3月25日、福岡県糟屋郡粕屋町にある大型商業施設「イオンモール福岡ルクル」でコミュニケーションロボットの発表会があった。
これはイオンモール福岡ルクルがテムザックに発注して購入したもので、テムザックのロボットが商業施設で常駐して活動するのは初めてである。
イオンモール福岡ルクルが購入したロボットは、テムザック内では「T-2」シリーズと呼ばれているロボットで、会津中央病院のサービスロボットなどもこのシリーズの製品だ。
なお、取材時にはコミュニケーションロボットの名前は募集中だったので、単に「コミュニケーションロボット」と呼ばれていた(型式番号も公表されていない)。
|
|
|
イオンモール福岡ルクル
|
発表会の会場となったメインプラザ
|
発表会の前にマスコミ向けの説明会が行なわれた。左はイオンモールの西尾営業本部長で、右はテムザックの高本社長
|
ルクルのコミュニケーションロボットは、身長140cm、重量97kg。他のT-2シリーズのロボットと同じく車輪走行で移動する。合成音声による発声やDVDを投影するプロジェクター機能も装備されている。
このコミュニケーションロボットの最大の特徴は、胸にQRコードリーダーがあることだろう。QRコードは携帯電話で情報を表示するのによく使われているが、ルクルのコミュニケーションロボットでは、個人を認識したり、簡単な指示を出すのに使われる。
ここで使っているQRコードは100文字までの情報を書き込むことが可能だ。具体的な使用方法としては名前や誕生日などをQRコードに書き込み、これをロボットが読み取って、その人の名前を呼んだり、その日が誕生日だった場合は「おめでとう」とロボットが祝ってくれるなど、QRコードを使用することでロボットとのコミュニケーションを計ろうというものだ。
イオンモール福岡ルクルには、メンバーズカード会員のお子さんのみが入れるイオン・キッズクラブという制度がある(0才から小学生までが入れる)。キッズクラブのパスケースにQRコードを貼り、そのパスケースをロボットのリーダーに読み込ませると、その子供の名前や愛称を呼んでくれる。イオンモール福岡ルクルでは、これらのサービスを通じて、メンバーズカード会員増につなげたいようだ。
なお、イオンモール福岡ルクルでは2006年2月8日に(当時の名称は「ダイヤモンドシティルクル」)「ICタグを使った買い物ロボットの実証実験」が行なったことがある。その実験でイオンモール福岡ルクルはロボットに興味を持ち、今回のコミュニケーションロボットの購入につながった。
テムザックとイオンモール福岡ルクルとの間で「ショッピングモールにふさわしいロボットとは何か」という話し合いが持たれ、QRコードで個人を認識させるアイディアはイオンモール福岡ルクル側から出されたそうだ(テムザックの高本社長は「(QRコードでロボットに個人を認識させることは)ロボットをやっている人間にとってはコロンブスの卵だった」と語っている)。
● ロボット発表会
コミュニケーションロボットの発表会は、イオンモール福岡ルクルのインフォメーションセンター前で行なわれた。地元の幼稚園の園児たちも参加しての除幕式が行なわれ、布に覆われたロボットが姿を見せた。
その後、合成音声での挨拶や映像の投影などの機能を披露した後、参加した幼稚園児によるパスケースのQRコードをコミュニケーションロボットに読み取らせるデモを行ない、ロボットは「○○くん、イオンモールルクルにようこそ」と園児の名前を入れて呼びかけていた。
|
|
|
発表会会場。イオンモール福岡ルクルの営業時間に行なわれたので、買い物客もかなりいた
|
除幕式
|
姿を現したコミュニケーションロボット。後ろいるキャラクターはキッズクラブの「パオンくん」と「ピョコたん」
|
● かなり割り切った設計コンセプト
商業施設で活動することになったコミュニケーションロボットだが、かなり割り切った設計コンセプトのロボットとなっている。
2006年2月に行なわれた実験の時とは違い、環境側にICタグを埋め込むことは一切していない。あくまでもコミュニケーションロボットはスタンドアローンで動いている。また発声機能はあるが音声会話システムは組み込んでいない。移動の時はゲームコントローラーによる無線操縦で動かし、自律で移動はしない。腕はついているが、物をつかむ機構はついていない。
まだ2時間連続活動できるバッテリは搭載しているが、移動しない時はACアダプターにつないで電源を確保するなど、むしろロボット的な高度な技術を排除しているようにすら見える。もちろん、何か当たると停止するバンパーセンサーや距離センサーなど基本的なセンサーはそなえている。
これらは「誤作動を防ぐ」ためなのだそうだ。音声会話システムは、ショッピングセンサーのような開放空間では音を拾いづらい。また大勢の買い物客が行きかうため、自律では走行が難しいところがあるだろう。
ロボットは動いてこそロボットなのであり、そのためには高度な技術よりも、安定して動けるための技術を優先したようだ。研究目的ではなく、実際に販売されるロボットとしては、このような割り切ったコンセプトが実は一番必要なのかもしれない。
イオンモール福岡ルクルでは、基本的にコミュニケーションロボットをインフォメーションセンター付近に常駐させ、買い物客に楽しんでもらおうとの考えのようだ。またこのコミュニケーションロボットを、イオンモール福岡ルクルのイベントに積極的に使っていくようである。
|
|
|
黄色のカラーリングはキッズクラブのイメージカラーが黄色なため
|
横から見たところ。QRコードリーダー部分がかなり出っ張っている
|
頭部のアップ。向かって左がカメラで、右がプロジェクター
|
|
|
|
メンテナンスは背中から行う。またACアダプター用のコードも出ている
|
映像を投影するコミュニケーションロボット。モニターに映っているのはコミュニケーションロボットのカメラの映像
|
子供と一緒に移動するコミュニケーションロボット
|
|
|
|
実はこのコントローラーで操縦している
|
QRコードリーダーにキッズクラブのパスケースを当てているところ
|
QRコードリーダーのアップ
|
|
|
キッズクラブのパスケースのアップ。右上にQRコードが貼ってある
|
親子連れが興味を示していた
|
|
|
名前を募集中。でも、キッズクラブの会員限定
|
幼稚園児との記念写真
|
■URL
テムザック
http://www.tmsuk.co.jp/
イオンモール福岡ルクル
http://fukuoka-lucle.aeonmall.com/
【2006年2月10日】テムザックとNTT Com、ショッピング補助ロボットの実証実験を開始(PC)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0210/tmsuk.htm
( 大林憲司 )
2008/03/27 15:33
- ページの先頭へ-
|