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20種類のセンサーが使えるZMPの学習教材「e-nuvo SEN」レポート
~オールインワンで手軽に実験、市販のセンサーも利用可能


20種類のセンサー実験をワンボックスで学習できる便利なセット

 株式会社ゼットエムピー(ZMP)は、さまざまなセンサー実験に対応できるオールインワンタイプの学習教材「e-nuvo SEN」を発売した【写真1】。今回、同社にて本教材のデモンストレーションを見る機会を得た【写真2】。ここでは本学習教材の詳細について説明しよう。


【写真1】オールインワンタイプのセンサー学習教材「e-nuvo SEN」。合計20種類のセンサーユニットがセットになっている 【写真2】ゼットエムピー本社で実施されたe-nuvo SENのデモンストレーションの模様。センサーの入/出力の関係を簡単に理解できる

 e-nuvo SENは、韓国・KMC Robotics社製で、外形370×300×190mm(幅×奥行き×高さ)、重量5kgのジュラルミンケースに合計20種類のセンサーモジュール【写真3】【写真4】と3種類のアクチュエーター(モーター)【写真5】などが組み込まれ、センサー入力から出力までの実験に対応する便利な学習用ボックスセットだ。なお、発表当初は21種類のセンサーとなっていたが、仕様変更がされ20種となった。本体はセンサー部、駆動部、アンプ部、信号処理部などで構成されており、実験したいセンサーモジュールを取り付けるだけで、内蔵モーターを動かせるようになっている【写真6】【写真7】【写真8】。


【写真3】同梱されているセンサーモジュール群。取り外しが可能で、本体のセンサー部に取り付けて実験を行なえる 【写真4】センサーモジュールを取り外すと、本体の裏面に回路図が描かれ、構成が分かるようになっている 【写真5】本体部は、センサー部、駆動部、アンプ部、信号処理部などで構成されている。センサーのインジケーター部も充実している

【写真6】実験の模様その1。本体のセンサー部にガスセンサーを取り付けたところ 【写真7】実験の模様その2。本体のセンサー部に可変抵抗(VR)を取り付けたところ 【写真8】実験の模様その3。本体のセンサー部に圧力センサーを取り付けたところ

 セットのセンサーモジュールは、アナログタイプ(出力0~5V)とデジタルタイプ(オン/オフ出力0/5Vの)の2タイプに大別され、ユニット基板の色で見分けられるように工夫されている。アナログタイプのモジュールはレッド、デジタルタイプのモジュールはブルーだ【写真9】。

 具体的に用意されているモジュールは、温度、湿度【写真10】、電流、ポテンショメーター、磁気(リードセンサー)、明度(Cds)【写真11】、フォトインタラプター、ソーラー、赤外線、ガス【写真12】、傾き【写真13】、圧力【写真14】、音(マイクセンサー)、近接スイッチ、リミットスイッチ、プッシュボタン、温度スイッチ(バイメタル)【写真15】、超音波センサー【写真16】、測距センサーだ。このセットだけで、メカトロニクス、電気・電子、計測工学などで用いられるセンサー類がほぼ網羅されているので、工業専門学校や大学で手軽に利用できる基礎学習キットとして適している。


【写真9】センサーモジュールは、アナログとデジタルの2タイプがあり、レッド、ブルーの色で分類されている。左はアナログタイプの可変抵抗(VR)、右はデジタルタイプのプッシュボタンスイッチだ 【写真10】湿度センサーモジュール。白いTDKのチップが湿度センサー部にあたる 【写真11】CDSモジュール。光の強度によって抵抗値が変化する

【写真12】ユニークなガスセンサーモジュールも同梱されている 【写真13】チルトセンサーモジュールは、傾きに合わせて出力電圧が変化する 【写真14】圧力センサーモジュール。中央の感圧部に力を掛けると出力電圧が変化する

【写真15】温度スイッチ(バイメタル)モジュール。温度上昇でバイメタルが変形し、スイッチがオン/オフする 【写真16】超音波センサーモジュール。対象物に反射して、物体を検出したり、その距離を計測できるもの

 各センサーの出力信号は、本体内蔵のCPUで処理される。センサーの出力に対し、適切な処理を施した後、専用駆動ICに指令電圧を送って、アクチュエーターを動作させたり、インジケーター部のLCDやLEDに出力電圧などを表示させる。たとえば、本体に傾きセンサーや超音波センサーなど、アナログ量を出力するセンサーモジュールをセットすると、センサー出力に比例して、DCモーターやステッピングモーターの速度が変化したり、サーボモーターが追従する【動画1】【動画2】【動画3】。センサー入力と出力の関係が誰でも直感的に理解できるわけだ。


【動画1】実験の模様その1。チルトセンサーモジュールを取り付けて本体を斜けると、ステッピングモーターの速度が変わる 【動画2】実験の模様その2。超音波センサーモジュールを取り付けて手をかざすと、その距離に応じてRCサーボモーターが回転する 【動画3】実験の模様その3。磁気センサーモジュールを取り付けて、その上に磁石をかざすと、RCサーボモーターが動作する

充実した出力部のアクチュエーターとインジケーター

 ここからは出力側となるアクチュエーターについて見ていこう。本体にはDCモーター【写真17】、ステッピングモーター【写真18】、RCサーボモーター【写真19】の3種類のアクチュエーターが装備されている。


【写真17】アクチュエーター部その1(DCモーター部)。センサーからの入力電圧に対応するPWM出力によってDCモーターを駆動 【写真18】アクチュエーター部その2(ステッピングモーター部)。センサーの出力電圧を指令電圧として専用ICに入力し、パルスモーターを励磁・駆動する 【写真19】アクチュエーター部その3(RCサーボモーター)。センサー入力に対応する出力(回転)が分かるようにメジャーが付いている

 DCモータは、Hブリッジ構成のトランジスタを内蔵したドライバーによって駆動する。センサーからの入力電圧に比例した周波数でPWM(Pulse Width Modulation)出力をモータに印加し、その平均電圧から速度を制御する仕組み。オシロスコープを利用してテストポイントにプローブを取り付ければ、スイッチング周波数【写真20】やセンサー出力【写真21】の波形などの観測も可能だ。モーターの正/逆転も本体のトグルスイッチから変更できる。


【写真20】生のセンサーや制御信号の波形をテストポイントから観察できる。写真はPWMの波形。矩形波のDUTY比もよく分かる 【写真21】生のアナログセンサーの波形。写真は圧力センサーの過渡応答。信号がなだらかに減衰していく

 ステッピングモーターも専用コントローラーとドライブICによって駆動する。センサー電圧をコントローラー側に入力し、そこから出た4相パルスをドライバー側に入れ、ステッピングモーターを励磁させる。ステッピングモーターの出力部には回転角が分かるようにメジャーが付いている。またDCモーターと同様にトグルスイッチによって、電源をオン/オフさせたり、モーター自体の起動を有効/無効化したり、正/逆転の切り替えが可能だ。

 RCサーボモーターもセンサー信号を本体内部で処理して駆動する。RCサーボモーターモジュール部にも、角度を刻んだスケールが付いており、センサー入力に合わせてサーボモーターが+85度~-85度までのレンジで動作する様子を計測できる。万が一、レンジ以上の角度で動作し、モーターに負荷が掛っても、リミッタが装備されているので、過電流で回路を破壊する心配はない。


【写真22】インジケーター部には、LCD、7セグメント×4桁、LEDが付いている。LCD部ではセンサーの種類も判別して表示される
 次にインジケーター部を見てみよう。インジケーター部には、LCD、7セグメントLED、LEDが付いている【写真22】。LCDには、センサー出力を10ビット(0~1,024)にスケーリングしたAD変換値や、出力電圧(0~5V)のほか、どのようなセンサーが使用されているのか、CPU側で自動認識されたモジュール名も表示される。一方、4桁の7セグメントLED表示部もセンサー出力を10ビットにスケーリングしたAD変換値が表示される。このほかLEDも8個ほど付いており、こちらはセンサー出力のイコライザーとして機能するものだ。


ブレッドボードを搭載し、自作・市販のセンサーにも対応!

 さて、この教材は20種類ものセンサーの実験に対応できることが1番のウリであるが、実はもう1つ大きな特徴がある。それは、あらかじめ用意されたセンサー以外のデバイスでも実験できる点だ。本体にはブレッドボード【写真23】が搭載され、そこにセンサーやオペアンプなどを取り付けて、任意に回路を拡張することが可能だ【写真24】。もちろん電源も、本体からDC5V、+12V/-12V、GNDを引き出せるため【写真25】、ブレッドボード上に必要な電源とGNDラインを確保できる。あとは自作センサーや市販センサーキットなどをブレッドボード上にセットし、必要に応じてセンサー出力を増幅して、CPU側へ入力すればよいだけだ。


【写真23】本体に搭載されているブレッドボード。回路を自由に組めるユニバーサル基板だ。これにより、センサー実験の応用範囲が広がる 【写真24】ブレッドボードに、ゼットエムピーのジャイロ加速度センサーモジュールを取り付けて実験しているところ 【写真25】本体には、デジタル、アナログICを駆動できる電源出力も用意されているので、これをブレッドボードの電源ラインとして利用

 実際にゼットエムピーでは、同社で販売している ロボット教材「e-nuvo WHEEL」【写真26】のジャイロ加速度センサーを実験用モジュール【写真27】として販売する方針だ。このジャイロ加速度センサーモジュールを前述のブレッドボードに取り付けて動作させる実験も行なわれた【動画4】。このように、他のセンサーでも利用できる汎用性を持たせた点は大きなメリットになるだろう。


【写真26】ゼットエムピーのロボット学習教材「e-nuvo WHEEL」。2輪倒立振子ロボットの実験などが可能 【写真27】実はジャイロ加速度センサーモジュールは、e-nuvo WHEELに搭載されているものだ。モジュールの価格は2万5,200円(アカデミック価格)/3万2,800円(一般販売価格)を予定 【動画4】ジャイロ加速度センサーモジュールを搭載した本体を振って、センサーの反応を見る。アナログ値がインジケーターに表示される

 ただし、本体はあくまでセンサー学習用に特化したもので、内部の詳細についてはブラックボックス化されているため、アクチュエーター(モーター)をユーザー側で直接的に制御することは難しそうだ。このあたりも簡単にできるようになると、より応用範囲が広がると思う。いずれにしても、ほとんどのセンサーを網羅して一度に学習できるような教材は従来ほとんどなかったため、e-nuvo SENは教育機関向けの学習教材として、かなり有用なものといえるだろう。

 このセンサー学習教材・e-nuvo SENは、初年度100台の販売を目標に、セット価格19万9,500円で、すでに受注が開始されている。


URL
  ZMP
  http://www.zmp.co.jp/

関連記事
ZMP、21種類のセンサー特性を観察できる学習教材「KMC-SEN」を発売(2009/01/26)


( 井上猛雄 )
2009/03/10 20:53

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