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福岡市のシンボル福岡タワー
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12月2日(火)と8日(月)、福岡市早良区のロボスクエアが「ロボットビジネスセミナー」を主催した(共催:福岡市、ロボット産業振興会議)。セミナーの会場は2日が福岡タワー多目的ホール、8日がロボスクエア内で行なわれた。
これまでロボスクエアは「ロボット技術を福岡市民に紹介する」施設としての意味合いが大きかったが、もともとは「将来福岡市に新たなロボット産業を根付かせる」ことを主眼として設立されたものだ。その原点に立ち返り、福岡市にロボット産業を生み出すべく、ロボット技術の紹介と同時にロボット産業ビジネスの拠点の1つとしての活動にも、ロボスクエアは力を注いでいくことになった。
その手始めとして、ロボスクエアがロボットビジネスセミナーを主催したものである。
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福岡タワーの多目的ホール入り口。近くには土産物屋などがある
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セミナー当日の多目的ホール内部
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● 第1回は福岡タワーの多目的ホールで開催
ロボットビジネスセミナーの第1回が開催された福岡タワーは、ロボスクエアの入居しているTNC放送会館のすぐ近くにあり、たまたま会場のスケジュールの都合でここで開催されたらしい。セミナーは、株式会社東芝 研究開発センター 機械・システムラボラトリー技監および総合科学技術会議科学技術連携施策群副主監の松日楽信人氏と、パナソニック株式会社 生産革新本部 ロボット事業推進センター 次世代ロボット企画担当参事の小林昌市氏の2人によって行なわれた。
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松日楽信人氏
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松日楽氏は「次世代ロボットの市場形成に求められること~産・官・学でのロボット研究開発を通して~」という題での講演を行ない、ロボットサービスイニシアチブ(RSi)や東芝のロボットについての説明を行なった。
ロボットサービスイニシアチブとは「通信ネットワークを活用した魅力あるロボットサービスを簡単便利に利用できる社会を目指し、課題を共有する企業が設立した団体」(レジュメより抜粋)のことだ。
具体的な例を挙げると、天気予報のサービスをさまざまな企業が製作したサービスロボットが使えるようにするための規格づくりなどを研究。メーカーが単独でサービス提供のシステムを作るのではなく、共同でシステムを構築し、どこのロボットでも使えるようにするものだ。
それにつながるものとして、次世代ロボット共通プラットフォームへの取り組みも紹介。「分散コンポーネント型ロボットロボットシミュレーター」や福岡市のアイランドシティで実証実験が行なわれた「ロボットタウン実証的研究」、大阪のユニバーサルシティでも行なわれた「施設内外の人計測と環境情報構造化」などの研究についての報告もあった。
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ロボットサービスイニシアチブ(RSi)の説明
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共通プラットフォームの概念図
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福岡市のロボットタウンでの研究成果の説明
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関西で行なわれた人計測環境プラットフォーム実験の説明
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物体位置計測環境プラットフォームの説明では、ロボットハンドが冷蔵庫の扉を開ける動画も流された
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【動画】冷蔵庫を開けるロボットハンド
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小林昌市氏
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また、小林氏はパナソニック研究所で研究されている生活支援ロボットについての報告。関西国際空港で行なわれたポーターロボットの実証実験や、介護現場で人を抱えあげるトランスファーアシストロボットといったパナソニック製のロボットを、動画をまじえて紹介した。
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パナソニックのロボット開発の歴史
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ロボット技術の導入された未来の概念図
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パナソニックが開発しているロボットハンド
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関空でのポーターロボットの実験の様子
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介護現場で使われるトランスファーアシストロボット
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【動画】パナソニックのトランスファーアシストロボット
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● 第2回はロボスクエアで実施
8日に行なわれた第2回ロボットビジネスセミナーはロボスクエアで開催。九州大学大学院デザインストラテジー専攻の富松潔教授と、名古屋工業大学大学院工学研究科の藤本英雄教授と田中由浩特任助教による講演が行なわれた。
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ロボスクエア。左手にあるのがセミナールーム
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当日のセミナールーム
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富松潔教授
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富松教授は「インタラクションデザインの重要性」という題で講演。主にアートと工業の融合という観点から、いくつかの事例を説明していた。その中で「シリアスゲーム」という概念が印象に残った。
工業製品は使う人にとって、必ずしも使いやすいシステムではない。それに対してゲームは「使い始めるモチベーションが低く」「操作方法がわかりやすい」という利点がある。またゲームは初心者向けにハードルの低いところから始まり、慣れていくに従ってレベルが上がっていくシステムとなっている。このシステムをゲーム内だけではなく、現実のシステムの習得にも応用できないかというのが「シリアスゲーム」の概念である。富松教授はその例としてシミュレーターとしての「看護ゲーム」などを挙げていた。
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メディアアートの祭典を実施して、地域浮揚につなげているリンツ市の事例紹介
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ヘルメットに赤外線センサーをつけて、人間がマウス代わりになるパフォーマンス
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だまし絵の世界を3D化し、その中を自由に移動しているように見せるソフト
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工業製品とゲームデザインの融合についても語られた
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藤本英雄教授
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藤本教授は「触覚技術が技能の伝承を大きく変える」との演題で講演。技能伝承に関して、現代のテクノロジーは画像や映像など視覚・聴覚に関する保存は可能となっている。これに対して視覚・聴覚だけではなく、触覚や力覚を記録し再生することができれば、技能伝承の幅は大きく広がることになる。
そのための触覚ディスプレイや作業用シミュレーターを紹介。会場に触覚コンタクトレンズを実際に持ち込み、触覚をテクノロジー的に増幅する技術を実演してみせた。
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触覚や力覚も含めると、技能伝承の幅が広がっていくことの説明
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力触覚系を再現するためのテクノロジー手段
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つるつる感を再現する触覚ディスプレイ
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触覚コンタクトレンズは、わずかな凹凸を増幅して指先に伝えるものだ
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会場では触覚コンタクトレンズの体験も行なわれた
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ロボットビジネスセミナーは、年に3~4回くらいは実施したいとのことなので、ロボット産業に関する講演を今後ロボスクエアで聞くことができそうだ。
なお、ロボスクエアとは直接関係はないが、1月14日(日)には福岡市天神のソラリア西鉄ホテルで、ロボット産業振興会議主催の「次世代ロボット安全評価・対策技術セミナー」が実施される予定である。
■URL
ロボスクエア
http://robosquare.city.fukuoka.lg.jp/
福岡タワー
http://www.fukuokatower.co.jp/index.php
( 大林憲司 )
2009/01/06 15:06
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