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「創造アイデアロボットコンテスト」レポート
~第9回 全国中学生創造ものづくり教育フェア内で今年も開催


中学生が想像力と技術で生み出したロボットたちが勝負!
 1月24日(土)・25日(日)の2日間に渡り、「創造アイデアロボットコンテスト」が開催された。会場は足立区立千寿桜堤中学校。同日程で行なわれた「第9回 全国中学生創造ものづくり教育フェア」内で開催されたもの。


全国中学生創造ものづくり教育フェアとは?

 全国中学生創造ものづくり教育フェアとは、全日本中学校技術・家庭科研究会が、文部科学省や厚生労働省、毎日新聞社、つくば科学万博記念財団などと多数の行政機関、企業、団体が共催して年1回実施している、中学生のためのものづくり系コンテストだ。ものづくりというと男子向けのように思えてしまうが、開催団体の名称に家庭科という言葉が同列で扱われていることからわかるように、女子生徒向け(男子生徒が参加していけないわけではない)のコンクールやコンテストもある。料理系の『「あなたのためのおべんとう」コンクール』や、縫製系の『とっておきのアイデアハーフパンツ』などだ。そのほかには、工作系の『めざせ!!「木工の技」チャンピオン』、パソコンの入力やメール入力などの『パソコン入力コンクール・あなたへのメール入力コンテスト』(同部門には、一部小学生が参加できるものもある)というラインナップだ。

 これらのジャンルは、現状で運動部のように大会があるわけでもないし、美術部やブラスバンド部といった芸術系のように展覧会や演奏会といった発表の場もなかなかない。そうした文化系の中でも、ものづくり分野でその想像力や技術力などを競ったり、全国の同年代の同じジャンルに興味がある生徒たち同士で交流できたりするようにと始められたのが、全国中学生創造ものづくり教育フェアというわけだ。もちろん、日本の若い世代の「科学技術離れ」「ものづくり離れ」といった問題に対する取り組みでもある。


創造アイデアロボットコンテストとは?

 創造アイデアロボットコンテストは、試合という形式を採ってはいるが、主催者側は、あくまでも中学校の技術・家庭科で修得した知識や技能を活かして設計・製作したロボットの成果を発表する場となっている。参加生徒がお互いに工夫点や機能性、構造などを学びあえるように交流の場も設けられており、さらなる知識や技能の吸収・向上ができるようにも図られている。スローガンは「得点主義に走らず、発想や製作技術・努力を評価し合おう!」。実際、今年はさらに授業の一環としての主旨を強めるため、初日に予選リーグ戦から決勝トーナメント戦まですべての試合を実施し、2日目にその結果を踏まえた上で、参加チームが自分たちのロボットに関するプレゼンを実施した。

 同コンテストは、北海道、東北、関東・甲信越、東海・北陸、近畿、中国・四国、九州・沖縄の7ブロックから、前年度優勝ブロック枠と開催地枠のチームも加えて行なわれる。北は岩手から南は鹿児島まで各地域から中学生が集合した。中学生版ロボコン全国大会といってもいいだろう。ただし、実際のところはまだ地区予選が盛んに行なわれるまでには至っていないそうで、このコンテストが初戦に近いような生徒たちもいたようだ。せっかく、ロボットという子供たち(実際のところは男子が圧倒的だろうが)が興味を持ちやすい題材なのだから、もっと全国的に広まってほしいものである。

 コンテストの部門は大きく分けて3つある。1つが「ロボット種蒔き2008」と題されたA部門。コート中央に設置されたゴール板に、アイテムをセットし、その得点を競う内容だ。スタート時に300×300×450mm(幅×奥行き×高さ)以内のサイズに収まるロボットで勝負する。A部門はさらに2つに分かれ、1つはシングルのA1部門だ。ロボットにモータ(マブチモーター製FA-130、RE-140、RE-260の3種類)を4個まで使用でき、2台が合体して1台というものや、ヒモでつながっている程度のものは1台とは認められないが、スタート後の変形はOKというルールである。もう1つがダブルスで、2対2で対決するA2部門だ。こちらは、ロボットそれぞれにモータを3個まで使用可能となっている。A部門のロボットはどちらも電源は単二電池2本で、3Vまで。操作はともに有線式の遠隔操縦型だ。


A部門のコート。穴の開いた、赤と青の斜めの板がゴール版 ゴール板を拡大。8個のボールと3本の缶を設置できる11個の穴が3列になって開けてある

A部門は小型のロボットコンテスト。A1部門はその中のシングル戦だ ダブルスのA2部門。役割分担がポイント

 部門の2つ目は、「巨人の腕輪」と題されたB部門。相手陣地により多くのリング(腕輪)を送り込んだ方が勝ちとなり、こちらは1対1のシングル戦のみだ。A部門よりもっと大型のロボットの部門で、スタート時に幅×奥行き×高さがそれぞれ600mmまでOK。こちらもスタート後の変形は自由だ。もちろん、合体分離機構やヒモでつながっている程度では1台と認められない。電源は6Vまでで、単一乾電池4本を利用。モータはマブチモーター製FA-130またはRE-260の2種類を7個まで使用でき、モータなどをコントロールする回線数は6チャンネル利用可能。A、B両部門とも最初に4ブロックに分かれての総当たりリーグ戦形式の予選を実施し、上位2チームが決勝トーナメントに進出できるシステムになっている。


B部門のコートはかなり長い。こちらの斜めの板はゴールではない 中央。坂を利用して相手陣地の奥深くまでリングを転がす仕組み

これが巨人の腕輪という設定のリングだ A部門と比べて大きなロボットたちが競い合う

 3つ目のC部門は、AB両部門とは趣が異なり、対決はなし。ダンスや作業などのパフォーマンスで魅せるロボットをビデオ映像で紹介するC1「パフォーマンス部門」と、全国競技とは異なるオリジナル競技に取り組んでいるロボットをビデオ映像で紹介するC2「オリジナル競技部門」となっている。C部門は、ロボットのサイズやモータの数などのレギュレーションはないが、可動部が何らかの目的を持った仕事・表現をすることは必要。動作したり、発光したり、音を発したりするだけの単独動作ではロボットとして認められない。映像はオープニングからエンディングまで120秒以内となっている。C部門に関しては、会場が異なっていることなどもあって取材ができなかったため、今回は簡単な紹介とさせていただく。なお、C部門の大賞に当たる財団法人つくば科学万博記念財団理事長賞は、群馬県の渋川市立北橘中学校のTENI-ROBO-Aが獲得した。


A・B部門の会場の千住桜堤中学校でも、DVDが流されていた 一部を見ることができ、個人的にほしかったのが、ブックエンドロボット「ストップ ザ パッタン」

「ロボット種蒔き2008」のシングル戦A1部門

A1部門予選総当たりリーグ戦表。各ブロック赤枠のチームが決勝進出
 ロボット種蒔き2008のシナリオは、季節は春、モグラに掘り出されないように杭を上手に埋め込みつつ、畑に種を蒔くというもの。8個のソフトテニスボールを種に、3本の250mlスチール缶を杭に見立て、コート中央右側に設けられた畑に見立てたゴール(アイテムに合わせて11個の穴が開いている)に、試合時間90秒以内に置いていくというのが基本ルールだ。試合終了時点で合計11個のアイテムがすべてをセットしてあると、各1点なので合計11点となる。コートのサイズは縦1,800mm×横1,800mm。中央で赤と青の陣地に分かれており、ロボットはそれぞれ自陣でしか活動できないというルールだ。

 相手コートに触れることや、意図的に相手コート上空に侵入する行為は禁止。要するに、ロボット同士が接触するようなプレーはダメで、相手チームのゴールを直接妨害したり、アイテムをセットできないよう何かを被せたりすることもテクニカルファールである。ただし、既に設置されているボールをゴール板の裏(下)側から突っついて、弾き出すことは可能だ。つまり、相手のロボットがモグラというわけである。なお、缶は取り除けない。

 そのほか、試合開始前には、ロボットの準備やアイテムの所定エリア内へのセット(置き方は自由)を行なう30秒のセッティングタイムが設けられている。試合終了の際は、自陣ハーフラインより前方にロボットがいると、ファールで5点減点となってしまう。また、1チームの人数は操縦者とアシスタントを含めて最大で4人まで。操作エリアには操縦者1名とアシスタント1名までが入れる、というのが大まかなルールだ。

 勝負のポイントは、まずきっちり自陣ゴールに11個のアイテムをセットすること。そこから初めて、相手のボールをどう弾き出すかという話になる。よって、ロボットの機能としては、ボールや缶をしっかり持てて、確実にゴールにセットできることが重要となる。特に缶はブロックの意味でも重要なので、勝つためには最初に確実にセットすることが大事だ。逆に、相手のボールを1個でも多く落とすためには、また違った工夫が必要になる。相手のゴール下からボールを確実に突っつく形になるので、細長い棒状のパーツを使うわけだが、先端に少し工夫がないと、ボールを確実に弾き出せないというわけだ。そしてさらに重要なのが、いかにすばやく行動できるか、という点。1台しかないため、アイテムセットをこなした後、いち早く相手の攻撃に向かえた方が有利となる(相手の攻撃を無視して、自分も攻撃するノーガードの打ち合いという戦術もあるが)。当たり前だが、確実かつすばやく動けるロボットと、冷静に狙い通りに操作できる操縦者の腕が必要な競技というわけだ。


 A1部門の予選4ブロック別の参加チーム(ロボット)名、学校名、都道府県、地区は以下の通り。

【第1ブロック】
・逆襲のアナコンダ/茂木町立茂木中学校/栃木県/関東・甲信越
・フェニックス/大阪市立柴島中学校/大阪府/近畿
・海南かいな12号/海陽町立海南中学校/徳島県/中国・四国
・SEIRYO ONE 2.0/土岐市立西陵中学校/岐阜県/東海・北陸

【第2ブロック】
・twenty-four/花巻市立宮野目中学校/岩手県/東北
・暁の団/大阪市立新北野中学校/大阪府/近畿
・エクスプローラ/御船町立御船中学校/熊本県/九州・沖縄
・ロボロボ2008/つくば市立谷田部東中学校/茨城県/前年度優勝地区

【第3ブロック】
・天王寺ハイパー/大阪市立天王寺中学校/大阪府/近畿
・ウィンドンズ/桜川市立岩瀬東中学校/茨城県/関東・甲信越
・YNKSY(ヤンクシー)/高知市立一宮中学校/高知県/中国・四国
・メカモグラ ZERO/郡山市立緑ヶ丘中学校/福島県/東北

【第4ブロック】
・狩人(かりんちゅ)F/宇検村立名柄中学校/鹿児島県/九州・沖縄
・特別な人達/豊島区立千登世橋中学校/東京都/開催地区
・TAKI ROBO A/私立滝中学校/愛知県/東海・北陸
・E缶/広島加計学園英数学館中学校/広島県/中国・四国


 決勝トーナメントに進出したチームは、第1ブロックが逆襲のアナコンダとSEIRYO ONE 2.0、第2ブロックがウィンドンズ(ウィンドウズではない)と天王寺ハイパー、第3ブロックがロボロボ2008とエクスプローラ、第4ブロックがTAKI ROBO AとE缶となった。得点に関しては予選総当たりリーグ戦表をご覧いただきたい。なお、同点の場合は、ファール数などを細かく見ていくが、すべて同じ場合、最後は両チームの代表者同士によるじゃんけんとなる。また、各チームの勝敗数が同じ時は、全試合の総得点数を比較し、決勝トーナメント進出のための上位2チームを決定するルールだ。


予選第1ブロック1位通過の逆襲のアナコンダ 予選第1ブロック2位通過のSEIRYO ONE 2.0 予選第2ブロック1位通過のウィンドンズ

予選第2ブロック2位通過の天王寺ハイパー 予選第3ブロック1位通過のロボロボ2008 予選第3ブロック2位通過のエクスプローラ

予選第4ブロック1位通過のTAKI ROBO A 予選第4ブロック2位通過のE缶 A1部門決勝トーナメント組み合わせ

A1部門で文部科学大臣賞(ロボコン大賞)を獲得したのは?

 A1部門決勝トーナメントの組み合わせは、1回戦(ベスト8)第1試合が逆襲のアナコンダvsエクスプローラ、第2試合が天王寺ハイパーvsTAKI ROBO A、第3試合がE缶vsウィンドンズ、第4試合がロボロボ2008vsSEIRYO ONE 2.0。第1試合は5-5の同点だったが、エクスプローラがゴール上段で得点したため、勝利。第2試合は、3-10でTAKI ROBO A。第3試合は6-10でウィンドンズ。第4試合は4-4の同点。SEIRYO ONE 2.0も上段で2得点だったが、ロボロボ2008が上段で3得点し、準決勝戦進出だ。

 続けて準決勝戦。第1試合のエクスプローラvsTAKI ROBO Aは、9-8でエクスプローラが僅差で決勝戦に進出。第2試合のウィンドンズvsロボロ2008は、4-4。上段で3得点、下段でも1得点と一緒だったが、アイテム置き場に残っているアイテム個数の差でウィンドンズが決勝戦進出となった。

 決勝戦は、エクスプローラvsウィンドンズだ。動画中で、画面左側の赤コーナーにいる両腕を持った青い機体が前者で、青コーナーのシルバーの機体が後者だ。エクスプローラを製作した熊本県御船町立御船中学校は、同コンテストの強豪校の1つ。後ほど紹介するが、今年度もB部門でも大活躍した。一方のウィンドンズの茨城県桜川市立岩瀬東中学校も強豪校の1つだ。関東地区は栃木・茨城・群馬の北関東勢が強い。

 そして試合だが、動画を見てもらうとわかるとおり、まずセッティングのアイテムの置き方からしてチームによって異なる。また、エクスプローラは缶を3本とも上段にセットできないためか(つまり、ディフェンス力が若干甘くなる)、ギリギリまでボールを置かない作戦。ボールを抱えたまま、ウィンドンズがボールを置きにいったところを弾き出し、自分たちは少し遅めにセットするという作戦だ。しかし、やはり缶を上段に3本とも置けないというディフェンス力が劣っていたことと、缶に守られている位置の下段にボールをセットできなかったことが響いてしまう。缶で守られ、ウィンドンズ側は2個のボールが残り、総得点は5点。エクスプローラは缶3本のみで、3点。ウィンドンズの優勝となり、文部科学大臣賞(ロボコン大賞)と得点賞1位A1部門の両方に輝いた。


エクスプローラの予選時の闘いぶり ウィンドンズの変形後の姿 【動画】A1部門決勝戦の様子

「ロボット種蒔き2008」のダブルス戦A2部門

A2部門予選総当たりリーグ戦表
 A2部門は、ロボット2台で連携して競技を行なうという以外は、すべてA1部門と同じだ。チーム編成も最大4人までで、1台のロボットにつき操縦者1名とアシスタント1名が操縦エリアに入れる。

 勝負のポイントは、いうまでもなくいかに役割分担をきっちりとさせ、どれだけ連携が取れるか、というダブルスの鉄則だ。ゴールにアイテムをセットする担当と相手のボールを弾き出す攻撃担当、缶をセットする担当とボールをセットする担当など、チームによって役割分担はそれぞれ異なり、A1以上に戦術的に多様である。見た限り、ロボットはどのチームも役割に合わせて2台がそれぞれ異なるデザインをしていた。予選4ブロック別の参加チームは以下の通り。

【第1ブロック】
・愛植夫~ギルバード~Mark2/福島市立渡利中学校/福島県/東北
・ザッキーズ/高槻市立第七中学校/大阪府/近畿
・ANAGO-MAX/五島市立奥浦中学校/長崎県/九州・沖縄
・TAKI ROBO D/私立滝中学校/愛知県/東海・北陸

【第2ブロック】
・阿修羅/茂木町立茂木中学校/栃木県/関東・甲信越
・チャレンジャーYSM/大豊町立大杉中学校/中国・四国
・HITS/大阪市立旭東中学校/大阪府/近畿
(棄権)

【第3ブロック】
・HOKUCHUnext/大阪市立新北野中学校/大阪府/近畿
・ブラック SUKARU/可児市立中部中学校/岐阜県/東海・北陸
・未完成な人達/豊島区立千登世橋中学校/東京都/開催地区
・N・S/丸亀市立東中学校/香川県/中国・四国

【第4ブロック】
・レジスタンス/鹿屋市立鹿屋東中学校/鹿児島県/九州・沖縄
・thone&card/広島市立二葉中学校/広島県/中国・四国
・哀憐(あいれん)/新潟市立小針中学校/新潟県/関東・甲信越
・白水龍/土岐市立泉中学校/岐阜県/東海・北陸

 決勝トーナメントに進出したのは、第1ブロックがANAGO-MAXとTAKI ROBO D、第2ブロックが阿修羅とチャレンジャーYSM、第3ブロックがブラック SUKARUとN・S、第4ブロックが哀憐とレジスタンスとなった。


予選第1ブロック1位通過のANAGO-MAX 予選第1ブロック2位通過のTAKI ROBO D 予選第2ブロック1位通過の阿修羅

予選第2ブロック2位通過のチャレンジャーYSM 予選第3ブロック1位通過のブラック SUKARU 予選第3ブロック2位通過のN・S

予選第4ブロック1位通過の哀憐(あいれん) 予選第4ブロック2位通過のレジスタンス A2部門決勝トーナメント組み合わせ

A2部門で足立区長賞を獲得したのは?

 決勝トーナメントの組み合わせは、1回戦(ベスト8)第1試合がANAGO-MAXvsチャレンジャーYSM、第2試合がN・Svs哀憐(あいれん)、第3試合がレジスタンスvsブラック SUKARU、第4試合が阿修羅vsTAKI ROBO Dだ。第1試合は8-6でANAGO-MAXが勝利。第2試合は4-9で哀憐(あいれん)、第3試合は7-5でレジスタンス、第4試合は7-0で阿修羅という展開となった。

 準決勝戦の第1試合は、ANAGO-MAXvs哀憐(あいれん)だ。11-9でANAGO-MAXが決勝戦に進出。第2試合は、レジスタンスvs阿修羅で、3-6で後者が勝ち名乗りを受けた。これにより、決勝戦は長崎県五島市立奥浦中学校のANAGO-MAXvs栃木県茂木町立茂木中学校の阿修羅に決定。奇しくもA1部門と同じように、ここ数年成績を出している北関東と九州の強豪校同士の対戦となった。

 決勝戦は、赤コーナーがANAGO-MAXで、青コーナーが阿修羅。ANAGO-MAXは片方のロボットが変形機構を有しており、比較的大きいのが特徴。それに対して阿修羅は、両方とも小柄な感じだ。ANAGO-MAXは、セット役と攻撃役がわかれており、大きなロボットが缶3本を一気にセットし、もう1台から8個のボールを受け取り、こちらも一気にセットできる態勢だ。一方の阿修羅は、缶をセットするロボットと、ボールをセットするロボットが別々。缶をセットするロボットは作業が終わると、攻撃役となる。ボールのセットを担当するロボットは、吸い上げるようにしてボールを抱える点が見ていて面白い。両チームの戦術はまさに好対照で、ANAGO-MAXは缶をセットした後は、ギリギリまでボールはセットせず、弾き出される時間をできるかぎり生じさせないというもの。一方の阿修羅は、セットできる内にセットしてしまい、落とされてもすぐに吸い上げてセットし直そうという作戦だ。試合時間が残り5秒を切ってからより激しさが増し、わずか1点差の8-7で勝利したのはANAGO-MAXとなった。ギリギリまでボールを置かないという作戦がみごとに当たった形である。ANAGO-MAXは、開催地区の足立区長賞と得点賞1位A2部門のダブルタイトルを獲得。


ANAGO-MAX。変形して、ボールを一気に保持したところ 阿修羅(青コート)の予選での闘いぶり 【動画】A2部門決勝戦の様子

大型ロボットが対決する「巨人の腕輪」B部門

B部門予選総当たりリーグ戦表
 B部門「巨人の腕輪」のシナリオは、悪魔の巨人の魔力から国を開放すべく、伝説の魔法の指輪(リング)を巨人の城に送り込んで魔力を封じるというファンタジー風のもの。ちなみに、巨人の指に直接指輪をはめることができれば、魔力をより強力に封じ込められるということだ。競技は、A部門同様にロボット同士が直接接触せずに得点で勝負する内容。リングを相手コートに送り込み、より多く得点を獲得したチームが勝利となる。1対1のシングル戦で、試合時間は150秒、セッティング時間は30秒だ。

 コートのサイズは縦1,800mm×横5,400mmと横にかなりのスペースがある。A部門のコートと同様に中央で分割されており、赤・青の陣地に分かれている。ロボットは、それぞれ自分の陣地内でのみ活動することもA部門と同じだ。コート中央には、相手コートに向かって右側に、リングを相手陣地の奥深くに向かって転がすことのできる坂がある。

 得点は、リングをどの位置に送り込んだかで変わってくる。最も高得点なのが、巨人の指を模した、コートの端から3分の1のところに立っている棒。自陣のコート中央付近から棒まではおよそ2mあり、かなりの距離だが、そこに輪投げの要領でかけることができれば5点を獲得できる。それから、コート端の3分の1がスタートエリアになっており、そこまで送り込めれば2点。それ以外は、坂の上も含めて1点だ。また、試合終了時点でリングをロボットが保持してしまっていると、相手に2点加えられてしまう。それから、相手が送り込んできたリングも含めて14個すべてのリングを相手コートに送り込むことができれば、パーフェクトで勝ちとなる。

 リングを送り込み合う勝負になるので、いかにすばやくリングを回収できるかがポイントだ。また、コートの面積がA部門に比べると広いため、機動力も重要となる。試合時間がA部門より長いこと、性能差が出やすいことなどから、パーフェクトゲームが出やすかったようだ。

 また、ロボットのデザインだが、サイズやモータの数の面でA部門よりも自由度があるため、チームによって随分とコンセプトに差異があるところが見られた。予選4ブロック別の参加チームは以下の通り。


【第1ブロック】
・観~サンショウウオ~/伊達市立霊山中学校/福島県/東北
・神渕ビートルズ/七宗町立神渕中学校/岐阜県/東海・北陸
・れたす巻き/宮崎市立住吉中学校/宮崎県/九州・沖縄
・ラッセル君/真岡市立真岡東中学校/栃木県/関東・甲信越

【第2ブロック】
・神渕パイレーII/七宗町立神渕中学校/岐阜県/東海・北陸
・三万石/三原市立第五中学校/広島県/中国・四国
・UK/大阪市立新北野中学校/大阪府/近畿
・チームIS/藤岡市立藤岡北中学校/群馬県/前年度優勝地区

【第3ブロック】
・天王寺スペシャル/大阪市立天王寺中学校/大阪府/近畿
・真一絆/御船町立御船中学校/熊本県/九州・沖縄
・チームギア3/藤岡市立藤岡北中学校/群馬県/関東・甲信越
・暁/三原市立第五中学校/広島県/中国・四国

【第4ブロック】
・ロボ友の輪/御船町立御船中学校/熊本県/九州・沖縄
・オンラインEX/伊達市立霊山中学校/福島県/東北
・神渕SSKK/七宗町立神渕中学校/岐阜県/東海・北陸
・A-Wabi-Robi/板橋区立赤塚第三中学校/東京都/開催地区

 決勝トーナメントに進出したのは、第1ブロックが神渕ビートルズとラッセル君、第2ブロックが神渕パイレーIIとチームIS、第3ブロックが真一絆(しんいちばんと読む)と暁、第4ブロックがロボ友の輪と神渕SSKK。なお、第2ブロックでは、1勝1敗1分けの三万石ではなく、1勝2敗のチームISが進出しているのは、敗北数はカウントしていないから。1勝同士ということで、パーフェクトを1回出しているチームISが上ということになった。中部地区の強豪校・岐阜県七宗町立神渕中学校が3台(神渕とついているチーム)、A1部門で惜しくも準優勝となった熊本県御船町立御船中学校も、ロボ友の輪と真一絆の2台を決勝に進出させている。


予選第1ブロック1位通過の神渕ビートルズ 予選第1ブロック2位通過のラッセル君 予選第2ブロック1位通過の神渕パイレーII

予選第2ブロック2位通過のチームIS 予選第3ブロック1位通過の真一絆 予選第3ブロック2位通過の暁

予選第4ブロック1位通過のロボ友の輪 予選第4ブロック2位通過の神渕SSKK B部門決勝トーナメント組み合わせ

B部門で厚生労働大臣賞(準ロボコン大賞)を獲得したのは?

 決勝トーナメントの組み合わせは、1回戦(ベスト8)第1試合が、神渕ビートルズvsチームIS。第2試合が、暁vsロボ友の輪。第3試合が、神渕SSKKvs真一絆。第4試合が神渕パイレーIIvsラッセル君だ。第1試合は、パーフェクトゲームで神渕ビートルズ。第2試合は8-11でロボ友の輪。第3試合は、パーフェクトゲームで真一絆。第4試合もパーフェクトゲームで神渕パイレーII。

 準決勝戦は両試合とも、神渕中と御船中の強豪校対決。決勝戦はどちらかの学校の同門対決となるか、それとも決勝トーナメント3度目の神渕中対御船中になるかが注目された。第1試合は、神渕ビートルズvsロボ友の輪。6-12でロボ友の輪が勝利した。第2試合は真一絆vs神渕パイレーII。神渕SSKKと神渕ビートルズのかたきと神渕パイレーIIが真一絆と競ったが、15-2で真一絆が決勝に進出した。


【動画】1回戦第1試合の神渕ビートルズ(左)vsチームIS 【動画】1回戦第4試合の神渕パイレーII(奥)vsラッセル君 【動画】準決勝戦第1試合の神渕ビートルズ(左)vsロボ友の輪

 決勝戦は、御船中の同門対決である真一絆vsロボ友の輪。コンセプト的に似ており、前部にラッセル車のように回転してリングを本体上にかき込みタイプで、大きな板を傾けて、相手コートにリングを流し込むというスタイルをとっている。ただし、見たところ、真一絆の方が若干前部のラッセルの回転速度が速く、それだけリングを速くボディに載せられる。試合は、お互いに手の内を知っている者同士、なおかつ全員同学年の3年生ということで、普段は仲のいい友達同士であろう。そんな同門対決で、全国大会の決勝戦はさすがにやりにくい面もあったかも知れないが、それを感じさせず、きびきびとアシスタントの生徒からの指示が飛び交う。結果、回転速度の差がわずかに勝ったか、12-15で真一絆が優勝となった。真一絆は厚生労働大臣賞(準ロボコン大賞)と得点賞1位B部門をダブル受賞。優勝した3チームには、おめでとうといいたい。


真一絆 ロボ友の輪 【動画】B部門の決勝戦の様子

 昨年も取材させてもらってとても感じるのは、今の子供たちはいろいろといわれているかも知れないが、これだけ想像力があるし、技術だってある。やはり地区予選や全国大会のような具体的な目標があるとモチベーションを高めやすいし、大会に参加することでさまざまなアイディアに接することもできる。非常にいいコンテストだと思う。惜しむらくは、せっかく文部科学省や厚生労働省が関わっているのだから、もっと学校教育の一環として、積極的に広めていけないかと感じるところである。記者にも子供がいるのだが、上の2人が昨年まで通っていて、今年から3人目が通っている近所の中学校などは、ほとんど関心がないようである。

 確かに、中学校までは公立は区市町村など、比較的小さい単位の行政の管轄だったりするので、予算・人材などの面で難しい面もあるのかも知れないが、運動部は区や市などの大会、さらには都道府県大会、そして全国大会につながっているものも多いはずである。文化系の方でも地方予選から全国大会につながるものがもっとあってもいいと思う。国家として、本気でものづくり技術や伝統の継承、そして科学技術立国としての日本を維持し続けたいというのであれば、ぜひとも教育関連の2大行政には縦割りがどうだとかいったことはなしにして、真剣に取り組んでもらいたい。苦言めいてしまったが、何はともあれ、素晴らしい大会だったので、ぜひ来年も期待したいと思う。


URL
  創造アイデアロボットコンテスト
  http://ajgika.ne.jp/~robo/
  創造アイデアロボットコンテスト受賞一覧
  http://ajgika.ne.jp/page.php?p=fair_9_robocon_result
  第9回 全国中学生創造ものづくり教育フェア
  http://ajgika.ne.jp/page.php?p=fair_9
  全日本中学校技術・家庭科研究会
  http://ajgika.ne.jp/

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( デイビー日高 )
2009/01/28 20:43

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