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「Automotive Technology International 2008」レポート
~着実に進む自動車のロボット化を見られる展示会


会場は第5と第6ブースを使った比較的小規模な展示会
 カーエレクトロニクスを扱った自動車技術系展示会「Automotive Technology International 2008」が、7月23日(水)~25日(金)まで、千葉県・幕張メッセで開催された。

 今年の来場者は、3日間合計で2万1,492人。近年、自動車はインテリジェント化が進み、ロボットの領域に入りつつある。そこで、大手自動車メーカーや車載機器など、関連機器メーカーの最新カーエレクトロニクスを見てみた。


PaPeRoを使った自宅~カーナビ~PDAを統一するインターフェイス

 家庭とクルマ、さらにはPDAを情報連携させる技術としてNECが参考出展したのが、PaPeRo(パペロ)を使った「ロボット型UIの組み込み端末への応用」と題した技術だ。

 どんなシステムかというと、自宅では実機のPaPeRoをインターフェイスとして、会話による情報収集などを行なう。PaPeRoに対して「~まで行きたい」などと会話すると、その目的地を記憶。ユーザーが自動車に乗って移動することを告げると、PaPeRoはカーナビ内に移動し、カーナビのモニター内にCGとして登場し、ここでも会話型インターフェイスとして機能する。先ほどの目的地に関する情報は、合わせてカーナビ内にも移されており、目的地までのルートをユーザーが設定しなくても、自動で検索してくれたりするという仕組みだ。

 また、目的地周辺に関して他にも会話が成されていた場合、周辺の店舗情報などの案内も行なう。そして目的地について車を降りると、今度はPDAにPaPeRoが移動し、テキストメッセージで情報提示を行なうというわけである。

 つまり、自宅の実機、クルマ、PDAといった性能の異なるすべての情報機器を同じPaPeRoとの会話型インターフェイスで統一し、共有すべき情報もシームレスに引き継いで、どのPaPeRoとも同じ会話(PDAはテキストだが)が成り立つというものだ。

 取材した際はPDAの調子が悪かったそうで、PaPeRoの実機→カーナビの引っ越しは見られたが、カーナビ→PDAの引っ越しは見られず。なにはともあれ、常にPaPeRoがそばにいてくれるというのは、アシスタントとか秘書とか相棒という感じで、なかなか楽しそうである。


PaPeRoとカーナビとPDA。PaPeRoが生活と密着するシステムだ 【動画】PaPeRoの実機からカーナビへの引っ越しの様子

インテリジェントな運転支援・安全システムを展示したトヨタと日産

 カーエレクトロニクスの展示会なので、大手自動車メーカーも多数が出展した。ただし、すべてのメーカーが同じジャンルの技術を披露したかというと、そうでもない。

 ホンダは情報に寄った自社の最新カーナビを展示(ホンダが開発した世界で最初のカーナビ「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」も出展)。また、スバルは「R1e」、三菱は「i MiEV」という電気自動車を出展し、体験試乗会も実施。これらは大人気で、整理券があっという間に捌けてしまう状態だった。

 そのほか、マツダスズキは自社の水素自動車に関するパネル出展をしていた。そして、クルマのロボット化ともいうべき、インテリジェントな各種最新技術を披露したのが、トヨタと日産である。


世界初のカーナビ、ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ スバルの電気自動車「R1e」。同社の軽自動車「R1」ベースの車輌だ 三菱の電気自動車「i MiEV」。同社の軽自動車「i」がベースとなっている

 トヨタがメインとして展示したのは「クラウン ハイブリッド」。1955年の誕生以来、日本の高級車市場を牽引してきたクラウンの最新13代目の1車種である(クラウンではハイブリッド車は初ラインナップ)。ただ単に、ハイブリッドだから電子化率が高いというわけではない。トヨタの最新技術が惜しげもなく投入されており、両手の指では足りないほどのインテリジェントなドライバー支援、および安全機能を有するゆえに、ロボット化したクルマというイメージが沸く1台なのだ。

 その機能の一例を挙げると、「歩行者検知機能付きナイトビュー」がある。近赤外光を前方に照射し、歩行者や障害物、路面といった夜間に視認性の下がる対象物を映像化し、ファイングラフィックメーターに表示するという機能だ。単なる暗視ビジョンというわけではなく、人を検知した場合は、黄色い枠線で囲んでドライバーに対してよりアピールする仕組みになっている。なお、歩行者の検知範囲は100mほどだ。

 そのほか、スピンを起こしかけるなどクルマの挙動が乱れても、安全に制御してくれる「VDIM(Vehicle Dynamics Integrated Management)」や、ドライバーがよそ見をしたり居眠りしたりする状態を検知する「ドライバーモニター」、夜間時に後方車輌からハイビームで照らされた場合に自動でインナー(ルーム)ミラーの反射状態を変化させる「自動防眩インナーミラー」などなど、大から小まで実に様々なインテリジェント機能を搭載する。もはや「ロボットカー」といっても過言ではないほどの機能を備えるのが、クラウン ハイブリッドなのである。


インテリジェント機能を満載した「クラウン ハイブリッド」 ナイトビュー画面。右側の白線内に歩行者がいるのがわかる

 日産も、トヨタ同様にインテリジェントなシステムを複数展示していた。

 「レーンデパーチャープリベンション」は、レーン逸脱を警告すると同時に、自動制御でクルマをレーン中央に戻す動きを行ない、ドライバーの運転を支援する。ディスタンスコントロールアシストの「インテリジェントペダル」は、前車との車間距離の維持を支援する機能だ。

 また、車庫入れが非常にしやすくなる、上方から自車を見下ろした映像を表示する「アラウンドビューモニター」も展示。これは、前後左右の4つのカメラからの映像を合成して上方から見たような映像を作るというもので、ワンボックスカーのような大きめの車輌でも簡単に縦列駐車できてしまうという優れものだ。


「レーンデパーチャープリベンション」などはすべて映像で解説されていた 「アラウンドビューモニター」の体験コーナー

 今回の取材に限らず、技術系の展示会の取材をしていると、意外と出会うのがレゴ・マインドストームNXT。子供向けの知育玩具的にとらえている人も多いだろうが、実はかなりのポテンシャルを持っている。ソフトの性能をアピールするためのプラットフォームとして、結構使えるのだ。

 今回、マインドストームNXTを使っていたのは、サイバネット。「NXTway-GSのモデルベース開発~LEGO Mindstorms NXTを用いた二輪型倒立振子ロボットの制御~」と題して、二輪倒立振子ロボットやWiiリモコンのように、コントローラにジャイロを用い、傾けたりしてロボットをコントロールする様子や、マインドストームNXTを大幅に改良した、二足歩行ロボットなどを動かして体験できるようにしていた。


【動画】Wiiリモコン風にマインドストームNXTで作った二輪倒立振子ロボットを操作する様子 【動画】チューニングが完璧ではないそうだが、改良型二足歩行ロボットの歩く様子

ロボットアームの操作デモでソフトウェア開発ツールの性能をアピール

 ロボットそのものではないが、日本テレロジックが出展していた製品のひとつが、ロボットも含めた各種ハードウェアの制御用ソフトウェアの開発環境である「Telelogic Rhapsody」だ。同ソフトウェアを使って、小型ロボットアームのコントロール用のプログラムを作成し、デモンストレーションが行なわれていた。

 同ソフトウェアは、UML/SysMLに準拠したモデル駆動型組み込みシステム・ソフトウェア開発環境。もう少しわかりやすく説明すると、オブジェクト指向のビジュアル型ソフトウェア開発環境である。おおざっぱに例えると、プログラムの各要素がビジュアル化されて、なおかつ機械のパーツのように扱えるようになっており、基本的にはパーツとパーツを組み合わせていくことで、目的に即したプログラムを開発できるというものである。従来の開発環境に比べるとかなりプログラムしやすい上に、動作状況を逐次確認でき、デバッグもしやすくなっているのが特徴である。


「Telelogic Rhapsody」は、オブジェクト指向のビジュアル型ソフトウェア開発環境 【動画】小型ロボットアームの動作の様子

現行の機械方式を用いない「ステアバイワイヤ」も流行の兆し

 現行の自動車は、ステアリングは機械的にフロントタイヤとつながっているわけだが、それを電気式に置き換えるのが「ステアバイワイヤ」。ステアリングの舵角情報をセンサーで検知し、その情報をモーターが受け取って前輪の向きを変えてあげれば同じことができるわけである。

 PaPeRoをUI(ユーザインターフェイス)として用いる技術を出展していたNECは、この技術に関しても出展していた。コンシューマゲーム機用の周辺機器であるステアリングコントローラを用いて、目の前のクルマの模型を操作。ちゃんと前輪が操作者の通りに動くし、アクセルも後輪の回転に反応。また、雰囲気を出すために、ドライビングシミュレーターソフトと連動させ、モニター内のクルマ(ダッジ・バイパーと思われる)を操作できるようにしてあった。

 同じくジェイテクトも「ステアバイワイヤ」技術を披露していた企業のひとつ。同社は、未来的なデザインをしたダッシュボードとステアリングという機械を持ち込み、デモを実演。GPS航法による自動運転、高速時と低速時で前輪の舵角を変化させる(高速時の急ハンドルによる横転事故を防ぐための機構)などを披露した。


【動画】NECのステアバイワイヤ技術のデモ(自動運転中) 【動画】ジェイテクトのステアバイワイヤ技術。未来風

圧力センサーを展示していたクレアクト・インターナショナル

 クルマの技術とは直接敵には関係ないのだが、ロボットと切っても切れないのがセンサー。圧力センサーを出展していたのが、クレアクト・インターナショナルだ。独ノベル社製「Pliance」と、米SPL社製「Tactilus」の2つを出展した。シートの座り心地に関するデータ取りなどに利用されている。


独ノベル社製「Pliance」 【動画】Plianceを指で押したことで圧力分布が変化する様子が見て取れる

画像認識系の技術は花盛り

 画像認識技術は、年々進歩してきており、複数のメーカーが出展。これまでの別の展示会でリポートしたメーカーのものもあったので、今回はNEC製のものを紹介する。すでにトヨタの世界戦略向け高級車ブランド「レクサス」の一部の車種に搭載されている技術で、デモでは人の認識と交通標識などの認識の様子を映像で流していた。


【動画】人を認識している様子 【動画】交通標識を認識している様子

 画像認識や歩行者検知、クルーズコントロール、プリクラッシュセーフティなど、インテリジェントなドライバー支援・安全機能が増えてきた近年。このまま行くと、自動運転もそう遠くはないなと思うのだが、実際のところ実現してもまず問題になりそうなのが、車両価格だったりする。  

 夢を壊すようで申し訳ないのだが、こうした最新技術は確実に車両価格を上げてしまう。そのため、どうしても現状では高級車中心に装備されているのだが、クラウン ハイブリッドを例に取ると、600万円前後。一般人にはそうそう手が出せない価格である。ロボット化が進むのは便利になるのも事実なのだが、200~300万円クラスの一般向けのミニバンなどに技術がたくさん投入されるのは(一部はすでに装備されているが)、もう少し時間がかかりそうだ。

 運転席に座ったら、あとは居眠りして、目的地に着いたらクルマに起こされる。そんな便利極まりない機能をマイカーで体験できるのは、もう少し夢として取っておくことになりそうだ。


URL
  Automotive Technology International 2008
  http://techon.nikkeibp.co.jp/ATI/


( デイビー日高 )
2008/08/01 00:34

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