12月22日、福岡市早良区百道浜のロボスクエアで、「世界一の癒しロボット『パロ』の魅力とロボットセラピー」と題した講演会があった。講演者は、パロの開発者で産業技術総合研究所知能システム研究部門所属の柴田崇徳氏。
言うまでもなく柴田氏はパロの開発者であり、講演会はパロについて開発者ならではの話を聞くことができた。
まず講演会では欧米のロボットの状況を紹介。柴田氏は「日本ではロボットに親しみがあるが、欧米ではネガティブなイメージがある」「日本では人と共存するロボットの研究が盛ん」と語った。
そしてパロには二つの側面があるとして、「ペットとしてのパロ」「医療福祉に役立つ存在としてのパロ」に分けて、それぞれについて説明を行なった。
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クリスマス色に彩られたTNC放送会館内部
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ロボスクエア外観。左に見えているのが、講演会の行なわれたセミナールーム
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● ペットとしてのパロ
柴田氏は「アニマルセラピーの利点=ロボットセラピーの利点」だとして、「心理的利点(うつの改善など)・生理的利点(ストレスの減少など)・社会的利点(コミュニケーションの増加)」の3つの利点を挙げた。ただ、アニマルセラピーでは動物を使うことによる「アレルギー」「かみつきの危険」「世話の大変さ」があり、そこにパロのようなメンタルコミットロボットの必要性があるとのこと。
パロがアザラシ型になった理由だが、まず猫型のロボットを製作したが、猫をよく知る人から「何か違う」と違和感を持たれたため、あまり知られていないタテゴトアザラシの赤ちゃんをモチーフをしたという話はよく知られている。実はその他にも「ソファに座って抱っこをするとなると、ラグビーボール型の形状がいいのかな」と思ってアザラシを考えた理由があったという。
またパロは「赤ちゃんを抱っこした感覚を思い出してもらうために」、人間の赤ちゃんより少し軽めの体重で作ってあるとのこと。パロの購入者は女性が3分の2なのだそうだが、それもこんなところに理由があるのかもしれない。
犬の平均寿命は12年ぐらいなので、「(パロは)人の生活に入って10年以上使い続けられる対象であってほしい」と、パロは「10年や20年は(使い続けて)大丈夫」な体制を取っている。具体的には1年ごとに「バッテリ交換」「毛皮のクリーニング」のメンテナンスを行なうようにしている。初期の購入費用やメンテナンスにかかる費用を足しても、大型犬を飼育する費用よりは安いとのことで、この点でも「ペットとしてのパロ」は有利だと考えているようだ。
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柴田崇徳氏とパロ
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講演会の様子
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カレル・チャペック(「ロボット」の名前の生みの親)の墓前にいるパロ
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メンタルコミットロボットとはなにかについて
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猫型ロボットについての失敗からパロが生まれることになった
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世界各地でのパロの評判の紹介。なお、ブルネイからは、イスラム教国なので犬に対するイメージが悪く、「犬型ロボットを持ってこないでほしい」との要望があったそうだ
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● 福祉医療分野でのパロ
パロの医療分野での有用性についてだが、パロと触れ合うことによって(特に高齢者の)「ストレスの低減」「免疫力のアップ」「うつの改善」などの効果が期待できるという。
認知症にもパロを使うことによる効果が期待されており、実際に14名の認知症の患者でパロを使った療法を試みたところ、半分の7名に何らかの症状の改善が見られた。中でも「パロと触れ合うことが楽しい」と感じている患者ほど効果があったとのこと。
触ったりすると反応を返すパロに対して、積極的に関わろうとする行為を続けることが、認知症の改善につながったのは容易に想像できる。
また高齢者だけでなく、自閉症の子供に関してもパロを使った取り組みがなされている。
それらの取り組みもあって、現在、20カ国以上でパロが導入されているそうである。
パロのこれからについて柴田氏は、「目的によってプログラムで性格を少しずつ変えたパロを作ってみたい」「持ち運びの楽な小型のパロを製作してみたい」と語っていた。
ロボットセラピーに関してはパロが最も研究が進んでいるようで、パロの研究が「セラピストとしてのロボット」の分野を切り開いていくのかもしれない。
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柴田氏と並んで写っているのはビル・ゲイツ(お忍びで現れてパロを購入していったそうである)
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イタリアでの成果の紹介
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実際にパロを導入したケースの紹介
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高齢者対策だけでなく、自閉症児への取り組みも
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ドキュメンタリー映画「メカニカル・ラブ」のアンボ監督のインタビューを流したNHKの番組より
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講演参加者からは熱心な質問があった
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同日ロボスクエアでは、テムザックのロボットを使った「ロボスクエアのクリスマスショー」が行なわれていた(写真はクリスマスバージョンのテムザック4)
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テムザック4のマスタースレイブ操縦体験に列を作る子供たち
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■URL
パロ
http://paro.jp
ロボスクエア
http://www.robosquare.org/
( 大林憲司 )
2007/12/25 19:03
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