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3日間合計で3万人弱が来場した
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11月26日(水)から28日(金)までの3日間に渡り、東京ビッグサイトで「全日本科学機器展 in 東京 2008」が開催された。主催は、日本科学機器団体連合会とフジサンケイ ビジネスアイ(日本工業新聞社)。3日間合計の総入場者数は2万9,374人だ。まるでホムンクルスや改造人間を作れそうなイメージの実験装置や器具、測定装置などが多数出展されているのが同展示会の特徴。興味を引かれた装置や器具類をピックアップしてお見せする。
● ロボット系展示も複数
入江ブースで出展していたのが、東京電機大学工学部機械工学科医用精密工学研究室(三井和幸教授・寺阪澄孝助手)で開発されている、EHD(Electro-Hydro-Dynamics:電機流体力学)現象を利用した流体アクチュエータ。絶縁性の流体中に挿入した電極間に高電圧を加えることで、電極間に流体の流れが生じるEHD現象を利用した装置である。「EHDロボットハンド」と「EHD人工筋ロボットアーム」が展示され、デモが行なわれていた。
EHDシステムの特徴は、空気圧システムのコンプレッサーのような大きめの機器を必要としないこと。9Vの角電池2個、EHDポンプ(ハンドやアーム後方にある黒や白の細長い機器)、絶縁性流体のタンクなどで動作し、サイズや重量を抑えられる点が大きな魅力だ。「EHDロボットハンド」は最大出力にすると、重さ8kgの物体を挟んで落とさずにいられるという。
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「EHDロボットハンド」のシステム(右側は「EHD人工筋ロボットアーム」)
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【動画】「EHDロボットハンド」の動作する様子。指を挟まれても痛くないしなやかさも併せ持つ
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「EHD人工筋ロボットアーム」とそのシステム
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【動画】「EHD人工筋ロボットアーム」の動作の様子
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EHDシステムは9Vの角電池2個で動作可能
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京都電子工業が出展していたのは、ロボットアームを用いた自動前処理装置付き滴定装置「ケミスト ゼロ」。滴定とは化学物質の量を測定する定量分析法の1つで、化学反応を用いて行なう手法だ。従来はビュレットから試料を垂らすといった細かい作業のために人間が行なっていたが、それを正確にスピーディにやってのけられるようになったのが「ケミスト ゼロ」というわけである。
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【動画】「ケミスト ゼロ」が作業する様子
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【動画】「ケミスト ゼロ」のビュレット部分のアップ
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実際にはロボットアームというわけではないが、一見そのような外観をしているのが、ダルトンが出展していたヨーロッパに拠点があるFUMEX社のフレキシブル局所排気装置システム「TERFU」シリーズだ。同製品はフレキシブルに動かせるため、作業用デスクが広くてあちこちで実験を行なう場合でも、手元に引き寄せて発生したガスや粉塵などを直近で吸い込めるという仕組みだ。この「TERFU」シリーズとワンセットで使われることが多いのが、フィルターと送風(吸引)機がコンパクトにユニット化された「LF70」シリーズ。大型キャスターやハンドルを備えており、移動させやすい点がポイントだ。
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「TERFU」シリーズは一見するとロボットアーム
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フィルター装備のコンパクト送風機「LF70」シリーズ
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● ハンディセンサーの近年のトレンドはガン型
温度や成分、サーモグラフィなどさまざまな用途のセンサー(スキャナ)類は、近年はガン型が増えているのがトレンドだ。銃のように片手で持てて、調べたい物に先端を向けるだけという使い勝手の良さが人気の理由のようだ。
リガクが扱っているガン型X線スキャナの「XLt」および「XL3t」シリーズは、部品や材料などの組成を調べられる装置。つまり、調べた物がどんな原子から構成されているかがわかるというわけだ。有害な規制物質が含まれていないかといった検査や、各種調査などに使われているという。モニタが装備されているので、その場ですぐ結果を確認できる点が特徴の1つで、PCに無線および有線での接続をして、スキャナからPCへのデータ送信や、PCからの遠隔操作も可能だ。ちなみに出力するX線は非常に弱く、レントゲン機器に比べても弱いので、危険性はまったくないそうである。また、試料のない空中に向かって照射した場合は、すぐX線をシャットダウンする仕組みだ。価格は500万円以上。
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出展されていたのは、モニタを引き起こせる「XL3t-700」シリーズ
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モニタ部分。「XL3t」シリーズはカラー液晶
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分析結果(別のスキャナのデータだが、PC上のソフトは同じ)
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安立計器が出展していたガン型スキャナは、放射温度計「R」シリーズ。-50~500度までを1度単位の分解能で調べられる「R-100」、その高性能版(分解能0.1度単位)の「R-150」、0~1,200度までを調べられる「R-160」などがある。R-160は500mmの距離で直径12mmの小スポット径と遠方からでも狭い範囲の計測が可能。また、レーザーマーカが付いているので、測定ポイントが一目でわかる点も特徴だ。また、別の接触式センサーの「HHT」シリーズをアタッチメントとして利用可能。接触式の方がより正確に求められるので、これでキャリブレーション(補正)を取ってから、実際に使用するというわけだ。
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放射温度計「R」シリーズ
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接触式センサの「HHT」シリーズ。「R」シリーズに接続しての使用も可能
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タスコジャパンが出展したガン型スキャナは、可視カメラ付きサーモグラフィ「THI-501D/E」シリーズ。赤外線画像のみだと、その場で撮影した人はわかるとしても、後にほかの人に見せた場合、どの場所で何を撮影した画像なのかわかってもらいにくいことがある。それを通常画像と赤外画像を重ね合わせることで解決したのが、同シリーズというわけだ。通常の画像の一部が赤外画像に置き換えられて表示される仕組みだ。本体にカラーモニターが備えられており、その場での確認も可能。温度測定範囲は-20度から350度。最も低価格(70万円弱)の「THI-501D-1/E-1」の熱画像解像度は120×120、可視画像解像度は60万画素。最高級機の「THI-501D-3/E-3」(約115万円)は、180×180、230万画素となっている。
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可視カメラ付きサーモグラフィ「THI-501D/E」シリーズ
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「THI-501D/E」シリーズを正面から
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モニタ画像の様子。ブース前で、人をとらえた赤外画像であることがわかる
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● そのほかちょっとほしくなる便利な各種センサーたち
ガン型以外にも、用もないのに思わず買いたくなるようなセンサーが多数出展されていた。その1つが、入江ブースでデモを行なっていた、ジョイ・ワールド・パシフィック製の高性能カロリー測定装置「カロリーアンサー」。一見すると前面が不透明な電子レンジだが、波長700nm(ナノメートル)から3,000nmまでの近赤外線を利用して食品の吸光度を調べ、それと重量計算をかけ合わせてカロリー計算を行なう分析装置である。フタを開けて中に調べたい食品をセットし、最大でもわずか10分ほどの所要時間で、従来の食品成分表による計算よりも詳細な結果を算出可能。
例えば同じ牛肉でも、従来なら脂身の多い少ないがあっても同じ値が出てしまうのだが、カロリーアンサーならちゃんと異なった結果が出る。平均誤差も6%ほどとなっている。お腹が気になる人は買いたいところであるが、あくまでも分析装置なので、価格はウン百万円だそうだ。
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「カロリーアンサー」。上にあるのは分析結果の印刷用プリンタ
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正面から。お皿の上の某食品の分析結果は、記載成分表とほぼ同じ203kcal
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料理の味に関する重要な要素の1つが、甘み=糖度。アドバンテック東洋ブースで展示されていた京都電子工業の「RA-250W」は、重量はわずか100gのWiiリモコンのような形状をしたポータブル糖度計だ。先端のへこんだプリズムと呼ばれる測定ステージに試料を1~2滴垂らし、測定ボタンを1回押すだけで、2秒という短時間で測定。精度はプラスマイナス0.2%、試料は洗い流せる防水設計、単4電池2本で動作するといった特徴も持つ。果物、野菜、そのほか食品類、酒類を含む飲料、調味類などさまざまなものを調べることが可能だ。そのほかにもアドバンテック東洋ではハンディセンサーを取り扱っており、シンナーなどのVOC=総揮発性有機物質の検出を行なえる「VOC-101H/121H」(セントラル科学製)などもあった。
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ポータブル糖度計「RA-250W」。こちらの液体の糖度は4.3%
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同じように見える茶色い液体だが、こちらは1.0%
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展示されていたのは、上級機種の「VOC-121H」
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ケツト科学研究所も多数のハンディセンサーを出展していた企業の1つ。円を採用したデザインのため、一見するとデジタル式の目覚まし時計か何かに見えるデュアルタイプ膜厚計「エスカル」(LZ-990)は、金属上のペイントやメッキといった皮膜の厚さを調べるセンサーだ。調べたい材料の上に置くだけで、素地の材質が鉄か非鉄かの自動判別を行ない、その上の被膜の厚さを電磁方式か渦電流方式のどちらかを用いて、置いた瞬間に測定してしまう。測定範囲は0~2,000μmまたは0~80.0mils。精度は、0~1,000μmで2%、1,000~2,000μmで3%となっている。単4アルカリ電池2本を使用し、バックライト非点灯で連続60時間の動作。また同社では、紙を挟むことでその水分を調べられる「HK-300」シリーズや、上に置くだけで木材の水分を調べられる「MT-900」などもあった。
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デュアルタイプ膜厚計「エスカル」。置くだけですぐ測定してくれる
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紙水分計「HK-300」。ホチキスのように紙を挟んで計測する
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サンプルの紙の水分含有率は4.6%
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木材水分計「MT-900」。グリップが木製なのでハイテク機器らしくない温かみや柔らかさがある
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イワケンが展示していたのがオリンパス製品で、その中の1つが工業用ビデオスコープの「IPLEX」シリーズ。A4サイズの「IPLEX FX」と、肩がけが可能なB5サイズの「IPLEX MX R」の2種類が展示されていた。同シリーズは細いパイプや機械の中などをのぞき込むのに使用する工業用の内視鏡で、スコープの先端部分をクネクネと自由に動かして角度を変えられるのが特徴だ。オリンパスといえばカメラなどレンズを使用する機器で有名だが、「IPLEX」シリーズの同社ならではの鮮明で美しい映像が特徴の1つ。また、本体は1.2mの高さから落としても壊れないなど、米国国防総省のMIL規格に準拠した耐性試験をパスしている点もポイントだ。
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本体とコントローラ、そしてスコープ部という組み合わせ。鉄パイプの先からカメラが出ている
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非常に鮮明で美しい6.5インチモニター
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● あやしい実験を思わずしたくなる!? ガラス器具たち
続いて紹介するのは、これぞ実験、というイメージのガラス器具たち。思わず買い込んで、あやしい実験をしたくなるような(?)芸術的ともいえる器具の数々である。桐山ブースでは、ガラス管をバーナーであぶってクルクルと巻いてみせる、ガラス工房のようなデモも実演していた。
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桐山ブースに展示された芸術品的なガラス器具たち
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【動画】ガラス管がクルクルと巻かれていく様子
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三商は、IKAジャパンの「ロータリーエバポレーターRV10」シリーズを展示
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東京理科器械は、4連式自動合成装置「リアクトマスターマックス DDS-1400型」を展示
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柴田科学の展示機器の1つが、「フッ素イオン蒸留装置 I型総合セット」
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柴田科学が顧客の要望で復刻させたガラス器具「茶褐色ガラス」シリーズ
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● バイオハザード対策を施したキャビネットや防護用キットなども展示
バイオハザード対策用キャビネットという、ものものしいジャンルの製品も展示されていた。アドバンテック東洋ブースの、サンヨー製「MHE-91AB3」がそれだ。2007年6月に施行された感染症法に基づく特定病原体などの管理規制に対応しており、病原体はレベル3まで、組み替えDNAはP3までの危険度に対応している。要するに、このキャビネットの中の作業台上で、病原菌などの臨床検査から遺伝子操作までを行なえるというわけだ。そんなにものものしい装置には見えないのだが、逆にそれが怖い雰囲気である。価格は約170万円。
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バイオハザード対策というと、ものものしいイメージを持ってしまうが、外見は至って普通
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前面シャッターは透明強化ガラス製、中の作業台はオールステンレス製
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室内排気と室外排気と用途に合わせて方式を選べる、排気チャンバ・ダンパを装備
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コクゴブースで展示されていたのが、アゼアス製の「感染症防護対策キット ICK」シリーズだ。米デュポン社のタイベック製の防護服を中心に、マスク、ゴーグル、ニトリルラテックス製のアウターとラテックス製のインナーの二重構造の手袋、タイベック製シューズカバーというセットになっている。さぞかし高価なものと思われるかも知れないが、これがなんと「ICK-2」が2,800円、「ICK-3」が3,000円。両者の違いは、防護服が「ICK-2」がタイベックソフトウェアII型で、「ICK-3」はタイベックソフトウェアIII型であるところ。展示されていたのは、「ICK-3」だ。防護服のサイズは170cm以下のSから、180~188cmまでのXLまで4サイズ用意されていた。これを着るような事態は起きてほしくないが、驚くほどの低価格なので、万が一のために家族の人数分ぐらいは用意しておいても損はないかも知れない。
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「感染症防護対策キット ICK-3」
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顔のアップ
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ロボット系の技術が応用された機器は少ないが、いろいろと興味深い装置や器具を見られるのが、この展示会の特徴。ホムンクルスを生み出したり、人間を超人化する秘薬を製造する実験をしたりと、かなり妄想の入った(笑)想像をかき立てられる装置や器具を見てみたい人は、ぜひ「全日本科学機器展 in 東京」に注目することをオススメする。
■URL
全日本科学機器展 in 東京 2008
http://www.sis-tokyo.jp/opening.htm
( デイビー日高 )
2008/12/03 17:00
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