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夢の三大からくり展
〜田中久重の名からくり人形が久留米市に集結


 11月16日〜18日の3日間、福岡県久留米市東櫛原町のルネッサンスホテル創世において、「からくり儀右衛門の世界・夢の三大からくり展」が行なわれた。「からくり儀右衛門」こと田中久重が製作した、傑作と言われる「茶酌娘・文字書き人形・弓曳き童子」の3体のからくり人形がそろい、しかも実際に動くパフォーマンスを行なった。主催はNPO法人久留米からくり振興会と日本アフェレシス学会学術大会で、このからくり展は、9月に立ち上がったばかりのNPO法人久留米からくり振興会の設立を記念して開催された。


会場となったルネッサンスホテル創世 ホテルにあった「夢の三大からくり展」の看板 ホテルの一室に作られた会場は黒山の人だかりだった

田中久重の故郷・久留米市

 田中久重は江戸時代末期の久留米に生まれ、数々の発明品を世に出し、佐賀藩に招かれて佐賀藩精煉方(理化学研究所のようなもの)で蒸気機関車の模型やアームストロング砲の研究製作に携わった。また晩年は現在の東芝につながる田中製作所を起こしたことでも知られている。

 このからくり展では、その田中久重が実際に製作した江戸時代のからくり人形のうち、矢を弓に番えて的に当てる「弓曳き童子(弓射童子とも)」、お茶を運ぶ「茶酌娘」、筆で文字を書く「文字書き人形」の3体が、日本からくり研究会の後援で1箇所に集まり、実際に動くところを見せていた。

 この3体が1箇所に集まっての公開は東京ですでに行なわれたそうだが、3体とも動く姿を公開するのは初めてとのこと。


西鉄大牟田線の高架沿いにある田中久重の生家跡 会場では田中久重の発明品の紹介コーナーも設けられていた

久留米市所有の弓曳き童子

 3体のからくり人形のうち、茶酌娘と文字書き人形は日本からくり研究会の東野進氏の所有だが、この弓曳き童子だけは久留米市教育委員会が所有している(元は京都の旧家で発見されたもの)。

 弓曳き童子は、人形が自ら矢を手にし、弓に番えて放つという文字通り離れ技を見せるからくり人形だ。からくりの技術の高さだけでなく、随所に装飾の施された美しいからくり人形で、動く芸術品と呼んでもいいかもしれない。

 今回は的を使用しなかったが、客をはらはらさせるため、4本の矢のうち1本はわざと的を外すようにできているそうである。


弓曳き童子。下部の前面には装飾が施されている 矢をつかんだところ 矢を番えて放つ

工夫の見られる茶運び人形「茶酌娘」

 今回、久留米市で初めて公開されたからくり人形は、お茶を運ぶ茶酌娘だ(文字書き人形と弓曳き童子は、去年の4月に久留米市商工会館で一緒に公開されたことがある)。

 茶運び人形といえば、からくり人形の中で最もポピュラーなものだが、田中久重の製作した茶酌娘は一味違う。普通の茶運び人形は、からくり人形が運んできた茶碗を手に取ると止まる。しかし、茶酌娘は客の前まで進んできて自動的に止まる。これにより客はゆっくりと茶碗を手にすることができる。その後は普通の茶運び人形と同じく、茶碗を茶卓に戻すと動き出しUターンして帰っていく。

 この仕組みは、「車輪が何回転したか」でストッパーがかかるようになっているためだ。従って客の前でちょうど止まるようにするためには、直前にどれくらいの距離でストップさせるのか調整する必要がある。普通の茶運び人形にさらに工夫を加えた、田中久重ならではの茶運び人形と言えるだろう。

 なお、静態展示のみだったが、茶酌娘の機構を再現した「世界で最大のからくり人形」も会場に展示してあった。


茶酌娘。右にあるのは、茶酌娘に使われていた鯨のヒゲで作られた江戸時代のゼンマイ 移動する距離を調整中 3つの茶碗をお盆に載せて移動する茶酌娘

停止した茶酌娘から茶碗を取っているところ。止まらないと、複数の茶碗を受け取ることはできない Uターンして戻っていく 茶酌娘の機構を復元した茶運び人形。「世界最大の茶運び人形」とのこと

パワーアップしていた文字書き人形

 文字書き人形は「からくり儀右衛門の最高傑作のからくり人形」と言われながら、日本には現存しておらず、近年になってアメリカで発見されたものだ。東野進氏が大金を投じて購入し、懸命に修理復元。「愛・地球博」にも出品されたことで知られる。

 久留米市では、2006年4月25日〜30日に久留米商工会館で開催された「久留米からくり儀右衛門展」で弓曳き童子と共に披露された。この時は『寿』の一文字が書けるだけだったが、今回は本来文字書き人形が書ける4文字(寿・松・竹・梅)すべてを書くことができるようになっていた。

 この文字書き人形は、筆を動かすための腕の動きを「左右・上下・前後」の言わば「X・Y・Zの3軸」の動きに分解し、それぞれを木製のカムで制御するという、今見ても恐るべき機構のからくり人形だ。

 その上、能面の表現方法(能では下を向くと暗い表情、上を向くと明るい表情に見えるように面を彫っている)を取り入れて、文字を書き終わった人形が得意げに見えるように作ってあるなど、現代人が見ても興味深い機械だ。

 会場ではこの3体のからくり人形の他に、「世界で最小」の船からくりや、水銀を使った段返り人形などが披露されていた。


文字書き人形 文字を書いているところ 「梅」の文字を書き終えた文字書き人形

参考写真。2006年4月に開催された「久留米からくり儀右衛門展」に登場した時の文字書き人形。この時はまだ「寿」の文字しか書けなかった 参考写真。「久留米からくり儀右衛門展」での文字書き機構の説明板 参考写真。木製のカムが、文字書き人形のモーションのプログラムに当たる

文字書き人形の内部機構。四文字分のプログラムが木製カムという形で内蔵されている カムが回転しながら腕の制御を行なう。なお、右にある階段状の板で、書く文字の切り替えを行なっている 文字書き人形の後部。人形の後ろにある突起が起動スイッチ

水銀を利用したからくり人形 世界最小の茶運び人形。素材は象牙製の三味線の撥。茶碗があまりに小さいので、五百円玉を腕に載せて動いている 小さくともちゃんとゼンマイを巻いて動く

印籠の貝型根付。実はこの根付の中に世界最初のからくりが入っている 世界最初のからくり「屋形船」。車輪走行すると同時に棹が動く 屋形船のアップ

田中久重の名を広めるために

 今回、共催の日本アフェレシス学会学術大会は、病気を悪化させている原因物質を血液から取り除き、病気の治癒につなげようという、いわば医学の学術大会である。なぜ、医学の学術大会がからくり人形に関わっているかだが、これはNPO法人久留米からくり振興会理事長の古賀伸彦氏と関係がある。

 久留米市内の医療法人天神会の理事長でもある古賀伸彦氏は、久留米出身の田中久重が製作したからくり人形を、日本からくり研究会の東野進氏が動かしている姿を見て感動。NPO法人久留米からくり振興会を立ち上げて理事長に就任。自らも所属する日本アフェレシス学会学術大会が久留米市で開催されるのに合わせて、今回の展示となった。

 また「日本の医学の基礎は江戸時代の蘭学」だとして、会場では江戸時代の医学に関する展示も行なわれ、全体としては「江戸時代における科学」の紹介イベントとなっていた。


久留米からくり振興会理事長の古賀伸彦氏 江戸時代の医療を紹介するコーナー

 NPO法人久留米からくり振興会のこれからの具体的な活動内容はまだ決定していないようだったが、古賀伸彦氏は「田中久重の功績を広く知ってもらい、また子供たちに科学への興味を持ってほしい」と語っていた。歴史から生まれた科学普及のムーブメントというものも面白い試みだと思う。


URL
  医療法人天神会
  http://www.tenjinkai.or.jp
  日本からくり研究会
  http://nippon-karakuri.com
  田中久重ものがたり
  http://www.toshiba.co.jp/spirit/roots/hisashige/index.html

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「夢のロボット大集合」
〜福岡県久留米市でロボットイベント開催中(2007/02/21)



( 大林憲司 )
2007/11/29 17:43

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