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川崎市、知的財産戦略推進プログラム「知的財産交流会」の成果を発表
〜富士通の開放特許を用いたイクシスリサーチの「カーナビロボット」も


記者会見を行なった4者によるフォトセッション
 川崎市、富士通、イクシスリサーチ、末吉ネームプレート製作所は3日、知的財産戦略推進プログラムのひとつである「知的財産交流会」の成果第2号、第3号についての合同記者会見を実施した。成果第2号として、「カーナビロボット」をイクシスリサーチが披露。試作機によるデモンストレーションも行なった。

 Robot Watchの読者ならご存じの方も多いかと思うが、神奈川県、中でも川崎市は産官学一体となってロボット分野に力を入れている地域である。ロボットだけでなく、「ものづくり」そのものに重点を置いており、近年、市が取り組んでいる事業のひとつが、今回発表を行なった知的財産戦略の知的財産交流会だ。最終的に、臨海部から麻生区マイコンシティへとつながる「川崎・多摩川イノベーションバレー(KTIV)」の形成を目標としたプロジェクトの一環である。

 知的財産交流会の狙いは、参加している大企業(富士通のほかには、東芝とNEC)の協力を得て、それらの大企業が有する開放特許などの知的財産権と、約60社の参加中小企業の技術力をマッチングさせようというもの。大企業は、自社ではうまく活用できないため、休眠させてしまっているかそれに近い状況の特許を多数抱えている。その一方で、中小企業は大きなことをしようとすればリスクも大きく、アイディアがあって技術力があっても、それを行動に移せないことがある。そこで、お互いに協力し合うことでともに収益を上げ、WIN-WINの成果を上げようというわけだ。

 大企業は活用できていない特許をライセンス契約に結びつけることで収益につなげ、中小企業は大企業のバックアップを受けるに等しい形になるのでアイディアの製品化や新規事業の推進がしやすくなるというのである。お互いにとってメリットがあるのが、知的財産交流会なのだ。


 また特徴的なのが、川崎市はただ予算を組むだけでなく、技術評価や契約交渉の場において、双方の意見調整役として中間の立場として参加していること。川崎市の行政と、財団法人川崎市産業振興財団の知的コーディネータがマッチングのコーディネート並びにフォローアップを行なっており、大企業も中小企業側もより安心感を得られるというわけだ。

 官民連携のものづくり促進プロジェクトは全国でも各地で行なわれているのだが、こうした人的資源も投入している行政というのはまずないそうで、なかなか成功には結びついていないという。しかし、川崎市は、年頭の1月24日には知的財産交流会の第1号として、光和電機が富士通と拡大視認装置に関する開放特許のライセンス契約を結んだことを発表。続けて、今回第2号、第3号を発表するに至り、全国でもあまり例を見ない成功例となった次第だ。川崎市の事業は、「ものづくり」に力を入れている、もしくは入れようとしている自治体にとって大いに参考になるといえよう。

 記者会見には、川崎市長の阿部孝夫氏、富士通経営執行役法務・知的財産権本部長兼安全保障輸出管理本部長の加藤幹之氏、イクシスリサーチ代表取締役の山崎文敬氏、末吉ネームプレート製作所代表取締役社長の沼上昌範氏が出席した。


川崎市長の阿部孝夫氏
 会見の冒頭で阿部市長は、川崎市には大企業の研究施設と技術力のある中小企業が集まった、日本だけでなく、世界に誇れる都市であることをアピール。そして、知的財産交流会の第2号、第3号を発表できたことについて、「大企業と中小企業との間の知財転移は難しいといわれている中で、この短期間の間に次々と成果を発表できることは、大変喜ばしいことです」と述べた。また、今後も引き続ききめの細かいマッチングのコーディネートを行ない、さらなる成約案件を報告できるよう、積極的に取り組んでいくとしている。


富士通の加藤幹之氏
 続いてコメントを述べたのが、武蔵中原に川崎工場を設立して今年でちょうど70周年という富士通の加藤氏。加藤氏は知的財産部門を率いる人物で、川崎工場は同部門の拠点ということだ。加藤氏は、今回で3件目となる契約締結に至ったことについて、川崎市の尽力に感謝の意を表した。また、同じ川崎市の企業として地域貢献できることに対しても「この上ない喜び」とコメントしている。ちなみに、今回の経緯については、昨年7月に川崎市が主催したセミナー交流会にイクシスリサーチと末吉ネームプレート製作所が参加し、前者が富士通の開放特許の第3619380号「車載入力装置」に、後者が第3928596号「樹脂組成物」に関心を持ったことからスタートしたという。その後、個別相談に発展し、川崎市産業振興財団の知的コーディネータによる仲介を経て何度か会談を経た後に、今回の発表に至ったというわけだ。

 その第3619380号「車載入力装置」は、カーナビゲーションと連動して、動いたり話したりセンサに反応したりするシステムということだ。筆頭発明者は、富士通のデザイン部門の女性だそうで、動物などのマスコットを利用して、カーナビゲーションのインタラクティブな使い方をするというアイディア系の特許だ。加藤氏は、そこにイクシスリサーチのロボット技術が融合して、新しく楽しい商品が生まれることを期待しているとコメントした。

 今回の契約で富士通が得られる収益は、製品化の売り上げに対して得られるライセンス料となる。もちろん、イクシスリサーチと末吉ネームプレート製作所も収益が上がる契約で、富士通がライセンス料を主張して収益の大半を持っていってしまうというようなことはない。あくまでも、共に勝者となるWIN-WINの関係を目指している。加藤氏は、両者に対して自社特許技術を評価してライセンス契約を締結してくれたことを感謝すると同時に、「ぜひとも素晴らしい商品にしていただいて、事業を拡大していただきたいと存じています」と述べた。

 また富士通は、系列会社の富士通フロンテックの「enon(エノン)」、富士通オートメーションの「HOAP」シリーズなど、ロボットを有しているわけだが、今回のカーナビロボットのコンセプトは、それらのロボット技術や用途、企業戦略などから合致しなかったため、系列会社内での製品化といったことは見送られたのだそうだ。


イクシスリサーチの山崎文敬氏
 続いて、イクシスリサーチの山崎氏がマイクを持ち、川崎市や富士通への謝意を含めた挨拶を行なうと同時に、試作品を使ったデモンストレーションを披露。今回の試作品の中に入っているイクシスリサーチ製のロボットは、首や腕など6カ所の関節を有しており、さまざまなアクションを取ることが可能だ。

 デモは、PCを用いてカーナビのマップ画面と実際に走行して撮影した車載映像をプレゼン用のスクリーンに投影し、その手前にPCにつながったクマがいるという形で行なわれた。クルマが走行していくに連れ、指さし(というよりも全身を使っている感じ)でクマが右左折する方向や場所を教えたり、危険な走行に対して怖がっているような身振り手振りと音声で示唆したり。癒し要素も兼ね備えたカーナビロボットとしての機能が見られた。


カーナビロボット試作品はかわいらしいクマのヌイグルミの外見 カーナビロボットを別角度から 【動画】ルート検索中のモーション

【動画】指さし案内のほか、頭を押すとランドマークの案内もしてくれる 【動画】指示した交差点で曲がらないで、ルートの再検索になると、その動作がまたかわいらしい

 製品化する段取りとしては、イクシスリサーチとしてカーナビ市場に進出するのではなく、各カーナビメーカーに同技術を売り込み、各ブランドのカーナビのオプション製品としてラインナップに加えてもらうような方向を検討しているという。富士通の特許だからといって、同社の系列のカーオーディオメーカー・富士通テンだけから製品を出すといったことではないそうだ。

 1年以内の事業化を考えているそうで、後付けオプションとしてロボット単体だけなら数万円くらいを考えているそうである。サイズに関しても、現在は運転席に置くには大きいが、もっと小型化をする予定。というのも、実際に大きすぎるためにドライバーの視界を妨げるので、道交法上そのままでは販売できないからだ。また外見に関しては、機構を収められるものであればどんなものでも大丈夫なので、萌え系フィギアだとか、アニメ系ロボットとか、さまざまなバリエーションも考えているという。

 さらに、搭載センサの種類もさまざまなアイディアがあるそうだ。今回は照度(光)センサ、加速度センサ、タッチセンサ、アルコールセンサなどを搭載していた。照度センサを覆って擬似的に夜間を演出すればロボットがそれを認識して発言。ガタガタ揺らしてクルマが急な加減速などの乱暴な運転をすれば、加速度センサが検知し、危険な走行をしていることを伝える。頭をなでるとタッチセンサにより、カーナビの地図情報と連動して、付近のランドマークの案内。そして、その場でビールを飲んだイクシスリサーチの社員の方がはーっと息を吹きかけると、酔っていることを注意するという具合であった。


お腹の部分にあるのが、照度センサ 【動画】暗くすると、ライトをつけてくださいとお願い 加速度センサは、今回は富士通のロゴマークのある白い台座の中にある

【動画】ガタガタクルマが揺れると、危ないとアピール アルコールセンサは首のところ 【動画】アルコールを検知すると、「もしかしてお酒飲んでない?」

 山崎氏によれば、指さしという直感的な行為は、PCや携帯では表現のできない、ロボットだけのものであることから採用したという。2006年11月に、同社は「かわさき・神奈川ロボットビジネス協議会」が川崎住宅公園で行なった実証実験に参加したのだが、その際の結果からも非常に指さしは有効だという結論を得られたそうだ。

 同実証実験でイクシスリサーチは、携帯型ロボットを来場者に貸与。来場者は、各モデルハウスのセールスポイントとなる場所に設置された発信器を、スタンプラリー型式でそのロボットの指さしを頼りに探すという内容だった。ひとつのモデルハウスのセールスポイントに到達した後は次へと誘導する仕組みで、指さしは人を誘導する情報伝達手段として非常に有効であると確認できたそうだ。指さし機能だけのロボットのメリットとして、移動手段自体は人やクルマなどに任せてあるため、方向指示機能だけを持たせれば済むことから、ロボットを安価に製造できるという点も挙げられている。

 ちなみに、近年のモーターショーなどでは、各カーナビメーカーからそうしたロボットによる指さし機能を持ったカーナビが参考出展されてきているという。しかし、富士通が“アイディア”特許として押さえているため、製品化ができないというわけだ。つまり、各社ともロボットによる直感的な誘導は興味があるわけで、そこに市場があると山崎氏は見ている。富士通と特許ライセンス契約をしていることから、イクシスリサーチが製品化したカーナビロボットならまったく問題ないというわけだ。


末吉ネームプレート製作所の沼上昌範氏
 末吉ネームプレート製作所に関してはロボットとは関連がないのだが、第3928596号「樹脂組成物」についても簡単に紹介させていただく。こちらは、富士通研究所と東京大学が共同開発した光触媒チタンアパタイトのことだ。紫外線によって有機物を二酸化炭素と水に光分解する機能と、アパタイトの吸着機能を併せ持っているのが特徴である。菌やウイルスなどを吸着する力も非常に強く、またそれらが出す毒素をも分解する非常に優秀な素材だ。住吉ネームプレート製作所は、大正12(1923)年創業という歴史ある企業で、ネームプレートに関して数々の技術を持つ。「光触媒チタンアパタイトを含有したニス(無色塗料)」およびそのニスを塗膜した抗菌製品として、院内感染対策やO-157対策、インフルエンザ対策など、厳しい衛生管理が要求される医療機関や食品関係をターゲットに製品化に取り組んでいく構想だ。製品名は、仮称で「SNP-α」。同社社長の沼上氏は、来年春までの目処に製品化をしていくとのことであった。

 ちなみにチタンアパタイトと似た素材として、酸化チタンも知られているが、こちらはもっと菌の吸着効果が弱い。酸化チタンは一部の菌だけしか吸着できないのに対し、チタンアパタイトはほとんどの菌を吸着した上で、それらを分解してしまう能力を持つ。また、公的機関の神奈川県産業技術センターに持ち込んでの抗菌効果の実験では、2.1×10^4(10の4乗)CFU/mlという量の大腸菌が、日光に含まれる程度の紫外線の照射で8時間後に検出不能な数(事実上完全滅菌)となったという。同じ条件で、チタンアパタイト無添加の方は、0.31×10^4CFU/mlの菌が残っていたそうである。こうした効果から、沼上氏は、前述したとおりに病院設備や医療機器への応用のほか、キーボードやマウス、携帯電話といった情報機器や、口に入れてしまったり舐めてしまったりする可能性のある幼児のおもちゃなどに対しての防汚・抗菌も検討しているとした。


製品の仮称は「SNP-α」 チタンアパタイトと酸化チタンの菌の吸着と分解の比較

光触媒による殺菌効果のデータ 末吉ネームプレート製作所が検討している用途

 今後も、川崎市の知的財産交流会からは、ロボット関連のアイディア製品が生まれてきそうな気配が漂う。富士通だけでも開放特許は多量にあるそうなので、東芝、NECと合わせれば、どれだけの数になるのかわからない。川崎市というと、「かわさきロボット競技会」のイメージなどが強いかも知れないが、ビジネスロボットシーンでも日本を牽引していく自治体のひとつである。今後も、意外なロボットが登場してくるかも知れないので、川崎市は要注目だ。


URL
  川崎市
  http://www.city.kawasaki.jp/
  ニュースリリース(PDF)
  http://www.city.kawasaki.jp/25/25koho/home/kisya/pdf/080603-2.pdf
  富士通
  http://jp.fujitsu.com/
  ニュースリリース
  http://pr.fujitsu.com/jp/news/2008/06/3.html
  イクシスリサーチ
  http://www.ixs.co.jp/
  末吉ネームプレート製作所
  http://www.sueyoshi.co.jp/


( デイビー日高 )
2008/06/05 15:18

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