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JAXA、H-IIAロケット15号機の相乗り衛星4機を公開
~2009年1月21日に種子島から打上げ


 12月22日(月)、大学や企業などによる小型衛星4機が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の関西サテライトオフィスにて報道陣に公開された。ロケットの打上げ能力に余裕があるときに搭載される、通称“相乗り衛星”。来年1月21日(水)にH-IIAロケット15号機で、種子島宇宙センターより打上げられる。


JAXA関西サテライトオフィスがあるクリエイション・コア東大阪 衛星が置かれていたクリーンルームは通路から見ることができる

 H-IIAロケットに搭載される相乗り衛星(正式には小型副衛星、ピギーバック衛星ともいう)となると、宇宙開発事業団(NASDA)時代の4号機以来となる。このときは、鯨生態観測衛星「WEOS」、豪州小型衛星「Fed Sat」、小型実証衛星「マイクロラブサット1号機」の3機が、環境観測技術衛星「みどりII(ADEOS-II)」とともに打上げられた(2002年12月)。

 4号機からはずいぶんと間があいたが、相乗り衛星はロケット側に余剰能力がある場合にのみ搭載が可能なため、なかなか条件が揃わないという事情がある。実際、5号機以降は、基本構成の202型では能力が足りないため、固体補助ロケット(SSB)も使用する2022/2024型や、固体ロケットブースタ(SRB-A)を4基にした204型ばかり。10号機は202型だが、これは情報収集衛星だったので、相乗りなどということはあり得ない。

 主衛星の温室効果ガス観測技術衛星「いぶき(GOSAT)」の質量は約1,650kgと軽く、15号機は久しぶりの202型である。ただ、今後はもっと打上げの機会を提供していこうということで、現在JAXAは通年で小型副衛星の募集を行なっている。詳細については、過去記事を参照して頂きたい。

 今回、JAXA関西サテライトオフィスのクリーンルーム内で公開されたのは、ソランの「かがやき」、東京大学の「PRISM」、香川大学の「STARS」、都立産業技術高等専門学校の「航空高専衛星(KKS-1)」の4機。15号機で打上げられる小型副衛星は全部で7機だが、残りの3機、東大阪宇宙開発協同組合の「SOHLA-1(まいど1号)」、東北大学の「スプライト観測衛星(SPRITE-SAT)」、JAXAの「小型実証衛星1型(SDS-1)」については、すでに種子島に送られている。


これは模型。主衛星の温室効果ガス観測技術衛星「いぶき(GOSAT)」の周辺に小型副衛星が搭載される 今回公開された4機は同じ土台の上に乗せられる。この状態のままフェアリング内に固定される 都立産業技術高等専門学校の「航空高専衛星(KKS-1)」。今回の相乗りの中では最も小型

その隣はソランの「かがやき」。この4機の中では最大だが、それでも30cm~程度のサイズ 下に分離機構が見える。各衛星は1機ずつ、4分おきくらいに分離されるという 反対側の2機はケースに入っていて見えない。右が香川大学の「STARS」、左が東京大学の「PRISM」

右から、JAXA産学官連携部の江藤隆夫参事、東大阪宇宙開発協同組合のすぎ(木偏に久)本日出夫副理事長、ソラン宇宙システム事業部の山本勝令事業部長、香川大学工学部の能見公博准教授、都立産業技術高等専門学校の石川智浩准教授
 記者会見には、JAXA産学官連携部の江藤隆夫参事、東大阪宇宙開発協同組合のすぎ(木偏に久)本日出夫副理事長、ソラン宇宙システム事業部の山本勝令事業部長、香川大学工学部の能見公博准教授、都立産業技術高等専門学校の石川智浩准教授が出席。各衛星の概要などを説明した。

 香川大学の「STARS」は、親機と子機がテザー(ひも)で繋がれているちょっと変わった衛星だ。子機を“宇宙ロボット”と位置付けており、テザーの張力を利用して姿勢を制御する実験を行なう。またそれぞれにカメラが搭載されており、お互いに撮影することができる。一般的に、軌道上の衛星自身が写真に写ることはあまりないので(「ミネルバ」が「はやぶさ」を撮影した例などがある)、面白い写真になりそうだ。

 都立産業技術高等専門学校の「航空高専衛星(KKS-1)」は、マイクロスラスタと3軸姿勢制御の実験を行なう。注目すべきは、この2つの機能をわずか15cm角の小型衛星に搭載したことだ。一般的に、スラスタにはヒドラジンのような液体が使われるが、小型機への搭載は難しい。KKS-1は固体火薬にレーザーを当てて燃焼させる方式を採用しており、4cm角という小型化を実現した。また姿勢制御には市販のモーターを採用、小型ながら3軸制御を試す。

 ソランの「かがやき」は、障害を持った子供達の夢を宇宙に繋げることを目的としている。地上での活動を通し、宇宙を身近に感じてもらうほか、衛星には子供達の手形を押したパラシュートも搭載している。このパラシュートは、宇宙デブリとして軌道上を漂う期間を短縮するために開発されたもので、これがないと再突入までに100年以上もかかるところ、わずかな空気抵抗によって約30年に短縮することが期待されている。


香川大学の「STARS」。ちなみにテザーは市販の釣り糸を使用したそうだ。衛星は5mくらい離れる予定 都立産業技術高等専門学校の「航空高専衛星(KKS-1)」。小さいながら、挑戦的なミッションの衛星 ソランの「かがやき」。同社は社会貢献として、「ソラン・キッズ」というキャンプを実施してきた

東大阪宇宙開発協同組合の「SOHLA-1(まいど1号)」。テレビCMでも話題になった 東京大学の「PRISM」。伸展ブームにより、分解能30mの画像取得を目指す 東北大学の「スプライト観測衛星(SPRITE-SAT)」。詳細は過去記事を参照

 小型副衛星への打上げ機会の提供は、衛星の大型化により、小回りがきかなくなってきたことへの反省がある。「最近のパソコンは小さくて性能もいいが、大型衛星は開発期間が長く、信頼性も重視するため、古い技術しか使っていない。コンピュータは10何年も前のレベルだ」とJAXAの江藤参事。「信頼性の問題もあるのですぐに実用というわけにはいかないが、いろいろとユニークなことをやってもらいたい」と期待する。

 ただ、本格的に制度をスタートしたばかりということで、「JAXAと企業の間で文化のギャップがあった」「“容易かつ迅速”という目標があったが、まだそこまで行っていない」という反省も。「今後は制度的、技術的な改良を加えたい。特にロケットとの分離は一番大きなネックになっており、こちらで標準的な分離部を用意して、衛星の開発に専念できるようにしたい」(江藤参事)という。

 また同日、クリエイション・コア東大阪において、「SOHLA-1(まいど1号)」を応援するキャラクター「ワッショくん」が初めて公開された。みんなで担ぐ「宇宙みこし」をコンセプトにした“ゆるキャラ”。今後、このキャラクターを使ったビジネスを展開していくとのことで、ライセンサーも募集中だ。


【動画】動きもまだ手探り中の「ワッショくん」 「ワッショくん」と関係者 商品化の例。絵本を出す計画もあるとか

URL
  宇宙航空研究開発機構(JAXA)
  http://www.jaxa.jp/
  相乗り衛星の概要
  http://www.jaxa.jp/countdown/f15/overview/sub_payload_j.html

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( 大塚 実 )
2008/12/24 19:00

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