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第1回アールティ主催バトルカップレポート
~えまのんさんのキャバリアが完全優勝!


ロボット8体と参加選手(親子チーム含む)、解説のDr.GIY、アールティ中川社長で記念撮影
 秋葉原のロボット専門ショップ・アールティは5月6日に、4月頭の予選から数えて約1カ月に及んだロボット競技会「アールティ主催第1回バトルカップ」の決勝戦を開催した。

 同競技会の参加資格は、ロボットが「二足歩行型であること」のみ。サイズ、重量の制限はない。また、制御方法についても、有線・無線(赤外線を含む)はもちろん、音声認識や自律制御も認められている。まさにロボット競技会のヴァーリ・トゥードという趣である。

 勝敗の判定に関しても一般的な競技会と若干異なり、スリップダウンの概念がない。自分で倒れてもダウンになってしまうのだ。ただし、開始直後のロボット同士がコンタクトする直前までは、ダウンしても数えられないルール。また、リングアウトは即負けとなり、2体同時にリングアウトの場合は、先に落ちた方が負け。同体でほとんど差がない場合は、両者1ダウンということで再びリングで勝負となる。試合時間は3分で、決着がつかなかった場合の判定はなく、ダウン数の差異に関係なく引き分けとなる。なお、競技リングは1.8m四方で、メラミン焼き付けの化粧合板だ。

 同競技会は決勝に先立ち、4月中にグループA~Dまで4回に分けて予選が実施された。各予選の参加枠は8名まで、勝者3点・引き分け1点の得点制で競われた。各予選の合計得点の1・2位が決勝に進出できるというルールである。

 特徴的なのが、総当たりリーグ戦とトーナメント戦の中間的なスタイルである「スイス形式トーナメント」が採用されたこと。このトーナメントは、1回戦はランダムでの対戦となるが、2回戦以降は同じレベルの選手が極力対戦する仕組みとなっているのが特徴である。つまり、2回戦は1回戦で勝った選手同士か、負けた選手同士での闘いとなり、3回戦は全勝同士、2勝1敗同士、1勝2敗同士、0勝同士といった形になる。実際には引き分けもあるので、きれいに同じ勝率同士での対戦になるとは限らないが、それに近い者同士で、という形だ。


 そして今回、決勝に進出を果たしたのは、4月6日開催のA予選1位がGram(芝浦工業大学SRDC製作)、2位がシーラカンス(ホリパパさん製作)。13日のB予選1位が、サアガ(イガアさん製作)、2位がKHR-赤(ブラックさん製作)。20日のC予選1位がコガルー(くままさん製作)、2位がさくら2号(吉田ファミリアさん製作)。29日のD予選1位がキャバリア(えまのんさん製作)、2位が舞妓さん4号(チーム110製作)という結果となった。なお、キャバリアは予選で1回もダウンを奪われない、パーフェクトWINで決勝に進出している。

 5月6日の決勝戦に関しては、通常のトーナメント方式で行なわれた。グループA1位対グループD2位、グループB1位対グループC2位、グループC1位対グループB2位、グループD1位対グループA2位という形だ。最終日ではあったが、ゴールデンウィーク中ということもあって、親子で参加しているチームが2組あった。

 第1試合は、グループA1位のGram対グループD2位の舞妓さん4号。Gramを製作した芝浦工業大学SRDCは、何十名もの部員が所属する芝浦工業大学のサークルで、Shibaura Robotics Development Circleの略称。ROBO-ONEにも出場しているチームだ。舞妓さん4号のチーム110は、親子での参加。お父さんの製作で、娘さんが操縦を担当した。ロボットの体格・性能面、操縦者の経験や技量などで芝浦工業大学SRDCの方が完全に上回っており、Gramの圧勝となった。


芝浦工業大学SRDCのGram チーム110の舞妓さん4号 【動画】Gram対舞妓さん4号の試合の様子

 第2試合は、グループB1位のサアガ対グループC2位のさくら2号。サアガの製作者イガアさんは、ROBO-ONEなどでもお馴染みの選手で、今回のサアガはいつもより小型で、色は白。一方のさくら2号の吉田ファミリアさんも同様に有名選手だが、今回の操縦は娘さんが担当。さくら2号は娘さんのイメージに合わせて作られたようで、頭部にはポンポンが、フレームはピンクとかわいらしい外装である。性能的にはそれほど大きな差はないと思われるが、さすがに操縦者の経験と技量の差が大きかった。勝負は、さくら2号のいきなりのリングアウトでサアガの秒殺勝利かと思われたが、そこから持ち直し、ダウンカウント2対2のフルセットにもつれた後、サアガがさくら2号を突き倒して勝利となった。


イガアさん製作のサアガ 吉田ファミリアさん製作のさくら2号 【動画】サアガ対さくら2号の試合の様子

 第3試合は、グループC1位のコガルー対グループB2位のKHR-赤。くままさんといえばガルーだが、今回はその名の通り小型版のガルーで登場。ガルーと比較すると小柄でかわいいが、突き飛ばしの威力がある、下からすくい上げるアッパー気味のダブルパンチが特徴。しかも、重心が低いので安定感もある。一方のKHR-赤は、スーパーロボット系アニメに出てきてもおかしくないぐらいデザインの格好いい、ヒーロー系ロボット。勝負は性能的にコガルーが圧倒し、余裕で勝利を収めた。


くままさんのコガルー ブラックさんのKHR-赤 【動画】コガルー対KHR-赤の試合の様子

 第4試合は、グループD1位のキャバリア対グループA2位のシーラカンス。前述した通り、キャバリアは予選でダウン知らず。それもそのはずで、しゃがんでしまえば大きな足の裏と抜群の安定感でとても倒れそうに見えないし、立ち上がると出場ロボット中で最も全高があり、強大なパワーで腕を振り回す様は凄まじいの一言。一方のシーラカンスは、スケールモデルのスクラッチビルドを彷彿とさせる、意匠を凝らしたロボットだったが、階級が違いすぎたため、この試合も一方的ともいえる展開に。制限なしのルールは、どうも再考の余地あり、という結果が続いてしまった。


えまのんさんのキャバリア ホリパパさんのシーラカンス 【動画】キャバリア対シーラカンスの試合の様子

 続いて準決勝。第1試合は、第1試合の勝者Gram対第2試合の勝者サアガ。両者の初戦の動きなどを見る限り、決勝トーナメント1回戦の4試合ほど差がないと思われる。ただし、体格的にはGramの方がかなりあり、サアガは機動力を武器に戦うといった感じだ。結果は体格差がやはり大きかったのか、Gramの決勝進出となった。なお、準決勝第1試合は記者の機材の操作ミスでムービー、スチールともに撮影に失敗。お届けできなくて申しわけない。

 準決勝第2試合は破壊力のあるコガルーと、反則的(!?)ともいえるサイズで圧倒的な強さを見せているキャバリア。あまりにも体格差があるなか、コガルーは強力なパンチで応戦。途中、キャバリアがあわやダウンというシーンもあったが、操縦者のえまのんさんのとっさの判断でしゃがませて回避。結局コガルーも1ダウンを奪えず、キャバリアは無傷で決勝進出を果たした。


準決勝第2試合はコガルー対キャバリア 【動画】体格差を乗り越えてコガルーが善戦、好勝負となった

 決勝戦の前には、3位決定戦が行なわれた。サアガ対コガルーである。身長差はそれほどないものの、横に並べるとわかるのだが、コガルーはおそらくくままさんのいつもの愛機であるガルーの腕を除いた上半身をそのまま使っているようで、かなりドッシリとした感がある。サアガはスマートな機体で重心の位置はガルーより高いようだ。そんな両者の対戦は、サアガがサーボのオーバーヒート覚悟で、相撲の電車道のような、押して押して押しまくる戦法で詰め寄る。コガルーの方が重量はあるようだが、押されてリングアウト負けしそうなところを、ふんばったり回り込んで逃げたりするなどして熱い闘いが続く。が、最終的にはコガルーがリングアウトし、サアガが3位となった。


3位決定戦、コガルー対サアガ 【動画】コガルー対サアガの3位決定戦の様子

 そして決勝戦はGram対キャバリアという組み合わせになった。Gramもサイズ的にかなり大きい方(今回参戦したロボットの中では2番目の体格)なのだが、それでも立ち上がったキャバリアとは全長も全幅もかなり差がある。キャバリアの有利は揺るがない感じだが、さすがにノーダウンでの勝利はないのではないかというスタート前の雰囲気である。しかし、キャバリがしゃがんだ体勢で、左右の腕を振り回す暴風雨のような攻撃の前に、Gramですら持ちこたえられない。しかも、Gramの攻撃が効かないのだから、手をつけられない状態である。結局、キャバリアはなんと無傷のまま優勝した。


決勝戦、Gram対キャバリア 【動画】Gram対キャバリアの決勝戦の様子

表彰式。3位はサアガの製作者イガアさん 特別賞として、舞妓さん4号のチーム110が受賞

2位は、Gramを製作した芝浦工業大学SRDCの学生さん 無類の強さでぶっちぎりの優勝を飾ったキャバリアのえまのんさん

 なお、アールティでは今後もバトルカップを定期的に開催していく予定だ。ただし、今回のサイズ・重量制限なしのルールだと、強力なサーボを使った大型が圧倒的に有利になってしまうことから、大きくルールを変更する予定だという。主催者サイドではROBO-ONEに出場しているような強豪選手はほとんど来ないと思っていたらしいのだが、予選から数えると結構有名選手が参加していたので、第2回ではロボットで差がつかないようなルールにするらしい。

 現状ではキットベースのみの参加を検討しており、KHRシリーズやRB2000、ROBONOVA-I、Robovie-Xなどからサーボの交換などをしないという条件で、あとはモーション作成の技術と操縦の腕前で勝負、というようにするそうだ。第1回の様子から、「初心者じゃ勝てない!」なんて思った人もいるかも知れないが、第2回はもっと初心者にチャンスが増えると思うので、ぜひ参加を検討してみよう。なお、開催時期は夏を予定しているそうだ。


URL
  アールティ
  http://www.rt-net.jp/


( デイビー日高 )
2008/06/02 16:50

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