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月探査機「かぐや」の公式成果報告に宇宙ファッションショーも
〜国際航空宇宙展「宇宙ステージ」レポート


展示会場内に設けられたメインステージ。大勢の立ち見客が出るほどの盛況ぶりだった
 2008年国際航空宇宙展は、平日の1日(水)〜3日(金)がトレードデー、週末の4日(土)・5日(日)がパブリックデーとなっていた。業界関係者しか入場できないトレードデーとは異なり、パブリックデーにはファミリーで来場する人も多いのだが、この両日、会場内のメインステージでは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が協力した「宇宙ステージ」というイベントが開催されていた。本レポートでは5日(日)の模様をお伝えしたい。


月周回衛星「かぐや」の最新情報

 まずは、JAXAが昨年9月に打上げた月周回衛星「かぐや(SELENE)」の公式レポートが行なわれた。登壇者は、かぐやサイエンスマネージャの加藤學・JAXA教授。


かぐやサイエンスマネージャの加藤學・JAXA教授 「かぐや」にはこれだけの観測機器が搭載されている

 「かぐや」は、マイクロバス程度の大きさを持つ本格的な月探査機である。15種類もの観測機器を搭載しており、月の起源と進化の解明が期待されている。その1つとしてハイビジョンカメラも搭載されており、送られてきた月面の鮮明な映像に驚いた人もいるだろう。打上げから1年以上が経過し、成果も出てきたということで、加藤氏からは最新の研究結果が報告された。

 子衛星「おきな」(RSAT)を使った月の裏側(地球から見えない面)の重力場観測では、詳細な重力分布が分かってきた。月の表側は、海の部分が一様に重くなっていることが分かっていたが、裏側ではリング状の重力異常が多く見つかった。これは「表側と裏側の歴史が違うことを示している」(加藤氏)。


今まで、月の裏側の重力場は正確に計測されていなかった。「かぐや」はそのために、子衛星を使う 重力が大きい場所は赤、小さい場所は青で示される。表側と裏側では異なる傾向が出た 左のように鮮明な重力分布が分かった。従来のデータ(中央)では不鮮明だったが、リングもはっきり見える

 地形カメラ(TC)は、10mの分解能を持つステレオカメラ。標高も含んだ地形データを取得できるので、コンピュータ上で計算すれば、さまざまなアングルから月面を見ることが可能だ。ちょうど、「かぐや」のデータを利用した「月の歩き方」というコンテンツが公開されたばかりで、ここで月面を飛行しているような動画を見ることもできる。


面白いところでは、アポロの着陸地点から見える風景も再現してみた(右上)。実際に撮影された写真(左下)とほぼ同じなので、アポロが着陸したことの裏付けとなる まるでクレーターの周りを飛んでいるかのような3D映像も紹介。この映像は、10月13日放送予定のNHKスペシャルでも見ることができるとか

 マルチバンドイメージャ(MI)は鉱物分布を調べる装置であるが、特に直径100kmを超えるような大型クレーターにできる中央丘に注目しているという。この中央丘は、クレーター形成時に反射波で盛り上がってできたものだ。ここには月内部の物質が出てきており、これを調べることで、深いところの岩石まで知ることができるそうだ。

 また月レーダサウンダー(LRS)は、電波の反射を利用して、地下数km程度までの表層構造を調べる装置だ。静かの海の探査では、深いところに電波を反射する層があったということで、加藤氏は最初に古い海ができたあとで、その上に新しい海が広がったのではないか、との見方を示した。


マルチバンドイメージャ(MI)では、こういったクレーターの中央丘に注目している 月磁場観測装置(LMAG)の観測では、月の裏側に磁場が平均よりも強い領域が見つかったという 月レーダサウンダー(LRS)の観測で、海の地下構造が明らかに。内部に電波を反射する層があった

 ところで、「かぐや」のミッション期間は1年の予定で、ここにきて月レーダサウンダー(LRS)に異常が見つかったりもしたが、「燃料の続く限り観測を続けようと思っている」と加藤氏。延長期間としては1年程度を想定しているそうで、「(かぐやに搭載された)みなさんからのメッセージは、来年8月ころに月に到達することになる」との見通しを述べた(かぐやは最終段階で月面に落とされる)。


意外なところにHTV

漫画家の小山宙哉氏(右)とJAXA有人宇宙環境利用ミッション本部の柳川孝二氏(左)
 続く第2部では、「あなたも未来の宇宙飛行士」をテーマに、講談社モーニングで「宇宙兄弟」を連載している漫画家の小山宙哉氏とJAXA有人宇宙環境利用ミッション本部の柳川孝二氏との対談が行なわれた。

 この漫画は宇宙を目指す兄弟の物語。時代設定は2025年という近未来になっており、漫画の中には国際宇宙ステーション(ISS)も登場してくる。まもなく訓練のシーンに入るということで、参考のために小山氏は「かっこいい訓練」と「地味な訓練」を質問。対する柳川氏の答えは、前者が「船外活動の訓練」、後者が「語学の訓練」だった。ISSでは、ロシア語も習得する必要があり、これにはかなり苦労するそうだ。

 現実でも、JAXAはちょうどいま宇宙飛行士の選抜を行なっているところだ(募集はすでに終了)。JAXAの宇宙飛行士の募集は、今回で5回目。その時々で狙いは違っており、初期のころはスペースシャトルでの宇宙実験が目的だったが、現在はISSに長期滞在できる宇宙飛行士を選んでいる。将来的には、月面に行って基地を作るような宇宙飛行士の募集もあるかもしれないと柳川氏はコメントしていた。


これまでの4回の募集で、毛利衛氏を始めとする8人が選定されている 写真に納めそこなったが、中央にHTV(宇宙ステーション補給機)の絵があった

 漫画に触発されたのか、柳川氏は「私の夢」ということで、現在開発中の宇宙ステーション補給機「HTV」を発展させて月に行くというアイデアを披露、聴衆を驚かせた。「まぁ荷物を運ぶだけなんですけど、こんなことができたらいいなぁと思っている」(柳川氏)。


ISSに物資を輸送するための宇宙船がHTV 写真に納めそこなったが、中央にHTVの絵があった

JAXAが考える次世代の宇宙服とは?

山方氏は宇宙服を着ての登場。これは、スペースシャトルの打上げ・帰還時に使用される俗称“パンプキンスーツ”
 第3部は「宇宙ファッションショー」。宇宙での服と言えばやはり宇宙服というわけで、まずはJAXA有人宇宙環境利用ミッション本部の山方健士氏から、現在の宇宙服事情についての説明があった。

 いわゆる“宇宙服”というときは、船外活動(EVA)用の宇宙服を指すことが多いが、ISSでは現在、米国製の「EMU」とロシア製の「Orlan」の2種類が利用されている。それぞれに特徴があるのだが、共通して言えることは、重い、動きにくい、活動時間が短い、などの欠点があることだ。軌道上では無重力なので、重くても問題なさそうなものであるが、これが小さく・軽くなれば、打上げ時にその分ほかの物資を運ぶことができる。また将来の月・火星探査を考えれば、重力も考えなければならない。


宇宙服は“小さな宇宙船”とも言える これは米国製の「EMU」の話になる もちろんNASAも次世代の宇宙服を研究している

 現在の米露のシステムでは、船外活動用の宇宙服のほかに、打上げ・帰還時に着用する宇宙服も必要となっているが、山方氏は「私案」としつつも、これを1着で済ますことを考えているという。「ゼロから新しく作るのは難しいので、日本の技術で宇宙服に使えそうなものを探している。宇宙服を作ることで、生活に役立つ新しい技術も出てくる。そういったサイクルを作りたい」と述べていた。


山方氏のコンセプト。月面で作業するときは必要に応じたオプションパーツを装着する 地上の技術を宇宙に持っていき、地球上でも使える新しい技術となって戻ってくる

 つい先日、JAXAが120時間連続着用できる宇宙服を開発する方針を固めた、という報道があり、記事に目を通した人もいると思うが、山方氏に確認したところ、「まだ研究段階で、開発はしていない」という。JAXAが宇宙服の研究をしていることはこのページにもある通りで、実用化に向けて研究を続けていることは事実だが、最近になって何か新しい意志決定をしたことは特にないそうだ。

 「120時間連続で着用する」というシーンのイメージがわかなかったのだが、この120時間という数字は、NASA側からの要件だという。NASAは月探査をISSと同様に国際協力で進める意向を持っており、この中の1つの案件として「Long duration surface suit」(長時間着用が可能な宇宙服)の開発がある。この宇宙服は、月面での非常時に地球まで帰還することも想定されており、帰還に必要な日数が5日間(=120時間)になるそうだ。

 そのあとで、「きぼう(希望)」をテーマに実施された「岩崎ファッション大賞デザインコンテスト」の入賞作品が披露された。





屋外ではローバーの体験操縦も

ローバーの体験操縦コーナー
 展示ホールの外にはローバー用のコースが設けられており、誰でも体験操縦ができるようになっていた。このコースは「第26回 宇宙技術および科学の国際シンポジウム」(ISTS浜松大会)で使用されていたものを持ち込んだそうで、行列ができるくらい多くの人が楽しんでいた。


URL
  国際航空宇宙展
  http://www.japanaerospace.jp/

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( 大塚 実 )
2008/10/07 15:07

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