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ツインリンクもてぎにてASIMOが新年の挨拶


ASIMO Cafeにて。ドリンクを運ぶASIMO
 ホンダのサーキットのひとつである栃木県ツインリンクもてぎには、ASIMOが常駐する施設「ファンファンラボ」がある。常時ASIMOのステージイベントが開催されており、1月1日から3日までの三が日は、その新春仕様の特別版「2008 New Year Festival」が行なわれた。その模様をリポートする。

 ファンファンラボは、キッズ向けの「乗って・走って・楽しめる」体験型施設。館内は大きく、モビリティラボ、ドリームスタジオ、モビリティワールド、そしてASIMOホームとなっている。

 モビリティラボでは、子供でも乗れる2輪のライディングシミュレーター、4輪のドライビングシミュレーターがあるほか、クルマの内部構造や技術の紹介、環境問題、ホンダ製小型ジェット機の展示などが行なわれている。

 ドリームスタジオは、パソコンからプリントアウトしたデジタルペーパークラフトでASIMOやレーシングカーなどを作れる工作教室。モビリティワールドはキッズ向けで、足こぎ式のファンカートや、電動式のファンビークルに乗れるコーナー。また、それらのカートを自分の手で組み立てたり、パーツ交換したりといったことも可能だ。組み立てとドライビングの両方を楽しめるので、メカニックとテストドライバー気分を味わえるというわけだ。

 また、現在は「2009年 鈴鹿F1GP再開記念 鈴鹿F1GP写真展」が今月20日まで開催中。写真展のスペースには、2台のF1マシンも展示されている。1台はかのアイルトン・セナが1992年に乗ったマールボロ・マクラーレン・ホンダ「MP4/7」(カーナンバー1)で、もう1台は佐藤琢磨が2004年に乗り込んで日本人ドライバーとして14年ぶりの2人目となる3位表彰台を果たした時のB・A・R ホンダ「006」(カーナンバー10)。そのほか、ASIMOグッズも売っているお土産コーナーもある。


ファンファンラボ外観。英語だと、FAN FUN LAB 建物に入ってすぐ右手に、ファンファンラボ限定のASIMOフォトグラファー(プリクラ) ASIMOフォトグラファーは1回400円

モビリティラボのシミュレーター モビリティラボには乗用車のこうした展示物も ドリームスタジオ

モビリティワールド モビリティワールドでは、ファンカートなどに乗れる

1月20日まで開催の「2009年 鈴鹿F1GP再開記念 鈴鹿F1GP写真展」 お土産コーナー

 そしてASIMOが活躍するスペースが、館内左手奥にあるASIMOホームだ。イベントが行なわれるステージがあり、ASIMOと一緒に子供たちが飛んだり跳ねたり体操ができるよう、床のシートに座って見るスタイルになっている。

 また、20段から30段ほどの階段状になった腰掛け用のスペースも設けられている。ASIMOは身長が120cmなので、後方からでも見やすいよう、角度がつけられているのだ。そのほかにも、ASIMOホームにはホンダが開発してきた歴代のロボットたちの展示や、三が日や夏休みなど特別な時期にのみ開催される「ASIMO Cafe」などもある。


左手に歴代ロボットが並び、奥にASIMOホームのステージ ASIMOホーム。中央に大型ビジョンがあり、その手前にASIMOが昇降するステージがある 歴代ロボットたちの手前の黒いシートがステージ前のシート

階段状の腰掛け。詰めて座れるよう、座席は設けられていない ASIMO Cafe。カウンターや子供用イス(死角になっている)は厚紙でできている

 ASIMOホームで毎日行なわれているイベントのひとつが、ASIMOがそのパフォーマンスを見せてくれる「ASIMOスーパーライブ」だ。なかでも、土日および祝日は、2005年12月13日にデビューした新型ASIMOのデモンストレーションが実施されるスペシャルイベントとなっている(2007年12月11日に発表された実用機能進化ASIMOによる新デモンストレーションが導入されるのは、もう少し先になる模様)。さらに、そのスペシャルイベントの中でも、今回の三が日や、春休み、夏休みなど多くの子供たちが訪れる時期は、イベント内容を季節に合わせて若干変更したスペシャルバージョンが開催される形だ。

 この三が日のニューイヤーバージョンは、ASIMOが「明けましておめでとうございます」と挨拶しながら登場する。そのあとの内容は、常時のものと同じだ。歩く速度(歩幅)を連続して変えて見せたり、時速6km/hで走ったり、ボールを蹴ったり、トレーに飲み物を載せて運んだりと、新型になって備わった機能を次々と披露してくれる。それらのアクションを披露すると拍手や、「おー」という感動の声が上がるが、コミカルさとキュートさで笑い声が起きるのが、走り終わった後のその場ターン。その場で足踏みする形で、全身をエッサホイサという感じで軽快に動かして180度ターンするのだが、これが男性の感性でも結構かわいく見える。子供たちや親子連れのお母さんたちからは「わー」という声が出るほどだ(どの会場でいつ見ても、ASIMOのその場ターンは非常にウケがいい)。


【動画】新年の挨拶をしながら登場するASIMO トレーを運んできたところ ダンスの最中

 スーパーライブのあと一休みして、同じステージで行なわれるイベントが「ASIMOと遊ぼう」だ。キッズ向けのイベントで(大人も一緒に遊んでも構わないが)、ASIMOが出題する○×クイズに答えたり、「ASIMO体操」を一緒にしたりするという内容だ。このイベントも、三が日はニューイヤーバージョンとなっており、「明けましておめでとうございます」の挨拶をしながらASIMOが登場した。そして、まず階段を昇るパフォーマンスを見せてくれるというわけだ。

 一見すると、なんてことはないキッズおよび親子向けのイベントに見えるが、実はこの「ASIMOと遊ぼう」はとても貴重なASIMOのステージイベント。どこら辺が貴重かというと、2000年にデビューした初代ASIMOが登場するのである(機能的には、2004年時点のものにアップデートされているものと思われる)。珍しくも何ともないと思うかも知れないが、実は2008年現在、初代ASIMOが稼働しているのはツインリンクもてぎと鈴鹿サーキットのみ。ASIMOは、ほかにも東京のHondaウェルカムプラザ青山と、東京・お台場の日本科学未来館に常駐しており、また1月27日までは東京・上野の国立科学博物館の「大ロボット博」にも出演しているなど、各地で活動しているがすべて新型となっている。ファンファンラボは、今となっては初代ASIMOを見られる数少ない施設なのだ。

 初代と新型を見比べると、細部のデザインが微妙に異なる。初代はボディに角がある感じでお腹が平ら。一方の新型はお腹の前面がアーチ型になっており、丸みがある。そこが目立つ大きな違いだ。また、照明の加減も多少あるとは思われるが、カラーリングもわずかに違うように見受けられる。どちらもホワイト系なのだが、初代は系統的にややクリーム色っぽく、やや暖色系に寄ったホワイトに見えた。新型はもう少し青いというか、純粋にホワイトという感じである(活動期間が長いので、多少照明によるカラーリングの変化、ということも考えられるのだが)。

 そして大きく異なるのが、音声。当たり前といえば当たり前だが、新型の方がより発音が自然な感じになっているし、声の質も若干異なっているようである。先に紹介しているスーパーライブの映像と「ASIMOと遊ぼう」の映像を見聞きして、その違いをぜひ比較してみてほしい。

 なお、「ASIMOと遊ぼう」で驚かされるのが、ASIMOの子供たちに対する影響力。子供たちが、まったく恥ずかしがったりせず、自発的に喜んで体操を始めてしまうのだ。実際に話を聞いてみたところ、普段は運動が苦手なのと恥ずかしがり屋なのがあってまず踊らないという子もいたし、もう小学校6年生なので普段なら恥ずかしがってこういうことはしないという年ごろの子もいた。そうした子たちも、ASIMOは踊らせてしまうのだからすごい。家庭での使用も前提として開発が進められているASIMOだけに、こうして子供たちが楽しそうに一緒に遊んでいるのを初めて見たときは、開発スタッフも相当嬉しかったのではないだろうか。


【動画】「ASIMOと遊ぼう」の前半。新春の挨拶をしながら初代ASIMOが登場 【動画】「ASIMOと遊ぼう」の後半。ステージ上で初代ASIMOが体操のお手本を見せる

 「ASIMOと遊ぼう」のあとは、開催回数が少なく、1回の参加人数も3組と非常にレア度の高いイベント「ASIMO Cafe」だ。スーパーライブと「ASIMOと遊ぼう」が行なわれたステージのすぐ隣がASIMO Cafeのスペースである。お客さん2名がオーダーしたドリンクを、ASIMOがスタッフから受け取ってトレーで運び、お客さんの目の前に置いてくれるというデリバリーサービスをしてくれる内容だ。サーボの音が聞こえるほどかなり間近で動作するASIMOを見られるのが特徴。ここでも登場は新年の挨拶をしながらで、ニューイヤーバージョンである。


【動画】ASIMO Cafe。挨拶しながらの登場 【動画】注文を受けてドリンクを運ぶところ

 そのほかASIMO関連では、ホンダがヒューマノイドロボット開発の過程で研究・開発用に造られたロボットたちの展示コーナーがある。エントランスから、ステージまでの途中に、1986年に開発されたE0から、ASIMO(2005年の新型)まで全11体が展示されている。

 最初のEOは、二足歩行原理の研究用として造られ、腰から下のみというデザインだ。一歩30秒の静歩行で直線移動ができた。左右のバランスは、おもりをスライドして取る方法が採用されている。アクチュエーターの構成は、DCサーボモーター+ボールスクリュー(減速機)。センサーは接地検出用ロードセルが4つ。自由度は片足に3個の計6個。身長は101.3cm、体重は16.5kg。

 人間が行なっている動歩行を実現するために、その研究目的で1987年から1991年にかけて開発されたのが、E1からE3までの3体だ。基本的に、腰の上に箱状の胴体があるというデザインになっている。

 E1は左右の動きが初めてつき、時速0.25kmで静歩行を行なった。自由度は、片足に6個で、計12個が備えられている。足(足首)、ヒザ、股の前後方向で3、足と股の左右方向で2、足の回転で1となっている。アクチュエーターの構成は、DCサーボモーターに加えて、初めてハーモニック減速機を採用。センサーはE0同様に接地検出用ロードセルが4個だ。身長は128.8cm、体重は67.7kg。

 E2は動歩行を初めて実現し、時速1.2km/hで歩けるのが特徴。自由度数、アクチュエーター構成、センサー構成はE1と変わらない。身長は132cm、体重は67.7kg。

 E3は、脚部の作りがパイプ状からASIMOにも通じる直方体をつなぎ合わせた形になったのがデザイン状の特徴。かかとにショックアブソーバーが備えられ、人と同等の時速3km/hで歩けるようになった点も大きな特徴だ。自由度数とアクチュエーター構成に変わりはないが、センサーが強化された。傾斜計、Gセンサー、そして足首の関節にかかる力を測る6軸力センサーが備えられている。身長は136.3cm、体重は86kg。


E0 E1

E2 E3

 続いて、2足歩行の基本機能の完成から、歩行安定化技術の確立に至ったのが、1991年から1993年にかけて造られたE4からE6までの3体だ。基本的に、腰の上に箱が乗っているデザインだが、E3までよりもより大型化しているのが特徴。これらの機体で、安定歩行を実現する3つの姿勢制御として、床反力制御、目標ZMP制御、着地位置制御が開発されている。

 E4は、ひざ下を40cmに延長し、人の早足とほぼ同じ時速4.7km/hを実現した。自由度数とアクチュエーター構成はこれまでと同じだが、センサーはさらに強化。E3のものに加えて、視覚カメラも装備されたのである。身長は159.5cm、体重は150kgと一気に重量が増加した。

 E5は、宇宙人のようなデザインに見えるが、初めて自在歩行を実現した。自由度数、アクチュエーターとセンサーの構成はE4と同様。身長は173cmで、体重は150kg。

 E6は、階段の昇り降り、斜面、またぎなどの自在歩行時のバランスを自分でコントロールできるようになった点が特徴。自由度数、アクチュエーターとセンサーの構成は変化なし。身長が174.3cmとわずかに高くなり、体重は150kgのまま。


E4 E5 E6

 そしてここからいよいよ胴体と腕も備わり、完全な人型となるPシリーズになる。1993年から1997年にかけてP1からP3までが開発された。

 P1は次のP2以降に見られる外装がまだ備わっておらず、メカがむき出しになっているのが外見上のポイント。スイッチのオン・オフ、扉の取ってつかみ、ものをつかんでの運搬などを実現。腕と脚の協調動作の研究も行なわれた。まだCPUは内蔵されていない。自由度は、これまでの脚部の12に加え、腕部が片腕で7の計14、手が片手で2の計4。全身で合計30自由度になった。アクチュエーターとセンサーの構成は変化なし。身長は191.5cmと巨大になり、体重も175kgと増加。

 P2は、1996年12月に一般に発表された、世界初の人間型自立2足歩行ロボット。衝撃的な発表だったことから、覚えている人も多いことだろう。ワイヤレス化を図り、胴体部にCPU、モータードライブ、バッテリ、無線機器など必要な機器をすべて内蔵しているのが特徴だ。自在歩行、階段昇降、台車を押すといった動作をワイヤレスかつ自動で実現している。自由度の数、アクチュエーターの構成は同じだが、センサー構成はさらに強化。手首にも関節にかかる力を計測する6軸センサーが備えられた。身長は182cmと低くなったが、体重は210kgとなっている。

 さらにASIMOに近づいたのがP3だ。1997年9月に完成。小型・軽量をポイントに開発が進められ、部品の材質の見直し、分散制御の採用などにより身長160cm、体重130kgとかなりASIMOに近づいている。また、自由度が変更され、手が片手で1の計2となった。


 そして最後がASIMOだ。展示されているのは、胴体部の形状が平らな、2000年12月に発表された初代。自由度は頭が2、手が両手で2、腕が両腕で10、脚が両足で12の計26自由度となっている。

 アクチュエーター構成は、DCサーボモーター+ハーモニック減速機+駆動ECU。センサーは足部に6軸力センサー、胴体部にジャイロ・加速度センサーとなっている。身長は120cm、体重は52kgだ。なお、「ASIMOと遊ぼう」イベントで活躍中の従来型ASIMOとは若干デザインが異なり、背中のバックパックが少し大きく、色も濃いグレーで、おなかのHONDAロゴの位置も異なる。また、脚部の内側、ヒザ関節を挟むようにした上下の部分にも放熱用と思われるスリットが刻まれているなど、微妙にデザインが違うようだ。

 そのほか、歴代ロボットたちの展示スペースの正面の壁には、ASIMOのデザインに関する読み物的な話がまとめられている。ASIMOのデザインモチーフがNASAの宇宙飛行士であったり、数々のデザインとカラーリングが提案されたりしたことなど、貴重な話を図解入りで紹介。数々のデザイン案の中からランドセルを背負った小学生のようなキュート&フレンドリー方向のA案と、モダン&ニュートラル方向の現在のASIMOに近いB案が選ばれ、それをミックスして生まれたのがASIMOというわけである。

 このようにファンファンラボは、ASIMOと遊べるだけでなく、ASIMOとホンダの歴代ロボットたちのことも学べる施設でもあるのだ。


P1 P2

P3 ASIMO(初代)

 なお、ファンファンラボは2月16日にリニューアルオープンすることになっており、1月末から改修工事に入る予定。現行の館内構成で遊べるのはあとわずかとなっている(リニューアル後もASIMOホームは設けられる)。常磐道は最近になって新たにETC専用の水戸北インターがオープンしたので、そこからならツインリンクもてぎの南ゲート(北ゲートもある)までほぼ一本道で30分ほどだ。首都圏からも高速道路が空いてさえいれば、トータルで2時間前後となっているので、ASIMOやロボット好きな人たちは、ぜひ足を運んでもらいたい。

 ファンファンラボのそばには広場もあり、身体を動かして遊んだりすることも可能。サーキットというとモータースポーツファンのみの場に聞こえるが、そうではない人でも親子で楽しめるので、ぜひテーマパークのひとつとして、今後は遊びに行く先の候補のひとつに加えてみてほしい。


ファンファンラボからすぐのレストランなどがある施設ハローウッズの前は広場になっている 自然に囲まれており空気もおいしい

南ゲート(坂をやや下ったところから写したため、ゲート上部しか見えない) 北ゲート

URL
  ASIMO公式サイト
  http://www.honda.co.jp/ASIMO/
  ツインリンクもてぎ
  http://www.mobilityland.co.jp/motegi/
  ファンファンラボ
  http://www.mobilityland.co.jp/fanfunlab/

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( デイビー日高 )
2008/01/18 22:00

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