab」
Advanced Robotics Lab |
会場の一部には、ロボットだけを集めた「Advanced Robotics Lab」と題されたゾーンがある。NEC「PaPeRo(パペロ)」、タカラトミーの「i-SOBOT」、ビジネスデザイン研究所の案内ロボット「メカドロイドタイプC3」、東洋理機工業ほかによるコミュニケーションロボット「Pull」、ゼットエムピーの「nuvo」などのほか、産総研の女性型ロボット「HRP-4C」や、高橋智隆氏による「Ropid」のデモなどが行なわれている。またNECは「PaPeRo」を動展示。単独でのデモも行なっていたほか、「パペじろう」による漫才ステージも行なっていた。
経済産業省が主体になっているゾーンなのだが、中には韓国のロボットの紹介パネルもある。残念ながらロボットは動展示どころか静展示もそれほど多くはなく、また一部の展示では説明員に聞いてもまともな答えが返って来なかった。SIGGRAPHは基本的にはCGの展示会なのだから、できればCGの研究者とロボットの研究者によるコラボレーションなども見たかったのだが、残念ながらそのような展示はなかった。
●そのほか ネットブックロボットや人計測システム
このほか、会場内を歩いてみると、ロボットを出展しているブースは他にもあった。香港の会社MIDbotは、ネットブックを簡単にロボットに変えるソリューションとして自社の技術を提案していた。MIDとはモバイルインターネットデバイスの略で、それをロボットにすぐに変えられる、というのが同社の提案だ。ネットブックやラップトップPCを載せてUSBケーブルで繋ぐだけで、移動ロボットができあがり、Skypeを使ったやりとりも出来る。カメラが内蔵されたPCが安く手に入る時代では一つのやり方だろう。
MIDbot | 【動画】MIDbot社のロボットのデモ |
ロボットからの画像 | オプションも展開している |
ATR-Promotionsは、人位置計測システム「ATRacker」を出展してデモを行なっていた。「連携施策群」の研究で実証実験を行なっていたシステムである。1分間に40回スキャンするレーザーレンジファインダーを複数台設置することで、200平方メートル程度の広域での人の動きの計測ができるシステムで、70名程度をリアルタイムで、誤差5cm程度で計測できる。実際に説明員の方に走ってもらったのだが、走る人の動きにも追従できていた。一人一人にはIDがふられ、計測したデータは軌跡データとして蓄積できるため、マーケティング調査などに活用する事ができる。このほか、「Robovie-PC」もチラシではPRされていた。
人位置計測システム「ATRacker」 | 人の位置をリアルタイム、誤差5cmで計測、蓄積する |
SIGGRAPHは参加費が高いイベントだが、海外の来場者が日本のロボット技術の一部をどう見るのか、という視点で見ることもできるかもしれない。プレスルームでは「HRP-4C」のデモの様子を「女性型ロボットは瞬きもするし口も動くし、アメージング! でも手はでかい」などと論評している海外メディアの姿があり、それはそれで面白かった。そのほか一部も動画で紹介する。
【動画】大日本印刷のブースでの「触れる立体映像」のデモ。車のモックに映像のプロジェクションとマルチタッチを組み合わせた展示の例 | 【動画】株式会社スパイスによるモーションキャプチャーシステムOptiTrackのデモ。右上のCGに注目 | 【動画】フランス・IMMERSION社の3Dマルチタッチデバイスのデモ |
2009/12/18 17:18