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中学生ロボコン発祥の地で「第6回八戸市中学生ロボットコンテスト」開催
~今年の競技は、「チャレンジ・ザ・ターンテーブル」


第6回八戸市中学生ロボットコンテスト
 3月2日、青森県八戸市にて「第6回八戸市中学生ロボットコンテスト」が開催された。主催は、八戸市中学校文化連盟技術・家庭科専門部。家族連れでにぎわうショッピングセンターのラピア1Fにあるフェスタプラザを会場に、熱戦が繰り広げられた。

 現在、全国各地でさまざまなロボットコンテストが開催されている。TVで注目を集めるロボコンだけではなく、中学生やジュニアが活躍する大会も多い。実は、その中学生ロボコン発祥の地が、青森県八戸市だという。

 今大会には、八戸市内の中学6校から25チームと、招待チームの八戸高専が参加し、トーナメント戦を行なった。八戸市中学生ロボットコンテストは、ゲームを楽しみながら、アイデアやデザインで個性を発揮し、自己表現することが求められている。中学生達のアイデアロボットを紹介する。


会場は、ショッピングセンター「ラピア」 多くの来場者が2階3階から試合を観戦していた

競技は、「チャレンジ・ザ・ターンテーブル」

 今年の競技は、「チャレンジ・ザ・ターンテーブル」だ。ロボットが2台一組で、30個のリングを中央にあるゴールに入れて得点を競う。

 ロボットのサイズはスタート時に、50cmの立方体に収まればOK。試合中の変形して巨大化することは認められている。モータやギアボックスは1台のロボットに6個、電源の電圧は6Vまでに制限されている。

 得点は、エリアによって異なる。床に設けられたゴールエリアは1点。中央にあるターンテーブルは、自陣の色のエリアにリングを置くか、ポールにさせば3点。相手色のエリアに載せると相手に1点進呈となる。中央の黄色ポールは特別ボーナスエリアで10点だ。

 ゴールのターンテーブルは、自陣エリアからのみ押すことができ、相手側のロボットのゴールを妨害してもよい。


競技コート。相手陣地に入ることはできない。中央の端にある四角が1点エリア ターンテーブルに載せるか、リングをポールにさすと3点。ただし、相手カラーのエリアに載ると、相手に1点が入る。中央のポールは10点 試合前、ターンテーブルが回転しやすいようにキャスターに潤滑剤を吹いていた

車検を受ける選手達 車検。ロボットは試合開始時は、50cmの立方体に収まらなければならない フロアの非常階段が選手控え室になっていた

 競技ルールを見れば分かるように、10点ポールを狙い、ターンテーブルにリングを多く載せるのが、高得点を得る戦略となる。

 だが初戦では、江陽中K-8チーム 対 市川中フォー!Kチームのように、フォー!Kチームの2号機がターンテーブルにリングを1つ載せる間に、K-8チームのロボットが1点エリアに着実にリングを運び、大差で勝敗が決まる試合もあった。

 東中Cチームの1号機は、パンタグラフ式のアームロボットで3点ポールにリングをさしたが、やはり総合得点で1点エリアを重視した「市川中未定デス。」チームに敗れた。

 もちろん1点エリアで得点を積むのも戦術だが、難しい技術にチャレンジし成功しているのに、敗退していくチームを見るのはせつなかった。

 特にトーナメント前半は、1点エリアを狙うチームが有利な傾向が強く、このまま技術チャレンジしたチームが敗退してしまったら、どうしよう……と筆者はハラハラしながら試合を見守っていた。

 だが、それは全くの杞憂であった。

 1回戦最後の試合、江陽中K-3チーム 対 東中Dチームで、東中Dチームの1号機が10ポイントポールにリングを差した時には、会場中からどよめきが起こり拍手が沸いた。

 トーナメントが2回戦、3回戦と進むうちに、オペレータもロボットの操縦に慣れ試合はどんどん白熱して面白くなっていった。


【動画】市川中フォー!Kチーム。2号機が3点エリアを狙ったのだが、惜しくも初戦敗退 【動画】東中Cチームの1号機は、パンタグラフ式のアームで3点ポールにリングをさした。アイデア倒れ賞を受賞した 【動画】東中Dチームの1号機が10点ポールにリングをさした瞬間、会場から大きな歓声があがった

 2回戦で一番盛り上がったのは、東中Dチーム VS 八戸高専の試合だった。

 八戸高専は、今回初めてこの大会に招待された。八戸高専チームはオープン枠の参加で、試合に勝っても3回戦に進むことはできない。だが、東中Dチームメンバーは、もちろん実力で勝って3回戦に進出するつもりで試合に臨んでいた。その意気込みは、1回戦の試合内容からも見て取れる。

 対する八戸高専チームは、試合開始直後から、明らかに苦戦していた。というのは、中学生達のロボットは有線コントロールだが、高専チームのロボットは赤外線通信で操縦していたからだ。会場になっているホールは3階までの吹き抜けで、しかも競技コート周辺の観客はフラッシュをたいて写真を撮影している。この環境でぶっつけ本番でロボットを動かすのは、厳しかっただろう。

 試合中盤、東中Dチーム1号機が10点ポールにリングをさそうとした瞬間、八戸高専1号機がスパっと空を切って釣り竿を伸ばし、妨害した。

 競技ルールでは、相手陣地にロボットを乗り入れるのは禁止されているが、空中で邪魔をすることは許可されている。従って、ルール違反ではない。中学生チームは、そこまで機能を作り込む余裕はなかったのだろう。相手ロボットの動きを妨害する装置を搭載しているロボットはいなかった。

 この思いがけない妨害装置に対して、解説者からも観客からも「さすが、高専チーム!」という驚きの声が起こった。

 Dチームは10点ポールの得点こそ妨害されたものの、ターンテーブル上と1点エリアの得点で着実にポイントを上げて試合に勝った。

 高専チームのロボットは、「結構、本気で勝つつもりで製作してきました」と畠山さん(機械工学科4年)がいうように、ロボットに搭載されている技術や機体の完成度は高かった。「来年は、ちゃんと勝てるように頑張ります」と畑山さんが語った。


八戸高専のロボット。大学ロボコンの技術を試験的に取り入れてみたという 八戸高専2号機。エアシリンダーでハンドの開閉を行なっている 【動画】八戸高専1号機が遠方から釣り竿を伸ばして、東中Dチーム1号機の10点ゲットを妨害した

 Aブロックを勝ち上がり準決勝に進んだのは、大館中学校の3年2組チームと東中学のDチームだった。

 両チームとも着実に1点を積み重ねて勝ち残ってきたチームだ。1点エリアだけで得点をあげてゲームに勝つためには、ロボットの小回りが効くことと、オペレーターが確実に操縦することが大切になる。

 特に3年2組チームの1号機は、ロボットの前面に食パンを並べたような形状で、その安定した形と横幅を活かしてたくさんのリングを一気に運んでいた。

 対するDチームは、2台のロボットのコンビネーションが見事だった。2号機が複数のリングを運ぶと、ぬいぐるみ型の小さな1号機がコート上に散らばったリングを集めて回っていた。

 両チームともいいペースで得点を重ねていたが、3年2組チームの1号機オペレータが2号機のロボットを踏みつぶすというアクシデントが起きた。2号機はこのままリタイヤか? と誰もが思ったが、タイヤが外れた状態のまま競技を続行していた。

 3分間の試合が終わった時、両コート上のリングは全て1点ポイントゾーンに集まっていた。同点だ。ルールでは、同点の場合は、高得点エリアにリングがある方を優勢とすると定められているが、この場合は完全にイーブンである。

 よって、勝敗はじゃんけんで決めることとなった。この代表者じゃんけんがまた白熱し、あいこに次ぐあいこ。大いに盛り上がる中、6回目でようやくDチームの勝利が決定した。


3年2組チームの1号機は、一気に大量のリングを押すパワーを持っている 【動画】準決勝戦の後半、3年2組チームにアクシデント発生! オペレータが死角に入った味方ロボットを踏みつぶしてしまった 【動画】東中学Dチームは、両ロボットのコンビネーションがとてもよかった

 一方、Bブロックの準決勝は、誰もが今大会の事実上の決勝戦と認める好カードだった。勝ち上がってきたのは、2回戦から出場の小中野中A・Sチームと八戸高専を破って勢いをつけた東中Dチームだ。

 A・Sチームはロボットの運動性能もさることながら、今大会で一番戦略の立て方がうまかった。

 前述のように今大会、3点狙いでロボットを作ってきたにもかかわらず、1回戦で1点狙いのロボットに敗れたチームはいくつもあった。そうしたチームに共通していたのは、3点を狙うことだけに主眼を置いていたことだろう。

 A・Sチームは、2台のロボット両方が3点エリアを狙う機能を持っているが、試合開始直後は、まず1点エリアに一気にリングを集めていた。1点エリアで確実に点を上げてから、コート内に散らばったリングを拾って3点エリアで得点を追加していたのだ。

 これにより、操縦ミスで3点ゴールを思うように決められなかったとしても、ある程度の点数は確保できる。少なくとも、3点ゴールを決めたにもかかわらず、1点ロボットに負けるという可能性は格段に減る。

 そうした戦法で、A・Sチームは2回戦、3回戦を高得点で圧勝してきた。

 一方の東中Dチームは、1号機が10点を狙うロボット、2号機が1点狙いのロボットと役割分担をしていた。東中Dチームチームの戦術は、1号機がアームのコンベアにリングを引っかけて高得点を狙う。1号機がターンテーブルに向かっている間に、2号機が1点エリアにリングを運んでいた。

 この方式だと、最初の得点をあげるまでに時間がかかるのが難点だ。1、2回戦は試合時間が2分と短いこともあって、あまり得点が伸びなかった。だが、準決勝からは試合時間が3分間と長くなったことと、トーナメントを勝ち上がるにつれて、1号機オペレータの操縦技術があがり、スムースに10点ポールにリングを落とすようになった。

 両チームのロボットとも、10点ポールを狙う実力はある。となると、勝敗を分ける決めては、どちらがより早く多く10点ポールにリングを決めるかという点に掛かってくる。

 準決勝でも、小中野中A・Sチームは1点エリアにリングを集め、序盤で得点をリードした。だが、その間に東中Dチームチーム1号機が10ポイントを決めた。小中野中A・Sチームは2台のロボットが協力して3点エリアで得点を決めていった。試合終了間際、A・Sチーム2号機がターンテーブルにリングを乗せようとするのを、Dチーム2号機がテーブルを回転させて防御するなど、緊迫したバトルが繰り広げられた。

 A・Sチームも2台が協調して懸命に追い上げたが、10点ポールにリングを4つ掛けられては、逆転することが不可能だった。A・Sチームには、技術賞が贈られた。


【動画】小中野中A・Sチームは1点エリアで得点を確保した後、高得点を追加する戦術をとった 【動画】東中Dチーム1号機が、10点ポールで大量得点をゲット。2号機も確実に1点エリアにリングを集めていた 【動画】A・Sチームは2台のロボットが協調してリングを掴むシーンもあった。Dチーム2号機がターンテーブルを回転させて、A・Sチームの追加点を阻んだ

 決勝戦は、東中のAチーム対Dチームの同校対決となった。試合前にAチームのオペレータに意気込みを尋ねると、「……勝てる気がしません」「潔く負けたいと思います」というコメントだった。

 ここまでの戦績を見ていれば、Dチームのロボットにトラブルが発生しない限り勝機がない、と考えるのもしかたないだろう。試合開始直後、Dチーム1号機が一瞬動かなかったので、「もしや?」と思ったが、オペレータの動作チェック後、無事に起動した。

 試合結果は、おおかたの予想どおり28対63の大差でDチームが勝利した。

 Aチームのロボットは、1点を確実に上げるコンセプトで製作しているのだから、高機能ロボットが実力を発揮した場合、勝利できないのも当然といえる。だが、Aチームが自分達が考えたコンセプトで確実に動くロボットを作り、そのロボットの性能の範囲でよい成績を修めたことは評価に値する。

 ロボットコンテストは、高い技術にチャレンジすることも一つの目標だが、同時に自分たちの持つ技術の範囲で最高の成績を修めることも同様に意味がある。決勝戦に対照的なロボットが勝ち進み、4体のロボットがそれぞれの性能を活かした試合をしたことが何よりよかったと思う。Dチームは優勝とともに、特別賞としてロボコン大賞を受賞した。


【動画】試合開始直後、Dチーム1号機が起動せずに一瞬会場に緊張が走った。無事に動き、決勝戦でも着実に高得点をあげた 【動画】Aチームのロボットも、2台が協力して30個あるリングのうち28個をゴールに運んだ 優勝、準優勝と好成績を収めた東中学のメンバー

中学生ロボコンは八戸市で始まった

中学生ロボコンの生みの親、下山大先生(八戸市立東中学校教諭)
 八戸市中学生ロボットコンテストは、今年で第6回目を迎えたが、その前身となった八戸市立第三中学ロボットコンテストは1991年に始まっている。第1回高専ロボコンが1988年、大学ロボコンの開始は1991年だ。当時、中学校でロボットコンテストを行なうというのが、いかに早かったかおわかりいただけるだろう。

 八戸市立第三中学校でロボットコンテストを開催したのは、現在、八戸市立東中学で教鞭をとる下山大(しもやまゆたか)先生だ。

 下山先生は、1984年から第三中学で模型コンテストを開催していた。これは個人参加のコンテストだった。その後、1991年に三年生の卒業製作を兼ねて、チーム対抗形式で楽しめるコンテストとして、ロボットコンテストを考案した。

 下山先生は、「最近のモノ作りは、しっかりしたキットでマニュアルもちゃんとしている。それでは、モノを作る過程の創意工夫を体験できない」という。

 また、学校の授業では先生が答えを知っていて、生徒を正解に導く。だが、コンテストに出場するロボット製作は、指導する先生方も正解を知らないから、生徒と一緒に考えなくてはならない。

 だから、ロボット製作の過程は、チームメイトと何度も話し合い、課題達成のアプローチの手段を探り、材料の選定から全て試行錯誤が必要となる。それは、通常の授業では体験できない貴重な経験となるという。

 第三中学のロボットコンテストは10年間続いた。その間に、全国の学校や自治会から視察がきたり、下山先生が講演に呼ばれたりして、中学生やジュニアのロボコンが全国的に広がった。

 八戸市でも、下山先生が転任で第三中学校を離れたことがきっかけになり、それまで校内のロボットコンテストだったものが、八戸市中学生ロボットコンテストに発展した。

 コンテストの会場を賑やかなショッピングセンターにしたのは、多くの観客に中学生達の研究成果であるロボットを見てもらい、一緒に楽しんで欲しいからだという。特に、幼稚園や小学生の子ども達に間近で見てもらい、中学生になったら自分もロボットを作りたいという夢を持ってほしいという願いが込められている。

 もちろん、参加する生徒達にとっても、大勢の観客から声援を受けて試合をするのは、何よりも励みになるだろう。

 そして、今年はオープン参加として八戸高専からチームを招いた。これも、下山先生が高専ロボコン委員会と交流する中から生まれたアイデアだ。

 小さな子ども達が中学生ロボコンに憧れるように、中学生たちも高専の学生を目標に発憤して欲しかったという。その願い通り、東中Dチームが見事に八戸高専チームに勝利するロボットを製作してきた。Dチームの加藤君は、「優勝したことも嬉しいが、高専チームに勝てたことが一番嬉しかった」と語っていた。

 今大会の優勝チームメンバーには、八戸高専への進学が決定している生徒もいる。来年以降の大会では、中学生ロボットコンテストの経験者が後輩達のよき目標となるために、大会に参加してくるかもしれない。


URL
  八戸市中学校ロボットコンテスト
  http://www.hirozumi.com/hitoshi/hachi-robo/


( 三月兎 )
2008/03/06 17:07

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