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国際デザインコンペティション2007「ROBOT2」レポート
~世界26カ国から252点の応募。デザイナーが考える次世代ロボットとは


 2008年2月14日、15日にグランキューブ大阪において、国際デザインコンペティション2007「新商品開発ワークショップ」が開催された。主催は財団法人国際デザイン交流会。

 財団法人国際デザイン交流協会(JDF)は、あらゆるジャンルのデザインに関する国際交流を推進し、産業及び文化の健全な発展と人類福祉の向上に寄与することを目的として、1981年に設立された。

 日本から世界へ向けて、時代に即したデザインを発信するとともに、社会一般へデザインに対する理解と関心を深めることを目的に、1983年、第1回国際デザインコンペティションを実施した。

 国際デザインコンペティションは、デザインのビジネスへの活用をより一層進めるため、産業クラスター、企業群、デザイン団体等と連携してテーマを設定し、優秀提案の選定・表彰を行なっている。第10回までは隔年で、2003年以降は毎年コンペティションを開催し今回で15回目を迎えた。

 優秀提案についてはワークショップを開催して、新商品開発のためのデザインとビジネスのコーディネートを行ない、新商品のモデル試作・販路開拓の支援を行なっている。

 国際デザインコンペティション2007は、昨年に引き続きテーマが“ロボット”だった。

 ロボット技術は、日本だけでなく世界でも注目度が高い次世代の産業だ。日常生活に密着したサービス産業だけではなく、レスキュー活動のほか、海洋汚染や地球温暖化などさまざまな環境問題も、ロボット技術で解決されることが期待されている。

 デザインとは、単に製品の外装の形や色、ユーザーインターフェイスのことを指すのでなない。上記に述べたような社会や環境問題の解決手段を具現化することが、デザイナーの本質である。

 そういう意味でも、まだ社会に存在していない「ROBOT」は、デザイナーにとって、興味深いテーマなのだろう。昨年「ROBOT」をテーマにコンペティションを開催し、424点の応募があった。国際デザインコンペティションでは、これまで同じテーマを連続して扱ったことはなかったが、「ROBOT」への反響が大きかったため、今年も引き続きテーマを「ROBOT2」としたという。


 「ROBOT2」は下記の3つののサブテーマが設定され、テーマに沿ったデザインの募集をした。

・地球温暖化、環境汚染、人口・食料問題、代替エネルギーなどの諸課題に向き合い、解決に繋がるデザイン提案
・人と社会との間で生ずる、移動、安全安心などの諸課題に対し、特にユニバーサルデザインの観点から解決すべきデザイン提案
・個人の生活や暮らしの中においても存在するさまざまな課題、コミュニケーションや健康、自己実現など楽しく充実した生活実現に向けたデザイン提案

 今回は26カ国から252点の応募があった。昨年度と比較して応募点数が減った理由は、今まで無料だったコンペティション参加費を20ドルに設定したことがある。有料化したことで、レベルの高い作品が集まったという。

 昨年11月末に、一次審査会があり優秀作品25点が決定した。その中から特に評価の高かった18作品の提案者を招聘して、2月14日に最終審査会を兼ねた公開プレゼンテーションを実施し、内閣総理大臣賞をはじめ各賞が決定し、表彰式が行なわれた。

 大賞の内閣大臣賞は、Edilson Ueda氏(ブラジル)の“Mobile Eco-Robot”が受賞した。

 “Mobile Eco-Robot”は、海の汚染領域を発見し、海水を清浄して有毒廃棄物を保管するロボットだ。国際協力のもと、RTを活用し地球の将来を救う提案だった。

 ロボットは、汚染された海水を回収して浄化し水産養殖環境の改善と、ポンプを利用して深海から海底の水を汲み上げて循環し、海上温度の上昇低減に取り組む。

 ロボットの各ユニットには、水の状態を分析するセンサーを搭載し、データをターミナルステーションに送る。そのデータをもとに、衛星を使いロボットを汚染区域に移動して海水を浄化する。

 汚染された海水は、フィルターシステムを通じて浄化し海に戻す。また、有害な廃棄物はロボットのタンク内に保管する。動力は太陽エネルギーと、海底から取り込んだ有機廃棄物をバイオエネルギーとして使う。

 Edilson Ueda氏は、過去に3回の入賞経験があり、今回初めて大賞を受賞した。現在は千葉大学大学院工学研究科デザイン科学専攻で、製品デザイン研究室准教授としてエコロジーデザイン及びサステイナブルデザインの研究をしている。

 Edilson Ueda氏にとって、「ロボットは、人間ができない仕事などの役に立ち、人間をサポートするもの」という。ロボットを作るだけでも環境に影響を与えるから、技術と環境問題をどうマッチングさせるかをテーマとした。そのために、自然エネルギーの活用に注目したという。

 ロボットが太陽の動きに合わせて移動すれば、太陽エネルギーを無駄なく使える。またGPSを使って、台風があるところ避けて動いたり、海流を利用する、生ゴミをバイオエネルギーに変換するなど、システム全般に自然エネルギーを利用するという提案だ。

 審査委員長の川崎和男氏(デザインデレクター/医学博士 大阪大学大学院教授)は、「提案の規模が壮大なことと、地球環境に関する考え方が丁寧だった」点を評価し、大賞に決定したという。


大賞の内閣大臣賞を受賞した“Mobile Eco-Robot”。Edilson Ueda氏(ブラジル) Edilson Ueda氏(千葉大学大学院工学研究科デザイン科学専攻 製品デザイン研究室准教授) “Mobile Eco-Robot”の模型。ロボットのサイズは25平方m

海底から水を吸い上げ、有毒廃棄物をタンクに取り込み水を浄化する ロボットはステーションで管理し、衛星を通じて汚染されている海域に移動して浄化する ロボットの動力源は太陽エネルギーと、海底から吸い上げた有機廃棄物をバイオエネルギーに変換して使用する

 他入賞作品は次の通り。

・金賞 (経済産業大臣賞)“C-BOT -建物構造を診断するバイオニック・クライミング・ロボット-”(Niklas Galler氏:ドイツ)
・銀賞 (大阪府知事賞)“luna robot -地震時に生存者を単独で捜索し、レスキュー隊が到着するまで付き添いができるロボット-”(le li氏:中国)
・銀賞 (大阪市長賞)“Hercules -ショッピングカート・ロボット-”(Ying-Chih Chen氏:台湾)
・銅賞 (協会会長賞)“L.A.D.R -世界最新のテクノロジーを駆使した生命援助を目的とする全世界の消防士のためのロボット-”(Carlos Suarez氏:米国)
・銅賞 (協会会長賞)“OSP robot -海洋環境を石油流出から保護するシステムロボット-”(Ji Hoon Kim氏:韓国)


【金賞】“C-BOT -建物構造を診断するバイオニック・クライミング・ロボット-” C-BOTの模型 【銀賞】“luna robot -地震時に生存者を単独で捜索し、レスキュー隊が到着するまで付き添いができるロボット-”

【銀賞】“Hercules -ショッピングカート・ロボット-” 【銅賞】“L.A.D.R -世界最新のテクノロジーを駆使した生命援助を目的とする全世界の消防士のためのロボット-” 【銅賞】“OSP robot -海洋環境を石油流出から保護するシステムロボット-”

 川崎氏は、「プレゼン後に審査員が提案者に質問したことは、アピールが不足している部分を補うようにヒントを与えたつもりだった。だが、質問の意図が汲めないのか、残念な回答が返ってくることが多かった」という。

 例えば、韓国のkyoung-ho ha氏の提案は、小型のロボットをヘリコプターで上空からばらまき、ロボットに搭載したセンサーで救助者を発見するというアイデアだ。

 審査員が、ロボットの材質と、雪山に蒔いたロボットの回収について質問したところ、kyoung-ho ha氏の回答は「材質は、軽量なアルミ。ロボットよりも人命が大切なので使い捨てにする」だった。

 人命を重視すると同時に、地球環境を考えて自然に返る素材を提案するという視点がないのが惜しかったと、川崎氏はいう。

 また、入賞した“OSP robot”の他にも海上の流出石油を回収するロボットの提案があったが、「提案されたロボットよりも、日本の技術は既に進んでいるが、知っているか?」という質問に対しては、両提案者とも「知らない」という回答だった。

 これに対して川崎氏は、デザインを提案する前に課題に対して現状の技術がどのくらい対応しているのか事前の調査が不足している点を指摘した。

 同時に、「日本のロボット技術は世界一だと言われているが、デザイナーが具体的に日本のロボット技術のレベルや現状を知らない。それは、日本側の情報発信が不足している面もあるのではないか?」という苦言も呈している。

 そうした点から考えると、ロボット技術に関する情報を得やすい日本人デザイナーが、今回一人も入賞していないのが残念だ。


“robot_Melt Snow Ball-雪山での遭難者を探索し救助をサポートするロボット-”(kyoung-ho ha氏:韓国) “SquidS -経済や生活に大きな影響をおよぼす海上石油流出問題へのチャレンジ-”(Xin Li氏:中国)

 次世代ロボットの実用化が期待されて久しいが、まだ市場が形成されていないのが現状だ。ベンチャー企業や大学研究室から成果発表は多いが、デザインが後回しで要素技術をアピールしロボットが相変わらず目立つ。

 技術者や研究者がロボットを作る時に、テクノロジー面からのアプローチになるのは当然だが、次世代ロボットが実用化される時、デザインはユーザーや市場に対して重要な意味を持つ。

 産業用ロボットは、機能と技術が最優先の使いやすい機械であれば市場が開けるが、一般消費者は、技術的に優れたツールであっても、見た目に無骨な機械を見たとき、それを自分の身近に置くことをそもそも想像しない。

 技術者とデザイナーでは、着眼点も発想も異なるのは、今回のコンペティションの提案を見てもよくわかる。ロボットの研究や開発に携わる企業や技術者が、ロボットができてからデザインを検討するのではなく、開発初期からデザイナーと連携し、ユーザーや市場が求めるロボットを機能や外観だけではなくソフト面を含めてデザインしていくようにならなくては、我々の生活の中にロボットが登場する日はまだまだ遠いだろう。デザイナーが、デザインによって技術と市場の間にあるさまざまな溝を埋めてくれることを期待している。


URL
  国際デザイン交流会
  http://www.jdf.or.jp/article/index.html


( 三月兎 )
2008/02/25 17:09

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