HRP-4Cやパペじろうが活躍する「DIGITAL CONTENT EXPO 2009」開幕

~ロボット、VR、3Dなど未来技術コンテンツを体感できるイベント


 経済産業省と財団法人デジタルコンテンツ協会が主催する「DIGITAL CONTENT EXPO 2009」が10月22日(木)から25日(日)までの4日間、日本科学未来館、東京国際交流館ほかで開催中だ。バーチャルリアリティ(VR)やCGなどのデジタルコンテンツの研究成果や芸術作品を体験できるイベントで、今回で3回目。出展作品のなかには独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)の女性型ロボット・サイバネティックヒューマン「HRP-4C」のほか、NECの「PaPeRo」を使ったロボット漫才「ぱぺじろう」などロボットを利用したコンテンツもある。まずはこの二つのロボット関連に絞って展示レポートする。

HRP-4C リアルなヒューマノイドのある未来を演じる

 今回の「HRP-4C」のデモは、未来館1Fセンターステージで行なわれている。将来、家庭用にヒューマノイドが入った時代を想定。そのヒューマノイドは家族の会話や身振りなどのログを記録することもでき、そして各家庭やオフィスに納入されていたロボットがメンテナンスのためにメーカーに戻ってきて……、という設定での寸劇だ。

 「HRP-4C」は、この将来のヒューマノイドロボットの「アクター」として登場する。歩行はせず、上半身のみの演技だ。初日には「CEATEC」での疲れが出たか、それとも新しい機械だからかマシントラブルもあったが、プレス向け含めて2回のステージをこなした。

 今回の寸劇は「TRF」メンバーでダンサー、そしてダンスクリエーターのSAM氏が演出プロデュース。仕掛け人である東京大学IRT研究機構特任研究員で「デジタルコンテンツEXPO」エグゼクティブ・プロデューサーの石川勝氏は、「ロボットの専門家ではないSAM氏のようなクリエイターが、ロボットを使った演出を行えるようになった点が新しい」と語る。詳細は、石川氏、SAM氏、そして「HRP-4C」開発者の一人である産総研 知能システム研究部門副研究部門長の横井一仁氏の3氏によるトークセッションが23日(金)に行なわれる予定。それはまた別途、本誌でレポートするのでお楽しみに。

産総研のサイバネティックヒューマン「HRP-4C」【動画】デモ全体ステージスケジュール予定。変更されることもあるので公式ウェブサイトをご覧頂きたい

「漫才の科学。ロボットの笑い」ぱぺじろう登場

NECデザイン&プロモーション株式会社チーフデザイナー長田純一氏

 「パペじろう」は、お笑い芸人の「ぜんじろう」氏と、NECが研究開発を続けているパートナーロボット「PaPeRo(パペロ)」による漫才ユニットだ。2003年10月に結成、活動と研究を続けている。無論「PaPeRo」はロボットであり、自分でツッコミやボケを考えてするわけではないので、ロボットのせりふや振り付けは事前に設定しておかなければならない。基本的にはぜんじろう氏による一人漫才である。事前の録音を相手に突っ込んだり突っ込み返されたりするスタイルのお笑いがあるが、あれと似ている。

 今回は、まず「PaPeRo」デザイナーでもあるNECデザイン&プロモーション株式会社チーフデザイナーの長田純一氏がロボットによるお笑いや「パペじろう」の活躍について「漫才の科学。ロボットの笑い」と題してショートプレゼンテーションを行なった。その後、ぜんじろう氏が登場。お笑い論を講演しながら、その「デモ」として漫才とコントを1本ずつ披露した。まずNEC長田氏は、これまでの実績から、人間には真似のできない「ロボットならではのお笑い」はあると語った。それには、人が持っている「ロボットのイメージ」を裏切ることが重要だという。またロボットは日本人だけにうけるのではなく、国や文化を超えて人の心をつかむことができると述べた。

さまざまな場所で実演を行っている「パペじろう」
国際学会でも招待講演などで大活躍
ぜんじろう氏とPaPeRoによる「パペじろう」

 続けて登場したぜんじろう氏は、お笑いの構造は、大別すると論理的なものと非論理的なものの二つだと話を始めた。さらに論理的なものには、「論理的な笑い」と、しぐさ、音という3つの要素があると語った。さらに「論理的な笑い」には、ボケとつっこみ、ネタフリとオチ、そしてナンセンスという3つがあるという。ぜんじろう氏はそれぞれについて、「PaPeRo」を使って実演した。そして、漫才とコントを一本ずつ披露し、観客から拍手喝采をあびた。

【動画】ボケと突っ込みの基本をパペロを使ったデモで解説【動画】ネタふりとオチ【動画】ナンセンス
【動画】予想外の動き【動画】ロボットならではの早口言葉【動画】だが全てのネタを単純に組み合わせただけで笑いが3倍になるわけではない
【動画】「パペじろう」の漫才の例【動画】コント「ロボバーガー」NEC「PaPeRo」
「メディアビークル」。搭乗体験できる

 このほかロボットあるいはロボット的な展示だけ拾っても、筑波大学の岩田洋夫氏によるデバイスアート「メディアビークル」、JST ERATO五十嵐デザインインタフェースプロジェクトによる指示通りに洗濯物を折りたたむ小型ロボット「Foldy」、公立はこだて未来大学によるWiiリモコンで操作できるイカロボット「IKABO」、豊橋技術科学大学 岡田研究室の学生たちによる変形する球体ロボット「Column Gear」などなどがある。

 後ほど別の記事で、先頃ソニーが発表した「360°立体ディスプレイ」他、さまざまなインタラクション作品ともどもレポートする予定だが、「メディアビークル」はじめ実際に体験できる展示も多いし、何より自分の目や身体で体験しないと伝わらない展示も多い。入場も無料なので東京近郊の方には実際に現地に足を運んでみることをオススメする。主催者/出展者たちは、特に多くの子供たちに実際に体験してもらいたいと考えているとのことだ。

指示通りに洗濯物を折りたたむ「Foldy」Wiiリモコンで腕を操作できる「IKABO」「Column Gear」詳細はのちほど。

オープニングセレモニー

 22日のオープニングセレモニーでは、主催者として財団法人デジタルコンテンツ協会会長でソニー副会長の中鉢良治氏、経済産業副大臣の松下忠洋氏のほか、JAPAN国際コンテンツフェスティバル副実行委員長の松谷孝征氏、日本科学未来館 館長の毛利衛氏ら計8名による挨拶やテープカットが行なわれた。

 なお「DIGITAL CONTENT EXPO 2009」は、未来のコンテンツ技術を体験できる『次世代コンテンツ技術展(ConTEX)2009』、アジアの研究者とクリエイターが集うCGイベント『ASIAGRAPH2009 in Tokyo』、3Dコンテンツに関する『国際3D Fair 2009 in Tokyo』、そして『人材育成セミナー』、『デジタルコンテンツグランプリ』、『e-sports Festival』などのプログラムで構成される国際イベント。JAPAN国際コンテンツフェスティバル(コ・フェスタ)のオフィシャルイベントの一つでもある。会期中には、著名人を招いたシンポジウムやセミナー、4K方式のコンテンツ映像上映「第2回4Kデジタル映像祭」など約60のセッションも実施される。

財団法人デジタルコンテンツ協会会長 中鉢良治氏経済産業副大臣 松下忠洋氏JAPAN国際コンテンツフェスティバル副実行委員長 松谷孝征氏
日本科学未来館 館長 毛利衛氏関係者8名によるテープカット未来館のシンボル展示もより大きく(直径8.5mを予定)、高精細(4K)にリニューアルされる予定だという。


(森山和道)

2009/10/22 21:54