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第47回日本SF大会「DAICON7」レポート【2日目】
~さまざまなテーマの分科会や九州から参加した「Blaser」など


 8月23日、24日の2日間、大阪府岸和田市の浪切ホールにおいて、第47回日本SF大会「DAICON7」が開催された。

 日本SF大会は、SF作家とSFファンが集まってさまざまな企画を行なう歴史のある大会だ。今回の「DAICON7」は二足歩行ロボットによるロボットイベント「ROBO-HUB」も開催され、ロボットと縁の深い大会となった。

 今レポートでは主に2日目の24日に開催されたロボット企画についてレポートする。


会場の浪切ホール SF大会の垂れ幕もかかっていた 24日は浪切ホールで岸和田だんじりの話し合いが行なわれており、だんじり囃子が演奏されていた

クローズで行なわれる分科会

 「DAICON7」は大きく分けて、一般にも開放している企画と、参加登録したメンバーだけが参加することのできるクローズ企画の2つが存在した。

 このうちクローズ企画はSF大会内部では分科会と呼ばれ、多種多様の企画が各部屋に分かれて行なわれる。基本的には「SF的なもの」となるが、実際には実行委員会が認定すればどんなものでもかまわない。

 24日に行なわれたロボット関係の分科会を紹介しよう。


メディア・ロボット講座

 メディア・ロボット講座は浅尾典彦、河合康夫、聖咲奇、長谷川能三、渡部義弥の各氏による企画だ。内容は大きく2つに分かれ、1つは20世紀前半の欧米メディアでのロボットの描かれ方の紹介。もう1つは大阪市立科学館の長谷川氏と渡部氏による日本で最初のロボット「学天則」についての紹介だった。

 メディアに関しては、映画とSF雑誌に出てきたロボットの事例が紹介された。映画では有名な「メトロポリス」だけではなく、1920年代のイタリア映画に出てきたロボットなど珍しい映像が紹介された。

 SF雑誌に出てくるロボットについては「最初、ロボットは宇宙人やギャングなどの武器として登場する例(つまり悪役)が多い。しかし、『キャプテン・フューチャー』あたりから主人公たちと共に行動するロボットが出てくるようになってくる」と、欧米でもロボット観の変遷が見られることを紹介していた。

 後半は、大阪市立科学館の長谷川能三氏による学天則についての発表。学天則は西村真琴博士が製作した日本で最初のロボットとして知られる。当時の写真を使いながら学天則について説明をしていた。

 長谷川氏は、何枚かの写真を見比べ、明らかに学天則の顔が違うことを指摘。これについて長谷川氏は「首のラインなどは同じなので、公開中に痛んだ顔のマスクを交換したのではないか。学天則が2台作られたということはないだろう」と興味深い説を紹介していた。


「メディア・ロボット講座」の部屋。司会は夢人塔代表の浅尾典彦氏 映画「ミトルトン一家・ニューヨーク万博へいく」に出てくるタバコを吸うロボット 「ロボットモンスター」のゴリラロボット。一応、これでもロボットという設定らしい

1920年代にイタリアで作られた映画に出てくるロボット。着ぐるみではないかとのことだった フィルム合成で主人公たちを追いかけるロボット 宮崎駿「ラムダ」のモデルになったとされるアニメ「スーパーマン」の宝石店強盗ロボット

戦前のSF系雑誌の表紙。初期のロボットは宇宙人の兵器として登場することが多く、また腕が触手型になっている 車を襲撃して金品を奪うギャングロボット。日本のアニメではロボットの機構がごまかして描いてあることが多いが、欧米のロボットは機構部分がそれらしく描いてあるとの指摘もあった 「キャプテンフューチャー」の表紙

大阪市立科学館と学天則との関わりは、大阪を紹介するビデオの中に登場させるために学天則の模型を作ったことに始まるという 西村真琴博士が学天則を製作することになった理由 大阪市立科学館の長谷川能氏(スクリーンの右下にいる人物)が説明を担当した

写真に残っている学天則の姿の変化についての報告 学天則は表情を変化させることができた 大阪市立科学館に復元された学天則。右にいる人物は「帝都物語」の荒俣宏氏

SF系必殺技研究所・女子ロボ

 SF系必殺技研究所・女子ロボは、中里融司、環望、横山信義、一本木蛮、薮中博幸、冨永浩史の各氏による企画。日本のアニメや特撮に出てきた女性型ロボットの使う必殺技について考察する分科会だが、基本的にネタトークで、会場からは何度も笑いが起こっていた。


「SF系必殺技研究所・女子ロボ」の部屋。左から冨永浩史氏、藪中博幸氏、一本木蛮氏、横山信義氏、環望氏、中里融司氏 中里融司氏はROBO-HUBコーナーにも足を運んでいた。右は、初音ミクの声で喋っていた大日本技研のメカでんでん

ボーカロイドが世界を侵蝕する

 この分科会は、前日の23日に行なわれ、また直接ロボットに関係はないが、最近はVOCALOID「初音ミク」の声を使用するロボットも出てきたので紹介しておく。

 「ボーカロイドが世界を侵蝕する」は、山本弘、野尻抱介、松浦晋也、佐々木渉の各氏による企画。

 VOCALOIDはYAMAHAが開発した音声歌唱ソフト技術で、クリプトン・フューチャー・メディアがVOCALOID技術を使った歌唱ソフト「初音ミク」を2007年8月に発売し、初音ミクはさまざまな方面で話題となった。

 この分科会では、その「初音ミク」が引き起こした影響を考察しようというものだ。まずは初音ミクを使って作られた動画の紹介。途中からは自分で投稿した機械工作動画を紹介する野尻氏の独壇場となり、「もうここまでくるとボーカロイド関係ないですね」と他のゲストから突込みが入っていた。

 企画の最後の方になり、ゲストによる初音ミクについての考察が始まった。

 動画共有サイトの「ニコニコ動画」では初音ミクを使ったオリジナルの歌が数多く投稿されている。その歌を気に入った他の人間が、その歌にイラストをつけたり、オリジナルの3Dモデルを使った動画をつけたりして、音楽PV(プロモーションビデオ)が複数の人間の手によって進化していく例が多い。

 このようなオープンソース的開発の仕組みが(会場からは「Linux!」の声も上がっていた)「初音ミク」によって多方面で引き起こされ、文化的・技術的なものが進歩していけば世界は変わってしまうかもしれない――というのが、初音ミクに興味を持つSF作家の考えのようだ。

 ジャンルは違うが、ROBO-ONE(特に初期)のように、技術の公開と共有によって全体のレベルが短期間で急激に上がった例も存在する。今回の考察も十分ありえることなのかもしれない。

 なお、初音ミクは今回の「DAICON7」で星雲賞自由部門を受賞した。


「ボーカロイドが世界を侵蝕する」の部屋。左が司会の山本弘氏 始まる前から初音ミクを使った動画が流されていた。写真に写っているのは「ミラクルペイント」PV(プロモーションビデオ)。曲も動画も個人の製作による 山本弘氏が「(初音ミクを)可動フィギュアみたいに直感的に動かせる」と絶賛したフリーソフト「MikuMikuDance」を使った動画

現実の映像にリアルタイムで3DCGを合成する拡張現実(Augmented Reality)という手法を用いた動画 「ろばの魔人」PV。ネット上で公開された「六角大王」用初音ミク3Dモデルデータ(通称・キオ式ミク)を使用して作成された動画として知られる 野尻氏が製作した機械工作動画。ここら辺はもう野尻氏の独壇場だった

2日目のROBO-HUB

 ROBO-HUBは今回のSF大会で初めて行なわれた二足歩行ロボットのイベントだ。DAICON7の実行委員会の1人が「ロボット祭りをやろう」と発言し、日本遠隔制御株式会社の澤氏やロボットフォースの岩気氏の協力を得て実現したものだ。

 場所は浪切ホールのお祭り広場。大屋根の下にある半屋外の空間で、誰でも立ち寄ることができるようになっていた。そのため、近くのショッピングセンターに来てこちらに立ち寄ったと見られる親子連れの姿が多く見られた。

 しかし、その反面「DAICON7会場の外で行なわれたイベント」という色彩が強くなり、必ずしもSF大会そのものとの結びつきは強くなかったようだ。

 ROBO-HUBの1日目は、ロボットフォースによるロボット競技会が行なわれ、ヨゴローザが優勝した。

 2日目の24日は、ホビーロボット関連の企業によるブース展示とステージ上でのデモが行なわれた。2日目に参加した企業は、ロボットフォース、日本遠隔制御、京商、HPIジャパン、大日本技研の各社。それにBlaserのデモに、クラフトハウスとHotproceedの協力があった。


ROBO-HUBの行なわれたお祭り広場 ROBO-HUB会場を別角度から。中央のリングは体験操縦用のもの 企業ブース

九州からBlaserが参戦

 2日目のROBO-HUBには、九州ロボット練習会のコアメンバー「ロボリンク」が、レーザー光線バトルシステム「Blaser」のデモを披露した。

 元々、BlaserのデモはDAICON7の分科会の企画として考えられたものである。それが「同じ二足歩行ロボット」だということでROBO-HUBの一部として行なわれることになり、お祭り広場で実現したものだ。

 Blaserはジオラマ設営に時間がかかるということで、午後一番にデモを行なった。まずはBlaserがどういうものなのか紹介。続いてジオラマ内で2 VS 2による5分間の試合を行なった。

 本来のBlaserの試合はレーザーが見えるように暗所で行なわれるが、今回は太陽の光が差し込む半屋外で行なわれた。そのため、レーザーの当たっている場所が見えず、レーザーの受光部にレーザー光線を当てることに苦労したようだ。

 そんな悪条件の中でも試合に参加したメンバーはレーザー光線を的中させていき、試合はなんとか成立。発射音や命中して倒れる時に音が出ることから、観客にも興味を持って見てもらえたようだ。

 試合の後には、実際にレーザー光線を発射してのBlaser体験操縦。的が小さいのと、ジョイスティックによる腕のアナログ操作が難しいようで、なかなか的に当たらなかったが、子供たちは的に命中するまで熱心にコントローラーを動かしていた。


Blaser用ジオラマ。ライトのついている敵ベースをレーザー銃で撃ってポイントを稼ぐのが基本戦略 ジオラマ上を飛ぶ京商のロボホッパー。ビルの上に着地しようとしたが、風があって断念 街にファイブ出現! 立ち向かえ、九州Blaser軍団! (この後、ファイブは浪切ホールの4階に移動してデモを行なっていたようだ)

Blaserのデモ開始 モニターでも映像を流して、Blaserの紹介 Blaserの試合。とにかく「着弾点」が見えず試合では苦労したようだ

結構観客が集まっていた 体験操縦。なかなかベースの受光部に当たらない SF大会ならではの光景だろう

企業デモも続々と

 Blaserの終了後はステージ上にリングが設置され、各企業によるデモが行なわれた。その合間には企業ブースに質問に来るDAICON7参加者もいて、「SF大会における二足歩行ロボットの紹介」という点では、1日目に続き2日目のROBO-HUBも十分に役割を果たせたのではないだろうか。


歌って踊れるPer4m。ただし、歌は人間の女の子が歌ったものを録音して流していた ロボットフォースのケルビムの変形走行 同じロボットフォースのブッシュくんは、「大阪名物パチパチパンチや!」を披露

前日に引き続き、まるいちマノイはラジオ体操をしていた 京商のブース。新型マノイと超勇者マノイの姿が見える 大日本技研のブース。真ん中のチョロメテは「起動に時間がかかる」とのことで動く姿は見られなかった

座席から立ち上がって、チラシを手渡しするパフォーマンスを見せていた大日本技研のメカでんでん ウマウマダンスも踊れるぞ!

ROBO-HUB会場内を歩き回って人目を引いていた九共大-隼 人とロボットが同じ場所で歩いている、正にSF的光景

URL
  第47回日本SF大会「DAICON7」
  http://www.daicon7.jp/jp/index.html
  夢人塔
  http://www.jttk.zaq.ne.jp/mujinto-2000/0609.htm
  大阪市立科学館
  http://www.sci-museum.jp/

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( 大林憲司 )
2008/09/08 19:09

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