石井英男のロボットキットレビュー
姫路ソフトワークス「JO-ZERO」ハードウェア組み立て編(その1)

~神矢氏デザインのヘッドパーツを搭載し、かっこよさを追求
Reported by 石井英男

 姫路ソフトワークスから登場した「JO-ZERO」は、全高300mm、重量約860g(バッテリ込み)という、小型で軽い二足歩行ロボットキットである。JO-ZEROの特徴や詳細については、発表会レポートを参考にして欲しいが、漫画「プラレス3四郎」の生みの親である、神矢みのる氏がデザインしたヘッドパーツを搭載し、コンパクトなボディで20自由度を実現するなど、「かっこよさ」や「人間らしさ」を追求していることが魅力だ。

 ボディのアルミパーツは、赤と黒の2色で塗り分けられており、外見はとてもかっこいい。さらに、コマンド方式(シリアル方式)/PWM方式の両方に対応した双葉電子工業製の高性能サーボモーター「RS304MD」と新開発のコントロールボード「HSWB-03F」の搭載によって、高い運動性能とプログラミング自由度の高さを実現している。近藤科学のKHR-3HVとは少々方向性は異なるが、従来の二足歩行ロボットキットで物足りなかった点をクリアした、非常に魅力的な製品だ。

 そこで今回から数回にわたって、JO-ZEROをレビューしていきたい(KHR-3HVのソフトウェア編については、HeartToHeart 4が近日中にバージョンアップするという情報を得たので、それを待つことにした)。

サーボモーターの原点設定は不要

 JO-ZEROは、二足歩行ロボットキットの中ではトップクラスの20自由度を実現しており、パーツの数はやや多めだ。ただし、バッテリと充電器は付属していないので、一緒に購入する必要がある。推奨バッテリは、双葉電子工業のリチウムポリマー電池「PR-4S780P」である。PR-4S780は7.4V/780mAhという仕様で、G-ROBOTS GR-001にも採用されており、その信頼性や安全性には定評がある。充電には、PR-4S780P専用充電器「LBC-3E5」を利用する。充電時間も約1時間半と短い。なお、KHRシリーズなどでは、組み立てを開始する前に、サーボモーターの原点設定を行なう必要があるが、RS304MDは、出荷時に原点設定とサーボホーンの取り付けが完了しているので、原点設定が不要で、すぐに組み立てを開始できる。

 一般的な二足歩行ロボットキットの組み立て工程の中で、大きなウェイトを占めるのが、ネジ締め作業だ。JO-ZEROでも、数多くのネジが使われている。使われているネジは全部で8種類だが、ネジ径は1.7mmと2mmの2種類だ。ネジ径1.7mmとネジ径2mmではわずか0.3mmしか違わないので、間違えないように注意したい。特に長さが同じで、ネジ径のみ異なるネジには気をつけよう。

 JO-ZEROの組み立て説明書は、PDF形式で付属CD-ROMに収録されているので、組み立てを始める前に、紙に印刷しておくことをお勧めする。組み立て説明書には、写真が多用されているのでわかりやすい。初心者でも問題なく組み立てられるだろう。ただし、サーボブラケットAとサーボブラケットBというパーツが非常によく似ているので、間違えないようにすること。サーボブラケットAとサーボブラケットBは、側面の穴のタップの切られている位置が異なる。

JO-ZEROのパーツ一式。バッテリや充電器は別売りとなっているアクチュエーターとして双葉電子工業の小型サーボモーター「RS304MD」を採用。あらかじめ出力軸にサーボホーンが取り付けられているRS304MDのボトム軸(反対軸)側。ケーブルがボトム軸から出ているので、取り回しがスマートで、ケーブルがロボットの動きを阻害しにくい
ボトム軸にはめ込むフリーホーンRS304MDのケーブル長は、350mm、300mm、150mmの3種類あるので、間違えないようにすること新開発のコントロールボード「HSWB-03F」。CPUとしてルネサステクノロジのM16C/26Aを2つ搭載し、独自のインタープリタ搭載によって、高いプログラム自由度を実現している
HSWB-03Fの裏側。マイクロSDカードスロットが搭載されている1GBのマイクロSDカードが付属。FAT16対応で、最大2GBまでのマイクロSDカードを利用可能JO-ZEROでは、8種類のネジが使われている。ネジの数は予備も含めて、多めに入っている
ネジ径が2mmのM2ネジと1.7mmのM1.7ネジが使われているので、間違えないように気をつけよう。写真は、左がM1.7-3.0ネジ、右がM2.0-3.0ネジだバッテリとして、双葉電子工業のリチウムポリマー電池「PR-4S780P」を利用するPR-4S780P専用充電器の「LBC-3E5」。バッテリと充電器は本体には付属していないので、別途購入する必要がある
サーボブラケットA(左)とサーボブラケットB(右)は非常によく似ているが、別のパーツだサーボブラケットA(左)とサーボブラケットB(右)の違いは、側面の穴のサイズ(タップの有無)だ。サーボブラケットAは、この向きで置くと、下側に径1.7mmのタップが切られた穴がくるが、サーボブラケットBは、上側に径1.7mmのタップが切られた穴がくる。タップを切られた穴のほうが径が小さい

脚部分の組み立て

 JO-ZEROの組み立ては、下から上へと進めていく。最初に組み立てるのは、足首部分だ。左右の足フレームにサーボブラケットを固定し、サーボモーターを取り付ければいいのだが、右足フレームにはサーボブラケットBを、左足フレームにはサーボブラケットAを固定するので、間違えないように注意しよう。なお、JO-ZEROの組み立てでは、サーボモーターのケースビスを外して、フレームとケースを共締めする作業が頻繁に出てくるが、フレームとケースの共締めには外したケースビスは使わず、JO-ZEROのパーツに含まれるM1.7ネジを利用する。サーボモーターのケーブル長は3種類あるので、長さを間違えないように気をつけよう。

 また、サーボモーターにブラケットを固定する際には、ボトム軸にフリーホーンをはめ込むことを忘れないように。ブラケットをサーボモーターの出力軸に取り付ける際には、サーボホーンの向きに注意すること。基本的にサーボホーンの切りかきが、サーボケースの短辺(銘板とは逆側)の中央に一番近くなるようにすればよい。出荷時の状態で、サーボホーンはその位置になっているはずだが、組み立て中にサーボホーンが動いてしまうことがあるので、常に確認しながら取り付けることが大切だ。

 足首部分のサーボブラケットとサーボモーターを固定したら、足首の外装パーツを取り付ける。二足歩行ロボットキットでは、コストダウンのためにアルミフレームは未塗装のままというのが一般的だが、JO-ZEROは、アルミ製のフレームや外装パーツが黒と赤の2色で塗り分けられている。こうした外観へのこだわりが、JO-ZEROの魅力の一つだ。

 足首の次は、大腿部を組み立てる。大腿部と足首部分を脚部フレームで結合させれば、脚が完成する。

右足首の組み立て(第1工程)に必要なパーツ。右足首に使うサーボブラケットは、サーボブラケットBだ。サーボモーターは、ケーブル長350mmのものを利用するサーボブラケットBの側面のタップが切られた穴(ネジ山)が、右足フレームのつま先側にくるようにして、M2.0-2.0ネジ4本で固定するサーボモーターのケースビスを2本取り外し、ボトム軸側からM1.7-25.0ネジ2本で固定する。取り外したケースビスは使わない
サーボモーターのケースとフレームをネジで共締めする場合は、あまり強く締めすぎないようにすること同様にして、左足首も組み立てる。左足首の場合は、サーボブラケットAを使う右足首の組み立て(第2工程)に必要なパーツ。サーボブラケットAとコの字ブラケットAを利用する。サーボモーターは、ケーブル長350mmのものを利用する
サーボモーターのケースビスを2本取り外し、サーボブラケットAにサーボモーターをはめ込み、M1.7-25.0ネジ2本で固定するサーボブラケットAの下にコの字ブラケットを取り付け、M1.7-3.0ネジ4本で固定するコの字ブラケットの向きに注意すること
右足首のサーボモーターのボトム軸にフリーホーンをはめ込む。フリーホーンの裏表に注意。細い部分がボトムケース側にくるようにするボトム軸にフリーホーンをはめ込んだところいま組み立てたサーボモーターとブラケットを、右足首ロール軸のサーボモーターにはめ込む。このとき、ロール軸のサーボホーンの切りかき(出力軸に近い部分に切りかきがある)が、サーボモーターの銘板から遠い側で、サーボモーターの短辺の中央に位置するようにしてはめ込み、M2.0-3.0ネジ3本で固定する
フリーホーンをはめ込んだボトム軸側も、M2.0-3.0ネジ3本で固定する。フリーホーンの割れ目部分がブラケットの反対側にくるようにする同様にして、左足首も組み立てる。左足首のピッチ軸部分にはサーボブラケットAを利用する足首外装の取り付けに必要なパーツ
まず、つま先側の外装パーツを取り付け、M1.7-3.0ネジ4本で固定するかかと側にも外装パーツを取り付け、M1.7-3.0ネジ2本で固定する同様にして、反対側の足にも外装パーツを取り付ける。外装パーツには左右の区別はない
大腿部の組み立てに必要なパーツ。サーボモーターは、ケーブル長300mmのものを利用するサーボモーターのケースビスを2本取り外し(出力軸から遠い側の2本)、脚部フレームAにサーボモーター2個をはめ込み、M1.7-25.0ネジ4本で固定する同じものを2個作成する
右脚の組み立てに必要なパーツ。先ほど組み立てた右足首部分と大腿部が必要になる脚部フレームBの穴にサーボケーブルを通すボトム軸にフリーホーンをはめて、脚部フレームBに右足首ピッチ軸と大腿部のサーボモーターをはめ込み、M2.0-3.0ネジ8本で固定する。サーボホーンの切りかきが、この写真で真下にくるようにして固定すること
ボトム軸側も、M2.0-3.0ネジ8本で固定する膝部分に脚部フレームC(赤いパーツ)を取り付け、M1.7-3.0ネジ4本で固定する同様にして左脚も組み立てる

腰部分を組み立て、下半身を完成させる

 両脚を組み立てたら、腰フレームとコの字ブラケットBを重ねて固定し、腰部分を作成し、サーボモーターをはめ込んで、股関節を作成する。ケースビスを外して、M1.7-23.0ネジやM1.7-25.0ネジでフレームやブラケットと共締めする際に、ビスを強く締めすぎると、サーボモーターがうまく動かなくなるので、強く締めすぎないように注意すること。なお、最初期バージョンの組み立て説明書では、「1-4 下半身を組み立てる。」の最初の工程の説明が、「サーボモーターのケースビスを4本すべて取り外します。(左図参照)腰フレームにはめ込みます。」となっているが、これは誤りで、ケースビスを取り外す必要はない。この工程の説明は、「矢印の位置にサーボホーンの切り欠きが来るように調整して、腰フレームにはめ込みます。」と読み替えて欲しい(公式サイトに修正版の組み立て説明書がアップロードされる予定)。

 腰部分が完成したら、先ほど組み立てた両脚を腰フレームにはめ込み、M2.0-4.0ネジで固定すれば、下半身が完成だ。

腰の組み立てに必要なパーツ腰フレームAと腰フレームB、コの字ブラケットBを重ねて、M2.0-3.0ネジ4本で固定するコの字ブラケットの向きはこのように取り付ける
股関節の組み立てに必要なパーツ。サーボモーターは、ケーブル長300mmのものを利用するサーボモーター2個のケースビスをすべて取り外し、腰フレームにはめ込み、M1.7-25.0ネジ2本ずつで固定するボトム軸側に腰フレームCをかぶせて、出力軸側からM1.7-23.0ネジ2本ずつで固定する
これで腰部分が完成股関節の組み立てに必要なパーツ股関節ブラケットを腰部分の股関節サーボモーターにはめ込み、M2.0-4.0ネジ4本ずつで固定する。サーボホーンの切りかきは、サーボモーターの銘板から遠い側で、サーボモーターの短辺の中央に位置するようにする
ボトム軸側は、腰フレームCの上からフリーホーンを取り付け、M2.0-4.0ネジ3本ずつで固定する下半身の組み立てに必要なパーツ両脚を腰フレームにはめ込み、M2.0-4.0ネジで固定する。股関節ピッチ軸サーボモーターは、サーボホーンの切りかきがサーボモーターの銘板から遠い側で、サーボモーターの短辺の中央に位置するようにする
これで下半身が完成

胴体の組み立て

 続いて、胴体部分の組み立てを行なう。まず、腰軸の組み立てを行ない、胴体フレームにサーボモーターを固定する。次に、先に組み立てた腰軸部分と胴体フレームを合体させて、胴体補強フレームや背面フレームを取り付ける。最後に、胴体の左右のサーボモーターにコの字ブラケットBを取り付ければ、胴体部分が完成する。

 ここまでの組み立てにかかる時間は、早い人なら2時間程度、ゆっくりやっても4時間はかからないだろう。残りは、腕の組み立ておよび全体の組み立て、ケーブルの配線作業だ。次回は、残りの組み立て作業を行なってJO-ZEROを完成させ、サンプルモーションを実行するまでの手順を解説する。

腰軸の組み立てに必要なパーツ。サーボモーターは、ケーブル長150mmのものを利用するサーボモーターのケースビスをすべて取り外し、胴体内部フレームの穴にサーボケーブルを通し、M1.7-23.0ネジ4本で固定するボトム軸側はこのようになる
サーボブラケットAをサーボホーンに取り付け、M2.0-3.0ネジ4本で固定するもう一つのサーボモーターのケースビスを2本取り外して、サーボブラケットAにはめ込み、M1.7-25.0ネジ2本で固定する胴体の組み立て(第1工程)に必要なパーツ。サーボモーターは、ケーブル長150mmのものを利用する
サーボモーターのケースビスをすべて取り外し、胴体フレームの穴にサーボケーブルを通すM1.7-23.0ネジ4本ずつで、サーボモーターを胴体フレームに固定する胴体の組み立て(第2工程)に必要なパーツ。先ほど組み立てた腰軸部分と胴体部分を合体させる
腰軸部分に胸フレーム(赤色のパーツ)を取り付け、M1.7-3.0ネジ2本で固定し、さらに胴体部分を取り付け、M1.7-3.0ネジ4本で固定する側面から見るとこうなる胴体補強フレームの右と左を取り付け、M1.7-3.0ネジ2本ずつで固定する
胴体補強フレームを取り付けたところ背面フレームを取り付け、M1.7-3.0ネジ10本で固定する背面フレームを取り付けたところ
胴体の組み立て(第3工程)に必要なパーツ胴体左右両側のサーボモーターにコの字ブラケットBを取り付け、M2.0-3.0ネジ4本ずつで固定する。サーボホーンの切りかきがサーボモーターの銘板から遠い側で、サーボモーターの短辺の中央に位置するようにするこれで胴体部分が完成


2009/8/28 19:19