11月15日、ドイツに本社がある産業用ロボット大手・KUKAロボター社(KUKA Roboter GmbH)は、2007年7月に設立した100%出資の日本法人「KUKAロボティクスジャパン」が日本国内での産業用ロボット・ビジネスの本格展開を始めるとして東京都内のホテルで記者会見を行なった。KUKAロボティクスジャパンは資本金4,000万円、従業員数5人。これから日本での営業を本格的に開始する。
|
KUKAロボター社アジア太平洋地区マネージングダイレクター ブルーノ・ガイガー氏
|
まずKUKAロボター社について、同社アジア太平洋地区マネージングダイレクターのブルーノ・ガイガー氏がプレゼンテーションした。
「KUKA」という名前は創業者2人の名前をとったもの。ロボティクス分野の売上は2006年末で3億7,500万ユーロ。受注・売り上げともに堅調に推移しているという。ロボット事業は、アームロボット、コントローラ、ソフトウェアのほか、サービス、可動型プラットフォームを展開している。たとえばフォルクスワーゲンの組み立ては、塗装を除いてほとんどがKUKAのロボットを使って行なわれている。BMWやダイムラー・ベンツなどでも同様に大きなシェアを持っており、「世界中どこでもドイツ車を見たら、まず我々のロボットで作られていると思って頂いて間違いない」という。
同社のロボット事業は1973年、「FAMULUS」という名前の、6つの電気機械的駆動軸を備えたロボットから始まった。KUKAのビジネスモデルは、ロボットそのものとアプリケーション展開である。ガイガー氏は「1台から1,000台にいたるまで個々のニーズに応えられる」とアピールした。
KUKAが主に展開しているのはアームロボットである。ベースフレーム、回転するコラム、リンク・アーム、アーム/エクステンション、リストからなる6軸のロボットだ。コントローラーもモジュール化されているため、1,000を超える亜種を作ることができ、顧客のニーズに細かく応えられるという。ロボットそのものも可搬重量5kgから1,000kgまで幅があり、モジュールを組み替えることで250種類のロボットを作ることができるという。また同社のロボットはデザイン性も評価されており、時折、映画にも登場している。
|
|
KUKAの6軸ロボットアーム
|
1973年に発表された最初のロボット「FAMULUS」
|
|
|
可搬重量は5kgから1,000kgまで
|
KUKAのロボット事業の歴史
|
|
KUKAロボティクスジャパン代表取締役社長・安藤晃二氏
|
KUKAロボティクスジャパン代表取締役社長・安藤晃二(てるつぐ)氏は、まず産業用ロボットの現状や、日本のロボット市場について述べた。アジア太平洋地域での産業用ロボットの売り上げは年率5%の成長率で2009年まで継続的に増加すると見ており、なかでも日本は2006年度の多関節ロボットの市場のうち32%を占める大きな市場だ。
KUKAは35年の経験と、累計10万台の出荷実績を持っている。また、他社のロボットよりも軽量で12%高速で動かせるロボットや、総ステンレス製で埃が出ず、クリーンルームで使用可能なロボット、1,000kgを持ち上げられ、ギネスブックに登録されている最強のロボット「KR1000 TITAN」、そして産業用ロボットを人間と接触するエンターテイメントに用いた「KUKA ロボコースター」などユニークなロボットを開発している。
安藤氏は、ユニークな商品、特殊な商品をとっかかりとして、日本市場に進出していきたいと述べた。あくまで長期の展開を目指しており、数年での撤退はないという。記者に配布された資料も食品供給チェーンでのロボット活用に関するもので、自動車業界よりも一般市場から進出を目指していくという。ただし、既に自動車シートの検査用ロボットが、あるメーカーに採用されることは決まっているとのことだった。
KUKAが日本に出てきた理由については「日本企業もグローバル化していて、海外と有機的な関係を持っている。我々が日本市場に進出することで、同時に世界市場に対してサービスを提供できる。医療用ロボットの分野などでKUKA製品は既に日本にも導入されている。日本市場でも顧客の要望にしたがって高品質な製品を提供していきたい」と語った。
また、KUKAはこれまでもユーザー企業のあとを追いかけて海外に進出してきた経緯があり、KUKAが付き合いのある会社が日本での展開を始めているケースがあることから、産業用ロボット市場でも多くを占める日本への進出に踏み切ったという。
競合他社との比較については「技術的な面で見ると我々のほうが凌駕している。一般産業用においても、時間をかけて長期的な緊密な関係を築いていく。日本市場は魅力的であり、パートナーは必ず見つかると自負している。日本市場への進出は長期的な投資としてみている」と自信を見せた。「日本の自動車メーカーに入っていくことの困難は自覚しているが、高度な技術に気づいていただけたら我々も入っていけると考えている」という。なお、売り上げ目標等、具体的な数字は明かされなかった。
このほか記者会見には、KUKAの日本進出をサポートした日本貿易振興機構(JETRO)対日投資部対日ビジネス課課長の根本裕之氏も出席し、日本企業との提携や日本市場でのイノベーションを期待すると述べた。
|
|
|
産業用ロボット市場の動向予測
|
多関節ロボットの2006年度市場
|
多関節ロボットの日本市場における用途別割合
|
|
|
|
KUKAのロボットの特徴
|
さまざまな産業用途に用いられている
|
自動車だけではなく一般市場にも展開
|
|
|
KUKAのユーザー
|
【動画】自動車のシートの検査の様子
|
|
|
【動画】ロボットアームを使ったエンターテイメントマシン「KUKA ロボコースター」
|
日本貿易振興機構(JETRO)対日投資部対日ビジネス課課長 根本裕之氏
|
KUKAは11月28日から12月1日まで東京ビッグサイトにて開催される「国際ロボット展2007(iREX2007)」にて展示を予定している。1,000kgの可搬重量を持つ「TITAN」そのほか、大型から小型までさまざまなロボットを展示し、自動車産業、一般産業でのロボットアプリケーションをカバーできることをアピールする。また、夕方には連日、ブースにてビアパーティを行なうという。
|
|
|
「国際ロボット展2007(iREX2007)」KUKAブース
|
ギネスブックに搭載されている可搬重量1,000kgの「TITAN」も出展される
|
「TITAN」のスペック。重量4,600kg、全長320cm
|
■URL
KUKA
http://www.kuka.co.jp/
( 森山和道 )
2007/11/15 17:05
- ページの先頭へ-
|