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「SFアニメが現実に!? 激論ロボットトーク〜夢と情熱がロボットの未来を想像する〜」レポート
〜河森正治氏×古田貴之氏×水内郁夫氏によるトークショーなど


先着200名の観客の前でトークショーは行なわれた
 11月29日(土)、東京・青山の先端技術館@TEPIAにて、イベント「SFアニメが現実に!? 激論ロボットトーク〜夢と情熱がロボットの未来を想像する〜」が開催された。「激論! ロボットトークショー」、「河森正治氏デザイン画展」、「ロボットデモンストレーション」という構成だ。

 激論! ロボットトークショーの出演者は、アニメ「超時空要塞マクロス」シリーズの監督や、その主役メカ「バルキリー」シリーズのデザインで知られるビジョンクリエイターの河森正治氏、千葉工業大学未来ロボット技術研究センター(fuRo)所長の古田貴之氏、東京大学情報理工学系研究科知能機械情報学専攻講師の水内郁夫氏の3人。司会は、乾貴美子さんが担当した。河森正治氏デザイン画展は、河森氏が監督を務めたアニメ「マクロスF(フロンティア)」(2008年4月から同年9月まで全25話を放映)と「創聖のアクエリオン」(テレビ東京系列で2005年4月から同年9月まで全26話を放映)の主役メカを初めとする多数のデザイン画を展示。ロボットデモンストレーションでは、古田氏が開発した多関節ホイールモジュール装備移動ロボット「Halluc II」と、水内氏が開発した超多自由度可変柔軟脊椎筋骨格型ヒューマノイドロボット「小太郎」のデモが公開された。


古田氏、河森氏を前にただのファンと化す!?

 トークショー最初のヤマ場は、ゲスト3名の経歴紹介などが終わった後に早くも訪れた。古田氏が大の河森氏の大ファンであることを宣言し、トークショー前に河森氏と握手をしたり、直接話をしたりして、「もう僕はお腹いっぱいなので、あとは座って話を聞いています(笑)」などと、出演者というよりは半分お客さん状態で笑いを誘った。古田氏にとって、河森氏は神にも等しい存在で、「話を聞いていたい」はかなり本気だったようだ。

 それに対して河森氏はにこやかに対応しながら、「自分は想像で描いているわけですが、お2人方は実際に造っていらっしゃるわけで、その点がものすごく大変だと思います。そこにものすごく興味がありますね」と語る。会場には今回のイベントでデモを行なうHalluc IIと小太郎がすでにセッティングされており、少なくとも河森氏はこの2台が動くところを生で見たことはなく、デモにかなり期待している様子だ。ファン代表(!?)の古田氏は、「僕はなんでガウォークが生まれたのか聞きたいです(笑)」とし、ここでも会場の笑いを誘っていた。ちなみにロボットアニメ好きなら知らない人はいないが、ガウォークとは「超時空要塞マクロス」シリーズの主役メカ・バルキリーが取る形態の1つ。バルキリーは、ファイター(戦闘機)形態からバトロイド(人型)形態まで3段階に変形するのだが、両者の中間形態がガウォークと呼ばれる。戦闘機に手足が生えたような姿をしているのが特徴だ。戦闘機と人型の間で変形を行なうロボットはそれこそ無数にあるが、両者の中間形態というものはあまりない。

 そして、ここまで静かにしていた水内氏に対し、河森作品についての話が振られると「実は子供のころにテレビを見ていなくて、よくわかっていなかったりします(苦笑)」と恐縮モード。多感な頃にあまりロボット系のアニメやマンガに影響を受けなかったという、日本のロボット研究者としては珍しい(?)存在である。そこで年長者の古田氏(古田氏は1968年生まれ、水内氏は1972年生まれ)が「しょうがないなぁ〜」とばかりに、「それじゃあオジサンがマクロスとバルキリーの素晴らしさを教えてあげましょう」として、本当に丸1日ぐらい使って講義を始めかねない雰囲気に、会場は笑いに包まれていた。


数々のメカをデザインしてきた河森正治氏 開始早々から脱線気味のfuRo所長の古田氏 水内氏は、少年時代にロボットアニメをあまり見なかったという

ロボット関連の道へ進んだきっかけの話から脱線して……!?

 続いての話題は、現在の道に進むきっかけとなった体験などについて。まず河森氏からスタートし、生まれた時(1960年生まれ)はまだテレビがなくて、アニメやマンガなどの影響を受けるよりも前に、実際に蒸気機関車や飛行機、クルマなどを見て育ってきたことの方が大きいという。また、小学校3年生の時のNASAのアポロ月面着陸計画も影響が大きかったそうだ。月面着陸のテレビ中継を見ながら、「なんでオレのロケットじゃないんだ! 先に行きやがって!」と悔しがったそうである。最初からロボットそのものが好きだったというわけではなく、テクノロジーが進化するに従って、何ができるのかという可能性そのものが好きだったという。さまざまな環境や目的に対し、それに最適に対応する機能というものにも憧れていたそうだ。そして、1970年代のスーパーロボットアニメの時代が訪れ、「巨大ロボットって、実は役に立たないんですよね(笑)」としつつも、その存在に魅せられていったと語る。その魅力に対して河森氏は、「人の形をしていることそのものが持つ夢や憧れと、機能の両方ですね」とした。

 そして、次は古田氏がきっかけを話すのかと思われたら、バルキリーのホビーアイテムを多数コレクションしているバルキリーオタクであることを宣言。酔っぱらってアニメの話になると「バルキリーは神だ!」となるぐらい、常時頭の中を占めている(?)そうである。バルキリーが自分の心を鷲づかみにする理由として、「アニメで初めて、機能美を持ったロボットが、バルキリーなんです」と述べた。そこで会場を爆笑させたのが、バルキリーについて知らない参加者もいるかもしれないということで、古田氏がバルキリーの3形態についての解説を始めた時。ナイスサポートという形で河森氏自らが、実際に3段階に変形させられるバルキリーのホビーアイテムを取り出して、変形させ始めたのだ。それに感動した古田氏は、「あぁ〜、もう、やっちゃってください! みなさん、神自らが変形させていますよ! シャッターチャンスですよ〜!!」。もはや、教祖様と信者状態であった。


河森氏の話に、古田氏と水内氏も聞き入る 河森氏自らバルキリーを変形させる

河森氏のデザインの仕方に迫る

 アニメのロボットが、実際に立体のホビーアイテムになるという、その秀逸なデザイン性に感銘を受けたのが、水内氏。河森氏に対し、頭の中に設計図があってデザインするのか、それとも物を触りながら行なっていくのかという、デザイン手法に関する質問が出された。それに対して河森氏は、「行ったり来たりですね」と答える。ファンの間では有名だが、河森氏は、ロボットの合体変形のギミックのリアルさを追求するため、レゴブロックなどを使って実際に可能かどうか確認しながらデザインしていく。頭の中で考えつつ、実際にレゴブロックでも組み立ててみる、というスタイルなのだ。

 また、古田氏のロボット開発も同じスタイルということで、デザインと実物を行ったり来たりするという。ちなみにHalluc IIに関しては、デザイナーが参加しており、パーツ部分からデザインが採用されている。ロボットの研究者や開発者ごとに手法はいろいろとあるだろうが、fuRoでは骨格の部分で機能美を出し、そしてデザインされたカバーをボディに被せるという手法を採用しているという。その手法については、「バルキリーから習いました(笑)」だそうだ。


河森氏が追い求めているテーマと描写のリアルさ

 続いては、プロモーションビデオで河森氏が監督した作品の映像を紹介。1984年公開の劇場映画「超時空要塞マクロス〜愛・おぼえていますか〜」から、今年地上波で放映されたばかりのマクロスFまで、ロボット系以外の作品も含めてさまざまな映像が流れた。その映像の視聴の後、河森氏は「生物としての人間と、テクノロジーで造り上げられていくロボットと、その両方の可能性やまだわからない部分、未知の部分がいっぱいあるので、そういうところに憧れますね」とコメント。その未知の部分を調べたり、体験したりするのが非常に楽しく、その調査や体験の途中経過を作品に表現しているという。

 そこから真面目なテクノロジーの話になり、古田氏の持論である世の中がロボットを含めたハイテク技術の使い方がわかっていないというか、使い切れてないという話に。河森氏ならビジョンクリエイターとして「こんな技術があったら、こんなロボットが造れるだろうな」という風に考えて、どんどん構築していくということを古田氏は話す。それに対して河森氏は「設定を考えるだけでしたら、予算は関係ないですからね(笑)」と会場を笑わす。さらに古田氏は、マクロスなどの作品にはすごくインスピレーションを受けたり、いろいろと助けられたりしているという。設計も製作も制御も自ら行なうわけだが、困った時は「まず手が伸びるのはバルキリーのハイコンプリートモデル(笑)。河森さんと同じですが、やはり手で触りながら考えますね」だそうだ。


 続けて河森氏は、「今はインターネットで何でも表面上の情報が手に入る時代だからこそ、なおさら本物の経験が重要」と述べる。以前「マクロスプラス」という作品を作った時はリアルな空中戦を描くために、アメリカに渡って戦闘機に乗せてもらい実際に模擬戦を体験してきたという、これまたファンの間では有名だが凄いエピソードを披露。超時空要塞マクロスで、「板野サーカス」と呼ばれる多量のミサイルが白煙を描いて乱舞するシーンを描いて有名になった板野一郎氏(当時アニメーター、現在は数々の作品で監督を務める)と2人で行き、それぞれ別の機体に乗り、Gのかかり方や戦闘中にパイロットはどこを見ているかというものを見て感じて来たという。戦闘機が旋回する際は、クルマのように機種を地面に対して水平のまま曲がっていくのではなく(そういう間違えた描写のアニメが非常に多い)、機体強度の問題のため機体をバンクさせて(カーブの外側に対してお腹を向ける)行なう上昇旋回をするので、追尾されている時などは後方斜め上の辺りに敵機がくる。そのため、ドッグファイト中のパイロットはまず前を向かず、計器などは見ないで上や後方を見ながら飛ぶのだそうだ。

 また、空中戦の迫力を伝えるためにはコックピットからの視点で描く必要もあるということも、その時に感じたという。それまでのアニメでは、戦闘機にしろロボットにしろ、地上から追いかける固定されたものや、ゆっくりと飛んでいるようなカメラ視点での描写がほとんどだったそうだが、マクロスプラスで初めて、コックピット視点というものを導入。コックピット前方からパイロットを見るような視点なので、自機の全体は映らないのだが、Gに揺さぶられ、敵機を追い求めて頭を激しく動かすパイロットと、キャノピー越しに見える次々と入れ替わる青空や大地(戦闘機が左右に旋回したりロールしたりするため、景色のみが激しく変わっていく)というシーンだ。河森氏も板野氏もロケット花火が大好きで、撃ち合いをよくしたそうだが、その時の経験もあって、自分も動きながら相手も動いている描写をしないと、「生きた感じが出ない」という結論に至ったのだそうである。劇場アニメにしろテレビアニメにしろ、限られた枠の中でしか描写できないので、リアルさを出すためにはその枠の中に入らない部分を観察する必要がある、とも語っていた。


謎だらけの人間に対する興味

 河森氏が「人間の不思議さ」にも興味があるといったことから、続いてはその話題となった。水内氏も同様で、どれだけ調べてもわからないことだらけの不思議さに非常に興味があるという。人間や動物の複雑さに比べたら「機械は大したことがない」と感じるそうだ。システムとしてとても長持ちしたり、自己修復もしたりすることから、河森氏も「100年も動く機械なんてないですもんねぇ」と感服している様子。そして古田氏が「うちの娘を見ていると、放っておいても歩行機能とか平衡機能とかみんな身につけちゃうんですよ(笑)」と付け加えると、場内爆笑。ちなみに古田氏は以前、大学から自宅までおよそ8kmの距離を夜中にわざわざ歩いて帰って、歩行の研究をしたという。速度を変えてみたり、突然カニ歩きをしてみたりしたそうだが、何度も職務質問されたというオチに場内が笑いに包まれていた。

 また河森氏は、特に人間の感覚や体の動きについて興味があることから、武術の大家のもとを訪れてさまざまな技をかけてもらったり、特殊能力を持つ人々を海外にまで訪ねて直に見せてもらったりしたそうだ。特殊能力というのは、まさに超能力ともいえるようなもので、ものすごいレベルになってくると、人間離れしてくる。インドのアーユルヴェーダの師匠は、脈を20秒ほど取っただけで人間ドック並みに体の健康状態を言い当てられたりするらしい。ちなみに、脈を1分取れば、その人物の過去の病歴を年月まで正確に言い当てられるのだという。さらに、いつどんな病因で他界するかという未来のこともわかるそうで、日本を始め各国の政治家がお忍びでその師匠に診てもらうことも多々あるとか。ただし、よほどのことがないとその師匠は本人に未来のことは告げないのだそうだが、ヨーロッパのとある政治家が余命1カ月ということで、身辺整理をしなさいといわれ、実際にその通りになったそうだ。その話を聞いた古田氏と水内氏は、いかに機械のセンサーが人間の感覚に劣っているかということを改めて実感していたようである。

 こうした人間の感覚に対する体験から得た発想を根幹に置いて、河森氏が制作した作品が、創聖のアクエリオンだ。複数の人間のそれぞれ鋭さが異なる5感を集約・共有することで、これまでになかった感覚が拡張されるというコンセプトが入っている。例えば、1人は目が鋭く、もう1人は耳が鋭く、もう1人は鼻が鋭いという3人が感覚を共有することで、全員が目も耳も鼻も鋭くなるというわけで、それまでになかった世界が広がる感覚も表現したという。従来のロボットアニメでは、人の攻撃力や防御力の拡張は扱われてきたが、感覚の拡張という表現はなかったので、描いてみたかったということである。


ロボットデザインから工業デザインまで

 続いて、実際にデザイン画を見ながら河森氏にデザインに関する話を聞くことに。ロボットの姿を描くことは、デザインという作業が半分で、あとは作品の中でどう使うか、どういう意味があるのかと考えることが残りの半分になるそうだ。創聖のアクエリオンのロボットのデザインに関しては、3機の戦闘機の合体の仕方でロボットの形状が大きく変わるのはもちろん、カラーリングもそれぞれ変化がつくように気を遣ったりしたという。同作品は、元祖合体変形ロボットアニメの「ゲッターロボ」に対するオマージュ的作品であるのだが、ゲッターロボがなし得なかった完全合体変形を成し遂げたかったということである。

 河森氏は、「人型である必要はないし、人型以外のデザインも好きなんですけど、でも人型には憧れてしまいますね」という。いろいろと考えていくと、人が巨大なロボットに憧れるのは、巨人伝説といった神話の世界にまでさかのぼるのではないかと考えたそうだ。「人間が持っている能力や可能性が拡張されて、大きな姿になっていくのではないでしょうか」と語った。

 また、工業デザインについても話題が及んだ。河森氏は、工業デザインとしては、ソニー「AIBO」(ERS-220)や日産「デュアリス」のパワードスーツなどを手がけている。AIBOに関しては、取っ手を兼ねたエアインテークや、頭部のリトラクタブルライトといったさまざまなアイディアを考えたが、使えなかったものも多かったという。その話を聞いた古田氏が、もっとシステムの基本部分から関われれば、さらに素晴らしい物ができたのではないかと話を振ると、「本当にそうですね。そういうところからできれば」と回答。それを聞いた古田氏、「やりませんかー!」と本気でお誘いを開始(笑)。実は古田氏、最初から頼めないかと悩んでいたらしい。河森氏、「全然OKです(笑)」と即答。「(趣味ではなく)ちゃんと仕事としてお願いしますので」と古田氏の発言に、場内爆笑となった。


 そしてパワードスーツ・デュアリスに関しては、河森氏は「平坦な道を移動する時に足である必要はありませんよね。車輪で移動して、車輪では移動できない場所や人と対面する時には人型になればいいわけです」と、移動システムに関しての持論を展開。さらに、パワードスーツ・デュアリスは、ヒザの辺りに搭乗者の足があるなど、パワードスーツとしては装着者とスーツの関節の位置が合っていない。その点については「目的地に向かって移動する」という意志を拡張したデザインなので、あえてそうしているのだという。ちなみにパワードスーツ・デュアリスは、一部がクリアーパーツになっているのだが、完全に覆ってしまうと自律型ロボットみたいになってしまうし、むき出しだとバイクになってしまうということで、実車デュアリスの天井のスカイルーフをイメージしている。デザイン面での苦労は、クルマに似せすぎてもダメ、リアルに変形するようにしてしまうとトランスフォーマーみたいでダメと注文があり、1カ月ほどで数十パターンのデザイン画を提出したそうだ。

 ちなみに、この時「トランスフォーマーに関わっているので」という言葉があったのだが、バルキリーをモデルにしたロボットが初代トランスフォーマーのアニメに登場していたことをいっているのか、それとも新作映画に河森氏が関わっているのか? 確認が取れなかったので謎である。そのほか、山海嘉之教授との対談から急遽コラボレーションすることになった、サイバーダインスタジオで上映中のCG+実車のオムニビジョン「TARGET HAL MICRO ADVENTURE」の話も。サイバーダイン社製ロボットスーツ「HAL」と連動して動く小型ロボットというコンセプトで、昆虫の世界を冒険する、という感じの内容だ。なんでも、山海教授がポロっと漏らしたところによれば、実際にそういうHALを利用したマスタースレーブ型らしき小型ロボットを開発しているそうである。


古田氏のロボット開発はわずか1カ月

 続いて、実際のロボット開発の話となり、まずは古田氏から。Halluc IIは、別の仕事の合間にわずか1カ月で開発したという。同じ研究開発者として水内氏は、「すさまじく短いです」とコメント。ただし、その短さは睡眠時間を極限まで削っての結果であり、古田氏はロボットを開発するたびに体重が落ちるのだという。Halluc IIを造った時は1カ月で10時間強の睡眠時間しか取れず、開発前は85kgあった体重が、1カ月後には45kgになってしまったそうだ。なおこの時、古田氏はとうとうガマンできず(?)、なんとHalluc IIの赤いカバーの裏側に河森氏にサインをお願いしていた。

 そして現在開発中のロボットの話に。既に発表されているが、かなりの予算を使ってモーターから開発して人が乗れるロボットを手がけているそうである。コックピットは、日本科学未来館でHalluc IIを操作できるコックピットシステム「Hull」(ハル)がベースとなる。科学未来館では、そのデータ収集を行なっているというわけだ。また、開発中のモーターは2〜4kWの出力があるそうで、1mのアームの先で200kgの重量物を持ち上げることが可能。プロトタイプの下半分は今年度中には完成する見通しだが、全体が形になるのは来年度中という。ちなみにガウォーク形態もあるそうだ。


85kg(画面の75kgは間違い)→45kgに痩せた証拠画像 Halluc IIのカバーの裏側にサインをもらっていた

開発中の搭乗型ロボットのイメージ(かなりデザインは変わる模様) コックピットは日本科学未来館のHullが原形となる

 続いては、水内氏。小太郎開発に関わる苦労は、やはり従来のヒューマノイド型ロボットとは大きく異なる、腱(筋肉)駆動である点。腱駆動によるシステムを選択したのは、人間の柔らかい動きや大きな動きを再現することが狙いにある。それを実現するため、多くの関節で人同様に3軸で動けるようにボールジョイントを採用したのだが、そうすると関節がどれだけ稼動したかを把握するのが大変になってしまったという。そこでボールに模様を描いて、それを携帯電話用のカメラでとらえて模様の変化からどれだけ動いたかを把握するようにしたそうだ。力が足りない場合は腱を増やせばいいという人間の体に似た仕組みなので、最初に開発した時よりも増やされており、体重も20kgから25kgに増えているそうである。ちなみに小太郎の開発は1年ほどかかったそうで、古田氏がHalluc IIを片手間に1カ月で造ったということが信じられないと水内氏は驚いていた。

 そして現在開発中のロボットだが、小太郎の後継機の「小次郎」となる。人間の腕の動きの柔らかさの再現のため、肩胛骨・鎖骨・胸骨の仕組みを極力再現した骨格を搭載している点などが特徴。ちなみに、小次郎の未公開映像も公開され、マスタースレーブ方式のシステムも採用する方向で開発していることなども語られた。水内氏は、人間の幼児は自分で勝手に動いて体の動かし方を学んで、転んだりしつつもだんだんと普通に歩いたり走ったりできるようになるので、その学習の仕組みが凄いという。将来的には、転んだりしても故障しないように造り、一晩勝手に動かせて、歩き方や走り方などを学んでしまえるようなロボットを開発したいとした。


小太郎の特徴をまとめたプレゼン画面 こちらは小次郎のプレゼン画面 【動画】小次郎のさまざまな様子を紹介したムービー

ロボットと自身の研究や作品のこれから

 最後に、今後のロボットについて三方それぞれに語ってもらうことに。水内氏は、ロボットの開発は自動車同様にさまざまな要素を必要とする総合技術で成り立っており、日本がロボット分野で現在世界一といえるのは、そうしたさまざまな分野で強いからである。この日本が世界一といえる状態を維持していきたいと語った。また、これからについては、ものづくりに興味があるという。またロボットはまだまだなので、もっともっと凄いロボットを造っていきたい、とも語っていた。

 古田氏は、ロボットについて目的や機能ごとに形態を決めればよく、人型にこだわる必要はないという。技術については、基礎技術と実用化技術とその両方が重要とする。両方を突き詰めていきたいと語る古田氏であった。ロボットの未来ということでは、まず「今日は満足です(笑)」と会場を笑わせながらも、技術は使いようだと語る。ただ単に興味本位の狭い範囲で突き詰めていくと、ヘタすると原爆のような不幸なことになりかねないので、技術者と、技術者ではない人が一緒になって、使い方や基礎からすべてを構築していって、人類が幸せになる方向に持っていってもらいたいという。今後は、環境やインフラなどすべてを含めて考える必要があるとも語っていた。

 河森氏は前述したとおり、人間に興味があり、とりわけ人の感覚、感じる力のネットワークに興味があるという。武術の達人を取材していて、「筋肉を完全に弛緩させることによって、わずかに膨張するのでその力を利用する」というような、一般常識では考えられないような理論をベースにした技に出会ったそうで、まだまだ人間には隠された能力があるのを強く感じたそうだ。人間の場合、筋肉そのものがセンサーなので、体表の触覚だけではなく、筋肉の内側の感覚を使うといった、これまで研究されていない分野がまだまだあり、そういう部分に興味が尽きないという。次の新作は、きっと「人間の感覚」について、また創聖のアクエリオンとは異なるアプローチをした内容になるのではないだろうか。また、ロボットの未来については、ヒューマノイド型のロボットというわけではないが、やはり興味があるのは感覚。森の中の生き物とか、さまざまな生物の感覚を統合して感じられるような未来が合ったら面白い、ということだった。人の体そのものが、現在の技術でも誰も作れていない最も優れたシステムを持っているわけで、自分の体がどうなっていて、どういう風に動いているのか、どんな機能があるのかを考えているだけで、面白いという。トークショーは、これで終了となった。


ロボットデモンストレーション

 Halluc IIと小太郎のデモンストレーションはトークショーの終盤に実施され、この日はさらに2回に渡って行なわれた。Halluc IIは何度か本誌で取り上げているが、改めてその動作の様子をムービーで紹介。小太郎に関してはまだあまり紹介していないので、各部のアップ写真を多めに掲載する。

■Halluc II


Halluc II Halluc IIの側面 【動画】ユラリという感じで移動する様子

【動画】その場旋回と真横への移動 【動画】インセクトモードでの移動 【動画】その場でスクワット

【動画】3倍インセクトモードで高速移動 【動画】インセクトモードでも旋回可能 【動画】狭いところでの移動用のアニマルモード

【動画】インセクトモード横歩き 【動画】お手。先端のひと組の足を使って物を挟んで持つことも可能 【動画】さらには物を持ったままの移動も可能

【動画】その場でグルグルと旋回 【動画】段差を乗り越える様子 【動画】段差をバックで降りることも可能

■小太郎


小太郎。海外講演から帰国したばかりで、調整不足でやや傾いた状態 顔のアップ 顔側面

後頭部 胸部 肩部

背面肩胛骨の辺り 腹部 腰部を側方から

腰部〜臀部 脚部(右) ヒザ部(左)

金色の装置が人工の腱(筋肉)。これが全身に多数ある 後ろ姿 【動画】小太郎が体を左右に揺すったりする様子

【動画】手を挙げたり足を上げたりする様子 【動画】背後からの様子

河森正治氏デザイン画展

 最後は、河森正治氏デザイン画展で展示された全デザイン画を一気に紹介。マクロスFからはVF-25やVF-27、創聖のアクエリオンからはソーラーアクエリオン、アクエリオンマーズ、アクエリオンルナなどが展示された。たった1日のみだったが、無料で鑑賞できたため、常ににぎわっている状態だった。

■マクロスF


河森正治氏デザイン画展スペースの入口。TEPIA4階ホワイエが展示会場となった 入口のカラー大判原画。バルキリーVF-25Fメサイア(主人公機)。右は主人公の早乙女アルト シリーズ伝統の三角関係の恋愛を主人公と展開する、ランカ・リー(パネル)と歌姫シェリル・ノーム

バルキリーVF-25ファイター形態のラフ。3Dモデリング用のラフ「改」とある。2006年8月15日の日付 バルキリーVF-25ファイター形態の仮カラーリングのラフ。日付は2006年7月20日なので、「改」ではない模様

バルキリーVF-25バトロイド形態の、3Dモデリング用のラフ「改」で、日付は2006年8月15日 バルキリーVF-25バトロイド形態のカラーリングラフ。日付は一部隠れているが、2006年7月

後のアルト機VF-25Fメサイアのバトロイド頭部のラフ。VF-25-Jとあり、近接格闘戦タイプとも バルキリーVF-25-S(隊長のオズマ・リーの機体)のバトロイドの頭部近辺のディティールアップ

スーパーパック(宇宙空間用装備)を装着したVF-25のファイター形態のラフ。日付は2006年7月 スーパーパック装着のVF-25の準備稿(カラー)。「アドバンスド・スーパー・バルキリー」とある

スーパーパックを装着したVF-25のバトロイド形態のラフ スーパーパックを装着したVF-25のバトロイド形態の準備稿(カラー)。日付は2006年7月

アーマードパックを装着したVF-25のバトロイド形態のラフ アーマードパック装着VF-25の準備稿(カラー)。「可変式アーマード・バルキリー」とある

ブレラ・スターンの乗るVF-27のラフの1つで、決定稿とは主翼の形状が大きく違う。日付は2007年7月6日 VF-27のラフの1つで、日付は2007年7月10日。こちらも主翼の形が大きく異なる

日付は不明だが、主翼の形状が7月6日版に近い雰囲気のVF-27のラフ画 準備稿。7月10日版にカラーを施したものだ。ただし、カラーリングは決定稿と異なり、黒系

こちらは日付が不明なデザイン画にカラーが施された「準備稿別案」。メインカラーは決定稿と同じ紫系 さらにデザインが変更され、2007年9月20日版。決定稿にかなり近くなっているのがわかる

VF-27バトロイド形態のラフ。腹部の形状などが異なっている VF-27バトロイド形態の準備稿(カラー)。色が塗られていると、決定稿との違いがわかりやすい

「EX(エクステンド)-ギア」と呼ばれる、パイロットが装着する強化外骨格型のエジェクションスーツ 長距離外宇宙移民船団マクロス・フロンティアの旗艦アイランドワン。日付は2007年5月11日

アイランドワンの内部概念図。日付は2006年8月3日 長距離外宇宙移民船団のアイランド・クラスター級(生態系艦)標準型のデザイン画。日付は2007年5月18日

■創聖のアクエリオン


アクエリオン3形態の1つ、ソーラーアクエリオンの各部ディティールアップ。2004年8月14日の日付 ソーラーアクエリオンのノーマル時の決定稿 ソーラーアクエリオンのソーラーウィング展開時の背面の決定稿。日付は2004年9月4日

アクエリオン3形態の1つ「アクエリオンマーズ」のノーマル時の決定稿。日付は2004年9月4日 アクエリオンマーズのノーマル時の背面の決定稿。こちらも日付は2004年9月4日 アクエリオン3形態の1つ「アクエリオンルナ」の参考ラフ。日付は2004年2月12日

アクエリオンルナの決定稿。日付は2004年5月18日 アクエリオンルナの背面の決定稿。日付は2004年5月20日 ソーラーアクエリオンの上半身になる戦闘機ベクターソルのラフ「改」。日付は2004年2月6日

軍用の強攻型アクエリオンの「アルファ」ノーマル時決定稿。表記が軍用ソーラーアクエリオンとなっている アクエリオン アルファの頭部デザイン。日付は2005年1月27日 強攻型の1つ「アクエリオン オメガ」のノーマル時の決定稿。表記は軍用アクエリオンマーズ

強攻型の「アクエリオン デルタ」のノーマル時の決定稿。表記は軍用アクエリオンルナ。日付は2005年1月28日 軍用ベクターソルこと「ベクターアルファ」の決定稿。日付は2005年1月31日 ベクターアルファ(軍用ベクターソル)のインパクトカノンのデザイン。日付は2005年1月31日

アクエリオン オメガの上半身になる戦闘機、軍用ベクターマーズこと「ベクターオメガ」の決定稿 アクエリオン デルタの上半身になる戦闘機、軍用ベクタールナこと「ベクターデルタ」の決定稿 ベクターマーズと敵・ケルビム兵が合体した「ケルビム・マーズ」の決定稿。日付は2005年3月24日

ケルビム・マーズの背面の決定稿。こちらの日付も放送開始直前の2005年3月24日 2003年4月3日の日付が入った、最初期のラフスケッチ。この時期は、まだ「アクエリアス」と呼ばれていた

これもアクエリアス段階のラフスケッチ。バックパックのデザインはアクエリオンらしさが出ている これもアクエリアス。バックパックはアクエリオンの雰囲気があるが、ボディは甲冑っぽい

(C)SATELIGHT.Inc 2007


URL
  先端技術館@TEPIA
  http://www.tepia.jp/
  河森正治公式サイト
  http://www.satelight.co.jp/kawamori/
  千葉工業大学未来ロボット技術研究センター
  http://www.furo.org/
  水内郁夫公式サイト
  http://www.jsk.t.u-tokyo.ac.jp/~ikuo/index-j.html
  マクロスF
  http://www.macrossf.com/
  創聖のアクエリオン
  http://www.aquarion.info/


( デイビー日高 )
2008/12/09 21:40

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