姫路ソフトワークス、二足歩行ロボットキット「JO-ZERO」「STD-ZERO」を発表

~かっこよさ、速さ、人間らしさを追求


「かっこよさ」を目指して神矢氏デザインのヘッドパーツを搭載

 7月5日、東京秋葉原のロボットショップ「アールティ」で、姫路ソフトワークスの二足歩行ロボットキット「JO-ZERO」(ジェイオーゼロ)および「STD-ZERO」(エスティディゼロ)の発表会が行なわれた。姫路ソフトワークスは、これまでロボット用コントロールボードの「HSWB」シリーズや「Motion Processor」シリーズなどの開発実績があり、代表の中村氏は、トランスフォームロボット「HSWR-07」や女性型ロボット「りりあ」など、ユニークで優れたロボットの製作者としても名高い。

 「JO-ZERO」は、「かっこよさ」「速さ」「人間らしさ」という三大モットーを目標に開発された二足歩行ロボットキットであり、一般的な二足歩行ロボットキットにはない特徴をいくつも備えている。価格は12万6,000円で、バッテリと充電器は別売りである。発売日は7月15日(水)の予定だ。

 まず、「かっこよさ」についてだが、これまでの二足歩行ロボットキットは、マノイPF01などを除くと、シンプルなフレームが剥き出しのモノが多く、そのままでもかっこいいと思える製品は少なかった。JO-ZEROは、かっこよさを追求するために、「プラレス3四郎」や「アクト・オン!」といったホビーロボット漫画の第一人者である神矢みのる氏が、ロボットデザインの命ともいえるヘッドパーツのデザインを担当している。神矢氏はヘッドパーツだけでなく、デザインコンセプトやボディカラー、ネーミングなどにも関わっており、今までにないスタイリッシュなフォルムとカラーのロボットに仕上がっている。フレームや軸構成などの基本設計は中村氏だが、神矢氏がデザインしたヘッドパーツにあわせてデザインを4回くらいやり直したという。

JO-ZEROのカタログを手に説明を行なう姫路ソフトワークスの中村氏JO-ZEROを手で動かし、自由度の高さを示しているヘッドパーツのデザインやカラーについてのアドバイスをなどを行なった神矢氏。プラレス3四郎にあこがれて、ホビーロボットを始めた人も多い
中村氏(左)と神矢氏(右)のツーショット。中村氏が持っているのがSTD-ZERO。神矢氏が持っているのがJO-ZEROJO-ZEROのデザインの変遷。かっこよく見えるように、何回もデザインをやり直したという神矢氏の色紙をバックにしたJO-ZERO。胸のJのロゴや膝カバーもかっこいい

「速さ」を追求して、双葉電子工業の高性能サーボモーターを採用

【動画】JO-ZEROのデモ。歩行も高速で安定しており、高い自由度を活かして、多彩なモーションが可能

 2つ目のモットーである「速さ」を追求するために、JO-ZEROでは、アクチュエーターとして双葉電子工業の高性能サーボモーター「RS304MD」を採用している。RS304MDは、コマンド方式(シリアル方式)とPWM方式の両方に対応した小型サーボモーターであり、エイチピーアイジャパンのG-ROBOTS GR-001やG-Dogなどにも使われている。RS304MDのトルクは5kg・cm、スピードは0.16s/60度で、可動範囲が300度と広いことも特徴だ。

 速いロボットを実現するには、本体重量とサイズが重要になる。当然、軽くて小さなロボットほど、同じサーボモーターを採用していても、素早い動きが可能になる。JO-ZEROは、軽さを追求して設計されており、本体重量(バッテリ未搭載時)800gという、一般的な二足歩行ロボットの半分程度の軽いボディを実現。全高も300mmと小さいので、狭いスペースでも気軽に動かせ、倒れたときの衝撃や危険性も小さい。サーボモーターのトルクは比較的小さいが、小型で軽いボディのおかげで、キビキビと軽快に動く。

 また、コマンド方式対応のRS304MDは、コントロールボードと双方向で通信が可能であり、サーボモーターの特性をリアルタイムで変更できるだけでなく、サーボモーターの温度や電流などのフィードバックも可能であり、角度センサーとしての役割も果たす。例えば、自律で何かものを抱えさせて、その大きさや重さを判断させることも可能だ。

「人間らしさ」を追求して、20自由度を実現

 最後のモットーである「人間らしさ」の追求のために、JO-ZEROでは20自由度という、高い自由度を実現していることも魅力だ。基本的に自由度が高いほど表現力が増し、より人間に近いしなやかな動作や多彩なモーションが可能になる。ちなみに、KHR-2HV/3HV、Robovie-Xは17自由度、Rovobie-X Liteは13自由度であり、JO-ZEROに比べると表現力は大きく劣る。G-ROBOTS GR-001も20自由度であるが、JO-ZEROとは軸配置が異なる。JO-ZEROは、GR-001にはない腕ヨー軸を備えているため、上半身の表現力が強化されている。その代わり、頭部は固定で首の自由度はなく、脚ヨー軸が省略されている。脚ヨー軸がなくても、腰ヨー軸と腰ピッチ軸があるので、腰を入れたフックやアッパーカットなどのモーションが可能だ。さらに、腰の設計が特徴的で、脚の可動範囲が非常に広い。普通のロボットでは難しい体育座りもなんなくこなす。JO-ZEROは、足裏サイズも一般的なホビーロボットに比べてかなり小さいが、フォルム重視でこのサイズにしたのだという。

 なお、バッテリとしては、双葉電子のリチウムポリマーバッテリ「PR-4S780P」を利用する。PR-4S780Pは、G-ROBOTS GR-001でも使われており、その安全性・信頼性は折り紙付きだ。バッテリと専用充電器は別売りなので、あわせて購入する必要がある。バッテリ込みの重量は約860gで、連続約20分の動作が可能だ。

【動画】自由度が多く、可動範囲が広いため、人間らしい動きができることをアピールJ-ZEROの背面。腰の部分の設計に注目。足裏サイズもかなり小さい二足歩行ロボットキットでは珍しく腰ピッチ軸を搭載。上半身だけを前後に傾かせることが可能
脚の付け根部分は、直交軸となっている脚の可動範囲が広いのでこんな風に脚を折り曲げて座れる

新型コントロールボード「HSWB-03F」を搭載

 JO-ZEROでは、二足歩行ロボットの頭脳であるコントロールボードとして、新型の「HSWB-03F」を搭載する。HSWB-03Fは、コマンド式サーボモーター専用のコントロールボードであり、最大24個までのRS30Xシリーズサーボモーターの制御が可能だ(JO-ZEROでもあと4つ自由度を増やせる)。サーボの動作角は0.1度単位で指定でき、精密な動きを実現できる。

 CPUとしてルネサステクノロジのM16C/26Aを2つ搭載し、独自のインタープリタ搭載によって、高いプログラム自由度を実現。プログラムやデータの記憶媒体としてマイクロSDカードを採用しており、ポーズやスクリプトの登録数は、事実上ほぼ無制限といってよい(最大2GBまでのマイクロSDカードに対応)。

 標準で赤外線受信機能を備えており、汎用赤外線リモコンを使って遠隔操作が可能なほか、他社製のロボット用無線機での操作も可能だ。また、音声再生機能を備えていることも嬉しい。小型スピーカーが付属しており、マイクロSDカードに記録された音声データ(WAV形式)の再生が可能なほか、オプションのMICセット(7月末発売予定)によって、音声入力も可能になる。HSWB-03Fのプログラム内で音程を認識することができるので、音程の異なる笛や口笛で、ロボットを操ることもできるだろう。

 入力ポートも充実しており、アナログジャイロ専用ポート×3、アナログ入力ポート×3、デジタル入力ポート×3を搭載。オプションで、センサー拡張ボックスが発売予定で、ガンキャノンのようなイメージで、肩にPSDセンサーなどを搭載できる。さらに、赤外線LEDをドライブすることが可能で、7月末発売予定の赤外線LEDキットを利用すれば、JO-ZERO同士での通信が可能になる。HSWB-03Fは3万6,750円で、7月末に単体発売される予定なので、RS30Xシリーズと組み合わせてオリジナルロボットを作りたいという人にもお勧めだ。

 さらに、ルネサスのICEを直結することで、リアルタイムデバッグを実現。C言語で、コントロールボードの制御プログラム自体を作成することも可能だ。

新型コントロールボード「HSWB-03F」。CPUを2つ搭載した高機能ボードだ。左下にあるのは赤外線受信部で、汎用赤外線リモコンを使って、遠隔操作が可能HSWB-03Fの裏面には、マイクロSDカードスロットが用意されており、2GBまでのマイクロSDカードの利用が可能

モーションジェネレータ機能を搭載した専用ソフト「JOZコントローラ」が付属

【動画】これらの歩行モーションは、すべてモーションジェネレータ機能を利用して、自動生成されたものだ

 モーション作成ソフトとしては、JO-ZERO専用に開発された「JOZコントローラ」が同梱される。JOZコントローラは、Windows XP以上の環境で動作するモーションデータ&スクリプトプログラム作成用アプリケーションであり、初心者でも気軽にJO-ZEROのモーションを作成できる。モーション作成は、一般的なスライダを利用したポーズ登録はもちろん、コマンド式サーボモーターの機能を活かした教示システムにも対応。ポーズ作成中も、常に各サーボモーターの負荷や温度、電圧などのモニタリングが可能で、ロボットの状態を把握でき、無理な姿勢によるサーボモーターの焼損を防げる。

 また、Motion Processor 2HVなどでも実現していた、モーションジェネレータ機能を搭載しており、任意の姿勢での歩行モーションを自動生成できることも大きな魅力だ。モーションジェネレータ機能では、歩幅や足上げ量、周期などのパラメータを指定するだけで、逆運動学計算により、最適な歩容に基づいたポーズデータを自動生成してくれるので、大股低速度歩行から小走り高速走行まで、好みに応じた歩行モーションを自由に作ることができる。

 二足歩行ロボットのモーション作成の中でも、特に難しいのが歩行モーションの作成なのだが、モーションジェネレータ機能を備えたJOZコントローラなら、あっという間に歩行モーションを作成できる。実際に、歩行モーションのデモを行なっていたが、これらのモーションは、モーションジェネレータ機能を使うことで、わずか10分程度で作成できたという。なお、Motion Processor 2HVのモーションジェネレータ機能は、汎用ロボット用に設計されていたため、軸間距離やサーボモーターのチャンネル番号などのパラメータが必要であったが、JOZコントローラのモーションジェネレータ機能は、JO-ZERO専用に設計されているため、そうしたパラメータの指定は不要であり、さらに簡単に使える。

素体としてのロボットが欲しい人にSTD-ZEROも用意

 JO-ZEROは、神矢氏デザインによる完成度の高い外見が魅力のロボットだが、自分で外装を作りたいという人のために、JO-ZEROのコンセプトを引きついで生まれたベースモデル「STD-ZERO」も同時に発売される。STD-ZEROの基本的な軸構造はJO-ZEROと同じだが、腕ヨー軸と腰ピッチ軸のサーボモーターが省略されており、全17自由度となっている。また、ヘッドパーツや外装フレームも簡略化されている。こちらの価格は10万5,000円である(バッテリや充電器は付属していない)。こちらはフレームが簡略化され、サーボモーターも3個減っているため、バッテリを除いた重量は約680gとさらに軽く、約30分の連続動作が可能だ。

STD-ZEROを手に持って説明を行なう中村氏左がベースモデルの「STD-ZERO」。右が「JO-ZERO」だ。STD-ZEROは外装フレームが簡略化されているSTD-ZEROでは、腕ヨー軸は省略されているが、肘のブラケットが45度角度を付けて取り付けられていることが特徴だ

モノをつかめるハンドユニットも発売予定

 姫路ソフトワークスは、今後JO-ZEROを拡張するためのさまざまなオプションを展開していくとのことだが、その第一弾として予定されているのが、専用ハンドユニット「ZERO-HAND」だ。ZERO-HANDは、JO-ZEROの腕先と交換して取り付けるハンドユニットで、1自由度ながら、リンク機構とバネを巧みに利用することで、5本の指を動かし、物体をつかむことができる。例えば、鉄棒を握らせて大車輪をしたり、ロープを垂直に上らせることも可能だという。

 ホビーロボットの表現力向上において、指を動かせる手が重要であることはいうまでもなく、オリジナルのハンドユニットを作成し、自作ロボットに装着しているロボットビルダーも増えてきたが、ホビーロボットキットのオプションとして、5本の指を備えた本格的なハンドユニットが発売されるのは、おそらくZERO-HANDがはじめてであろう(ROBONOVA-Iのオプションとしてハンドグリッパーが発売されているが、ハンドグリッパーは、マジックハンドのような単純な構造の手である)。

 ZERO-HANDの発売時期は未定だが、8月中には出したいとのことだ。また、価格も現時点では未定だが、両手セット(サーボモーターも同梱)で、2万円以下を目指しているという。

中村氏が手に持っているのが、オプションとして発売予定のハンドユニット「ZERO-HAND」だハンドユニットは、JO-ZEROの腕先と交換して取り付けるようになっており、装着しても全体のフォルムは崩れないリンク機構とバネを巧みに利用することで、モノをしっかりとつかんで離さないように設計されている。これは指を閉じた状態
指を開いた状態。指はちゃんと5本用意されている【動画】中村氏によるハンドユニットの解説。しっかりと挟みこめるようになっているため、鉄棒を握らせて大車輪をしたり、ロープを垂直に上っていくことも可能だという【動画】ハンドユニットの動作の様子。もっと速く指を動かすこともできる
【動画】使用サーボモーターは本体と同じRS304MDだが、リンク機構とバネでアシストしているため、挟まれるとかなり痛いそうだ。モノを挟んだことを検知して、力を弱めることや、保持力を下げて柔らかく動作させることも可能

二足歩行ロボットキットの新たな世界を切り拓く意欲的な製品

 JO-ZEROは、長年二足歩行ロボットを製作してきた中村氏と、ホビーロボット漫画の第一人者である神矢氏がタッグを組んで誕生した、まさに「夢のホビーロボット」といえるキットだ。神矢氏によるデザインの素晴らしさはいうまでもなく、20自由度と可動範囲の広いフレーム設計によって、従来の二足歩行ロボットキットでは困難であった表現力豊かなモーションが可能になったことも魅力だ。コントロールボードのプログラミングの自由度も高く、センサー類も豊富に搭載できるため、最近のトレンドである自律動作をさせるためのプラットフォームとしても使いやすい。

 重量が軽く、サーボモーターのトルクも比較的小さいため、ロボットバトル志向の人にはあまり向いていないが(もちろん、1kg以下級の大会に出るのなら、JO-ZEROでも対等以上に戦えるだろうが)、ロボットに多彩な動きをさせて、自分の世界を表現したいという人には特にお勧めだ。姫路ソフトワークスでは、JO-ZERO専用サイトをすでに立ち上げているが、今後その専用サイトで、さまざまなサンプルモーションを無償公開していく予定だという。バトルだけではない、新しいロボットの遊び方を提案したいということで、まずは、ロボットが野球やゴルフなどいろいろなスポーツにチャレンジするモーションを公開する予定とのことだ。モーションだけでなく、自律サンプルスクリプトなども公開予定なので、自律に挑戦してみたいという人は参考にするとよい。

 なお、予約特典として先着100名には、神矢みのる氏のオリジナルイラスト&直筆サインが付いてくるそうなので、欲しいという人は早めにロボットショップなどで予約をすることをお勧めする。



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2009/7/6 14:02