11月10日11日の両日、福岡市中央区にあるアクロス福岡において、科学教育イベント「サイエンスワールド2007 in アクロス」が開催された。主催は福岡県とNPO法人科学の公園。
福岡県では毎年11月を科学に親しむ月間「サイエンスマンス」としており、各地の科学館などで科学に関するイベントが行なわれている。そのサイエンスマンスの中心となるイベントが「サイエンスワールド」だ。
アクロス福岡は、福岡市最大の繁華街・天神地区にある建物で、北側から見ると普通のビルだが、南側から見ると樹木の植えられているテラス状の建築物だという不思議な建物だ。
|
|
|
アクロス福岡北側
|
アクロス福岡の南側
|
アクロス福岡の南側には福岡県高校生教育フェアに参加している高校生の模擬店が出ていた
|
このアクロス福岡内とその周辺で2日間に渡り、企業や大学研究室の研究成果の講演・展示、科学実験教室、コンテストが行なわれ、多くの人で賑わった。またアクロス福岡では同時に各地の高校の学習成果を披露する「福岡県高校生産業教育フェア」が行なわれ、福岡県内の高校による連合文化祭という趣もあった(こちらは工業高校だけでなく、農業高校が農産物の加工物を、水産高校が水産加工物を販売していたりした)。
サイエンスワールドが開催された2日間のうち、特に初日の10日にはロボットに関する「最先端ロボットフェア」イベントが、アクロス福岡内部の円形ホールで行なわれた。それを中心にレポートしていく。
|
|
|
香椎工業高校のホバークラフト。実際に人を乗せて浮上していた
|
サイエンスワールドの入り口にいたRIDC
|
サイエンスワールドの看板
|
● WABIAN-2登場!
最先端ロボットフェア最大の目玉は、おそらく早稲田大学高西研究室の二足歩行ロボットWABIAN-2だろう。WABIAN-2は高西研究室が福岡県の企業と共同開発しているだけに、公道歩行実験などでよく福岡県に来ているらしいが、福岡県でも一般の前で披露される機会はあまりない。
最初に映像を流してWABIAN-2のことを紹介。続いてWABIAN-2が登場すると会場から驚きの声が上がった。登場したWABIAN-2は膝を伸ばした歩行の他に、膝を曲げた歩行を見せ、2つの歩行の違いを実際に見せていた。
|
|
|
円形ホールの内部。この時はWABIAN-2の映像を流していた
|
WABIAN-2登場
|
膝を伸ばして歩行するWABIAN-2
|
● 城東高校のロボット相撲デモ
続いて福岡工業大学付属城東高校によるロボット相撲のデモがあった。城東高校といえば、去年の高校生ロボット相撲全国大会で3位に入賞したほどの強豪高校として知られている。
今回のデモでは、立てた鉄のリングの表面で相撲ロボットを動かしたり、総重量570kgもの人間を乗せた台車を引っ張るなど、相撲ロボットのパワフルさを十分に見せ付けていた。
また後半は会場に来ていた子供たちに相撲ロボットの体験操縦をしてもらっていた。
|
|
|
城東高校によるロボット相撲のデモ。電磁石で80kgもの吸着力を発揮し、そう簡単には外れない
|
総重量570kgを引っ張る相撲ロボット。実は重過ぎて最初は鉄のリングの方が動いていたほどだった
|
ロボット相撲の体験操縦
|
● ロボット科学授業
午後からは福岡県教育センターによるロボット科学授業が行なわれた。前半は映像による「人の役に立つ」ロボットを紹介。後半は指文字を表記するロボットを使い、実際に指文字を表現して手話とロボットについての授業を行なっていた。
|
|
|
ロボット科学授業。左の腕は、指文字表記用ロボット
|
援竜の他にセコムのマイスプーンなどが紹介された
|
「ふ」の指文字を示している指文字ロボット
|
● 学校対抗の二足歩行ロボット障害物競技
ロボット科学授業の後は、二足歩行ロボットを持っている福岡県内の工業高校生による障害物競技が行なわれた。参加校は小倉工業高校、嘉穂総合高校、八女工業高校、福岡工業高校の4校。
競技のルールは、1対1で対戦し、植え込みの置かれたコースをジグザグに歩行し、ゴールにある扇を先に倒した方が勝ちというもので、トーナメント戦で戦われた。優勝者は福岡工業高校の井上さんだったが、実は福岡工業高校のロボットだけレベルが図抜けており(ロボスクエアが主催するヒューマノイドカップの決勝トーナメントにも何度も進出しているほどだ)、影では他の工業高校のロボットの調整をして少しでもレベルを上げる苦労があったそうである。
|
|
|
福岡県内の工業高校による二足歩行ロボット競技大会。4つの高校から8台のロボットが参加した
|
植え込みを抜けて、扇を倒したらゴール
|
決勝戦は、福岡工業高校のRB2000同士の対決となった
|
● ロボットバトル大会
「最先端ロボットフェア」の最後には二足歩行ロボットバトル大会が行なわれた。福岡県内の大学から5台のロボット(九州共立大学から2台、九州産業大学から2台、福岡大学から1台)、社会人から3台のロボット(九州練習会の成龍、AutomoSandan、ハウザー)の計8台が参加してトーナメント戦を行なった。優勝は伏兵と言ってもいい、ハウザーだった。準決勝で九共大ー疾風が故障でリタイヤした幸運はあったものの、決勝でAutomoSandanと当たり、ダウンカウント3-2でからくもAutomoSandanを破って優勝した。ハウザーはこれがバトル大会初優勝となった。
他の都市でも科学館などで科学教育イベントは行なわれていると思うが、都市の中心部でこれだけ大規模な科学教育イベントが行なわれるのは珍しいだろう。参加した学生たちのレベルアップだけでなく、多くの子供たちが見学に訪れており、子供たちへの科学教育という点でも意味のあるイベントだ。このサイエンスワールドがこれからも続けられていけば、福岡県の科学教育のレベルアップにつながっていくに違いない。
|
|
|
ロボットバトル大会の参加者
|
九産大の朱鵬 VS AutomoSandan
|
決勝戦のAutomoSandan VS ハウザー(右)
|
■URL
アクロス福岡
http://www.acros.or.jp/
( 大林憲司 )
2007/11/21 08:54
- ページの先頭へ-
|