5月25日、東京秋葉原の「ROBOSPOT」で、二足歩行ロボットによるレーザー光線銃バトル大会「Blaser Battle AKIBA ROBOSPOT The First Stage」が開催された。Blaser Battleは、Hotproceedが開発したホビーロボット向けレーザービームバトルシステム「Blaser」を用いた大会であり、関東での開催は今回が初となる。
● シンプルだが戦略性に富む競技
Blaserは、レーザー光線銃と受光部となるセンサ基板、コントロール基板から構成されており、KHRシリーズなどのロボットに組み込むことで、気軽にレーザー光線銃によるシューティングを楽しむことが可能だ。
今回の大会では、2台ずつでチームを組み、専用バトルフィールドを利用してチームバトルが行なわれた。フィールドには障害物となるビルが4つ置かれ、両サイドには、基地となる「Blaser BASE」が設置されている。Blaser BASEには、左右両側にBlaserと同じ受光部があり、そこにレーザーを打ち込むことで、基地のライフポイントを減らすことができる。
Blaser BASEのライフポイントの初期値は90で、1回攻撃がヒットするごとに10ずつポイントが減っていく。Blaser BASEに攻撃がヒットすると、上部のランプが点滅し、アラームが鳴る。アラームが鳴り終わったあとも、ランプはしばらく点滅を続けるようになっており、このランプが点滅している間はBlaser BASEは無敵となり、攻撃はヒットしない。また、各ロボットにもライフポイントがあり、受光部に攻撃を受けると、ポイントが1つ減るとともにダウンモーションが発動し、一定時間動けなくなる(ダウンしている間は無敵となる)。
ロボットのライフポイントの初期値は9で、ライフポイントが0になってしまうと(9回攻撃を受けると)、そのロボットは動けなくなってしまう。試合時間は5分で、試合が終了した時点での、Blaser BASEと自チームのロボットの合計ライフポイントが多いほうが勝ちというシンプルなルールだ。なお、レーザー光線銃バトルを楽しむために、横歩きの禁止や腕の左右の可動範囲の制限といったルールも定められている。
もちろん、相手に対する物理的な攻撃(パンチやキックなど)は禁止されており、攻撃モーションを出してしまうと、その時点でそのロボットは失格となる(ポイント0)。Blaser BASEの受光部はフィールドの短辺に平行に配置されているため、敵陣のBlaser BASEの横まで攻め込んでいかないと、Blaser BASEに攻撃をヒットさせることはできない。シンプルだがよく考えられたルールで、戦術的にも奥が深い。
1チーム2台の場合、1台がオフェンスとなり、相手陣地内のBlaser BASEに近づいて、Blaser BASEへの攻撃を行ない、もう1台がディフェンスとなって、相手から自陣のBlaser BASEを守るというのが基本的な戦術となるが、チームによっては、2台とも相手陣内へ攻めていったり、臨機応変に自陣と相手陣を行ったり来たりするなど、戦術にも工夫を凝らしていた。
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透明バックパックの中に見えるのが、Blaserコントロール基板。スピーカーも搭載しており、レーザー発射音やヒットしたときの爆破音などの効果音も再生される。基板上に7セグメントLEDが搭載されており、現在のライフポイントが表示される(最大9からスタート)
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胸には、受光部となるセンサ基板が内蔵されている。この5つのフォトセンサをめがけて、レーザーを撃つことになる
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Blaserの銃のデザインと製作は、大日本技研が担当している
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Blaser Battle専用フィールド。ビルをうまく利用すれば受光部を隠しつつ、相手を撃つことも可能
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フィールドの両端には、基地となる「Blaser BASE」が設置される。このBlaser BASEを相手から守ることが重要だ
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ルール解説を行なうクラフトハウスの栗元氏
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● 合計6チーム12台が参加
今回は、Blaser Battleの本場である九州からの参加チーム2チームを含めて合計6チームが参加し、総当たりのリーグ戦が実施された。レーザー光を見やすくするために、ROBOSPOTのシャッターの大部分を下げて照明を暗くし、舞台の演出などに使うスモークを発生させてバトルが行なわれた。
Blaserシステムは、HotproceedのTEC-3と組み合わせて使うことで、PS2用ワイヤレスゲームパッドのアナログスティックを利用して、レーザーの微妙な照準あわせが可能になる。最初はなかなか狙った場所に当てるのは難しいが、アナログスティックの微妙な操作に習熟すれば、遠距離からでも正確な射撃が可能になる。また、照明を落とした状態でも、自チームと他チームの区別をつきやすくするために、赤色または青色の点灯するマーカーを機体に装着するように規定されている。
実際の戦いの様子は、動画や写真を見てほしいが、近距離での射撃だけでなく、レーザーの射程距離は長いため、ハウザーのように自陣のBlaster BASE付近から、相手陣内のBlaser BASEを守っている敵機に遠距離射撃を行ない見事成功するロボットも登場し、観客を沸かせていた。
前半は、「納期厳守」チームが1ポイントもとられずに「四川会ジュニア」に勝利するなど大差が付いた試合も多かったが、Blaser Battleの経験が少ない関東チームも試合を重ねるごとに上達していき、激戦が繰り広げられた。
リーグ戦は全部で15試合となるが、約5試合ごとに休憩時間が設けられ、観客から希望者を募って1vs1の体験操縦も行なわれた。
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舞台の演出などにも使われるスモーク発生装置。スモークを発生させて照明を落とすことで、レーザー光が見えるようになる
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【動画】このように、試合開始前や途中などに、適宜スモーク発生装置を作動させて、レーザー光の視認性を高めている
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【動画】Automo 01の左肩に「Blaser Marker」が装着されている。Blaser Markerは、チーム識別用マーカーであり、ディップスイッチの切り替えによって赤色と青色のLEDを点滅させることができる
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【動画】「納期厳守」チームの「サンダーボルト」の攻撃が「たぶち」チームの機体にヒット。そのまま、サンダーボルトと同チームの「締め切り2HV」が、敵陣のBlaser BASEに向かい、Blaser BASEの攻撃に成功
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「納期厳守」チームvs「GPジュニア」チームの様子
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【動画】「納期厳守」チームの「サンダーボルト」の側面からの攻撃が「GPジュニア」チームの「レトロ」にヒット。受光部を覆うカウルが透明だと、横からの攻撃でも倒されてしまう
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【動画】レトロがサンダーボルトの攻撃を避けるためにバックで移動していったが、サンダーボルトに回り込まれてしまい、またも攻撃を受けてしまった。さらに起き上がりも狙われてしまい、連続でライフポイントを失った
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【動画】「チームBlaser Joker」と「チームBlaser スペード」の対戦。Jokerのハウザーが、敵陣に攻め入り、Blaser BASEの攻撃に成功。素早いフットワークで、スペードのAutomo 01の攻撃を避け、さらにAutomo 01も倒している
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「四川会ジュニア」のちょこちょこ丸。キョンシーのような外見で、手の中にレーザー光線銃が仕込まれている
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「チームBlaser Joker」vs「納期厳守」の様子。レーザーの射程は長く、フィールドの対角線上に位置する機体にもねらいを付けることが可能だ
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チームBlaser Jokerのハウザー。パワフルな機体で、移動速度も高速だ
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「四川会ジュニア」のおふろが「納期厳守」のサンダーボルトに対して攻撃を行なっているところ
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【動画】1 vs 1で行なわれた体験操縦の様子
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【動画】JokerのハウザーがBlaser BASEの攻撃に成功。Blaser BASEのライフポイント表示が90から80に減少していることに注目
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【動画】「四川会ジュニア」チームvs「納期厳守」チームの様子。四川会ジュニアのおふろの遠距離射撃が、納期厳守チームの締め切り2HVにヒット
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【動画】四川会ジュニアのちょこちょこ丸は転倒時に頭が外れてしまったが、うまく敵の攻撃を背中で防ぎながら、Blaser BASEの受光部がねらえる位置まで移動し、Blaser BASEの攻撃に成功
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【動画】たぶちチームの機体が、至近距離からチームBlaser スペードのAutomo 01の攻撃に成功。続いてBlaser BASEへの攻撃を成功させ、起き上がったAutomo 01を再び沈めている
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【動画】四川会ジュニアvsチームBlaser Jokerの様子。チームBlaser JokerのATC2Kの攻撃が、四川会ジュニアのおふろにヒット
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【動画】チームBlaser JokerのハウザーがBlaser BASEを守ろうとして、ちょこちょこ丸との間に割って入っているが、ちょこちょこ丸がBlaser BASEへの攻撃に成功した
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● 九州の「チームBlaser Joker」が貫禄の優勝
リーグ戦の優勝は4勝1敗の「チームBlaser Joker」で、3勝2敗の同率2位が「たぶち」と「GPジュニア」という結果になった。Jokerは、メンバー2人とも射撃が正確であり、どんどん相手チームのライフポイントを減らしていた。それもそのはず、Jokerは、Blaserシステムを開発した湯前氏と、Blaser Battleを普及させるために一緒に取り組んできた栗元氏からなる、いわばオフィシャルチームだ。しかし、3勝2敗の「たぶち」と「GPジュニア」が同率で2位となった。
最後に、関東組と九州組の6 vs 6によるエキシビションマッチが行なわれた。関東組は森永氏のこめたが積極的に攻め込んで行ったものの、集中砲火を浴びてライフポイントを全て失ってしまうなど、戦術面においても、個々の戦力においてもさすがに九州組にはかなわず、5分後のライフポイントは、関東組が30に対して九州組は107と大差がついてしまった。しかし、6 vs 6の合計12台でも、フィールドのサイズ的には十分試合になっていた。3 vs 3や4 vs 4といったチーム戦も、より戦術の幅が広がって面白そうだ。
筆者も、体験操縦をさせてもらったが、アナログスティックで狙って撃つのはなかなか難しい。しかし、難しいからこそ、敵やBlaser BASEに攻撃をヒットさせると、非常に嬉しい。今回は、関東地区では初のBlaser Battle大会であったが、参加者も観客も楽しそうであり、笑い声が巻き起こる場面も何度もあった。通常のバトルと違って、直接攻撃が認められていないため、キットベースのロボットでパワフルな自作機を倒すことも決して不可能ではない。ロボットも射撃ごっこも、男の子が大好きな遊びだ。ロボットで光線銃バトルを行なうBlaserは、まさに「究極の男の子遊び」といえるだろう。
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リーグ戦の結果。優勝は、4勝1敗の「チームBlaser Joker」で、3勝2敗の「たぶち」と「GPジュニア」が同率で2位となった
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最後に、関東組vs九州組の6 vs 6によるエキシビションマッチが行なわれた
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6vs6だと、同時に複数の場所で戦いが行なわれており、遠距離射撃にも気が抜けない
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【動画】試合開始と同時に、関東組のこめたが猛然と相手陣内に突入していき、Blaser BASEへの攻撃に成功
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しかし、こめたは九州組の集中砲火を浴び、全てのライフポイントを失い、動けなくなってしまう。まさに燃え尽きて真っ白な灰になってしまったわけだ
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12台のBlaser搭載ロボットの一斉射撃シーン。これだけレーザー光線が飛び交うと、壮観だ
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【動画】12台のBlaser搭載ロボットによる一斉射撃の様子
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参加選手と機体の集合写真。バトルと違って、サーボモーターが非力でもそう不利にはならないため、KHRべースの機体が多い
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KONDO CUPでもお馴染みの四川会ジュニアとGPジュニアの機体。左から、おふろ、こめた、ちょこちょこ丸
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たぶちチームのベレッタ。手ではなく、レーザー光線銃を頭の位置に搭載していることが特徴だ
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(写真=平沼久奈)
■URL
ROBOSPOT
http://robospot.jp/
Hotproceed
http://members2.jcom.home.ne.jp/hotproceed/mainA.htm
クラフトハウス
http://www.crafthouse.jp/
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( 石井英男 )
2008/05/29 17:40
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