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草加ロボットプロレス「できんのか!」in草加ふささら祭りレポート


 2008年11月3日(月・祝)、二足歩行ロボットによる草加ロボットプロレス「できんのか!」が、埼玉県草加市、綾瀬川左岸広場(松原広場)にて開催された 「草加ふささら祭り」内特設リングにて行なわれた。


特設リングは特別製の極上品!

 二足歩行ロボットによる格闘大会は全国各地で開催されているが、「プロレス」となるとほとんど例を見ない。エキシビションマッチとしてナガレンジャー・ファイティングフェスタで試合が行なわれた記録があるが、まる1日プロレス、という大会はおそらく今回が初めてだろう。

 前日の「わんだほーろぼっとか~にばる・ぷち」に続いて使用される「草加ふささら祭り」草加ロボットフェスティバルテント内には、今回のために草加市内の鉄工所が製作した特設リングを設置。外周が2,200mm四方、ロープ内は1,800mm四方なので、ちょうど現在のROBO-ONEリング(“赤縁”を除くと、向かい合う辺同士の間が1,800mm)とほぼ同じ大きさになっている。ロープはワイヤーが入った丈夫なもので、その気になればロボットがロープに“体を振る”ことも可能になっているという(見てみたい)。

 ロボットを近くで見られるように、この日のリングサイドはお子様優先席として開放され、前日よりも多少肌寒い陽気になったにもかかわらず、多くの観客が声援を送っていた。


かなり大型のリングだが、鉄製フレームのおかげで丈夫 試合中は常にこれくらいの人だかり

第1部「ロボットバトルトーナメント」

 まず第1部として始まったのが、「ロボットタッグバトルトーナメント」。プロレスとは冠していないが、2対2(リング内で戦うのは1対1)のチーム戦というルールは、プロレスのタッグマッチを模している。ROBO-ONEでいう「捨て身技」や「スリップダウン」が取られないかわりに、6分間のうちにチーム全体で5ダウンを奪われると負けになる。また「レフェリーの5カウント以内であれば、反則も認められている」というアナウンスがあるあたりは、反則ご法度の“一般的”な競技会と大きく異なっている。

 マッチメイクでも第1試合の「アリモプレナ/アリキオン組」対「rsv3/さくら2号組」はファミリー対決、第2試合の「クロムキッド/ガルー組」対「ファントム/デュミナス組」は互いに夫婦オペレーター対決というように、最初から注目ポイントが用意されているあたりも、公平な抽選が基本の“一般的”な競技会とは異なっている。

 プロレス初体験という参加者が多かったせいか、はじめはタッグもあまり効果的に機能せず、従来のバトルとあまり変わらない戦いが続いた。だが、「アフロ/トコトコ丸組」対「メタリックファイター/くまたろう組」の戦いから、雰囲気が一変。会場も一気に盛り上がり始めた(その理由はぜひ動画で)。そもそもアフロとトコトコ丸は、ROBO-ONE日本代表としてエクアドルまでお呼ばれしてしまうほど、群を抜くエンターテインメント性と完成度で知られた機体である。その2機とロボットプロレスを良く知るメタリックファイター&くまたろうコンビの対戦となれば、盛り上がるのも当然か。バトルと笑いの引き出しから続々と技が繰り出された試合は大ウケを取り、やんやの喝采を浴びていた。


【動画】1回戦第1試合「アリモプレナ/アリキオン組」対「rsv3/さくら2号組」 【動画】同じく1回戦第1試合。試合を決めた最後の瞬間 【動画】1回戦第2試合。「クロムキッド/ガルー組」対「ファントム/デュミナス組」。デュミナス(左)の見事な投げが決まる!

【動画】同じく1回戦第2試合。こちらはクロムキッド(左)の投げがきれいに入る 【動画】同じく1回戦第2試合。ガルー(左)の強烈な突きでデュミナスがコーナーまで弾き飛ばされる 【動画】同じく1回戦第2試合。試合を決めたパンチは間違えて出した左突きからの“巻き返し”

【動画】1回戦第3試合。「メタリックファイター/くまたろう組」対「アフロ/トコトコ丸組」。アフロ(右)はタッチを拒否されるものの、くまたろうに頭突きを浴びせて1ダウンを奪う 【動画】同じく1回戦第3試合。終了間際に両軍から乱入。レフェリーはカウント4で「ファイト!」と続行を認めてしまい、収拾がつかないまま終了

【動画】1回戦第4試合「ナガレブラック/ナガレイエロー組」対「ヨコヅナグレート不知火/サアガ組」、不知火(奥)のパンチの威力がわかる! 【動画】同じく1回戦第4試合。もはややりたい放題の不知火&サアガ組の圧勝

 トーナメントに参加したのは8チーム16機。全ての組にROBO-ONE決勝トーナメント出場者が含まれているほか、ROBO-ONEのクラス優勝、総合優勝を果たしたビルダーによる機体も多数含まれている。

 そんなメンバーの中、最終的にタッグトーナメントの決勝の舞台に立ったのは、「rsv3/さくら2号組」と「ヨコヅナグレート不知火/サアガ組」。不知火とrsv3で始まった試合は、rsv3のリーチが有利にはたらき、先制のダウンを奪う。すかさず不知火も長い腕をかいくぐってパンチを浴びせ、ダウンを奪い返す。このあたり、ROBO-ONE優勝機という看板はダテではない。

 次第に本気モードのバトルに変わった決勝戦だが、最後は両チームからパートナーが乱入。レフェリーも止めない(!)乱戦の中、結局僅差の判定(ダウン数)で「rsv3/さくら2号組」が初代srpw(Soka Robot Pro-Wrestling)タッグチャンピオンとしてベルトを巻くことになった。このベルトは草加市の地元産業の1つである革細工による特別製である。今後はこのベルトを巡ってタッグバトルが開催されるらしいので、楽しみにしたい。


【動画】rsv3(右)の投げ技が決まる 【動画】ダウンを奪う不知火(左) チャンピオンベルトを巻いた吉田ファミリアのrsv3(左)とさくら2号

第2部は草加ロボットプロレス「できんのか!」

【動画】かわさきロボットの強烈さが自爆を呼んでしまったか
 第2部は草加ロボットプロレス「できんのか!」として、8つのカードが組まれた。取材していた筆者が「第1試合はもうちょっと後かな……」と悠長に構えていると、突然リングにロボットが登場。第0試合として、時間差(1分ごと)で1機ずつロボットが増えていき、最後までリング上に残っていた機体が勝者となる「時間差バトルロイヤル」が始まった。

 最初のころに登場したのはロボビーiやKHR-2HVをベースにした“平和な”機体。リング上もバトルロイヤルというにはあまりに平和な光景が展開されていたのだが、途中から6本足のシグマ、さらにかわさきロボットが登場し、もはや何の競技会なのかわからないリングに早変わり。二足歩行ロボットに勝ち目はなさそうな状況になったが、2機のかわさきロボットは途中、相打ちでリングアウト。結果、リング上はKinopyとロボビーの一騎打ちとなり、最後はKinopyがロボビーをリング外に蹴り出し、勝者となった。

○ Kinopy[9分7秒 サッカーボールキック]ロボビー ×


 第1試合は「女子タッグマッチ 6分6本勝負」。ロボットが女子というわけではなく、操縦者が女子という対決である。“謎の女ファイター Ms.H”とされていた操縦者は、特に覆面をつけることもなく現れた某ロボット専門誌編集長withアフロだったことを付け加えておこう(イニシャルのHは編集長のH?)。

 試合はガルーとアリキオンという、多くの大会で顔を合わせたことがある、ライバル同士の組み合わせで始まった。途中アリキオン、アフロ組がリードを奪い、試合を決めるべく2機がリングイン。しかし、ピンチを迎えたデュミナスからタッチを受けたガルーは、鬼神のごとき働きでアフロとアリキオンを次々となぎ倒す。最後はアフロから得意の投げでダウンを奪取。逆転勝利を決めた。

× アリキオン、アフロ[5分50秒 掬い投げ→TKO]ガルー、デュミナス ○


【動画】開始直後に1ダウンを奪うガルー(リング右サイド、左)。だが、アリキオンも投げで奪い返す! 【動画】デュミナス(右)の投げがアフロに決まる! 【動画】ガルーの猛烈なラッシュがアリキオンとアフロをなぎ倒す

 第2試合は“オーバーザトップロープ”ルールで行なわれる5分3本勝負。通常1ダウンとしてカウントされるリングアウトが、このルールの場合は即失格となってしまう。

 普通サイズのロボットであればなかなかトップロープは越えないのだが、対戦したのは今大会最大のロボットであるGATと、足が長くなってかなり大型化したクロムキッド。特にひざを伸ばした歩き方がそこはかとなく転倒の不安をかもし出しているGATは、トップロープが腰より下。一歩間違えれば“オーバーザトップロープ”間違いナシである。

 試合のほうはROBO-ONE軽量級優勝という他団体(?)タイトルを持っていたクロムキッドが貫録勝ち。GATもハリセンでダウンを奪い、会場を沸かせる場面を作ったが、最後はスローモーションのように倒れて、ジ・エンド。リングアウトこそなかったものの、TKO負けとなった。

○ クロムキッド[2分00秒 上手投げ→TKO]GAT ×


【動画】GATの入場曲は“軍艦マーチ”。ハマリすぎ 【動画】GAT(右)のハリセン乱れ打ち。なんと(というと失礼か)クロムキッドからダウンを奪う 【動画】クロムキッド(左)はお返しの“掬い投げ”で試合を決めた

 第3試合に予定されていたKinopy対サンダーボルトは、サンダーボルト側の棄権により、Kinopyの不戦勝。Kinopyは前日に続いて木琴を叩くデモを行なっていた。

 第4試合は、サッカー専用ロボットと名乗っていてももう誰も信じてくれないというサアガが、4.5kgのアリモプレナを「投げ飛ばす!」と宣言して挑んだ指名マッチ・5分3本勝負。試合開始直後から猛烈な勢いで掴みかかるサアガは、真上には持ち上がらないと見るや、横にいなすような投げを駆使し、2ダウン先行。このまま試合が決まってしまうのかと思いきや、アリモプレナも懐に入ってこようとするサアガをカウンター気味に迎え撃ち、イーブンまで盛り返す。互いにダウンできない状況になりながら、積極的に攻める両者だったが、最後はアリモプレナの裏拳がサアガの後頭部に入ってダウン。サアガは惜しくも敗れることになった。

○ アリモプレナ[3分56秒 右裏拳→TKO]サアガ ×


【動画】スピードで回り込み、複数の投げ技でダウンを奪うサアガ(右)の真骨頂が発揮された 【動画】最後はアリモプレナ(左)の裏拳が決まった

 第5試合は、ここ埼玉県草加市と並ぶロボットプロレスのメッカ(?)山形県長井市から参戦したフラワー戦隊ナガレンジャーに、先ほど初代srpwタッグチャンピオンに輝いた吉田ファミリアというマッチメイク。できすぎだが、これは事前に予定されたことではないという。

 正パイロットが仕事の都合で長井に帰ってしまうという厳しい状態でのスタートとなったナガレンジャーは、操縦もままならない状態でありながら2ダウンを奪い、一時はイーブンに。そこから2ダウンを連取されて崖っぷちに追い込まれるものの、最後の1ダウンだけは許さず、負けはしたが判定にまで持ち込んだ。

× フラワー戦隊ナガレンジャー(ナガレブラック、ナガレイエロー)[判定 (4ダウン-2ダウン)]吉田ファミリア(rsv-3、さくら2号) ○


【動画】ナガレブラック(左)が浴びせ倒しでダウンを奪う! 【動画】最後は乱戦に。こうなると手の長いrsv3(右端)が有利なのか

 第6試合は「エクアドル逆輸入決戦」と題された、アフロ対トコトコ丸のシングルマッチ10分1本勝負。ROBO-ONE GPでもおなじみの有名ロボット2体による対戦である。登場してすぐに会場のお子さんから名前が呼ばれたあたり、さすがに名前が知られているロボットだ。

 開始直後、トコトコ丸がロープに跳び、アフロと相打ちに。次にトコトコ丸はヘッドバットを決めるものの、まだ立ち上がるアフロ。お返しとばかりに、今度はアフロがヘッドバット。これが効いて頭を振るトコトコ丸。なかなか決定的なダウンが奪えない状況にイラついたのか、アフロがトコトコ丸の後ろからチョークを決める。これに怒ったトコトコ丸が、怒りのヘッドバット3発でアフロを沈め、最後は体固めでフォール勝ち。

 ……という試合を、見事にロボットでやってのけた両選手に喝采である。名試合だったといえるだろう。

× アフロ[4分23秒 ヘッドバット→体固め]トコトコ丸 ○


【動画】ヘッドバットが効いて頭を振るトコトコ丸(左) 【動画】トコトコ丸(左)もヘッドバットを決めるが、両者“脳しんとう”でダウン 【動画】カウント4までばっちりチョークを決めるアフロ(左)

【動画】試合を決めたヘッドバットからフォールまで。その1 【動画】試合を決めたヘッドバットからフォールまで。その2

 第7試合に組まれたのが、「関東ロボットヘビー級選手権試合」と冠された5分3本勝負。この試合に勝ったものが、ヘビー級初代チャンピオンとしてベルトを巻くことができるのだ。地元埼玉の雄ヨコヅナグレート不知火に対するは、ROBO-ONEトーナメントでもおなじみのivre。

 ivreが想定していたよりも小型だったせいか、不知火の攻撃がivreにうまくヒットせず、ivreのほうも自重の軽さで不知火に有効打をなかなか当てられない。体格に優る不知火が戦いを有利に進めるが、試合時間残り30秒でivreのバッテリが限界に達し、レフェリーストップにより終了。初代チャンピオンの名誉はヨコヅナグレート不知火が獲得した。

 これでめでたしめでたし……となるはずが、突如としてサアガが登場。第1部タッグマッチでのパートナーを祝福に来たのかと思いきや、いきなり不知火を抱え上げると、そのまま背中越しにリングに叩きつけてしまう! なんと、今度の挑戦者は自分だとアピールするデモンストレーションだったのだ。次回に向けて、ひと波乱ある締めくくりとなった。

○ ヨコヅナグレート不知火[4分31秒 レフェリーストップ]ivre ×


【動画】多くのロボットが“神の手”でロープを越える入場だったが、不知火は自力でトップロープ越え 【動画】なかなかお互いが思うように試合が進まない 【動画】最後はバッテリの消耗が限度を越えてivre(右)が立ち上がれなくなる

チャンピオンベルトを巻いた不知火 【動画】乱入したサアガ(奥)が不知火を抱え上げて頭から落下させる 【動画】次回タイトルマッチに繋がる伏線だ!

 本日のメインイベント、第8試合はくまたろう選手の引退試合として開催される「ノーロープ有刺鉄線電流地雷爆破時限爆弾デスマッチ」時間無制限1本勝負である。試合開始2分が経過したところでロープのかわりの有刺鉄線に電流が流れ、触れれば大ダメージ。リングアウトすれば地雷が爆発。しかも試合開始から6分経つとリングの周囲に設置された時限爆弾が爆発してしまうという、逃げ場のない戦いだ。

 もちろんメインイベント・引退試合らしく、会場には過去の映像をふんだんに使ったPVが流され、戦いを盛り上げる(関西からわざわざキングカイザーからのメッセージが贈られてきた)。まず、対戦相手のメタリックファイターが入場。続いてくまたろうは、プロレスファンなら誰でも知っているであろう“破壊王”のメロディーに乗って登場する。

 試合内容に関してはノーカットで撮影した動画を見ていただくほうが、会場の雰囲気も試合の流れもよくわかるだろう。クラッカーのように見えても、それは目の錯覚だ。あれはまさに電流爆破であり、地雷、時限爆弾なのである。

 この試合をもってくまたろうはロボットプロレスを引退。デュミナス選手やロボビー選手、フラワー戦隊ナガレンジャーなどから花束贈呈が行なわれ、セレモニーはテンカウントゴングで締めくくられた。「プロレスファンとして、テンカウントゴングで送っていただいたことは最高の幸せです」と語る操縦者・引間奈緒子氏の目に光ったのは、喜びか、悲しみか。

○ くまたろう[11分17秒 フライングボディーアタック→体固め]メタリックファイター ×


【動画】あの“破壊王”の入場テーマでくまたろうが登場! 【動画】やっぱりコレがなくちゃ、という盛り上がりどころ 【動画】メインイベントは最初から最後までノーカットでどうぞ

今後も「ロボットプロレス」に注目!

 筆者はロボットプロレスを取材したのは初めてだったが、今回の取材前に不安視していたところがあった。ホビーロボットを良く知らない人たちも見る環境で、ロボットはどれくらい楽しんでもらえるのか、俗な表現をすれば、どれだけ“ウケる”のだろうと思っていたのだ。

 実際に観戦してみると、想像していた以上に観客に“ウケる”場面が多かった。観客の盛り上がりという点でいけば、ガチンコの格闘競技会よりも上なのでは、と思ったくらいである。今回特に突出してウケていたように思えたのは、メインイベントのくまたろう引退試合と、第6試合「エクアドル逆輸入決戦」の2戦である。メインイベントはもちろんだが、「エクアドル逆輸入決戦」のほうはロボットの動きだけで盛り上げるために、「コソコソ話す」や「ヘッドバットが効いて頭を振る」「チョークスリーパー」などのモーションをしっかり準備して、しかもそれがわかりやすく表現されており、5分間の1ステージを見ているような気分になった。

 口で言うのは簡単だが、モーションを作り、安定して動作するように調整し、当日間違えずに繰り出していくのは、生易しいことではない。くまたろうの引間氏は「ガチンコバトルのほうが絶対楽です」と断言していたが、それもむべなるかな。真剣に戦い、真剣に楽しんでもらうために、エンターテイナーたるロボットに要求されるのは、いたずらに転ばない安定性と、必要なときにしっかり再生される確実なモーション、ミスをしない操縦者といった、競技会で勝利するのと同じレベルでの技術と同時に、さまざまな場面に対応できるだけの動きのバリエーションと、観客を魅了する技も持たなければならないのだ(同じ技を繰り出しているだけでは観客は楽しくない)。

 試合である以上「勝ち負け」は確かにあるのだが、勝ち負けだけが唯一絶対の価値である競技会とは一線を画した、「エンターテインメント」としての価値が存在するのが、ロボットプロレスなのである。


 イベント全体のプロモーターであるオマタ氏は、大会公式サイトのトップで「ロボットプロレスは『Robot Fighting Arts』であり、決して戦うことだけにとらわれたりしません。戦う選手たちをアーティストとして、迎え入れ、観ているお客様にそのロボットの楽しさ、面白さ、凄さを伝える。そんなアーティスト達のロボットエンターテインメントを実現することを目標に取り組んでいます。」(原文ママ)

 という文章を掲げている。また、同氏は大会後に「ROBO-ONEは予選(デモンストレーション)のほうが技術的な進化は大きいはず。プロレスは例えば『ドロップキックをやるためにはどうしたら』とか、『鉄柱を登るにはどうしたら』など、いろんな“目的”ができるので、ロボットの進化には有効だと思っています」と語ってくれた。

 今大会は、すでにその片鱗を見せていた瞬間がそこかしこにあった。ぜひまた次の機会にも見てみたい、と思わせられた。もし“普通の”格闘競技会しか見たことがないという人には、ぜひロボットプロレスを見てほしいと思う。二足歩行ロボットの新しい可能性は、ここにもある。

 「もうちょっと運営がしっかりしていれば、参加者ももっと楽しんでもらえたんじゃないかとは思っています。でも、子供たちには楽しんでもらえたみたいなんで……ROBO-ONEの予選と決勝が合わさったような、いいイベントになったと思います」(オマタさん)

 次回開催は未定だが、今大会で生まれたチャンピオンベルトを巡って、ふたたびどこかでプロレスが行なわれるのは確実だ。次はぜひ、多くの人にナマで見てもらいたい。


【動画】イベント終了後に子供たちに配る“草加せんべい”を割る不知火。もちろんおいしくいただきました 【動画】こちらはKinopyのせんべい割り。両手で掴んで丁寧に割ります

URL
  草加ロボットプロレス「できんのか!」
  http://www.atamo-robot.com/dekinnoka.html


( 梓みきお )
2008/12/12 01:11

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