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トヨタの最新パーソナル移動支援型ロボット「Winglet」試乗レポート
~スイスイと気持ちいい乗り心地


モニター体験試乗会の様子。乗れずに残念そうな人も結構いた
 8月1日(金)にトヨタ自動車株式会社が発表した、パートナーロボットシリーズの最新モデルで、立ち乗り型のパーソナル移動支援ロボット「Winglet(ウィングレット)」。

 8月2日(土)からトヨタの無料自動車アミューズメント施設メガウェブ(東京・お台場)で、一般向けに参加無料の「Winglet」モニター体験試乗会がスタートした。記者も体験試乗させてもらってきたので、その模様をレポートする。

 モニター体験試乗会が行なわれたのは、メガウェブの中核施設である「トヨタ シティショウケース」。その1Fの海側にあるキッズハイブリッドライドワンのコーナーで実施された。体験試乗会の前には、2Fの最も人通りの多いライドワン試乗予約コーナー前のスペースで、デモンストレーションも実施。前日に発表されたばかりなので、どれだけの人がWinglet目当てで来場したのかはわからないが、やはり目を引くようで、人垣ができていた。

 デモンストレーションは、メガウェブの誇る看板娘インストラクター3人組の内のおふたり。ステアリングユニットにつかまることができて、安定感のあるType Lはまだしも、スポーティで最も小型・軽量のType S、Type S同様に両手がフリーになるType Mにスイスイ乗っている様は、一輪車などで曲芸乗りをしているようにも見え、視線を集めていた。

 ちなみに、スタッフの方に聞いたところによると、既にパフォーマンス系の乗り方をいくつか編み出しているそうである(さすがにアクロバティックな乗り方は披露されなかったが)。


デモンストレーション実施前。しばらくしたら人だかりになった 【動画】デモの様子。まずはType MとType Lに乗って登場

【動画】Type Sは9.9kgと、女性でも持つことができる重さ。展開して乗る様子 【動画】うまい人が乗ると、スポーティな感覚で走れるのがWinglet

乗ってみた人はみな「楽しい」モニター体験試乗会

 モニター体験試乗会は、10名ほどが抽選で参加可能。デモンストレーション後に抽選券が配られたのだが、試乗条件を満たしている人たちが受け取っていた。そして1Fのキッズハイブリッドライドワンのエリア前に移動して、モニター体験試乗会はスタート。乗車できるのは、最も簡単に乗れるType Lである。

 今回は、18歳以上の普通自動車免許証の所持者で、身長145~185cm、体重35~100kgといった条件の方のみが抽選に参加できた。体重に下限があるのは、あまり軽いとWingletが搭乗者の重心移動を検知できなくなってしまうからである。抽選に当たった方は半分近くが女性で、年齢は20代前半~40代ぐらいまでと様々だった。

 試乗時間はひとり10分ほどだ。さすがに誰でも初めて乗る新しい乗り物なだけあって緊張している様子だったが、ものの数分ですいーっと乗って走り出す。世の中の乗り物や移動手段で、これほどまでに短時間で乗れる(操れる)ようになる物は、そうないのではないだろうか。それでも運動神経の差が結構出るようで、スキーが得意な人なのか、早くもスポーティな重心移動で乗りこなしている若者もいた。感想はほとんどの人が「楽しい」だったようである。

 今回はモニターというだけあって、体験試乗した方にはアンケートに答えてもらうのだが、その中に「本体価格がいくらだったら購入するか」といった質問も用意されていた。回答には5万円もあれば40万円もあるなど、実に様々だったそうである。

 スタッフの方の話を伺っていると、40万円ぐらいが商売としてありがたいようだが、「売るにはもっと下げて、20万円ぐらいじゃないと厳しいでしょう」という意見も。おそらく既存の乗り物と比較するとしたら、50ccスクーター辺りになるはずだ。用途がまったく異なるので、直接的な比較は難しいのだが、少なくとも記者は50ccスクーターぐらいの価値はあると思う。なので、中ランクの50ccスクーターと同等の20万円前後が妥当ではないだろうか。

 記者も取材などでブース巡りをしていると、トータルで結構な距離を歩く上に、もらった資料でドンドン重くなっていく展示会系の取材では、本気で使いたいところ。しかし記者の場合、20万円の一括払いは非常に厳しいので(苦笑)、できるだけ長期の分割払いでお願いしたいところである。ちなみに自動車の分割払いの中で最長クラスの80回払いでお願いしたら、速攻で「勘弁してください(笑)」と×印を出されたので、Wingletの分割払いは常識的に20回払いぐらいまで!?

 そのほか使い方、使用に適した場所などの質問もあった。現在、Wingletは電源ボタンをオンにすれば始動する簡単な仕組みなので、キーで始動する方式にするとか、キーなしで動かそうとすると警告音を発するといった辺りが考えられる。

 また、メガウェブに導入するということも将来的にはあるかもしれないそうだ。メガウェブは、トヨタ シティショウケース、トヨタ ユニバーサルデザイン ショウケース、ヒストリーガレージと、大きく3つの施設があるのだが、実は隣接しておらず、結構飛び地になっている。Wingletを使って移動できると非常に楽だったりするので、ぜひ配備していただきたいところである。


実際にWingletに乗ってみた

 モニター体験試乗会が終わって、いよいよ記者が試してみる番。Wingletは電源を入れてスタンバイ状態になると、Type Lの場合はステアリングユニット上部のLEDランプが赤く光る。これで片足を載せると、黄色くなって準備状態に。両足を載せると緑色になって、Winglet自身による制御が開始する。Type SとType Mに関しては自分で乗ることができなかったので、あまり間近でランプの点滅などを確認できず、どこにあるのかは不明だが、おそらく同じものがあるはずだ。

 余談だが、Type Sは畳むとラジカセのような形状になるのだが、9.9kgの重量があり、10kgのお米ひと袋分の重量とほぼ等しいので、ラジカセのように軽々と持って歩けない。構造上、頑丈さを持たせるためにはある程度の重量が生じるのは当然だろうが、もう少し軽量にしてもらえると、ユーザー視点では嬉しいところである。ちなみに、Type MとLを乗らずに運ぶときは、キャスターが付いているので、トランクのように転がしていく。そのままタイヤで転がそうとすると、駆動ユニットと接続されているためと思われるが、重たいのだそうだ。


Type Lの駆動ユニット部分を接写。ボディ中央部分にあるのは電源スイッチ 【動画】赤の停止状態、黄の準備状態、緑の作動状態とランプの色が変化する

Type Sは畳むとラジカセのような感じに 【動画】Type MとLにはキャスターが備えられているので、このように転がしていく

 さて、実際に乗る際の感想だが、片足を載せるのは改めていうまでもなく簡単、というかできて当たり前。しかし、残った足を地面から離してWingletに載せる時が、今回のように初体験ともなるとほんの少し勇気がいる。初めてスキー板やスケート靴を履いて、ゲレンデやリンクの上に立つ感覚といったらいいだろうか。どうしても不安を感じてしまうのは仕方がないはず。3輪以上で重心が安定している乗り物ではないので、本能的に後方に倒れるという感覚を持ってしまうのだ。

 一方、高さに関しての不安はあまりない。ステップの高さが165mmなので、たぶん誰でも日常生活において、ちょっとした段差の登り降りなどでその程度の視点の変化というのは味わっているからなのだろう。「高いところに登った」感がないので、あまり不安も感じないというわけである。

 しかし、これがさらに30cmとか50cmぐらい高くなってしまうと、「見晴らしがいい」と気持ちよくなれる人と、「もし倒れたら」「もし落っこちたら」などと下を見たときに不安がってしまう人と大きく分かれることだろう。150mmのタイヤ径は、大き目の段差を乗り越えるには厳しいサイズだが、基本的にフラットなフロアでの利用を目的としているわけだから、この高さを感じさせないメリットの方が大きいといえるようだ。

 さて、初めてWingletに両足を載せると、やはり不安を感じてしまう。レクチャーしてくれた男性スタッフによれば、乗り方のコツでまず大事なのは「Wingletを信じること」だそうだ。スタッフの方たちは、「僕らはWingletを信用していますから、手でつかまらなくても全然怖くないですよ」ということである。「自分でバランスを取って何とかしなくては」などと意気込みすぎたり、「自分でちゃんとできるだろうか?」などとWingletのインテリジェンスを無視してしまったりするとダメらしい。「よろしく頼むよ、Winglet!」というパートナー感覚で、自分がどこに行きたいか、どう動きたいかを指示するのがいいというわけである。Wingletを信じて、ある程度お任せしてしまえばいいのだ。

 次は降りる練習。ステアリングユニット左側の降車ボタンを押すと、Wingletが後方に傾き、意識しなくても本能的にスッと片足が後方に出て、気がついたら降りてしまっている、という具合だ。なんだか不思議なほど、スッと降りられてしまうので、ここでもステップ高165mmが、よく考えられた高さであることが実感できるのである。また、降車ボタンの横にあるのが、左右の旋回スイッチ。これを使うと、その場で左右のどちらにでも旋回でき、最小回転半径0を実現しているというわけだ。


ランプに近い丸ボタンが降車用で、左はその場旋回用のスイッチ 【動画】その場旋回の様子 旋回時(左右どちらかに重心がかかっている状態)は、このようにボディが変形する

 そして、自分で重心移動して左右への旋回を試みた。記者はクルマも乗っているが、基本はライダーならぬチャリダー(自転車乗り)なので、その感覚で曲がりたい方向に重心をかけるのかと思っていた。しかし、それは間違いで、スキーの感覚が正しいのだそうだ。自転車やバイクのように曲がりたい方向に身体を傾けるのとは反対で、曲がりたい方向とは反対の足に重心をかけると、旋回するというわけだ。つまり右に旋回したかったら、左足に力を入れる(重心をかける)のである。

 しかし、この左右への旋回は、言葉で説明されたあとに頭で考えながら乗ろうとすると、逆にわかりにくいようで、あまり深く考えない方がいいようだ。適当に左右に重心移動していると、すぐになんとなくという感じで曲がり方を覚えてしまう。結構、乗るのに感覚的な部分がある乗り物なので、おそらく子供の方がアッという間にマスターしてしまうのではないだろうか。

 ちなみに、Type Lはステアリングがあるので、ずっと感覚がつかみやすい。ステアリングを曲がりたい側に倒そうとすると、作用反作用の法則で必然的に外側に重心が移動するので、曲がっていけるというわけだ。

 その後、そこそこ動けるようになったので、実際にコースをぐるっと回ってみた。最高時速は6km/hと、小走り程度なのだが、意外と速度感があるので、そこまで引っ張るのはちょっとした勇気が必要だったりする。なので、記者は4km/hほどしか出していないのだが、それでも結構気持ちいい。屋内でも風を感じられるからだ。ただし、風が当たると気持ちがよくもあるのだが、同時に速度が出ているのがわかって結構へっぴり腰になってしまう。

 ちなみに、体験試乗された方の中には、最高速で走っていた人もいたようだ。それがなぜ外からわかるかというと、乗車時に赤→黄→緑と変化するステアリングユニットのランプが、走行時は警告ランプとして機能するから。最高時速に達する直前から、赤く点滅し始め、「そろそろ時速6km/hですよ」と、搭乗者に警告すると同時に、周囲にも速度が出ていることをアピールするのだ。

 またランプといえば、ステップの外側にも用意されている。ステアリングユニットの緑と同じで、常時Wingletが稼動していることを示す青ランプがついているのだが、前進時でも後退時でも、それまでとは反対の方向に重心をかけてブレーキをかける形になると、赤いランプがつく。一種のブレーキランプだ。


 また、インストラクターの方に走ってきてもらって、記者が手で止めてみる体験もしてみた。本当は身体の上部、肩の辺りを押さえると、テコの原理の応用で一番止めやすいのだが、正面からの場合、押さえる場所をちょっと見誤るとセクハラになりかねないので(苦笑)、ステアリングユニット部をガシっと受け止めてみた。ステアリングユニットの頂点の部分でも、人の胸からお腹ぐらい低いので、テコの原理が働きにくく、ちょっと力が必要だったが、肩で止めればもっと力が少なく済むはずである。

 ちなみに、よほどよそ見でもしていない限りは、まず衝突はなさそう。普通、人とぶつかりそうと思ったとき、本能的に搭乗者は腰が引けるので、結果的にそれが制動をかけ、逆に後退してしまうぐらいなので、最高時速を出しながらよそ見をするといった無謀運転をしない限りは、あまり事故の心配はなさそうである。

 とはいっても、市販された場合、ユーザーがどのような使い方をするかわからないので、将来的に機能として追加が検討されている障害物検知の応用で、人と衝突が避けられない距離に至ったときは、自動で制動をかけ、被害を最小限にするプリアクシデントセーフティとでもいうべき機能を設けたりすると、より安心できるのではないだろうか。


【動画】移動しながら撮影してみた。このぐらいでおおよそ時速4km/h 【動画】制動がかかるとブレーキランプ的な役割でステップ後ろ側に配された赤ランプが点灯する 【動画】男性スタッフの方に止めてみてもらったところ。そんなに力を使っていないのがわかる

 この無料のモニター体験試乗会は8月9日(土)、10日(日)にもメガウェブで実施される。会場はトヨタ ユニバーサルデザイン ショウケースで、14:30と16:00から。さらに9月には、13(土)~15日(月)の3連休にトヨタのもうひとつの無料自動車アミューズメント施設・アムラックス東京(池袋)でも行なう。アムラックス東京では、3日間とも1日4回行なわれ、12:30、14:00、15:30、17:00からとなっている。どちらも抽選だ。なお、女性の場合、ヒールの高い靴での乗車は無理なので、乗りに行くときはスニーカーなど、できるだけ底の平たい靴を履いていこう。

 その後、秋からは3カ所で実用評価試験が実施される予定。中部国際空港セントレアでは、移動距離の長い大型施設内での実用性を評価。セントレアより若干遅れるが同じく秋から始まるのが、マリンリゾートのラグーナ蒲郡(愛知県蒲郡市)で、施設の屋内外をシームレスに移動する実用性の評価を行なう。

 また2009年には、商業施設のトレッサ横浜で人混みなどでの使用性や、買い物客との親和性、歩行者に与える心理的な影響などを検証する予定だ。ぜひ体験してみたい人は、メガウェブやアムラックス東京に足を運び、実用化のためのモニターとして協力し、意見をつたえてもらいたい。


URL
  トヨタ自動車
  http://www.toyota.co.jp/
  ニュースリリース
  http://www.toyota.co.jp/jp/news/08/Aug/nt08_045.html
  メガウェブ
  http://www.megaweb.gr.jp/
  アムラックス東京
  http://www.amlux.jp/

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( デイビー日高 )
2008/08/06 00:48

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