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日本を代表するロボットサッカーチームが静岡県に集結
~ロボカップ ジャパンオープン2008沼津


 2008年5月3日~5日、静岡県・沼津市のキラメッセぬまづにて「ロボカップジャパンオープン2008沼津」が開催された。主催はロボカップジャパンオープン2008沼津開催委員会。共催が社団法人日本ロボット学会、社団法人人工知能学会、社団法人計測自動制御学会システムインテグレーション部門。


サッカーの街、静岡にロボットサッカー登場

 毎年恒例となっている、GWのロボカップ・ジャパンオープン。2008年の会場は、日本でも有数のサッカー王国・静岡である(後援には「財団法人静岡県サッカー協会」が入っている)。ロボカップサッカー/ロボカップレスキューの会場であるキラメッセぬまづは、最寄の沼津駅ホームからも見えるほどの駅近という立地もあってか、3日間ともに多くの人出で賑わっていた。

 さて、会場内での構成に注目してみてみると、来場者に「見てもらうこと」「楽しんでもらうこと」に重点が置かれているのがよくわかる。マイクロロボットサブリーグとロボカップレスキュー以外は観客用の椅子席が設けられており、小型・中型・四足・ヒューマノイドの4リーグには、ひな壇式の立派な“観客席”が作られていたくらいである。

 また、各リーグの観客席から見えるモニターには現在の得点や、次に開催される対戦相手の名前が表示されていた。さらに本職のMCが各リーグに常駐し、解説とともに観客に向けて現在行なわれているチームの注目点やリーグの技術的なポイント、よく競技が止まるロボカップならではの「今フィールドでは何が起こっているのか」といったルール面からのフォローなど、一般のお客さんが「?」とならないように配慮がなされていた。これにより、この日初めてロボカップを見た人も楽しんで帰れたのではないだろうか。

 なお、今回の会場は天井から外光が入り込み、明るい雰囲気ではあったのだが、センサーを頼りにボールを追いかけるロボット達には厳しい環境。気象状況で刻々と変化する光源に惑わされ、敗退していくチームも見られた。


沼津駅からほど近いキラメッセぬまづ 観客席は大勢の観客で埋まった 各リーグの看板部分には、昨年小型ロボットリーグでトラブルになった無線機器に関する注意書きが掲示されていた

天井から外の光が入り、場内は明るい雰囲気だった 会場案内図

ヒューマノイドリーグ

 ヒューマノイドリーグは身長が30~60cmまでの「KidSize」と、100~160cmの「TeenSize」までの2クラスで、サッカーのほかに課題をクリアする「テクニカルチャレンジ」もあわせて行なわれていた。

 テクニカルチャレンジKidSizeでは、ジャパンオープンはもちろん世界大会でも2004年から連覇しているTeamOSAKAが障害物回避こそ得点を得られなかったものの、ドリブルで10点中8点、パスは規定回数の5回をこなして10点を獲得し、総合18点で1位を獲得。2位には参加8チーム中唯一障害物回避でゴールしたJeap(大阪大学、JST ERATO、浅田プロジェクト)が入った。

 TeenSizeのほうのテクニカルチャレンジでも、TeamOSAKAはドリブル、障害物回避、徒競走の3種目すべてでポイントを獲得し、見事に優勝。障害物回避と徒競走で2位だったCIT Brains(千葉工業大学/関西学院大学)はドリブルでポイントを獲得できなかったのが響いた。


「ドリブル」にチャレンジするTeamOSAKA CIT Brainsのはじめロボット31号機 【動画】TeenSizeの徒競走

 そして、KidSizeクラスの本番とも言うべきサッカー形式での試合は、昨年までの2on2から3on3に変更されて開催された。7チームが2リーグに分かれて試合を行なった結果、得点を入れたのは各リーグで1位となったTeamOSAKAとCIT Brainsだけという状態となり、この2チームが決勝に進んだ。

 はじめロボットをプラットフォームに、1年間ブラッシュアップしてきたCIT Brainsは、TeamOSAKAの機体がボールや自分の位置を見失ってしまっていた中でロングシュートを決め、いきなり先制点を叩き込む。しかし、TeamOSAKAも次第にペースをつかみ、2点を連取して逆転。そのまま逃げ切るかと思われたが、シュートをとめたキーパーが立ち上がれなくなったところにCIT Brainsが詰めて、同点シュート、延長戦にもつれこんだ。延長戦ではTeamOSAKAがすばらしい動きを見せて、立て続けに3ゴールを奪い、勝負あり。ジャパンオープン4連覇(2005年は世界大会のみ)を決めた。


VisiON 4Gを今期のルールにフィッティングした改造モデル。名前も特にないという 【動画】決勝戦の前半、先制点を入れるCIT Brains 【動画】同点ゴールを放つTeamOSAKA

【動画】混戦から勝ち越しゴールを決めるTeamOSAKA 【動画】シュートをブロックするCIT Brainsのキーパー

【動画】同点ゴールのCIT Brains 【動画】延長戦でキーパーからのボールをゴールするTeamOSAKA

 今年のヒューマノイドリーグはフィールドの大きさが拡大されたり、ボールがプラスチックのカラーボール(直径8.4cm、重量26g)からテニスボール(同6cm強、60g弱)に変わるなど大幅なルール改正があったが、最も大きな変更点はロボットの視野角を最大180度に制限するルールだろう。

 というのも、昨年までは視界の制限がなかったので、TeamOSAKAのVisiONシリーズのように、周囲360度が一枚の画像で認識できる「全方位カメラ」を頭に搭載することで、ロボットの背面にあるボールでも認識することが可能だったのだ。だが、新ルールではほぼ人間と同じ180度という視界になり、真後ろに首を向けるような非人間的な動きも不可とされた。これによりロボットがボールを見失ったときには、人間のように周りを見回す必要が出てきたのである。

 もともと“見回して”ボールを捜していたCIT Brainsに対して、TeamOSAKAはどうやって“ボールを見つける”ところからの組み直しを行なったのか、TeamOSAKA監督の大和信夫氏に聞いてみると、「今大会は時間があまりにもなかったので、新型機も作らず、思考のアルゴリズムもほとんど変えていないはずです。画像処理は、首を振って内部で画像をつなげ、360度が見えている状態にしています」という答えだった。時間がなかった分、シンプルに考えて作ったシステムだったのが功を奏して、逆にロバストだったのかも、とも付け加えていた。

 ちなみに今年のヒューマノイドリーグには、ロボット関係の会社サークルという「波動」チームがKHR-1HVをベースにした機体で参加していたが、シングルボードPCのPicoを背中部分に積んだためか、バランスを崩して転倒してしまう場面が多く、残念ながらゴールはならなかった。


「波動」チーム 韓国から参加した「Spirit」(Seoul National University of Technology in Korea)。残念ながら記録は残せなかった 金沢工業大学が持ち込んだTeenSizeの「STEPKIT」。一年分の予算で片足を作るなど、数年越しの努力の結晶だったが、本番では動かず

中型ロボットリーグ

 12×18mという大きなコートで行なわれる中型リーグ。ロボットも高さ40cm以上80cm以下という迫力のあるサイズのロボットが、4機~6機で1チームとして試合をするので、ちょっと遠目から見ていても楽しめるリーグである。今年は7チームが参加し、3日間のリーグ戦によって順位を決定した。

 今年は世界大会で「色のついていないゴール」が導入されることが決まっているため、ジャパンオープンでもこれを使った試合を行なうことになっていた。だが、ジャパンオープンの時点で色無しゴールに対応していたのは、昨年のジャパンオープン優勝チーム「EIGEN Keio Univ.(慶應義塾大学)」のほか、「WinKIT(金沢工業大学)」「Hibikino-Musashi(九州工業大学・北九州市立大学・北九州産業学術推進機構)」「Future Vision(福岡大学)」の4チームだけ。残りの3チームは準備の遅れから未対応だった。

 そこで、上記の4チーム同士の試合は色無しゴールで行ない、勝者は勝ち点3を獲得。上記以外のチームと対戦する場合は色付きゴールで行ない、勝者の勝ち点は2とする(引き分け1、負け0は同じ)形で試合が行なわれた。

 ディフェンディングチャンピオンのEIGEN Keio Univ.は緒戦のFuture Vision戦で引き分けたものの、The Orient(東洋大学)戦を4-0で勝って初日を終える。一方、昨年世界4位だったHibikino-Musashiは、オープニングゲームでFuture Visionに2-0、DIT-RC(大同工業大学)に4-0、初日の最終試合だったWinKIT戦では6-0と、光の変化に苦しむ他チームを置き去りにする圧勝を見せ、一気にトップに躍り出る。


 2日目もHibikino-Musashiの勢いは止まらず、不戦勝を含む3勝を挙げて無敗を守るが、EIGEN Keio Univ.もこの日はWinKIT戦で4-0、Soromons&Trackies戦で5-0と2勝を追加して暫定2位に浮上する。その結果、2日目終了時点で暫定1位のHibikino-MusashiはEIGEN Keio Univ.との試合だけを残し、勝ち点は14。EIGEN Keio Univ.は3試合を残し、勝ち点が8。ただし、3日目の1試合は不戦勝が決定しているので、緒戦のDIT-RC戦に勝利すれば、直接対決前に勝ち点12になる。Hibikino-Musashiとの直接対決は色無しゴールになるので、勝利チームに与えられる勝ち点は3。つまり逆転が可能なのだ。

 EIGEN Keio Univ.は3日目のオープニングゲームとなったDIT-RC戦を8-0で勝ち、筋書き通り、その日のお昼に予定されていたHibikino-Musashi対EIGEN Keio Univ.の対戦は、優勝を決める大一番になった。

 どちらもよく動く機体を持つだけに、ボールへの寄せも早い。前半にHibikino-Musashiが一瞬の隙を突いて先制点を流し込むが、そのあとは両チームともにシュートをしてもセーブされるのが当たり前。ドリブルで駆け上がる機体がディフェンスに体ごと止められる場面もあった。攻防が激しく入れ替わりながら戦った両チームだが、結局最初の1点が決勝点となり、1-0でHibikino-Musashiが勝利。全勝でジャパンオープンの優勝を決めた。

 「いろいろな部分で環境が違うんで試行錯誤したんですが、早い段階でまとまったのが良かったんだと思います。明るさの違いは、今回からゴールのこともあってあまり色に頼らない設定になっているので、緑(フィールド)と白(ラインやゴール)をしっかりと認識できていますから」(Hibikino-Musashiチーム代表・武村泰範氏)という自信にあふれた勝利コメントをもらうことができたが、同時に「世界大会は1日に6試合をやるような厳しい戦いになりますから、ハードウェアの耐久性も上げていかないといけません。いろいろ、世界戦に向けてやらなければいけない問題がたくさん見つかった大会でした」(武村氏)と、今後に向けての“兜の緒を締めた”コメントもあった。


【動画】「勝ったほうが優勝」という対戦となったHibikino-Musashi対EIGEN Keio Univ. テクニカルチャレンジを含む中型リーグに参加した12チーム。「ADRO」はイラン・コラスガン大学のチームだが、ビザが下らないため不参加となったらしい テクニカルチャレンジ1位のTeam KCT(北九州工業大学)

【動画】Hibikino-Musashiのテクニカルチャレンジ。2位だった 非常に窮屈そうだった“練習フィールド” 【動画】調整中のEIGEN Keio Univ.。転がってくるボールを見事に追尾しているが、さすがに人間のきっちりしたシュートを止めるのは難しいか

小型ロボットリーグ

 直径18cm、高さ15cm(ちょうど両手で持てるくらい)の大きさのロボット5台が1チームとなってサッカーを行なう小型ロボットリーグ。他のリーグと違う特徴は、天井にロボットたちの「目」となるカメラが取り付けられていて、そこから取り込んだ情報を元にコートサイドにあるチームのPCで思考・判断。そして行動を無線で各機体に指令するという、“グローバルビジョン”システムを採用している点である。ちなみに、各ロボットにカメラが搭載されて、各ロボットがフィールドを見るのは“ローカルビジョン”と呼ぶ。そのため、フィールド上の敵味方やボールの位置関係がわかりやすいので、試合ではより戦略的なサッカーを見ることができるのだ。

 もともと自機を見つけるために色の付いたマーカーを使用しているので、今年の会場における光の加減の違いは参加チームを苦しめていた。パスが通らないどころか、自分の位置を見失ってその場で回転を続けたり、ゴールの中に入ってしまったりと、ハンドラー(チームのうち、フィールドのロボットの出し入れなどを行なう役目の人)は大忙しだった。

 昨年世界大会で3位に食い込んでいるRoboDragons(愛知県立大学)はジャパンオープンで敵無しの2連覇を飾っていたが、こちらのチームも光の加減に相当苦しめられたようだ。それでも結果を残すのはさすがで、予選の5試合は全勝。総得点28点に対して失点は唯一ODENS(大阪電気通信大学)戦で喫した1点のみで、準決勝のfWing207(電気通信大学 中野研究室)戦も5-0と完勝して、決勝戦に向かう。

 決勝戦に進んだもう1つのチームは、予選でRoboDragonsに2点差で敗れた、前出のODENSだ。予選で負けたのはこのRoboDragons戦だけで、4勝1敗の堂々たる成績である。予選では2-0で勝利していたOwaribito-CU(中部大学)との準決勝では、さらに差を広げて3-0で快勝。RoboDragonsとの再戦の舞台に上った。

 決勝では両チームともに安定した動きを見せる。前半スタート直後からRoboDragonsが攻めている時間帯が長くなり、セットプレーから何度もODENSゴールを脅かすが、キーパーのナイスセーブやチーム全員での守備に阻まれてなかなかゴールを割ることができない。しかし、前半残り1分になろうかというときに、センターライン近辺での混戦からRoboDragonsが放ったシュートがODENSゴールの右隅に決まる。

 後半は同点にしたいODENSと、突き放したいRoboDragonsのあいだで激しい戦いが繰り広げられたものの、最後まで良く攻め、良く守った両チームの試合が動くことはなく、そのまま1-0でRoboDragonsがジャパンオープンの3連覇を決めた。

 RoboDragonsチームからは「ひやひやの勝利でした」というコメントが一番最初に聞かれたことからも、この戦いがいかに厳しいものだったかがよく伝わってきた。その中でRoboDragonsが勝利することができたのは、キック力や移動速度などの一芸に秀でるのではなく、すべての能力をバランスよく強化した結果なのではないか、と自己分析していた。また、参加2回目ながらチャンピオンを僅差まで追い詰めたODENSの存在は、称賛に値するだろう。今年の世界大会には参加登録していないようだが、今後も注目したいものである。


カメラを取り付けたやぐらに照明を設けていたが、これだけ外光が入る条件では焼け石に水だったようだ 決戦を前にしたODENS。前回から参戦した新しいチームとは思えないパフォーマンスを発揮した 【動画】決勝戦のRoboDragons対ODENS。決勝ゴールは一瞬のスキだった

 ちなみに小型ロボットリーグは第1回のロボカップから開催されている、歴史あるリーグ。だが、ここ数年は参加チームが他リーグへ移行するなど、裾野があまり広がっていないようだ。今年はイランから参加した「Parsian Robotic(EE Department, Amirkabir Univ. of Technology)」を含む6チームが参加していたが、“勝てる”機体は1機を製作するのに百万円単位で費用が掛かってしまうので、新規参入チームが少なくなっても仕方がないだろう。

 しかし、グローバルビジョンなどの小型ロボットリーグの資産を活かして、参入への敷居を低くしようという試みが始まっているという。今回はそのデモがODENSの大阪電気通信大学によって披露された(同大ではこのために別チームを一つ編成していた)。

 小型ロボットのかわりにフィールドでサッカーをするのは、KHR-1HV。頭の上にはカメラが機体を認識するためのマーカーが載っているが、ジャイロセンサと加速度センサを搭載したほかは、基本的にキットノーマルの状態だという。PCとロボット間の通信も、ロボットコントローラーで使用されているADバンドだそうだ。これなら1機にかかる費用は10万円台で済む、という提案である。

 今すぐ小型ロボットリーグがこの仕様に変わるわけではないし、将来的にもこの形になると決まっているわけではない。あくまでロボカップ日本委員会の中の、小型ロボットリーグがローカルで企画している段階だということは念を押していた。


精度が悪くてもしっかり接地できるという3輪構造を採用していた「Parsian Robotic」 二足歩行ロボットによるデモ。頭にマーカーがある以外はほぼノーマル。ちなみにODENSなので、各機体の名前はおでんダネ

シミュレーションリーグ

 パッと見はゲーム画面のように見えるが、ゲームよりもずっと高度なことが行なわれているシミュレーションリーグ。高さの概念がない、平面で行なわれる「2D」と、高さも含めた「3D」の2クラスがあり、それぞれ21チーム・8チームが参加した。

 昨年はホワイトボードで画面の見方を解説していたおかげで、試合をじっくり見る楽しみがあったが、今年は参加各チームの基本的な戦略や意図を解説したプリントを張り出し、観客がそれを自由に見られるスペースが新設され、さらにわかりやすくなっていた。

 もちろん細かい戦略は公開されていないが、ざっくりと「こういった意図でチーム作りをしています」といった概要がわかるようになっている。試合の進行はホワイトボードに書かれているので、次に試合するチームや、さっき見ていたチームがどんな考え方でエージェントを作っているのかを読むことができる。チーム数が多く、かつ画面になると、どれがどのチームなのか区別が付きにくいリーグだけに、この企画は非常にありがたいものだった。実際、多くの観客が中まで入って真剣に掲示を読んでいたのが印象的だった。

 2Dでは、予選リーグを5勝0敗、得失点差+65という圧倒的な強さで勝ち上がったHERIOS(産業技術総合研究所)が、2次リーグ以降僅差の試合もありながら確実にモノしていき、無敗のまま優勝。一度は決勝トーナメントで敗れながら、敗者復活戦から再挑戦してきたFifty-Storms(芝浦工業大学)を延長戦までもつれながらも撃破、3連覇を果たした。

 3Dでは使用PCのスペック的な限界から3on3形式でのリアルタイムシミュレーションで行なわれ、こちらはOPU_hana_3D(大阪府立大学)が優勝した。


【動画】予選でTDU_ThinkingAnts(東京電機大学)と戦うHERIOS。空いているスペースにパスを出したり、完全にディフェンダーを置き去りにしたゴールも見られた グレードアップした「サッカーシミュレーションリーグの観戦ガイド」。昨年と比較するとよくわかる シミュレーションリーグの1位、2位が含まれるアピールボード

アピールボードとは別に、各チームの詳しい掲示も用意されている 一般の人がシミュレーションロボットと対戦できるコーナーが設けられていた

マイクロロボットサブリーグ

 小型ロボットリーグのように、頭上にマーカーをつけたプレーヤーが、画面上のボールで2on2を行なうのがこのリーグ。スタートしたばかりのリーグで、実機のリーグとシミュレーションリーグの間をつなぐ位置づけになるようだ。今年はドイツのWF WOLVES(University of Applied Sciences Wolfenbuttel)を含む5チームが参加して行なわれた。

 優勝は今回2チームを構成してきたSocio(大阪府立大学/大阪大学/愛知工業大学)のBチーム。練習リーグや予選ではなかなか勝てなかったが、決勝トーナメントでは予選トップだったWF WOLVESを決勝で破ったのだからすばらしい。

 競技としてみると2on2は戦略が見えにくい部分がある。超小型のマシンはきびきびと動くことができるので、ぜひ11対11で動く実機の競技を見てみたい。


フィールドの大きさはちょっと大き目のモニターくらい。ロボットは親指大だ。上空のカメラでロボットの位置を把握している 【動画】実際の競技シーン

四足ロボットリーグ

 すでに二足歩行のプラットフォームに移行することが決まっており、今年はエキシビジョンマッチとして行なわれた四足ロボットリーグ。ただ、観客の人気と盛り上がりは一番人気のヒューマノイドリーグに優るとも劣らないものだった。

 参加6チームの頂点を決める対戦は、昨年2位のAsura-fit(福岡工業大学モノづくりセンターロボカッププロジェクト)とFC Twaves(東海大学ロボカップサッカープロジェクト)の組み合わせに。試合をリードしたのはAsura-fitで、前半で2-0としたものの、FC Twavesが後半盛り返して同点に。しかし残り時間10秒を切ったところでAsura-fitが劇的な決勝ゴールを叩き込み、優勝した。


フェンス際に子供が鈴なりになった四足ロボットリーグ。うっかりミスをする愛らしさも含めて子供の一番人気はこのリーグだったかも 【動画】決勝戦の模様

レスキューロボット&レスキューシミュレーション

 “ロボカップサッカー”とは大きく異なり、ロボットのハードウェアやソフトウェアの技術をレスキューに活かそうと始められたのが、レスキューロボットリーグ(実機)とレスキューシミュレーションリーグだ。

 実機のリーグでロボカップサッカーと大きく違うのは、ロボットの遠隔操縦が認められている点。そして、制限時間内に機材をセットし、被災者がフィールドのどこに、どんな状態で(生死や怪我の状態etc.)いるのかをマップに仕上げるまでが競技とされているので、ロボットだけでなく、人間も含めたチームの総合能力が得点になるという点である。

 今年の優勝は、世界大会でも好成績を収めていたCIT-Pelican(千葉工業大学)を抑えたNuTech-R(長岡技術科学大学)。伸びるカメラなどで隠れた場所の探索も行ない、予選から好成績を残していた。

 シミュレーションリーグは、マップの中で起きている火災を消し止めたり、被災者の救助をどれだけ効率よく行なうことができるか、という競技である。「消防」「救急」「レスキュー」といったエージェントをどうやって動かすかという“戦略”が差になるのだ。

 今年は強豪国イランのPARS(Islamshahr Islamic Azad University)チームが参加したわけが、さすがの貫禄を見せて優勝。2位にはSUNTORI(名古屋大学)が入った。


レスキューシミュレーションリーグにも、わかりやすい解説ボードが登場 ダミヤン。テープレコーダーは声(音)を出している

【動画】優勝したNuTech-Rの競技 【動画】シミュレーションで優勝したPARSは競技中に解説もしてくれた

来年のジャパンオープンは再び大阪で

 来年は大阪での開催が予定されているジャパンオープン。7月の世界大会を睨むチームにとっては前哨戦であり、同時に世界大会で導入される新たなルールなどに対応するための実戦的な調整の場でもある。また、世界大会に出場を予定していないチームにとっては、世界レベルの力を持つ他チームと実戦で腕試しができる場でもある。

 だが、チームによって準備に差があり、全く勝負にならない、試合になっていない場面が各リーグで見られたのも事実だ。“研究”として考えればプロセスの問題で、結果としていい試合を見せられるかどうかや、エンターテインメントとしてどうなのか、といった面は些細なことなのかもしれないが、仮にも有料のイベントなのだから、観客に満足して帰ってもらうことも重要なはずだ。前述の通り、環境面についてはかなり観客に配慮されたものになっていただけに、これで試合さえきちんとしていれば……という気持ちになった。

 いずれにしても、今年の世界大会は中国・蘇州にて7月14~20日の日程で行なわれる。各リーグで上位入賞したチームが参戦予定なので、その結果もあわせて楽しみにしたい。


URL
  ロボカップ日本委員会公式ホームページ
  http://www.robocup.or.jp/
  ロボカップジャパンオープン2008沼津
  http://robocup-numazu.com/
  ロボカップ(英文)
  http://www.robocup.org/

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( 梓みきお )
2008/05/30 17:13

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