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「ロボスプリント狭山大会 2008」レポート
~3,000円台のシンプルなクルマ型ロボットで行なう競技会


左から準優勝、優勝、3位の表彰台の3名の生徒たち
 8月30日に埼玉県の狭山市立博物館において、「ロボスプリント狭山大会 2008(第2回ロボスプリント狭山市立博物館大会)」が開催された。

 ロボスプリントは、地域主導による青少年の技術育成・交流と競技会運営を、そしてものづくりの底辺を広げることを目的に企画された競技会だ。3,990円と非常に安価なクルマ型の自律型移動ロボットを用いて、スピードを競う内容となっている。

 同競技会を主催するのは、埼玉県立狭山工業高等学校電子機械科と、会場となった狭山市立博物館。協賛としてバンダイナムコグループが加わっており、そのバンダイナムコグループと関連のある財団法人ニューテクノロジー振興財団とバンダイが特別協賛している。2006年に狭山工業高校で自作キットによるプレ大会が開催され、昨年から狭山市立博物館で開催されている形だ。なお、昨年から市販キットを使用しているが、その市販キットは2008年7月よりスマッツから一般販売も開始されている。

 全国的に行なわれている大規模な競技会のような派手さはないが、小学生でもお小遣いを少し貯めれば購入できるシンプルな市販キットを使用するため、非常に敷居が低いのが特徴。その大会の模様をお届けする。


ロボスプリントは入門者用のロボット競技会

 ロボスプリントのルールは、2台のロボットがふたつのコース(長さ8.5m×幅0.45m)を走って、どちらが速いかを競う。ただし、ゴール後にブレーキングエリア(1m)内できっちり止まる必要があり、速くても減速できなければその勝負は負け(単独で走る予選の場合はタイムなし)となってしまうのが特徴だ。

 スタート時は、コースの横にはみ出す形で設けられたスターティングエリア(長さ0.45m×幅0.3m)から、コース中央に引かれているラインに向かって斜めに走らせる。スターティングエリアやコースからはみ出ない限り、クルマの角度は自由だ。ゴールまで引かれている白線を検出したら、あとはそれに沿ってゴールへ向かうというわけだ。よって、あまり深い角度で白線に向かわせると、旋回時間が長くなるので、どちらかというと、できるだけ浅い角度でスタートさせるのが一般的。

 なお選手は、スタートさせる時だけ操作し、あとは一切触れられない。予選は1台ずつ計測を行なうが、決勝は2コース使って1対1で走るので、ロボット版ドラッグレースという趣になっている。


ロボット版ドラッグレースという趣の2本のコース スターティングゾーンはコースの横にある ブレーキングゾーン。ここで止まらないとダメ

 現在、バンダイの技術協力のもとに開発されたロボスプリントの市販キットは、非常にシンプルな構成が特徴だ。

 88×185×50mm(幅×奥行き×高さ)というサイズのクルマ型で、重量150g、車輪径30mm、モータ2個、電源は1.5Vの単三電池1本(制御電源は昇圧回路で5V)。PICによるモータ制御と、床面反射式光センサーを2個備え、ボディはプリント基板で、制御機構(マイコン)が中央に搭載されている。後輪2輪による駆動で、前輪はなし。

 その代わり前部には床と接する支柱があって、それが車体を支えている(それを取ってしまっている人もいるが)。また先端には2つのアームがあって、そこにセンサーが備えられており、それで白線を検出する仕組みだ。

 組み立て作業にはハンダ付けも若干含まれるが、技術家庭科でハンダを扱ったことのある中学生なら簡単に作れるレベル(最近は、技術家庭科でハンダ付けを教えない学校もあるそうだが)。小学生でも、高学年ならハンダ付けさえ教えてもらったり手伝ってもらったりすれば、自分で作れるはず。

 自分で作ったのか大人に手伝ってもらったのかは確認が取れなかったが、実際にエントリーしている小学生も何名かいた。改造は、電源回路の変更、車体およびプログラムの改良は認められている。どのメーカーのどんな種類の単三電池を使うかも自由だ。センサー回路、制御回路、モータ制御回路は変更や改良を行なってはならない。


中にはこんなにすごい装飾を施しているものも(実はロボコンマガジン誌の編集さんの機体) ほぼノーマルの作りをした機体 狭山工の女子生徒の機体。シールを貼るぐらいなら車重があまり増えず、タイムに響かない

ワンメイクでなぜタイム差が出るのか?

 ここまで読んで、わずかな改良が認められているものの、全員が同一キットを使うワンメイクなのに、どうしてタイム差が出るのか疑問に思う人もいることだろう。

 実際に、今回も10秒を越えてしまう機体もあれば、5秒台で走る機体もあった。もちろん、プログラミングの要素もあるのだが、ヒューマノイド型ロボットほど複雑ではないため、よほどの工夫をしないと、目に見える差は出にくいという。

 大きな差がつくのは、制作時にどれだけ丁寧に作ったかという点と、どれだけ工夫を盛り込めたかという、ものづくりの基本部分が重要なのだそうだ。雑に作ると、モータの伝達効率が悪くなって結果的にパワーが出なくなってしまったり、走りに偏り(クセ)が出てしまったりする。シンプルなキットなのだが、それだけに逆に出来映えに差が出やすいというわけである。

 一方の工夫面では、電池ボックスの搭載位置を変えたり、支柱の接地面に何かを貼ったり、センサーを備えた前端のアームの角度を変えたりというものだ。

 電池ボックスの搭載位置を変えるということは、重心位置を変化させることになる。通常は後輪の間、リアウィングが立っている辺りに電池ボックスを置く感じなのだが、経験を積んでくると、そこにはまず置かない。重心を前に持って来るようになり、車体中央部のマイコンの上辺りに設置する人が多いようだ(回路の上なので設置に工夫は必要だが)。

 その設置の仕方も、縦にする人もいれば、横にする人もあり、試行錯誤がうかがえる。そして重心と関係してくるのが、支柱の接地面に何を被せるか(貼るか)という工夫。キットのまま(プラスチック)という人もいるのだが、スピード重視で滑りやすいもの、ブレーキング重視で滑りにくいものなど、傾向がそれぞれ異なる。

 中には、支柱を取り外してしまって、センサーアームの付け根のでっぱりを使って、2カ所で接地させている機体もあった。

 また工夫というよりは、セッティングになってくるのだが、ライン検出のセンサーの感度と、センサーアームの角度もタイムを出すためには重要な要素。センサー自体の感度が低すぎればラインを検出できないし、高すぎても過敏になってしまう。

 また、アームの角度を狭くすれば、大きく蛇行せずに済むわけだが、逆に狭すぎると過敏になってしまって小刻みに車体を左右に振ってしまい、速度的なロスが大きくなってしまう。適度な感度と角度を見つけるのも重要というわけだ。


それぞれセッティングの異なる3台。電池ボックスの位置がみな違う 同じ3台の裏面。支柱やセンサーアームなどに加え、若干回路も異なる

 ロボスプリントの生みの親の1人であり、育ての親の1人でもある狭山工の電子機械科畠山先生によれば、「市販キットはものすごくシンプルなのですが、フタを開けてみたら、シンプルなだけに創意工夫次第で差が出てくる奥の深いものになりました。1台1台、それぞれみんな微妙に作りが異なっていて個性がありますし、センサー感度やモータ出力も微調整できるのでセッティングもそれぞれ違っています」という。

 シンプルながら性能とそれに伴うセッティングの仕方はさまざまで、見た目よりもずっと奥が深いというのがロボスプリント競技の特徴というわけである。


40名強が参加した予選・決勝枠は16名

 今回は、主催の狭山工の生徒たちも含めて、小学生から社会人まで、計42名が参加。ちなみに社会人の1名はロボコンマガジン誌の編集さん。編集部入部前の大学生時代からロボスプリントには関わっていたそうで、昨年も参加すると同時に司会も担当したそうで、今年も選手兼司会で参加(惜しくも決勝進出はならなかったが)。

 また、タイム計測やその集計など、運営を生徒たちが担当している点もロボスプリントの特徴だ。選手と掛け持ちしている生徒もおり、忙しそうな子も少なくなかった。コースが設置されたのは、博物館の受付のすぐ横の1階「舞い舞いホール」。周囲に2階へとつながるスロープが螺旋を描いて取り囲んでいる吹き抜けのホールで、360度好きな角度から見下ろせるという構造だ。

 大会は、午前中にフリー走行と予選が並行して行なわれた。予選は、3回のタイム計測を行ない、ベストタイムで上位16名が決勝トーナメントに進出するというもの。コースは2本平行して設置されているが、Aコースが予選用、Bコースがフリー走行用となっていた(予選を行なう選手がいない時は、Aコースもフリー走行で利用可能だった)。スタート地点に立ってゴールを見て、右がAコース、左がBコースだ。

 ちなみにAコースとBコースとでは、スターティングエリアが反対に設置されているので、Aコースは右サイドから、Bコースは左サイドからロボットがコースに入っていき、ラインを検出する。右からと左からでは、機体によって得手不得手があるようで、片方のコースではうまく走るけど、反対のコースはコースアウトしてしまう、なんて選手もいた。

 予選タイムは昨年よりレベルが上がっているということで、6秒中盤がライン。昨年は7秒台でも通過できたそうだ。

 今年の予選トップタイムは、ロボット名Ferrari(狭山工所属)の5秒58。Janne Da Arc(ジャンヌダルク)も6秒の壁を越え、5秒87をマークして2位となった。予選順位と所属、タイム(3回計測の内の最高タイム)は以下の通り。

 なお、参加選手(操作者)は実名登録であることと、大多数が未成年であるため、ロボット名のみを表記する。さすがに、経験数の差のある狭山工の生徒たちが強かったようだ。


1位:5秒58/Ferrari(狭山工業高校)
2位:5秒87/Janne Da Arc(狭山工業高校)
3位:6秒05/ニバンボシ(狭山工業高校)
4位:6秒37/シャケ(狭山工業高校)
5位:6秒37/子1特別賞(西武小学校)
6位:6秒38/電光石Car(入間川中学校)
7位:6秒45/MSZ-006(秩父農工専攻科)
8位:6秒46/MSN-100(秩父農工専攻科)
9位:6秒46/青(入間川小学校)
10位:6秒50/スーパーファルコン1号(堀兼中学校)
11位:6秒55/子2新規参入 Ver.ヨコツカ(西武小学校)
12位:6秒57/Seven Stars(狭山工業高校)
13位:6秒57/ジャスティス(狭山工業高校)
14位:6秒64/Ace(狭山工業高校)
15位:6秒81/優太号(堀兼中学校)
16位:6秒82/入間野(入間野中学校)


 なお、4位と5位は同タイムだが、2番目のタイムで比較すると、シャケの方が速いため上の順位。ちなみに前述の畠山先生の「みなさんのおかげですIII」も出走しており、6秒35を記録。決勝には出場しなかったのだが、予選4位通過のタイムであった。なお狭山工の生徒が半分ぐらい占めているのはご覧のとおりだが、地元小中学校の生徒も奮闘した結果となった。


決勝トーナメントは1対1で2本先取の3本勝負

 そして午後に入って決勝トーナメントの開始。ここからは、1対1で走ってどちらが速いかを競うドラッグレースのようなスタイルとなる。3本勝負で、2本先取した方が勝ち。もちろんどれだけ速くても、ブレーキングエリア内で止まれなかった場合は、無条件で負けとなる。ジャンケンで勝利した方がA、B好きなコースを選べ、2本目は交代。3本目がある場合は、再度ジャンケンして勝った方が好きな方を選べるというルールだ。

 1回戦第1レースは、予選15位の優太号対予選12位のSeven Starsで、後者の勝利。第2レースは予選14位のAce対予選16位の入間野。3本勝負にもつれ込み、入間野が2回戦に進んだ。第3レースは、予選5位の子1特別賞対予選6位の電光石Car。前者が勝利した。

 なお子1特別賞の「1」は、正確には丸数字のため、「こまるいち」と読む。ちなみに、予選11位の子2新規参入 Ver.ヨコツカも「こまるに」と読む。同じ小学校に通う兄弟とのことである。第4レースは、Janne Da Arc対ニバンボシの狭山工同門対決で、なおかつ2位と3位の上位勢の激突だ。結果、3位のニホンバシが勝利している。


【動画】1回戦ダイジェストその1。中学生操縦者・入間野(左)対狭山工・Aceの1本目 【動画】入間野(右)対Aceの2本目 【動画】入間野(左)対Aceの3本目

【動画】1回戦ダイジェストその2。子1特別賞(左)対電光石Carの小学生と中学生の対決 【動画】子1特別賞(右)対電光石Carの2本目

【動画】1回戦ダイジェストその3。予選2位のJanne Da Arcと3位のニホンバシの強豪対決 【動画】Janne Da Arc(右)対ニホンバシの2本目

 続いて反対ブロックに移って第5レース。予選4位のシャケ対予選11位の子2新規参入 Ver.ヨコツカ。名前の由来を聞いてみたくなる不思議なネーミングの後者がコマを進めた。第6レースは、予選7位のMSZ-006対予選10位のスーパーファルコン1号。どちらもスピードの出そうな名前だが、3本勝負にもつれ込む接戦となり、後者が勝利した。

 第7レースは、予選9位の青がロボットの不調のため棄権となり、予選8位のMSN-100が不戦勝。最後の第8レースは、予選13位のジャスティス対予選1位のFerrariの狭山工同門対決。予選トップ通過の貫禄でFerrariが2回戦に進んだ。


【動画】1回戦ダイジェストその4。狭山工・シャケ(左)対小学生・子2新規参入 Ver.ヨコツカ 【動画】シャケ(右)対子2新規参入 Ver.ヨコツカの2本目 【動画】1回戦ダイジェストその5。高校生・MSZ-006(左)対中学生・スーパーファルコン1号

【動画】MSZ-006(右)対スーパーファルコン1号の2本目 【動画】MSZ-006(左)対スーパーファルコン1号の3本目

 2回戦第1レースは、Seven Stars対入間野。Seven Starsが圧勝に近い形で準決勝にコマを進めた。第2レースは、子1特別賞対ニホンバシ。子1特別賞は2回続けて6秒25の好タイムを出したのだが、ニホンバシはそれを上回る6秒22と6秒08を出し、2本連取した。

 反対ブロックの第3レースは、子2新規参入 Ver.ヨコツカ対スーパーファルコン1号。小学生対中学生の対決は、中学生の勝利で、スーパーファルコン1号の準決勝進出となった。

 第4レースは、MSN-100対Ferrari。MSN-100は2連続オーバーランでFerrariの勝利。なお、このレースの1本目は目視判定が不可能なほどの僅差で同着。わずかにAコースのMSN-100が先にゴールしたようにも見えたが、どうもタイム上では手動計測のため、Bコースの方がいいタイムが出てしまったらしい。そのため判定不能となり、引き分け無効という珍しい状態となった。

 ちなみに、記者はゴールそばから撮影しており、ちょうどビデオ判定に使える映像を撮影していたのだが、その場ではコマ送りでチェックできないため、結局役に立たず。後ほどPCで、30分の1秒単位でコマ送りをしてチェックしたところ確認が取れ、Aコースがわずかに速かった。いかに僅差だったかお分かり頂けるだろう。

 ここでひと休みとなり、狭山工の生徒たちによる、ライントレース系競技で使用している機体を用いたデモンストレーションが実施された。こちらはタイヤひとつとっても削り出しを行なっているハンドメイドのクルマ型の自律移動ロボット。モータースポーツに例えるなら、ロボスプリントがフォーミュラの入門クラスのF3とすると、こちらはF1といったところか。

 かかった予算と製作時間とその性能は段違いである。今回は、プログラムだけを変更して、ロボスプリントに対応させての出走だ。走り出した途端にわかるのだが、まずモータの立てる音が違う。ロボスプリントは走行音の方が目立つほど静かだが、こちらは「ウィーン」とか「ヒュイーン」という高周波な感じの力強い音がしており、パワーが段違いなのがすぐわかる。スピードも圧倒的で、4秒台でも遅いというほど。

 全6台が走り、一番後に走った2台の内のAコースの機体が2秒97を記録し、デモ中で最高のタイムとなった。ロボスプリントの半分ほどのタイムで、まさに圧巻だった。


【動画】引き分け判定の勝負となったMSN-100(左)対Ferrariの1本目 【動画】デモンストレーションの様子。2秒97が出たロボット(左)

狭山工勢を崩せる選手は出るか!? 準決勝~決勝レポート

 準決勝第1レースは、Seven Stars対ニホンバシの狭山工同門対決。Seven Starsはこれまでコンスタントに6秒台前半を出しており、今回も1本目は6秒22と好タイム。が、ニホンバシは5秒72で1本目を先取。2本目はSeven Starsがコンマ1秒縮めて、6秒12を記録するも、ニホンバシは5秒88。高レベルの闘いで決着した。

 第2レースは、スーパーファルコン1号対Ferrari。ベスト4に残った唯一の狭山工生以外で、しかも中学生というスーパーファルコン1号。だが、どうやら電池のスタミナの問題などがあったのではないだろうか。準決勝では7秒14、7秒11と、2回戦の1本目の6秒06から1秒以上遅れてしまい、6秒2、6秒92を出したFerrariに敗れ、3位決定戦に回る形となった。決勝戦はニホンバシ対Ferrariに決定。


【動画】準決勝第1レースのSeven Stars(左)対ニホンバシの1本目 【動画】準決勝第1レースの2本目

【動画】準決勝第2レースのスーパーファルコン1号(左)対Ferrariの1本目 【動画】準決勝第2レースの2本目

 決勝戦に先立ち、まず3位決定戦が行なわれた。女子選手Seven Starsと、中学生選手スーパーファルコン1号の激突だ。

 1本目は、6秒29対6秒72で、Seven Starsの先取。2本目は、6秒59対6秒18でスーパーファルコン1号が取り、1-1のイーブンに。3本目は、ジャンケンで勝ってAコースを取ったスーパーファルコン1号が2本目に続いて6秒18を出し、勝利。上位独占と思われた狭山工勢を破ってみごと3位を獲得した。


【動画】3位決定戦Seven Stars(左)対スーパーファルコン1号の1本目 【動画】3位決定戦の2本目 【動画】3位決定戦の3本目

 そして決勝戦。予選3位のニホンバシ対予選1位のFerrariの狭山工勢による対決だ。1本目は、FerrariがAコースで、ニホンバシがBコース。ほぼ同時のスタートとなるが、終盤に伸びを見せたのがニホンバシ。それでわずかに差をつけると、5秒62でゴール。ブレーキングエリアでもギリギリとまでは行かないものの、エリアを一杯まで使って止め、セーフ。Ferrariはコンマ2秒差で後塵を拝する形となった。

 2本目はコースを入れ替え、ニホンバシがAコース、FerrariがBコース。今度はスタートダッシュでわずかにニホンバシがFerrariを離すと、その差は最後まで縮まらず。Ferrariが記録した予選タイムを上回る5秒42をマークし、優勝となった。Ferrariも5秒79と十分に速かったが、相手が速すぎた。


【動画】決勝戦ニホンバシ(右)対Ferrariの1本目 【動画】決勝戦ニホンバシ(左)対Ferrariの2本目

 最終結果を整理すると、優勝はニホンバシで、準優勝がFerrari、3位がスーパーファルコン1号。なお、4位のSeven Starsまでが表彰の対象となった。続けて特別賞が4賞発表され、小学生選手で兄弟の子1特別賞と子2新規参入 Ver.ヨコツカ、秩父農工専攻科のMSN-100、入間野中学校の入間野の4選手が選ばれている。

 「ロボスプリント狭山大会 2008」は、これが埼玉県大会というわけでもなければ、もちろん全国大会でもなく、ここでしか行なわれていない競技なのだが、これはロボスプリントのコンセプトの1つを実践しているからこその形である。

 ロボスプリントは、運営に関してもあまり多大な費用を必要としないコンセプトを掲げており、全国的な競技結果や技術交流はインターネットを通して行なう方針としているのだ。直接選手たちが全国から集まって競うのではなく、各地の大会の全選手のタイムを集計して、インターネットランキングとして発表するというわけだ(現在はまだ行なわれていない)。

 また、畠山先生によれば、学校の廊下や教室などでも十分開催できるので、ロボット競技会の入門用にもってこいだそうである。実際、クラブ活動などでも、ロボスプリントは1台4,000円弱で購入できるわけで、20台買っても8万円でお釣りが来る計算。

 小型クラスは別として、これがヒューマノイド型ロボットだったら、8万円では1台買えるか買えないかになってしまう。ハンダも使って製作して、なおかつ創意工夫を盛り込むことができ、初歩的とはいえプログラミングまで行なえるとなれば、まさにロボットの入門用といえるのではないだろうか。

 全国の小中高の先生方、また地域で子供たちを相手に活動をしている方々、「ものづくり」を子供たちに教えたいと考えておられるのなら、ロボスプリントを教材にしてみればいかがだろうか。ヒューマノイド型ロボットのような派手さはないかもしれないが、入門用としては非常に適していると思うので、ぜひ検討していただきたい。


URL
  ロボスプリント
  http://www.robo-sprint.org/
  ロボスプリント in 狭山
  http://www.sayama-th.spec.ed.jp/RSHP/
  狭山市立博物館
  http://www.city.sayama.saitama.jp/museum/
  スマッツ
  http://www.smats.ecweb.jp/
  埼玉県立狭山工業高等学校
  http://www.sayama-th.spec.ed.jp/RSHP/index.html

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( デイビー日高 )
2008/09/11 12:50

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