在日デンマーク大使館とデンマーク技術研究所(DTI)は11月20日(木)、都内のデンマーク大使公邸において記者会見を開催し、産業技術総合研究所が開発したアザラシ型メンタルコミットロボット「パロ」を、同国の高齢者向け施設で本格導入していくことを発表した。DTIが同国内の窓口となり、パロの輸入、販売、導入時研修、メンテナンスなどのサービスを提供する。
パロには「ペット代替」と「セラピー」という2つの用途があるが、今回デンマークで利用されるのは後者の目的となる。アニマルセラピーには心理的、生理的、社会的な効果があり、ロボットセラピーでも同様の効果が期待できるという。
デンマークでは、高齢者居宅介護促進プロジェクト「Be Safe」の取り組みにおいて、12体のパロを使った7カ月の実証実験が行なわれた。コペンハーゲンの認知症センターで実施されたものだが、この実験でセラピー効果について高い評価を得たことから、DTIがパロの導入をサポートすることになった。すでに20カ所で年内の導入が決まっており、これまでに購入済みの施設とあわせると、国内40カ所でパロが利用されることになる。
海外でパロの代理店が決まるのはこれが初めて。パロは産総研発のベンチャーである知能システムが製造・販売しているが(価格は35万円)、これまで海外では日本から直接購入するなどしていた。今後、DTIはデンマーク国内での普及を促進するほか、福祉制度が似ているスウェーデン、フィンランド、ノルウェー、アイスランドにおいても導入を進める計画だ。
記者会見では、フランツ=ミカエル・スキョル・メルビン大使がパロに対する期待を述べたほか、DTIロボット部門長のクラウス・ライサガー氏がDTIという組織について説明した。またDTIは、産総研との間で共同研究も開始する。導入した施設での事例などを継続して収集して、パロのセラピー効果を高める利用方法の研究や、パロの改良に役立てるという。
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フランツ=ミカエル・スキョル・メルビン大使
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DTIロボット部門長のクラウス・ライサガー氏
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アンデルセンの生誕地Odenseにロボットの拠点がある
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ペット代替とセラピーの2つの目的があるため、現在パロは一般的な“性格”になっているが、「セラピー用にもっと改良していく」とパロ開発者の柴田崇徳氏(産総研・知能システム研究部門主任研究員)。「セラピーの目的に応じたメニューを作りたい。例えばパロAは認知症の高齢者、パロBは自閉症の子供、パロCは……というように、対象にあわせた最適な性格を持つパロを提供していきたいと考えている」と同氏は語った。
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産総研・知能システム研究部門の柴田崇徳主任研究員
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現在のパロは8世代目だ。さまざまなセンサーを備える
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国によって期待するところが違うという
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パロは、タテゴトアザラシの赤ちゃんをモデルに開発されたロボット。視覚(光センサー)、聴覚(マイク)、触覚(面触覚センサー、ヒゲ触覚センサー)などがあるので、光の変化を感じたり、言葉を理解したり、撫でられていることを認識したりして、自律的に反応できる。「世界一の癒しロボット」としてギネスブックに認定されたことは有名。
■URL
在日デンマーク大使館
http://www.ambtokyo.um.dk/ja/
デンマーク技術研究所(DTI)
http://www.dti.dk/
知能システム
http://intelligent-system.jp/
パロ
http://paro.jp/
( 大塚 実 )
2008/11/21 16:08
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