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機械・ロボット好き必見! 工学的なアイデア満載のビーチアニマル
〜テオ・ヤンセン氏によるアジア初の個展が開催


アートのみならず、工学的にも興味深いビーチアニマル

【写真1】東京・日比谷パティオに出現した特設会場。正面入口には、テオ・ヤンセン氏のロゴマークの入った看板が見える
 4月12日(日)まで、東京・日比谷パティオ特設会場において、オランダ人アーティスト、テオ・ヤンセン氏によるアジア初の個展が開催されている【写真1】【写真2】。

 同氏の作品は独創性に溢れているものばかりだ。2006年には、彼の作品が登場するBMWのCMが南アフリカで放映され、大きな反響を呼んだ。インターネット上でも数多くの関連動画がアップされているので、ご存知の方も多いかもしれない。テオ・ヤンセン氏はプラスティック・チューブ【写真3】によって構成する幾何学的な構造の新生命体「ビーチアニマル」の製作に20年以上前から取り組んできた【写真4】。シンメトリックで美しく、巨大な甲殻類のようなビーチアニマルを目の当たりにするだけでも圧倒されるものがあるのだが、実はこのアニマルは風力をパワーとして自ら動き回ることもできる。

 テオ・ヤンセン氏は、このビーチアニマルを浜辺に解き放ち、海風からのエネルギーを取りこんで自律的に活動させるエコロジカルな試みも行なっている。ただし同氏によれば、エコという概念は結果的に作品に付いてきた副産物で、最初から意図したわけではなかったそうだ。彼は神が行なってきた生命の創造を模倣することで、創造主が直面したであろう問題を自ら体験し、自然とより賢く付き合う方法を模索してきたのだという。

 同氏の作品は、アートとしての視点から高い評価を受けているが、工学的に見ても大変ユニークなものばかりだ。弊誌の読者にとっても興味深いものがあるのではないだろうか。実際に同氏は学生時代に物理学を専攻しており、その後画家に転身した。初期作品では、あの懐かしいATARIコンピュータを設計に役立てたそうだ【写真5】【写真6】【写真7】。とはいえ実際の製作では、なかなか設計通りにはいかず、さまざまな試行錯誤や苦労もつきまとっていたという。以下、今回のアートプロジェクトで展示されているテオ・ヤンセン氏の最高傑作の数々を紹介しよう。


【写真2】会場内に展示されているビーチアニマルたち。初期から最新まで11体の作品のほか、パーツ類の展示、再現された工房なども見学できる 【写真3】パーツ類の展示コーナー。テオ・ヤンセン氏が長年に渡り、こだわり続けてきたプラスティック・チューブ。身近な素材で美しい生命体をつくる 【写真4】テオ・ヤンセン氏。学生時代に物理学を専攻し、その後画家に転身し、アーティストになった。背景は最新作の「アニマリス・モデュラリウス」

【写真5】会場一角には、テオ・ヤンセン氏の工房の再現も。貴重な手書きのデッサンや、工具、パーツ類、縮小モデルなども紹介されていた 【写真6】往年の名機、「ATARI1040ST」も1990年代の初頭までは設計に役立てていたそうだ 【写真7】ビーチアニマルの縮小モデル。右側はプラスティック・チューブで脚部のリンクを組んでいる。左側は、木の時代、リグナタム期の作品の縮小モデルのようだ

知能を持ったビーチアニマル最新作の全貌とは!?

 この個展では1990年代の初期作品から最新作品までが集められ、テオ・ヤンセン氏のビーチアニマルがどのように進化を遂げていったのか、その変遷を探ることができる。同氏自身も、それぞれの作品(生物)を1つの進化の過程として捉えているようだ。

 現時点での最新作は「アニマリス・モデュラリウス」(Animaris Modularius)【写真8】と呼ばれるアニマルだ。何はともあれ、この作品を目の当たりにすると、まず恐竜(昆虫!? 甲殻類!?)のような不思議な造形と、その大きさに圧倒される。そして魂を吹き込まれた生物としての動きを見ると、純粋な驚きとともに、不思議な感動をおぼえてしまうのだ【動画1】【動画2】【動画3】。

 アニマリス・モデュラリウスは、本体【写真9】【写真10】、頭部【写真11】、羽【写真12】、胃袋(圧縮空気を貯蔵するペットボトル)【写真13】、脚部【写真14】【写真15】、神経【写真16】、駆動ピストン【写真17】などから構成されている。


【写真8】最新のビーチアニマル「アニマリス・モデュラリウス」の全景。重量は160kgもある巨大な作品。作品をユニットごとに分解し、船便で輸送して、こちらで再構築したそうだ 【動画1】アニマリス・モデュラリウス、正面から見た動き。動画の終盤になるが、進行方向を反対にするために、ピストンロッドの向きを変えていることがわかる 【動画2】アニマリス・モデュラリウス、背面から見た動き。圧縮空気が十分に満たされていると、歩行速度も速いようだ。歩行速度はピストンロッドの長さによっても変化する

【動画3】アニマリス・モデュラリウス、サイドから見た動き。甲殻類(カニ)が横歩きするイメージだ。意図的でないだろうが、微妙に前後の速度がズレていることで、生物らしさが増しているように感じる 【写真9】アニマリス・モデュラリウス、前から見たところ。恐竜の化石のようにも見えるし、どこかの惑星に本当に棲んでいる不思議な生物のようにも思える 【写真10】アニマリス・モデュラリウス、後ろから見たところ。ペットボトルが背中に付いている。動力源となる圧縮空気を貯蔵するものだ

【写真11】アニマリス・モデュラリウスの頭部。実はこの部分には重要な役割がある。上に見える白いハンマーがポイントだ 【写真12】本体の上部には羽が付いている。この羽は海風を受けるためにある。羽ばたきを動力エネルギーに変換する 【写真13】羽ばたいた動力エネルギーは最終的にペットボトルに圧縮空気として貯蔵される。これにより写真14のピストンロッドを動かし、反動で脚部のリンクが動く

【写真14】三角形のチューブから成る脚部リンク構造と、直接動力となるピストンロッド。ロッド部の長さによって、歩行特性も変化する 【写真15】脚部はユニット化されており、クランクシャフトでつながっている。クランクの位相差で交互に脚が動く仕組み。羽の部分も別のクランクシャフトで連結されている

【写真16】最新作品ではビーチアニマルの知能化も進展している。写真は神経細胞に相当する部分だ 【写真17】ピストンロッドのアップ。アニマルの進行方向は、このピストンの向きを変えることで対応。ピストンの両サイドにあるヒモを引っ張って角度を変える

 本体の上部には羽が付いているが、通常はこの羽で風を受けて、その動力によって空気をポンピングし、スタマック=胃袋と呼ばれるペットボトルに圧縮空気を蓄える仕組みだ【写真18】。この羽の各骨格は回転の位相をずらした複数のクランク機構で連結されており、正弦波のような美しい羽ばたきが可能だ【動画4】。通常では羽が折りたたまれた状態になっているのだが、適切な風が吹いたときに羽を広げ、エネルギーを貯める形だ(現時点では羽の開閉タイミングは人の判断で行なう)【動画5】。さらに頭部の鼻と呼ばれる部分には、ハンマーのような機構がある。このハンマーはピストンで動き、砂浜に杭を打ちつけることが可能だ。強風の際に本体が流されないように工夫を凝らしてしているというわけだ【動画6】。

 アニマリス・モデュラリウスを動作させる駆動部の脚は、6本の脚ごとにまとめられた6組のユニット構成になっており、全部で36ほどある。ただし脚部に直接的に動力源がつながっているというわけではない。スタマックの中に蓄えられた圧縮空気は、6脚の間に1つずつ装備されているピストンへ導かれ、ロッドの動きによって進んでいくのだ。脚のほうは、このロッドの動きに対して効率的に追従できるようにリンクが組まれている【動画7】。歩行特性はロッドの長さによって決まってくる。また方向転換するのも、ロッドの向きを変えることで対応できる。圧縮空気の持ち時間(アニマルの駆動時間)は5分程度で、実際に自然の風力を利用して空気を圧縮する場合には、かなり時間が掛かるという。そのためデモではコンプレッサーで空気を高速に充填していた。

 アニマリス・モデュラリウスには、もう1つ大変ユニークな工夫が凝らされている。それはビーチアニマルとしての知能だ。浜辺に放ったアニマルが波打ち際でさらわれないうに、水を検知するセンシング機能があるのだ。本体から垂れ下がったビニールチューブは通常では空気にさらされている。ところが波打ち際では、チューブが水に浸されることになるので、その圧力が変化する。そこでアニマルはその場所が危険地域であることを察知し、駆動パワーを全開にアップさせ、方向転換する仕組みになっているのだ【動画8】。実際に、デモでは水センサーの仕組みも紹介されていたが、センサー自体は電気的なものではなく、メカニカルな原理によるものだ。テオ・ヤンセン氏は、浜辺に解き放たれたビーチアニマルたちが水没することなく、未来永劫にわたり、氏の意思(遺伝子コード)を引継ぎながら進化を遂げていくようにしたいと考えているそうだ。


【写真18】圧縮空気貯蔵用のペットボトルと神経組織のアップ。写真では見えないが、横にコンプレッサーがあり、デモ用としてペットボトルに空気を入れていた 【動画4】羽ばたきの様子。風があるときは綺麗なウェーブができる。羽はクランクシャフトでつながっている 【動画5】羽の伸張の模様。折りたたまれた状態から羽が広がるところ。現時点では適切な風力のタイミングを人が判断する。将来的にはこの部分もセンシングして自動化されるだろう

【動画6】強風の際に本体が流されないように、頭部のハンマーで砂浜に杭を打ち付ける。こちらも現時点では人の判断で行われているが、将来は風車などによって風力を検知し、動作タイミングを測れるようになるかもしれない 【動画7】最もシンプルな脚部のリンク構造。この脚が複数ぶん組み合わさり、さらにクランクによる回転角の位相差で複雑な動きを実現する 【動画8】水を検知するセンシング機能のデモ。水が入ったコップにチューブを挿入すると圧力が変化して、駆動パワーが全開になる。方向転換して、まさに水際からの危機から脱出する仕組み

生命体として進化を遂げてきたビーチ・アニマルの歴史

 さて、ここからは今回の個展で展示されていたビーチアニマルを古い順から辿ってみよう。テオ・ヤンセン氏は、自らの作品の進化に合わせ、製作期間(生存期間)に名前を付けている。たとえば、かつて生息した恐竜がいた時代――「白亜紀」や「ジュラ紀」のようなイメージだろう。

 まず記念すべき最初のビーチアニマルとなった「アニマリス・ヴァルガリス」(Animaris Vulgaris)【写真19】は、「グルトン期」(1990-1991)に製作されたものだ。16脚を持ち、それぞれの脚はすべての位置が異なるように鉤状の部品で固定されていた。1本の脚が地面に着いたら、他の脚が上がる構造で、脚自体は人間と同じように「太もも」「ふくらはぎ」「足部」で構成。太ももとふくらはぎの連動によって、足のつま先部が並行移動するリンク構造になっていた。製作当時は、チューブ同士を連結する手段として粘着テープを利用していたため、作品の強度はあまり強くなかったそうだ【写真20】。

 歩行を初めて可能にした基本のビーチアニマルが「アニマリス・カレンス・ヴァルガリス」(Animaris Currens Vulgaris)【写真21】だ。この作品は「コルダ期」(1991-1993)に製作されたもので、砂にかかとを押し込みながら、ギクシャクながらも歩くことができた。歩行を可能にした大きな理由は製作方法にあった。それまでチューブ同士の連結には粘着テープを利用していたが、この時期にワイヤーやケーブルを結束するナイロン製ストラップの利用を思いついたからだ。これにより飛躍的に本体の強度が高まった。また脚も進化した。以前は太もも、ふくらはぎ、足部の3部構成だったが、この時期から太ももとふくらはぎの2部構成の脚になり、ふくらはぎが足部を兼ねるようになった。


【写真19】「アニマリス・ヴァルガリス」の全景。脚は「太もも」「ふくらはぎ」「足部」で構成されており、太ももとふくらはぎの連動によって、足のつま先部が並行移動する仕組み 【写真20】チューブ同士の連結には粘着テープが使用されていた。十分な強度が得られないことが弱点だった 【写真21】歩行の基本となったビーチアニマル「アニマリス・カレシス・ヴァルガリス」。チューブの連結部に見える白いヒモのようなものがナイロン製ストラップ。これで結束することで。歩行に十分な強度が得られた

 「カリダム期」(1993-1994)は、テオ・ヤンセン氏の名を世界に知らしめた作品が現れた時期だ。「アニマリス・カレンス・ベントーサ」(Animaris Currens Ventosa)など、羽を持つアニマルが登場し、羽ばきながら自律的に歩けるようになったのだ。今回の展示では、「砂を覆われた若いビーチアニマル」と呼ばれる「アニマリス・サブローサ・アドレセンス」(Animaris Sabulosa Adolescens)【写真22】が紹介されていた。この作品は背中に4つの羽を備えており、風力によって羽ばたき、その動作で脚が動く仕組み。脚は一種の変速機のような機構で制御されていた【写真23】。また、このアニマルは地面に穴を掘ることもできたという。

 カリダム期には製作面でも、さらなる大きな進展があった。チューブの連結方法を、ヒートガンで溶かして固着させる手法に変更したのだ。チューブはプラスチック製であるため、熱で溶解させて固められる。それだけでなく、熱を加えることでチューブを自在に変形させることもできる。一貫して作品の素材にプラスチック・チューブを採用してきたテオ・ヤンセン氏の努力が、ここで報われることになったのだ。

 「タピディーム期」(1994-1997)には、さらにビーチ・アニマルは生命としての根源的な進化を遂げることになる。この時期になると、作品に「生殖」という概念が生まれてきたからだ。「アニマリス・ジェネディクス」(Animaris Geneticus)【写真24】は、遺伝子のビーチアニマルと呼ばれる作品で、合計375個のチューブを持っていた。このチューブは交換することが可能で、他の作品に転用することもできる。それゆえチューブはアニマルの「遺伝子」(genes)となり、交換はアニマルの「交尾」を意味することになった(ただしチューブ交換は人手による)。アニマリス・ジェネディクスは、軸に取り付けらた鉤上の棒を回すことで、位相差のあるクランクが回転し、脚が交互に波のように進む【写真25】。後にこの部分がプロペラとなる作品も生み出された。アニマリス・ジェネディクスは、複数の作品と群れを成し、家族のように海岸に放たれたこともあった。


【写真22】「アニマリス・サブローサ・アドレセンス」の全景。けっこう大きな作品だ。背中に4つの羽を備えており、風力によって羽ばたき、その動作で脚が動く 【写真23】アニマリス・サブローサ・アドレセンスの変速機構。風力を受けて羽ばたく力を回転エネルギーに変換し、脚部を直接動かしてていたようだ

【写真24】名前のとおり、生殖という概念を取り込んだ「アニマリス・ジェネディクス」。合計375個のチューブを持ち、それを交換することができた 【写真25】アニマリス・ジェネディクスのクランクシャフトのアップ。この軸に脚部がそれぞれ連結されている。クランク角の位相差で脚が交互に波のように進む

ビーチアニマルが神経・筋肉・知能(脳)を備えるまで

 1997年から2001年に渡る「リグナタム期」は、テオ・ヤンセン氏にとって製作コンセプトがガラリと変った特異な時期だった。氏によれば「浮気」の時代だったそうだ。従来までの作品は一貫して素材にチューブを用いてきたが、ここで初めて木材の魅力にひかれ、木製作品に着手したからだ。大きなビーチアニマルをつくるためには、さらに頑強さが求められ、素材そのものの見直しが必要だったからだという。この時期の代表的な作品としては、「アニマリス・リノセロス・リグナタス」(Animaris Rhinoceros Lignatus)【写真26】が展示されていた。この作品は、四角形の胴体に六角形の木製パレットを連結させ、背骨の回転運動をパレットの歩行動作へ変換させる仕組みで、いわば歩く集合体のようなイメージだ。脚にひずめがなかったため、砂に沈みやすいという欠点もあったという。

 迷いのリグナタム期を過ぎて「ヴァポラム期」(2001-2006年)に入ると、テオ・ヤンセン氏の作品は、さらなる飛躍を遂げる。まずビーチアニマルの駆動エネルギーが変化した。これまで、その場任せで自然の風だけに頼っていたエネルギーを、圧縮空気としてエネルギーに蓄えて、アニマル自らが動ける存在へとシフトさせたのだ。たとえば「アニマリス・カレンス・ヴァポリス」(Animaris Currens Vaporis)【写真27】は、空気圧の筋肉によって動くクランクシャフトを備えた最初のビーチアニマルだった。圧縮空気の力で動くため、「歩く蒸気のアニマル」と呼ばれており、蒸気エンジンのような音を立てて動いた。この基本原理が、現在の最新作であるアニマリス・モデュラリウスにも受け継がれている。さらに「アニマリス・ヴェルミキュラス」(Animaris Vermiculus)【写真28】は、28個の筋肉と14個の神経、筋肉を動かすためのプリミティブな脳機能(神経の集合体)を備えていた【写真29】。ここでも合計28個のペットボトルが風力貯蔵器として機能していた【写真30】。


【写真26】歩行する木製の集合体「アニマリス・リノセロス・リグナタス」。四角形の胴体に六角形の木製パレットを連結させ、回転運動をパレットの歩行動作へ変換させる 【写真27】空気圧によって動くクランクシャフトを備えた最初のビーチアニマル「アニマリス・カレンス・ヴァポリス」 【写真28】「アニマリス・ヴェルミキュラス」の全景。筋肉と神経、筋肉を動かすためのプリミティブな脳機能があった

【写真29】アニマリス・ヴェルミキュラスの神経組織となる部分。1つの筋肉が伸びると次の筋肉も動くようになっていた 【写真30】アニマリス・ヴェルミキュラスに装備されていた28個の風力貯蔵器(ペットボトル)。ここに圧縮空気が取り込まれた

 そして2006年から現在に至る「セレブラム期」は、より知能化が進んだ時代であった。つまり前述のようにビーチアニマルに水の在り処を探り当てるためのセンシング機能が備わったのだ。ビーチアニマルに歩数計も付くようになり、海水に接すると歩数計がリセットされ、方向転換を行なって、水際の危険から逃れることが可能になった。

 この時期の代表的な作品は先のアニマリス・モデュラリウスだが、このほかに前身となる「アニマリス・ペルシピエーレ・レクタス」(Animaris Percipiere Rectus)や「アニマリス・オルディス」(Animaris Ordis)が展示されていた。前者のアニマリス・ペルシピエーレ・レクタスは2年間ほど活躍したビーチアニマルだ【写真31】【動画9】。羽、圧縮空気の貯蔵器を備え、重量のある羽構造を車輪で支える構造だった【写真32】。また、頭部の鼻にはハンマーもあり、砂浜に杭を打ち付ける構造も最新作へ受け継がれている。

 一方、後者の「アニマリス・オルディス」(Animaris Ordis)【写真33】は、冒頭で触れたBMWのコマーシャル用に特別につくられた作品。脚部は三角形と四角形を組み合わせたリンク構造。クランクの位相差によって脚を交互に踏み出す形式は他作品と同様だ【動画10】。また本体の上部は帆を立てられるようになっていた。


【写真31】「アニマリス・ペルシピエーレ・レクタス」の全景。こちらもかなり巨大な作品だ。羽の重量を支えるために、車輪がついている点が大きな特長 【動画9】アニマリス・ペルシピエーレ・レクタスの手動による動き。本体が長いためか、少し動かしづらそうだった 【写真32】アニマリス・ペルシピエーレ・レクタスの車輪。これもチューブでつくられている。まるで竹細工のような感じだ

【写真33】「アニマリス・オルディス」は、BMWのコマーシャル用に特別につくられたもので、本体の上部に帆を立てられる。見学者でも実物に触れることが可能な作品だ 【動画10】アニマリス・オルディスの脚の動き。クランクの位相差によって脚を交互に踏み出す。比較的、軽い力でも動かせるようになっていた

 これまでテオ・ヤンセン氏が生み出してきたビーチアニマルは、日本でいうところの伝統工芸分野に近いものかもしれない。もしプラスティック・チューブを竹に置き換えれば、竹細工のようなアートにもなるからだ。ビーチアニマルを芸術的な観点から見るのも、コンセプチャルな生物として見るのも面白いが、エンジニアリング的な見地から構造的に捉えてみると、さらに魅力が倍増するのではないだろうか。実際にLEGOを使って、同氏の作品を再現するような試みも行なわれているようだ。

 個展では、ビーチアニマルのデモも行なわれるほか(デモ実施日は展示期間中の土日祝日に変更。※2月15日は休み。11:00から1時間おきに17:00まで合計7回のデモが予定されている)、アニマリス・オルディスのように、自分の手で触れて動かせるものもある。ぜひ一度に実物を見て、テオ・ヤンセン氏の不思議な世界を体験してみてはいかがだろうか。機械やロボット好きの人ならば、きっとビーチアニマルにも魅了されるはずだ。さらに新しい発想も、そこからインパイアーされるかもしれない。


URL
  テオ・ヤンセン展
  http://www.hibiya-patio.jp/specialevent/0901theo/


( 井上猛雄 )
2009/02/02 15:50

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