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JIMTOFは1日では回りきれない規模の展示会
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10月30日(木)から11月4日(火)まで、東京ビッグサイトにて日本最大の工作機械見本市、「第24回 日本国際工作機械見本市 JIMTOF 2008」(以下、JIMTOF)が開催された。主催は社団法人日本工作機械工業会と東京ビッグサイト。出展規模は過去最大の851社/5,231小間で、日本を含む17カ国・地域の企業が参加している。今回は、「地球に、未来に、優しいモノづくり」という統一テーマを掲げて実施された。
JIMTOFは、展示会場として最大の面積を有する東京ビッグサイトの東ホール6つと、西ホール4つ、さらに西1ホールと2ホールのエントリー部分であるアトリウム、さらには西駐車場の一部、コンコースの一部、講演やセミナーで会議棟も使った、非常に大型の展示会だ。小間面積でいくと、4万7,079平方m。おそらく、ビッグサイトでの展示会の中では最大と思われる。規模としては、CEATECや東京モーターショー(どちらも幕張メッセでの開催)と並ぶ、国内で開催される全展示会の中でも最大級の1つというわけだ。
内容は、名称にあるとおりに工作機械がメイン。工作機械以外にも、鍛圧機械、工作機器、測定機器、油圧・空圧・水圧機器、歯車・歯車装置、工具、CAD/CAMなど、工業やものづくりに関するありとあらゆるジャンルが揃っている。ちなみに、すべてをじっくり見て回ろうとしたら絶対に1日では足りない。記者は、ロボット的な要素のある製品を展示しているブースに絞り込んで取材したのだが、それでも2日かかった。じっくり見て回ろうとしたら、おそらく3日は必要だろう。ヘタしたら、4日になってしまうかも知れない。もしJIMTOF全体の取材となったら気が遠くなるほどだが、アメリカやドイツで行なわれている工作機械展はこの2倍から3倍はあるというので、まだかわいい方のようだ。
● 高さ5m超の巨大ロボットアームが動くファナック
ロボットアームメーカーとして知られるファナックは、全企業合わせてトップ5に入る面積のブースを構え、各サイズのロボットアームやCNCドリルなどを出展し、実機デモを行なっていた。
中でも強烈だったのが、同社が2008年11月から発売を開始した新製品で、世界最大の可搬能力を持つという6軸多関節ロボットアーム「M-2000iA/1200」。「M-2000iA」シリーズは2種類あり、今回は1200の名称が示すように、1.2tの最大過般重量を持つタイプが展示された。垂直方向にアームを伸ばすと、5mは超えると思われる巨大さ(もう1つのロングアームタイプ「M-2000iA/900L」はもっと大きい)。1.2tを持ち上げられることからわかるように、ハンド部も巨大で、少なくとも2人ぐらいならつかむことができそうである。その迫力は、まさにモビルスーツ級(もちろんハンド部は人の手のひらの形をしていないが)。
終了時刻ギリギリの取材となったため、「蛍の光」がバックで流れるちょっと切ない(?)ムービーとなってしまったが、重厚感がありつつも軽快に、そして精密にその巨腕が動く様子をご覧あれ。
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【動画】モビルスーツ実機製作の際、「腕部はファナックにお任せ」といいたくなる頼もしさ
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【動画】ハンド部の重量は350kg。実際に持ち上げられる重量は、850kgになる
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【動画】横から見たところ。より巨大さを実感してもらえるだろうか
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● まるで艦載バルカン砲!? ヤマザキマザックのマシニングセンタ
F1のトップチーム、マクラーレンのテクニカルパートナーとして、マシン製作の工作機械の多数を同チームに提供しているヤマザキマザック。2番目の広さを有するブースを構えていたのだが、そこで目についたのが、多面5軸加工門形マシニングセンタ「VERSATECH V-140N」だ。多面5軸加工用ヘッドを搭載しており、加工物を一度取り付ければ、垂直面、さらに従来は不可能だった斜め面も含めたすべての面を加工できるという工作機械である。このヘッドの形状と、高速で動くその様子が、一見すると艦載のバルカン砲という趣なのだ。ちなみにぶら下がる形なので、宇宙艦艇用ということになるが(笑)。また、実際に加工の様子のデモも行なっていたのだが、アルミの削りカスがのぞき込み用の窓(強化プラスチックか何かと思われる)に激しく音を立ててぶつかってくるので、非常に迫力があった。
同社は、ほかにもGE(ゼネラル・エレクトリック)やフェラーリなどにも工作機械を納めており、GE製のジェットエンジン「GE90 ターボファン エンジン」や、フェラーリの市販車用V10エンジン(ミハエル・シューマッハのサイン入り)なども展示していた。今後は工作機械にも人間工学などに基づいたデザインを施して差別化を図るとしており、インダストリアルデザイナー・奥山清行氏のKEN OKUYAMA DESIGNと工作機械の総合デザインコラボレーションを結ぶという、先進的な話題も提供している。それに合わせて奥山氏が先ごろ発表した、コンセプトカー「K.07」も展示しており、クルマ好きには意外な穴場だった。
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【動画】「VERSATECH V-140N」。雰囲気的に四方八方に弾丸をバラまいているような雰囲気
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【動画】別のマシニングセンタがアルミの大きな塊を削っている様子
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マクラーレン・メルセデスの2008年型マシン「MP4-23」
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奥山清行氏デザインの「K.07」
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● ニイガタマシンテクノのデモはサンダーバード2号が発進しそう
ニイガタマシンテクノは、横型マシニングセンタを開発して1世紀以上の歴史を持つメーカー。デモンストレーションは、実際に金属ブロックを加工する内容ではないのだが、サイズがあるので結構迫力がある。装置そのものが全高で10m近く、全幅も同じぐらい。ターンテーブル上に載った金属加工物ですら全高・全幅ともに数mという具合だ。そんな巨大な金属加工物が横にゆっくりと動いていき、ヘッドなどが突出してくる様子は、何かサンダーバード2号などの発進シーンを彷彿とさせ、あのテーマソングが聞こえてきそうだった。
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【動画】補給・整備完了、発進! みたいな重厚感のあるデモ
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【動画】ターンテーブルが回転する時も。複数の発進ゲートを選択中という雰囲気
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【動画】シャッターが開いて装置が出てくるなど、この辺も整備基地風
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● レニショーの3次元測定機用プローブシステムは魔法少女!?
レニショーのダイナミック計測ヘッド型3次元測定機用プローブシステム「REVO」は、エンジンのシリンダーの内側など、人の手では測定しにくい部分でも、簡単に計測できるシステム。「Renscan5」という、重量による慣性力の影響で発生する動的誤差を軽減する5軸スキャニング方式を採用している点が特徴だ。動作時の見た目がとてもかわいい点も特徴で、スタイラス(センサーの棒の部分)を、クルクルっと魔法少女がアイテムを回すようにしてセンシングを行なうのだ。呪文が聞こえてきそう!?
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【動画】「REVO」が3次元測定をする様子。魔法の呪文が聞こえてきそう
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【動画】シリンダー内で計測している様子をアップで撮ったところ
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● 高野ベアリングのロボットアームはハンド部がターレット式
数多くのロボットアームが出展されていたが、思わずひかれた1つが高野ベアリングのブースで展示されていた、ドイツSCHUNK製ロボットアーム。ハンド部がターレット式という、多連旋回ロボットハンドユニット「ターレット ユニット TU」シリーズのデモが行なわれていた。ターレットハンドには4つのフィンガーアタッチメントが装備されており、次々と旋回してはパイプをつかんでいき、まとめて移し替えるという内容だ。そのパイプを持った状態でハンドが旋回する様子は、「装甲騎兵ボトムズ」のAT(アーマード・トルーパー)「スコープドッグ」の顔のターレット・レンズを想像させられ、思わずニンマリしてしまう記者であった。
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【動画】ターレットユニットを旋回させて、フィンガーアタッチメントを閉じたり開いたり
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【動画】実際にパイプをつかんでは別の場所に移し替える様子
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● 三菱電機製の炭酸ガスレーザーの威力を見よ!
三菱電機も広いブースを構えており、数々の大型工作機器を出展。その1つが、二次元レーザー加工機「NX」シリーズだ。炭酸ガス(CO2)レーザーを利用しており、金属板を紙か何かのようにスパっと撃ち抜き、微細な模様も手早くきれいに正確に描いていく。アシストガスや使用レンズの種類を選択することで、軟鋼(SS400)やステンレスなら板厚26~28mmぐらい、アルムニウム合金(A5052)でも14~20mmぐらいまで加工できる出力があり、もはや兵器レベル。ちなみに、ガンダリウム合金の加工に関するデータはない(笑)。
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【動画】この程度の金属板なら、軽く貫ける出力のレーザーを装備
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【動画】どれだけ細かく模様を刻めるかという内容のデモ
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● ほとんどロボットの顔! コグニテンス・ジャパンの3次元測定プラットフォーム
三角形の中にある3つのカメラ。どこかのロボットの顔みたい(記者は、色は違うけど、ボトムズのヘビー級AT「トータス」シリーズを速攻で連想)な装置は、コグニテンス・ジャパンのポータブル式3次元測定プラットフォーム「optigo」だ。いわゆるカメラのようなものだが、操縦者が自由に動かすタイプと、ロボットとしてオートで測定するタイプがある。出展されていたのは手動タイプだが、ロボットタイプはビデオで紹介されていたので、その映像を撮影させてもらった。
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新開発のロボットの顔、と説明してもそのまま通じそうなデザイン
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自由に動かせて、右にある自動車のドアのような複雑な形状の物体も3次元測定を行なえる
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【動画】ロボットタイプの紹介ムービーの一部
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● そのほか数々のロボットたち
そのほかにも、いくつものロボットが展示されていた。その巧ぶりに感心させられたのが、オプトンのパイプ曲げを目的とするベンダーロボット「SRLY I-20」だ。強度のありそうな金属製パイプを次々にクイックイッと早業で鮮やかに曲げてしまう。その腕前は、ロボット職人ともいうべきイメージで、ぜひパイプ曲げ職人の親方に見ていただきたいところだ。
システム・スリーアール日本のロボット「ワークマスター リニア」は、作業と搬送を兼ねたシステム。あっちから部品を引っ張り出してこっちにセットして、という感じの働き者感のあるロボットだった。
それから、三菱重工業の大型工作機械「MVR35」もメカニカル感あふれるマシン。アタッチメントの交換などを自動で行なうのだが、その交換作業はメカ好きの心をくすぐる。ムービーは、デモを観覧している来場者が多く、横方向からの撮影となってしまって少しわかりづらいのだが、そのメカニカル感を堪能してみてほしい。
一般的なサイズのロボットアームも1つ紹介。安川電機のもので、7軸多関節型の「MOTOMAN-SIA20」だ。可搬重量は20kg。今回は3次元形状計測ユニット「アゼリア」とコンビを組み、落ちている部品の形状を認識して確実に拾って所定の場所に移すというデモを行なっていた。垂直に伸ばした場合の全長は約1.5mというサイズで、人の腕と同じ軸数。器用に折りたたみながら、一見すると不可能に見える位置にある窓にアームを差し込む様子が見られる。とても関節が柔らかいロボットだ。
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【動画】パイプ曲げの達人、オプトンの「SRLY I-20」。その曲げっぷりを披露
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【動画】システム・スリーアール日本の「ワークマスター リニア」。働き者だ
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【動画】三菱重工業の「MVR35」。大型メカは迫力があっていい
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【動画】とても柔らかく動く安川電機の「MOTOMAN-SIA20」
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また、ロボットではないのだが、見た目がまるでモビルスーツ級の指という趣で、記者的に感動したのが、SMW AUTOBLOKの「自動芯出し振止装置」。いわゆる挟んで固定する装置なのだが、ブースでは大型から中型まで4つ並べられており、角度によっては巨大なロボットの手のように見えたというわけだ。
そして、デモ自体は時間が合わなくて見られなかったのだが、今回の展示機械の中でも1、2を争う全高を誇っていたのが、新日本工機のガントリーマルチセンタと呼ばれる工作機械「PSR-6E」。全高は7~8mはあった。横幅や奥行きもあり、非常に大きな工作機械だ。
それから、主催者企画ものでは、鉄工所を舞台にした集英社の青年マンガ誌オースーパージャンプで連載中の「ナッちゃん」(たなかじゅん)の展示もあった。同マンガの立ち読みコーナーなどのほか、劇中で登場する、古生代カンブリア紀中期(約5億年前)に絶滅したバージェス動物群のアノマロカリスをモチーフにしたロボットの実機も水槽で泳いでいた。
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一見すると、モビルスーツの指! SMW AUTOBLOKの「自動芯出し振止装置」
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でも、本当はこんな風に並んでいた
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デモは見られなかったが、新日本工機の巨大工作機械「PSR-6E」。全高7~8m
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ものづくりマンガ「ナッちゃん」のコーナー
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【動画】アノマロカリスロボット。水棲動物であったとされ、本物同様に泳いでいた
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まだこのほかにもロボット系で面白い機械はいくつかあったのだが、撮影許可を得られなかったため、お見せできずに残念である。次回のJIMTOFは、2010年10月下旬を予定。学生は無料で入れたので(次回も無料になるかはわからないが、社会人でも事前登録すれば1,000円)、ぜひとも見てもらいたい展示会である。日本にはこれだけの大から小まで精密で力強い工作関連の機械たちが揃っているのだ。また、小さなお子さんも感動したり驚いたりすること間違いなしの巨大工作機械も多いので、エンターテインメント系ではないのだが、親子で来るのもあり。もう少しで、「機動警察パトレイバー」のレイバーぐらいのロボットが工作機械として出てきそうな感じなので、実は要チェックの展示会なのである。
■URL
第24回 日本国際工作機械見本市 JIMTOF 2008
https://www.jimtof.org/Jap/index.html
( デイビー日高 )
2008/11/06 15:27
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