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技術系展示会「NEPCON WORLD JAPAN」レポート
~国際カーエレクトロニクス技術展など7展が同時開催


昨年より増え、3日間で6万271人が来場した
 1月28日(水)から30日(金)にかけて、技術系展示会「NEPCON WORLD JAPAN(ネプコン ワールド ジャパン)」(主催:リード エグジビション ジャパン)が東京ビッグサイトで開催された。エレクトロニクスの製造・設計・開発・検査に関する各種企業が出展する、アジア最大の専門技術展だ。

 複数の展示会が併催されており、第38回インターネプコン・ジャパン、第26回エレクトロテスト・ジャパン、第10回半導体パッケージング技術展、第10回国際電子部品商談展、第10回プリント配線板EXPO、第2回レーザー&オプティクス2009、第1回国際カーエレクトロニクス技術展と7展にも登る。今年は旬のカーエレクトロニクス分野が加わったこともあり、出展企業が増えて1,210社。ビッグサイトのフル利用に近い、東6ホールと西2ホール+アトリウムを利用した、規模の大きな展示会となった。今年は3日間の全展示会の合計で6万271人が来場した。多数のロボット系技術、ロボットとは関係ないが、見ていて面白かったものなども合わせて紹介する。


ロボット系展示物から紹介

 まずは、ロボット系の展示から紹介する。トップバッターは、三愛化成商事の「SAアームリフト」シリーズ。手押しもしくは自走式のリフト機なのだが、そのメカニカルな感じはロボットハンド。また大きめの機械なので、デモは結構迫力があった。ちなみにこのシリーズ、戦闘機のミサイルの取り付けなど、軍用としても活躍しているそうだ。今回は、何十kgの重量物を持ち上げられる包装フィルム・不織布用と、半導体や精密機械の自動試験機治具用の2台が展示されていた。


【動画】包装フィルム・不織布用の動作の様子。力強い 【動画】包装フィルム・不織布用の動作の様子。力強い

自動試験機治具用 【動画】自動試験機治具用の動作の様子。ボードが倒れてくる様子は、ハッチオープンという感じ

 続いては、2006年の「今年のロボット」大賞で、優秀賞・産業用ロボット部門を受賞した、デンソーウェーブの「人の能力を超えた高速高信頼性検査ロボット」の市販バージョン。受賞時は、自社工場内で64台が稼動している状況だったが、いよいよこの1月23日から「外観検査ロボット」として発売開始となった。残像現象を起こしそうなほど素早く機器の撮影&判定をしていく様子をご覧いただきたい。今回も、複数のメーカーのロボットアームを見たが、外観検査ロボットが最速な印象をうけた。もちろんすべてが全速で運転しているわけではないだろうが、これまでのさまざまな展示会を通してみたロボットアームの中でも、おそらくは最速。しかも、非常に精密に動いているので、人間が敵わないのもうなずけるのである。


【動画】外観検査ロボットの動作の様子 撮影された画像はPCでチェック。モニター上に次々と表示される

 今度は、小型だが素晴らしい速さでアームなどが稼動する、長野県のマシンエンジニアリングの機器たち。昔から精密機器は空気が澄んでいて水のきれいな長野の得意とする分野だが、なるほどと思わせてくれるきめの細かさを感じさせてくれる。デモのひとつ「高速ユニット群によるピン&カラー搬送」は、電磁弁、平行開閉チャック、アライメント、フレキシブルアクチュエータ、ピック&プレースユニットといった同社の各種製品を組み合わせたサンプル的なシステム。サイクルタイムが0.9秒、ピン&カラー搬送タイムが0.45秒と、かなり動作が速い。複数のデモ機が展示されていたが、もうひとつの「PPU コンパクト サーボタイプ」もサイクルタイムが最速で0.5秒とかなりの高速。現在のメカはこれだけの速度で動作できるのである。


高速ユニット群によるピン&カラー搬送のシステム全体 【動画】目が追いつかないほどの速さで機器がシャカシャカと動く様子

PPU コンパクト サーボタイプ 【動画】左右の行ったり来たりの速度が最速は0.5秒ほどになる

 ロボット(メカ)系最後は、東京・日野のNBCの紗張機を使ったデモ。NBCは、現在のエレクトロニクス技術に必要不可欠なスクリーン印刷用のメッシュクロスなどを製造しているメーカーだ。紗張機でもって、「ポリアリレートメッシュクロス」という新素材をスクリーン印刷時に重要なテンションを張った(ピンとした)状態にするところを見せていたのだが、紗張機のメカニカルな動きが面白かったので撮影させてもらった。


【動画】紗張機が新素材をピンと張るところ。ツメがガツガツとつかむところがメカニカル感あり ツメのアップ

カーエレクトロニクス系の製品たち

 続いては、ロボット系ではないが、カーエレクトロニクス系の技術的に面白かったものを紹介。まずは、第1回国際カーエレクトロニクス技術展の目玉展示となっていた、電気自動車から。エコ系展示でも何度か紹介されているので、ご存知の方も多いかと思うが、改めて紹介しよう。なお、電気自動車は購入時に有限責任中間法人電動車両普及センターや、一部の行政から補助金(上限77万円)が出るほか、取得税が通常3%のところが0.3%になる税制優遇や、駐車場割引制度(東京都は150カ所以上)など、1人でシティコミューターとして使用するには、そろそろ購入を検討してもいい状況に入りつつある。

 燃費面で比較しても、ガソリン車が200kmを走るのに2月現在のおおよそのレギュラーガソリンがリッター105円(東京)として、燃費12km/l計算だとおおよそ1,800円弱。電気自動車の場合は、家庭用電源が従量電灯の一般的なB契約で30Aとすると、200kmを走るには航続距離が100~120kmだから2回必要で、1回のフル充電でだいたい30kWhかかるということなので合計60kWh。よって、第1段階料金(0~120kWhまで)の1kWh当たり17円87銭(2008年9月1日実施の最新の東京電力の料金)だと、1,080円弱。第2段階料金(120~300kWhまで)1kWh当たり22円86銭でも1,370円強。第3段階(300kWh以上)の1kWh当たり24円13銭だとしても、1,450円弱の計算になる。ガソリン車は一般的に4~7人乗れるので、一概に比較できない部分もあるのだが、1人でしか乗らないという場合は、電気自動車に軍配が上がるようだ。また、高速道路などには乗れないので(最高時速が60km/h程度しか出ない)、あくまでも近距離の移動用途となっている。

 今回展示された車両で一番人気だったのは、東京・八王子のオートイーブィジャパンと、イタリアのカロッツェリア(工房)のStart Lab社が共同開発した「ジラソーレ」(イタリア語でひまわりの意味)。ふたり乗りの小型車で、イタリアのデザインらしく、フェラーリなどのスーパーカーにも通じるようなオシャレ感の高い流麗な赤い車体が外見的な特徴だ。家庭用100V電源を使え、5~6時間で充電可能。最高速度は65km/hで、一充電走行距離は約120km。一昨年から発売されており、価格は260万4,000円だ。


ジラソーレ。とてもコンパクトだが、ふたり乗車が可能 車内のステアリング周り

とても小さなボンネットを開けると、充電用ケーブルを引き出せる 普通に家庭用のコンセントに差し込んで充電可能

 スポーツカー風のデザインで人気だったのが、岐阜県のゼロスポーツの「エレクシードRS リチウムイオン電池仕様」。以前に製作された鉛電池仕様の1人乗り電気自動車スポーツカー「エレクシードRS」の改良強化版だ。リチウムイオン電池にしたことで、一充電走行距離が約100kmに延び、重量も70kgの軽量化で大幅にパワーウェイトレシオをアップ。最高速度は60km/hだ。こちらも、家庭用100V電源で充電可能で、6~8時間でフルチャージ。すでに発売中だが、価格は同社まで問い合わせとなっている。


エレクシードRS リチウムイオン電池仕様 電気スポーツカーとして設計されており、コックピットもシンプル

 続いて、富山県のタケオカ自動車工芸が参考出品していたのが、市販予定の1人乗り「T10」。同社は小さな町工場だが、これまで複数種類の電気自動車をリリースしている。1台1台をハンドメイドしているのだ。T10の性能は、最高速度が55km/h、一充電走行距離は約50km。鉛電池を使用しているため、充電時間が前出の2台と比べて短い。充電時間は8時間、家庭用電源100Vだけでなく、200Vでも充電可能。価格は未定だ。


おっとりした顔つきのT10。愛称を付けるならムーミンとか? 車内。ステアリングが少し寝ている感じで、ハイテク版オート3輪のイメージ?

 最後は、トヨタ車体の超小型車「コムス」。T10もそうだが、種別としては第一種原動機付き四輪自転車で、一見すると4輪スクーターという感じだが、ミニカーなので普通免許が必要だ。最高速度は50km/hで、面白いのは15km/hで後進できるところ。鉛電池を使用しており、一充電距離は約35km、充電時間は約8時間となっている。こちらは発売されており、価格は軽自動車ぐらいの感覚で、用途によって79万2,750円から86万6,250円だ。


工場内などで走っていそうなコムス ステアリングに加え、アクセルとブレーキのペダルもあり、立派なクルマ

 続いては、コペックジャパンが取り扱っている、米SuperImaging社開発の「MediaGlass」。ナノテク技術でもって開発された特殊フィルムで、Blu-rayまたは紫外線を利用する専用プロジェクターからのレーザー光を投影すると、可視光に変換(ダウンコンバート)されて、フィルム上にイメージが現れるというものである。ショーウィンドウなどのディスプレーや、自動車のフロントウィンドウのヘッドアップディスプレー(HUD)化などに応用可能だ。なお、まだ青しか発色できないが、将来的にはカラー表示にする予定だそうである。そのほか、眼鏡をHUDにする技術も開発中だそうだが、プロジェクターの超小型化が必要で、商用化には至っていないということだ。


【動画】ショーウィンドウなどのディスプレー用 【動画】車載用。プロジェクターがかなり小型だ

 静岡県の東海電子が出展していたのが、一般乗用車用の「アルコール・インターロック装置」だ。同社は、これまで観光バスや運送業などの業務用に、アルコール類を飲んでいないことを証明しないとクルマのエンジンを始動できないアルコール・インターロック装置を販売してきており、それを小型化し、一般乗用車に簡単に備えられるようにしたというわけだ。使い方は簡単で、マウスピースに呼気を吹き込み、測定するだけ。測定時間は約5秒で、アルコールが検出されなければ、エンジンを始動できるようになるという仕組みだ。同装置は燃料電池センサーを使用しており、アルコール以外には反応しない確実さが特徴となっている。


ハンドセットは手で持て、白いマウスピースに呼気を吹き込んで計測 アルコール・インターロック装置の本体

 「フォースフィードバック(FFB)タッチパネル」を展示していたのが、SMKだ。同製品の感触は、さすがに触ってもらわないとわからないが、画面上のボタンにタッチした瞬間に、ブルッと振動が伝わってくる仕組みで、入力時のクリック感を表現している。タッチパネル自らが振動板としての機能を持っており、振動パターンは任意に設定可能なので、さまざまなタッチ感触を用意できるというわけだ。そのほか、同社ブースでは、デザインの自由度が高くなる技術として「曲面タッチパネル」の参考出品などもあった。


FFBタッチパネル。ボタンを押すとブルっと来る 参考出品の曲面タッチパネル

 研究用途の計測機器なのだが、SF系ガジェット的で紹介したいのが、ディテクトの視線追尾システム「View Tracker」。ドライバーが運転中にどこを見ているかといったチェックに使用する機器で、視線の動きをCG化し、同時に撮影したビデオ映像上にスーパーインポーズする装置だ。ハーフミラーを利用したヘッドマウントタイプなので、アームが視界に入らず、正面からの視線画像を取得でき、計測時にかかるストレスが従来よりも大きく軽減されているのが特徴。キャリブレーション用スティックを用いることで装着者ごとの調整を簡単に行なえ、重量も約2.5kgと、頭部に装着しても負担が少なくなっている。


装着すると、角度によっては顔面がサイボーク化されたかのような雰囲気に 反対サイドから。SF系ガジェット好きに訴える機器である

 新潟県の渡邊製作所が展示していたのが、「ハイブリッド型トルクレンチ」は、非常に頭のいいトルクレンチである。締めつけ具合をデジタルメーターで表示してくれ、なおかつPCとつないでおくことで、専用ソフト上で締め付けを1回ごとにどれだけの力だったかを時間などとともに記録する。要は、誰がどの機械の締め付けをどれぐらいの力で行なったか、ということがわかるというわけだ。そのほか、締め付け不良や閉め忘れを防止するバイブレーションや警告ブザー、締め付け回数管理なども持つ。まだ慣れていない人でも、しっかりとしたクォリティで作業を行なえるというわけだ。


【動画】締め付ける様子。メーターの上昇がわかるはずだ PCの管理画面。いつ誰がどれだけの力で締め付けたかがすぐわかる

そのほかちょっと変わった面白製品たち

 最後は、ロボットでもメカでもないが、見ていてとても面白かった製品を紹介。まずは、埼玉県のイワキパックスのリユース製品として産業廃棄物の削減にもつながる「IP-BOX FL」シリーズだ。ちょっと角度を変えて力を入れると、下敷きのような平面状から一気に複数の仕切り板を組み合わせた状態にしてしまえるという、まるで南京玉すだれのような物流用製品である。組み立てと折りたたみがワンタッチで、もし一般販売したら、家庭でも人気が出そうだ。


しまっておく時はたたんでしまえばスペースを取らない 【動画】見事に変化する、その仕組みの素晴らしさをご堪能あれ

 セラミックスの焼結技術を誇る新潟県のナノテムは、「多孔質セラミックス」による「真空チャック技術」をエアホッケーの要領で披露。一見すると強固なセラミックスの平面だが、同社の焼結技術により、ミクロン単位の均一な気孔が無数にある。そして、同社独自の真空排気方式を用いて、下から表面に空気を吹き出させてエアホッケーのようにパックを浮かせたかと思うと、逆に吸い込んで見せる。空気の噴出がわかりやすいようにと水を表面にまいてあり、下から吹き出している時は泡立つ感じだが、吸い込み始めると日中、砂漠に水をまくがごとくあっという間に水気がなくなってしまうという、まるで魔法のような映像をご覧いただきたい。


ナノテム製のアルミナ系多孔質セラミックス。ちょっとザラっとした石のように見えるが…… 【動画】水が湧き出したり引いたりと、まるで手品のようなセラミックスのボード上のデモの様子

 シールドエアージャパンが、テレビ通販番組のように来場者の前で実演し、そして驚かせていたのが、現場発泡ポリウレタン包装システム「インスタンスパック」だ。衝撃吸収用の梱包材といえば、型があるものはほかの物に再利用できないし、エアキャップ(いわゆるプチプチ)や発砲緩衝材だと重量物に使うには不安。そんな時に重宝するのが、このインスタンスパックというわけだ。使うまでは液体で、必要な量だけ注入すると、一気にブワーッとふくらんで製品を梱包してくれるのである。固まる前に製品など梱包したい物を置けば、その形に添って固まってくれる仕組みも持つ。また、固まったインスタンスパックは、ちぎって再び詰めて、そのすき間に新たに液を注入すると再利用できるという、エコ要素も持つ。どうしても不必要になって廃棄するという時も、燃やしても安全な物質でできているので、まさに梱包材としてうってつけというわけだ。


【動画】箱詰めしている様子。ピンクのインスタメイトというポリフィルムの上に注入する 【動画】どこまでもふくらむインスタンスパック

 というわけで、NEPCON WORLD JAPAN展レポートはいかがだっただろうか。さすがに、エレクトロテスト・ジャパン、半導体パッケージング技術展、国際電子部品商談展、プリント配線板EXPOには、ロボットなどのメカ系出展がほとんどなかったし、全体的にこのご時世というのもあって、地味目の展示ブースが多かったのだが、回ってみればやはり面白い製品はいろいろとあった。来年もすでに今回と同じ7つの展示会の開催が決定しており、2010年1月20日(水)~22日(金)に東京ビッグサイトで開催される予定だ。


URL
  NEPCON WORLD JAPAN
  http://www.nepconworld.jp/jp/


( デイビー日高 )
2009/02/03 21:32

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